文春新書『英語学習の極意』著者サイト

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43 観た・読んだメモ

令和6年4月28日から9月11日の実況です。項目ごとに、日付を遡る形で記載しています。
ひとつ前の 令和5年11月22日~令和6年4月27日 の実況はこちら。
ひとつ後の 令和6年9月12日~  の実況はこちら。

観 た:

令060911  たに このみ 「やわらかい庭」 @ hiromart gallery

令060911  National Theatre Live
| Tim Price: "Nye" 「ナイ ― 国民保健サービスの父」
@ シネ・リーブル池袋

令060910  Emi Katsuta: Moonlight Shadow @ 靖山画廊

令060910  シュルレアリスムとアブストラクト・アート 館蔵品展 もっと魅せます! 板橋の前衛絵画 @ 板橋区立美術館

令060909  Kamiyama Art カドリエンナーレ 2024(橋口美佐、三鑰彩音ほか)| 野原綾乃 展 絽刺しの世界 @ 上野の森美術館

令060906  コレクターによる田端麻子展 | 濱 美由紀「たんけんえほん原画展」 @ Gallery 枝香庵

令060906  1980-89s ー80年代うまれの作家の展覧会ー @ The Artcomplex Center of Tokyo

令060906  船山佳苗 展「手の内みせようか?」 @ Gallery Face to Face

令060905  MET Live | Jake Heggie: "Dead Man Walking" @ 東劇

令060904  黒木重雄 展 @ art space kimura ASK?

令060902  箱男 @ 東宝シネマズシャンテ

令060828  渺渺展 @ 佐藤美術館

令060828  ジャン=ミッシェル・フォロン 空想旅行案内人 Folon: Agency of Imaginary Journeys @ 東京ステーションギャラリー

令060827  橋田直人 展 Hiroshima  @ 十一月画廊

令060827  長沢 明 展 @ Galerie Chene Tokyo

令060827  コノハ展 Konoha「何が言いたい?」 @ Galerie Tokyo Humanite bis

令060824  世良郎二 個展「世良郎二 ≒ 天明屋尚」 @ Gallery Mumon

令060824  MET Live | Giuseppe Verdi: "Ernani" @ 東劇

令060823  MET Live | John Adams: "Doctor Atomic" @ 東劇

令060821  佐野明子 展 ~Castles made of 粘土~ @ Oギャラリー UP・S

令060821  石井武夫と教え子有志たち展(川邊りえ ほか) @ ギャラリー ムサシ

令060820  川崎市市制100周年記念「藝術は、自由の実験室 ― 夏のアートキャンプ」展(國久真有、園部惠永子、西除闇、村上力)|「目もあやなオバケ王国 岡本太郎のオバケ論」 @ 川崎市岡本太郎美術館

令060820  幻想のフラヌール 版画家たちの夢・現・幻 Visionary Flaneurs: The Dreams, Realities, and Visions of Artists | 飯田善國の版画と≪彫刻噴水・シーソー≫ @ 町田市立国際版画美術館

令060819  赤塚友里 展 | 木版画と造形 長澤's 二人展(朝子・博昭) @ ギャラリー檜

令060814  高橋龍太郎コレクション決定版 日本現代美術私観 ひとりの精神科医が集めた日本の戦後 A Personal View of Japanese Contemporary Art | 開発好明 Art Is Live ひとり民主主義へようこそ Yoshiaki Kaihatsu: Welcome to One-Person Democracy | MOTコレクション 竹林之七妍 特集展示・野村和弘 Eye to Eyeー見ること @ 東京都現代美術館

令060812  大竹夏紀 展 宇宙のどこかにある山 @ Gallery b. Tokyo

令060812  鈴木律子 展 @ アートスペース羅針盤

令060812  サイドコア展 コンクリート・プラネット Side Core: Concrete Planet | Kenny at On Sundays @ ワタリウム美術館|Museum Shop On Sundays LightSeed Gallery

令060812  ヤノベケンジ:太郎と猫と太陽と @ 岡本太郎記念館

令060812  アックス夏祭り 私の好きな名画たち @ ビリケンギャラリー

令060806  Nam Euihyeon 展 The Garden(油画とブロンズ彫塑) @ Gallery b. Tokyo

令060806  Waypoint(東京藝大日本画3年生9人展) @ アートスペース羅針盤

令060806  大地に耳をすます 気配と手ざわり(榎本裕一、川村喜一、倉科光子、ふるさかはるか、ミロコマチコ) @ 東京都美術館 ギャラリーA・B・C

令060806  デ・キリコ展 Giorgio de Chirico: Metaphysical Journey @ 東京都美術館

令060802  まずるやさん・初個展【No.0】あつまれ、まずる好き。 @ Gallery Hana Shimokitazawa

令060801  蒼野甘夏 日本画展「夢とあこがれと強さ」 @ Gallery Mumon

令060801  クララ・デジレ個展 風変わりな子供 Child Oddity @ Sho+1

令060731  富田菜摘 個展 Wonder Circus @ Bunkamura Gallery 8/

令060725  石川九楊大全 Ishikawa Kyuyoh: Complete Works 【状況篇】言葉は雨のように降りそそいだ(エロイ エロイ ラマ…の大作や、碧梧桐109句選など) @ 上野の森美術館

令060723  天野タケル 花とヴィーナス -Venus & Flowers- | 大川心平 乾いたパンと濡れた羽 @ 銀座蔦屋書店|Foam Contemporary

令060719  シアスター・ゲイツ展 アフロ民藝 Theaster Gates: Afro-Mingei @ 森美術館

令060716  吉田克朗展 ものに、風景に、世界に触れる Yoshida Katsuro: Touching Things, Landscapes, and the World
| MOMASコレクション シュルレアリスム宣言100周年(出店久夫のインスタレーションほか)
@ 埼玉県立近代美術館

令060713  内藤瑤子展 ザ・ビーチ・リヴァイアサン The Beach Leviathan @ Gallery Face to Face

令060713  烏丸 京 展(カラーメゾチントの街景) @ Oギャラリー UP・S

令060713  Mumon Art Project(石居麻耶、石野平四郎、井上裕起、加藤美紀、島﨑良平、藤田朋一、吉田涼香) @ Gallery Mumon

令060712  ヱリス×太田絵理 二人展「無名女優」 @ Gallery Hana Shimokitazawa

令060710  矢尾伸哉 Eden-Garden 動物たちの庭園のフィールドワークあるいは生-アーカイヴに難破する技法 | 榊原澄人 個展 Iizuna Anachronicle ~杜の時間~ @ art space kimura ASK?

令060710  TRIO パリ・東京・大阪モダンアート・コレクション Trio: Modern Art Collections from Paris, Tokyo and Osaka | MOMATコレクション(20 Photographs by Eugene Atget | プレイバック「日米抽象美術展」| ジェルメーヌ・リシエ≪蟻≫ 海外作品篇) @ 東京国立近代美術館

令060706  Tokyo Gendai・東京現代 @ パシフィコ横浜 展示ホールC/D

令060704  2060年の自分について考える(中3生向け講演) @ 松山市・福音学園

令060703  ナイロン100℃ 49th Session 江戸時代の思い出 @ 本多劇場

令060629  長沢秀之『「C通信Ⅱ」ネクロポリ-島』 Nagasawa Hideyuki: C-Transmission Drawings II Necropoli-Island @ Gallery MoMo Ryogoku

令060629  Shimizu Tomohiro 「Re: 新規メッセージ」 @ Gallery Dalston

令060627  デカローグ 9「ある孤独に関する物語」| デカローグ 10「ある希望に関する物語」 @ 新国立劇場 小劇場

令060627  デカローグ 7「ある告白に関する物語」| デカローグ 8「ある過去に関する物語」 @ 新国立劇場 小劇場

令060626  MET Live | Giacomo Puccini: "Madama Butterfly" @ 東劇

令060624  津田テリー直美 展 @ Gallery Q

令060621  日本映画と音楽 1950年代から1960年代の作曲家たち Japanese Cinema and Music: Composers in the 1950s and 1960s @ 国立映画アーカイブ展示室

令060621  ブランクーシ 本質を象る Brancusi: Carving the Essence | 清水多嘉示 Shimizu Takashi @ Artizon Museum

令060619  旧安田楠雄邸 昭和の台所(特別公開)| 蓄音機の音色(SPレコード4曲) @ 東京都指定名勝 旧安田楠雄邸庭園

令060616  La Lumiere Transmise 透過する光(高松ヨク、菅野愛沙子、Sotaro Oka、タムラグリア、成瀬修、山城有未)| 紺野真弓 個展 Lost |【然 (さ) 有らぬ艶めき、芳醇たる艶 (なま) めき】 綺朔ちいこ/Mirai @ みうらじろうギャラリー(5~3階)

令060615  「中世のまなざし トリビュート作品」 鈴木和道 鉛筆画展 @ Gallery Hana Shimokitazawa

令060615  丸尾末広 展 @ Artglorieux Gallery of Tokyo

令060615  星山耕太郎 個展 Shelter | 南依岐 個展 藝核一如 | 中村桃子 New memories | 大河原愛 展 静けさの内に留まる羊は、いかにして温もりを手に入れたかⅡ @ 銀座蔦屋書店

令060615  髙橋健太 Kenta Takahashi: inside/outside @ 靖山画廊

令060614  Wonder at Spiral(Everett Kennedy Brown, 広川泰士、菅原一剛、山内悠)| Then and Now(東松照明、新垣尚香、石川竜一、北上奈生子、奥西優子) @ Spiral Garden

令060614  #musiccolondoll solo exhibition: 100 Dolls(マスダジュン) @ ビリケンギャラリー

令060614  笠井遥展 -水の月- | 外山 諒 展 Makoto Toyama exhibition @ 新生堂

令060611  渡辺真木彦・松岡 学 2人展 @ アートスペース羅針盤

令060610  早川温人展 Solo Exhibition Hayakawa Haruto (老人像をダイレクトスキャナーでとらえたプリント) @ 千代田区立日比谷図書文化館1階 特別展示室

令060607  しりあがりさんとタイムトラブル 江戸×東京 @ 千代田区立日比谷図書文化館1階 特別展示室

令060607  歸空庵 (きくうあん) コレクションによる洋風画 Western Winds from the Kikuan Collection: Exoticism in Early Modern Japanese Paintings @ 板橋区立美術館

令060606  Land Ho! おーい 陸地だぞ(6人展) @ art space kimura ASK? | Galerie Tokyo Humanite bis

令060606  依田洋一朗 展 ーDays at The Metropolitan Museum of Artー @ 南天子画廊

令060605  島崎良平 個展「水域」 @ Gallery Mumon
(小品「女河童の皿濡らし」を \29,700 で購入)

令060605  Musical「ナビレラ ーそれでも蝶は舞うー」 @ シアタークリエ

令060604  MET Live|Giacomo Puccini: "La Rondine" @ 東劇

令060531  藝大21 創造の杜2024 「作曲家ペーテル・エトヴェシュ」 Péter Eötvös | Sirens' Song for orchestra (2020) | Speaking Drums - four poems for percussion solo and orchestra (2012/2013) | Focus - concerto for saxophone and orchestra (2021) | The Gliding of the Eagle in the Skies for orchestra (2011, rev. 2012/2016) @ 東京藝術大学奏楽堂(大学構内)

令060529  板倉鼎・須美子展 | 両洋のまなざし 石井光楓 | 千葉市美術館コレクション選 特集・白井美穂 @ 千葉市美術館

令060529  開館50周年記念 コレクション展1 50年の歩み @ 千葉県立美術館

令060528  しりあがり寿展 @ Gallery Q

令060528  三島喜美代 未来への記憶 Mishima Kimiyo: Memories for the Future @ 練馬区立美術館

令060527  村松辰之介 個展 aluminium scape @ Gallery b. Tokyo

令060527  出店久夫 展 「歴史」 @ Galerie Tokyo Humanite bis

令060527  Kitahara Collection 超合金&ソフビ @ 京橋エドグランB1 タウンミュージアム

令060527  日経日本画大賞展 | 清水 航 展 @ 上野の森美術館

令060525  土屋仁応 「動物と人」 Yoshimasa Tsuchiya: Animals and Humans | 田中福男 「その種として」 Fukuo Tanaka: As a Species @ Megumi Ogita Gallery

令060525  坂本友由 展 「手前のものさし」 @ Gallery Mumon

令060524  武本大志展「妖怪彫刻」
| 多田幸史 作陶展 | 金物師 十六代金谷五良三郎展
@ 日本橋高島屋 美術画廊

令060524  野田朗子 Akiko Noda Glass Exhibition: "Connect - Past, Now, Future" @ 壷中居
(硝子作品「縄文のビーナス」を \27,500で購入)

令060524  中西 伶 「表層の季節」
| 西村昴祐 「すわらせる」 | Yang Bo(楊博) Zamio versus Souvenir-man and the Defending Champion | 堀江 栞 個展 「仮定法のない現在」
@ 銀座シックス蔦屋書店

令060522  MET Live | Charles Gounod: "Roméo et Juliette" @ 東劇

令060521  永島佳代子 コドウナオコ 二人展 "NAGO" @ Gallery Hana Shimokitazawa

令060521  デカローグ5 ある殺人に関する物語 | デカローグ6 ある愛に関する物語 @ 新国立劇場 小劇場

令060520  野沢二郎 個展 「時雨、のち静か」 @ Galerie Paris

令060520  第8回 横浜トリエンナーレ 野草:いま、ここで生きてる Wild Grass: Our Lives @ 横浜美術館|旧第一銀行横浜支店|BankArt Kaiko

令060517  山下武美展 Box and Cabinet @ Galerie Tokyo Humanite bis

令060516  藝大動物園 Welcome to the art zoo! @ 藝術アートプラザ

令060516  大吉原展 Yoshiwara: Utamaro, Hiroshige, Hokusai @ 東京藝術大学大学美術館

令060516  岩渕華林 "Fragile" | 吉野涼子 "ephemeral" @ Gallery Tsubaki

令060515  アンセル・アダムス作品展 ポートフォリオⅣ:偉大なる啓示 @ 写真歴史博物館

令060515  富士フイルムグループ創立90周年記念コレクション展 フジフイルム・フォトコレクションⅡ 世界の20世紀写真「人を撮る」 Exhibition to Commemorate 90 Years of Fujifilm Group FUJIFILM PHOTO COLLECTION II Capturing the Human Experience: World Photography in the 20th Century @ フジフイルム スクエア

令060515  Michael Kenna: 50 Years & Japan @ Gallery Art Unlimited

令060515  大原 舞 "Encounters" @ s + arts

令060515  遠距離現在 Universal/Remote (井田大介, 徐冰, Trevor Paglen, 地主麻衣子, Giorgi Gago Gagoshidze+Hito Steyerl+Milos Trakilovic, Tina Enghoff, Jeamin Cha, Evan Roth, 木浦奈津子) @ 国立新美術館 企画展示室1E

令060515  マティス 自由なフォルム Henri Matisse ― Formes libres 巨匠がニースに遺した切り紙絵のあざやかな世界 @ 国立新美術館 企画展示室2E

令060513  MET Live | Charles Gounod: "Roméo et Juliette" @ 東劇

令060512  井上 健 (たけし) 展 塗りと出会う @ 日本橋高島屋美術画廊X

令060512  成田朱希 個展 アドレナカフカ @ 不忍画廊

令060512  景色の手ざわり 山内康嗣|河野志保 展 @ Gallery Face to Face

令060512  没後50年 木村伊兵衛 写真に生きる | TOPコレクション 時間旅行 千二百箇月の過去とかんずる方角から @ 東京都写真美術館

令060510  アーティストによる理想の家(野々上聡人・石原 海・上田 良・根本祐杜) @ アート/空家 二人(大田区蒲田三丁目)

令060508  久保寛子 鉄骨のゴッデス Steel-framed Goddess @ Pola Museum Annex

令060507  あるコレクターによる宮崎進 展Ⅱ 1972-2007 MIYAZAKI Shin | 大久保智子 OKUBO Satoko 「糸と色」 @ Galerie Tokyo Humanite

令060506  色本 藍 展 サバイブ・サバイブ・サバイブ @ Gallery b. Tokyo

令060503  ボタニカ(奥村彰一、椎猫白魚、新藤杏子、鈴木喬子、服部知佳) @ Bunkamura Gallery 8/

令060503  大岩オスカール展 乱流時代の油ダコ Oscar Oiwa Exhibition: Oil Octopus in the era of turbulent currents @ 渋谷ヒカリエ8階 8/Court + 8/Cube 1~3、4階 ヒカリエデッキ
(ヒカリエの建物壁面へのライブペインティングあり。ぼくが4階に行ったときペインティングはもう終わっていたが、サングラス姿の作家がおられた)

令060503  横山 宏 Kow Yokoyama from 1982 @ Billiken Gallery
(コンセプチュアルアート作品 Eddy 1 を ¥120,000 で購入)

令060502  Ho Tzu Nyen: A for Agent ホー・ツーニェン:エージェントのA | 翻訳できないわたしの言葉 Where My Words Belong | サエボーグ: I Was Made For Loving You/津田道子: Life is Delaying 人生はちょっと遅れてくる | MOTコレクション 歩く、赴く、移動する 1923→2020 Eye to Eye―見ること @ 東京都現代美術館

令060501  Makoto Honda Solo Exhibition 緑の狸 Green Raccoon Dog | Hiro Sugiyama: "Sculpture" @ Lurf Museum

令060501  マイケル・ケンナ写真展 JAPAN / A Love Story 100 Photographs by Michael Kenna @ 代官山ヒルサイドフォーラム

令060501  青山 夢 Yume Aoyama 見えない怪獣 Invisible Kaiju @ Art Front Gallery



読 ん だ:

令060908  悪党たちの中華帝国      (新潮選書、令和4年刊)   岡本隆司 著
(書名は歌舞いているが正統派の名著。この本と『マオ』を読めば中国史は足りる気がする。現代日本人から見れば至極まっとうな五代十国の馮道、陽明学左派の李卓吾、明治漢語から「新文体」の現代中国語を作った梁啓超らが、疎まれ蔑まれるところに中国の中国ならではの悲劇がある。その延長線上に劉暁波があり趙紫陽があり李克強がある。『貞観政要』の太宗を賢帝と思っていたが、何のことはない、やったことはほぼ隋の煬帝と同じで、性格と時運が両人をネガとポジにしたと知り愕然。万暦帝は手許不如意には新しい手立てをどんどん思いついて実行するから暗愚ではないが、明敏さを活用する方向がおかしかった。例の万暦10年とは、めざましい治績をあげた宰相・張居正が逝去した年だった。康有為のバカさ加減にもがっくり。)

令060908  陽気なお葬式      (新潮社 Crest Books 平成28年刊)   Людмила Евгеньевна Улицкая 著、奈倉有里 訳
(『モスクワは涙を信じない』を彷彿とさせるロシア人+ユダヤ人ならではの人間臭さ。少女マイカの父が誰なのか、その秘密が徐々に明かされ、マイカ自身もその父も互いに分かりあっていたことが最後に明るみに出る。主人公アーリクをはじめ登場人物たちもストーリーの舞台もじつに魅力的。この作家の作品、他のものも読んでいきたい。)

令060905  ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか? Does the Future Sleep Here?  国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ Revisiting the museum's response to contemporary art after 65 years    (美術出版社、令和6年刊)
(2024年3月12日~5月12日、国立西洋美術館での特別展図録。1983年生まれのユアサエボシさんの所論がめちゃ面白い。架空の1924年生まれユアサヱボシは福沢一郎のもとで学び山下菊二と付き合いがあり猪熊弦一郎が力づけたという設定で、なるほど納得の作風解剖だ。|私塾兼アートコレクティヴのパープルームを運営する梅津庸一さんの溶解したパウル・クレーみたいなのもいいし、戦後にバリに沈潜するペインターFを措定してみせた小沢剛さんもイカす。|現代アート側の作家に大竹伸朗さんとかもってこなかったのは、大竹さん級のひとだとクッちゃうからだろうけど、そのいっぽう現代アート側の作家たちに「いいんだけど小粒」感もあり。)

令060904  村上隆のスーパーフラット・コレクション      (カイカイキキ、平成28年刊)
(2016年1月30日~4月3日、横浜美術館の特別展の図録。巻末の豪タスマニア州 Mona オーナー David Walsh さんとの村上隆対談や、ご自身のコレクションのめり込みの経緯、魯山人の胡散臭さゆえの凄さについてなど、おもしろい。)

令060902  悪筆論  一枚の書は何を物語るか ― 書体と文体    (藝術新聞社、令和5年刊)   石川九楊 著
(副題の意は、書体から書き手の好む関心事や語彙を割り出せると。なにせカバーの中上健次のくちゅくちゅした字体が強烈だ。三島由紀夫の書をお習字と喝破するが、そこに意外にも顕著な紋切調の表現(抽象的・常套的比喩)の頻出まで予見できるとは。太宰治の文中の括弧注記の多さを、半言葉状態のカオスをすくいあげる道化心の表われと見る ― ふん、プルーストもそうだったのかも! 松本清張は凡庸な歌謡曲ゆえ大衆に支持された(ぜったい読まぬぞ!)|それにしても九楊さんの重ね重ねの俗論、日本語は単一言語でなく漢字語とひらがな語の混合体、二重二併の言語なりという説には幻滅のかぎり。せっかくの卓論の書もこれで台無し。)

令060902  失われた時を求めて9 ソドムとゴモラ Ⅱ       (岩波文庫、平成27年刊)   Marcel Proust 著、吉川一義 訳
(ヴェルデュラン夫妻のラ・ラスプリエールの別荘で展開される社交は、行き帰りの列車内の情景も含め、これまでの社交場面とはまた別の趣き。いけずなモレルのとんでもなさが笑わせるし(「わたし」は祖母の性格を受け継いで人間の多様性をそれとして楽しむ)、極めつけは某貴族が色宿の豪華ホテルぶりに惑わされて皆が止めるのを振り切って途中下車するシーン。いっぽうアルベルチーヌは、白地に青の水玉模様のブラウスを着て若い動物のように軽やかにぴょんと車内の「わたし」のそばに飛び乗る。|≪頑固者とは他人に受け入れられなかった弱者であり、他人に受け入れられるかどうかなどには頓着しない強者だけが、世間の人が弱点とみなす優しさを持つ≫)

令060828  ニッポン vs 美術  近代日本画と現代美術:大観・栖鳳から村上隆まで    (東方出版、平成18年刊)   大阪市立近代美術館建設準備室 編
(2006年10月28日~12月10日の書名と同名の展覧会(大阪)図録。秦テルヲ、島成園、生田花朝。パンリアル美術協会の5人。堂本父子。今井俊満についてアンフォルメルしか知らなかったが、その後に「花鳥風月」シリーズで引用の技、そして最晩年にコギャルを描く。すごい。中ハシ克シゲの「不二」、冨永奇昴が発泡スチロールにシンナーで書いた「馬鹿」もおもしろい。)

令060825  世界は経営でできている      (講談社現代新書、令和6年刊)   岩尾俊兵 著
(「価値有限思考」=ゼロサム思考に毒されて短期利益・部分最適志向に陥り「限りあるものを奪い合う」ことに汲々とする生き方を捨てて、協同で価値を作りだす「価値無限思考」へ踏み出そうというのが本書のメッセージ。「令和冷笑体」と自虐しつつ実に分かりやすい筆致は、苦労の経歴の成せる業か。手段と目的の取り違いが多くの悲劇を生むことを豊富に例示する。|≪友情とは相手の中に自分の分身を見つけ、自分の分身を愛することを通じて自己愛から他己愛へと至る感情。≫|≪藝術が成立するには作品の価値が創造され理解される「藝術ネットワークの経営」が不可欠。≫|≪危機そのものが政権・王朝を滅ぼすのではなく、むしろそれらが日常的に直面している危機に対処できないほど落ちぶれたときに、危機という最後のひと押しで滅びる。≫)

令060821 完本 仏像のひみつ      (朝日出版社、令和3年刊)   山本 勉 著、川口澄子 画
(好著。内容を書き出してA4判1枚のメモにした。|日本の神さまにはもともと姿がなく、神さまの像とは神さまが何かほかのものに姿を借りてあらわれた、その姿を写したもの。|仏像を作る国のなかで作者に仏師という地位を与えるのは日本のみ。中国の仏像は、つくりものの内臓を入れていることが多い(←確かに見た覚えあり!)。|「キンデイ塗り」とか、ウンゲン(繧繝)、コン・タン・リョク・シ(紺丹緑紫)など、ときにカタカナ書きを効果的に使っているのも好感。)

令060820  西洋絵画のひみつ      (朝日出版社、平成22年刊)   藤原えりみ 著、いとう瞳 画
(前半は新旧約聖書に密着し、はたまた“異教”の神々や十二弟子のアトリビュートについても目配り。後半は、風景画・静物画がいかに宗教画を口実としてスタートしたか、ヌード画が何を口実としてスタートしたか、要すれば印象派以前の絵画全般を理解する切り口がもらえる。)

令060818  勘違いが人を動かす  教養としての行動経済学入門    (ダイヤモンド社、令和5年刊)   Eva van den Brock・Tim den Heijer 著、児島 修 訳
(読みやすく、包括的。高校生のための心理学入門として絶妙。恩返しならぬ「恩送り」というすばらしい言葉を知った。自己紹介の目的が、お互いの共通点を見つけて連携しやすくするためというのも発見。ぼくはこれまで、とかく自分のユニークなところ、特異性を見せつけるのが自己紹介だと思っていた。|人はいつもと違う行動をするのが面倒。脳はじつはフル活用されているので、さらなる努力を避けようとするのが脳の戦略。意思決定の95%は自動的。人は選択肢を示されるのを好むが、選択するのは好きでない。人はいったん所有したものに高い価値を見出す。後悔を過度に大きく見積もる。|長い休暇の最後にイヤな雑用はしない。休暇の記憶じたいが台無しになる。|目標は具体的に想像するほど達成しやすくなる。カネや時間がないとき、人は近視眼的な反応をしてしまう。)

令060816  日本一の靴磨きとピカソ      (笑がお書房、令和4年刊)   パブロ賢次(赤平健二)著
(中ほどまではひとを食った本だが、後半はがぜん良質のアートの手引書。色彩は2色か3色の組合せがいちばんきれいに見えるので、2~3色しか使ってないと思える絵を描くと品のいい作品になる。なぜ具象絵画でない作品だけが超高額で取引されるか。ワケが分からず特定の基準がないからこそ値段を「作れる」からだ。|マチスの魅力は絵に「苦労の跡」が出ていないこと。|セザンヌはキュービズム理論により描いたわけではなく、単純に、絵を上手に描けず作為なく自然発生的にああなって結果的にアカデミズムを超えてしまった。)

令060813  失われた時を求めて8 ソドムとゴモラ Ⅰ       (岩波文庫、平成27年刊)   Marcel Proust 著、吉川一義 訳
(冒頭のシャルリュス男爵とジュピアンの件のようなのが延々つづくのかと懸念したが、中心となるのは奇想と変化に富んだゲルマント大公邸の夜会で、これまで折節出てきたドレフュス事件への各人の論評が納得の総括を得る。それにしても貴族たちが本人の前で毒舌を吐いてみせる素っ頓狂といったら!|ニコラ・プッサン「嬰児虐殺」(1625~29年)は人物の集約による劇的な構図で、現代アート超えしているな。|≪愛のあかしをわがものにしたいという欲望から出た行為よりも、愛するひとに与えた苦痛を償おうとする人間的欲求から発した行為のほうが、ひとりの女性への振る舞いにおいて大きな位置を占める。≫|本作においてプルースト自身を体現するのは語り手の「わたし」ではなく、むしろシャルリュスやスワンなどの登場人物に仮託されている。)

令060813  13歳からのアート思考  「自分だけの答え」が見つかる    (ダイヤモンド社、令和2年刊)   末永幸歩 (ゆきほ) 著、佐宗邦威 解説
(アートをお題目にした二番煎じのビジネス書かと思っていたら、良質のアート史のテキストだった。「技能・知識」偏重の美術科へのアンチテーゼ。アート思考とは、自分自身のなかに興味のタネを見出し、探求の根を伸ばして、自分ならではのアウトプットをすること。|情景のすべてにピントが合うことは、人間の視野では起こらない。人間は無意識に目を上下左右に動かし、複数の角度から見た世界を脳内で1つの景色として合成している。|いま美術館にあるデュシャンの「泉」がレプリカなのは知っていたが、じつはオリジナルとは形もサインの形も異なる。とある美術商がフリマで手にいれた中古便器にデュシャンからサインをもらったもの。だから真面目に鑑賞する人を「デュシャンは鼻で笑っただろう」という著者コメントがおもしろい。|≪ウォーホルは「これがアートだなどと言える確固たる枠組みはどこにも存在しないのでは?」と問いかけていたのだろう。そしてMoMAは、アートという枠組みがなくなったあとの平原に立ち、自らの見方で本当にすぐれたものを選び出そうとしている。≫|≪一向に成果が出なくても、ちゃんと自分の興味に向き合っていれば、必ず点と点はつながる。≫|佐宗氏曰く≪自分の内面に眠る妄想の解像度を高め、ビジョンとして表現する=アーティスト的生き方≫)

令060812  科学的根拠に基づく最高の勉強法      (Kadokawa 令和6年刊)   安川康介 著
(脳がいかにも勉強したような自己満足を覚える負荷のかけ方(再読、下線引き、抜粋書写)では効果は薄くなる。誰かに教えるフリをしながら、学んだことのアウトプットをすると良い(ブツブツつぶやいて教えるフリをしながら書き出す白紙勉強法=アクティブリコール)。|第3章の記憶術はサイテー。英単語を語呂合わせで覚える話など、アホかと思った。これで評価がかなり落ちた。巻末の10頁にわたる参考文献リストも著者の自己満足だ。むしろ索引をつけてほしかった。)

令060810  海の鎖      (国書刊行会、令和3年刊)   Gardner R. Dozois et al. 著、伊藤典夫 編訳
(圧巻の Chains of the Sea は、ふつうのヒトとエイリアンのほかに、ヒトが感知できない妖精諸族(トミーだけは意思疎通できる)、そして主体的存在として地球の真の政府を構成する AI がちぐはぐに動き、ヒトはあっさり滅びる。1973年作だが、AI の肌感覚は的確。|Another Little Boy は面白半分の2044年にヒロシマに再度原爆を落とす、コンプラぶち切れのストーリー。|After King Kong Fell は、映画という虚構と、そこから飛び出す「リアルなキングコング」というメタ虚構、そしてそれを孫に語る今日のリアル――という三重構造がすごい。|The Last Jerry Fagin Show は、地球来訪前に地球のジョークを吸収しつくし最強のコメディアンになっちゃった、いわば ChatGPT 化したエイリアン。1980年作だ。)

令060809  勇気論       (光文社、令和6年刊)   内田 樹 (たつる)
(名著。人間の内面のぞわぞわ感=直感のちからに、とことん向き合おうとする。このだいじなエレメントに素直に従うために、じつに意外にも、必要とされるのは勇気。勇気こそが「考えないうちに動く身体」を作り、惻隠の情を養う。|「論理的である」とは、常識や思い込みに邪魔されることなく「これしかないだろという論理の飛躍」をするための助走。論理の飛躍なくして真の発見はない。だから論理の飛躍を前提としない「論理国語」という科目は邪道。|「仲裁する」ことの意味を本書で深く知らされた。それは「あっち向き、こっち向き」すれば済むものではなくて、引き受ける義理のない痛みを引き受ける者が身銭を切って行うもの。なるほど、だから「米中の仲介役」などというものは重い負担を背負い込まなければできるものではないわけだ。|「どうしていいかわからない時にもどうしていいかわかる」ことの大切さ。|「不快・無意味・不条理に耐える」という生き方をすると、自分の感受性を犠牲にせざるを得ず、最も肝心な「自分に呼びかけてくる声」が聞えなくなる。「悪いことの予兆を感じる能力」も失い、大事なアラートが働かなくなる。)

令060801  古代文字の解読      (岩波書店、昭和39年刊)   高津春繁・関根正雄 著
(2024年になって講談社学術文庫で復刊されて、本書の存在を知った。亡国の遊牧民アラム人が独立を失ってアッシリアにより四散され、かえってその言語と文字が広がり近東の通用語となったとは! 漢人もそれに似ていよう。第2章 エジプト聖刻文字の解読、第3章 楔形文字の解読がおもしろい。意外にもエジプトの文字は基本的に表音文字であり、いっぽう楔形文字はユニットごとに日本語の漢字の訓読みと仮名文字のごとく機能する。形声文字の偏のごとく意義のカテゴリー分けのために機能する「限定文字」というエレメントも存在する。解読に資したのは、まずもって一連の固有名詞。そこからユニットごとの発音が類推された。)

令060727  パリンプセスト       (東京創元社、令和元年刊)   Catherynne M. Valente 著、井辻朱美 訳
(原著は邦訳の10年前の2009年刊。訳者が東大院卒の幻想文学作家で、ゴシックな訳文はみごと。さながら全篇が散文詩で、獣面人が行き交い、列車は爆走するイキモノだ。著者はイタリアと日本に取材していて、躙り口のある茶室や伏見稲荷大社の情景が鮮烈。痴呆の絶叫のような、読んでも空しい吉増剛造作品に比べればはるかにいいのだが、本作 Palimpsest も結局、大団円のカタルシス不在のまま終わる。登場人物がロジックで丁々発止する場面がなく、肉交ないしは離間のいずれかしか起きないワンパターンなのが難。)

令060727  植物の謎  60のQ&Aから見える、強くて緻密な生きざま     (講談社ブルーバックス、令和6年刊)   日本植物生理学会 編
(小学生から大学院生まで、質問者の質問力にまず感心させられる。外来種の栄枯盛衰も言われて気づく。かつて純群落をつくった背高泡立草は根からアレロパシー成分を出して他の植物の発芽を抑えて君臨したが、その成分にこんどは自ら疎外されて繁茂は絶えた。赤松に甚大な被害を出した松枯病も、赤松の側に抵抗力のある株が増えて下火に。御辞儀草は、閉じるときは細胞から水を出すことによるのでエネルギー不要だが、水を細胞へ戻すにはカリウムなどのイオンを戻す要あり、エネルギーを要する。御辞儀草よ、小学生のころ虐めて申し訳なし。)

令060725  気持ちが伝わる! ドイツ語リアルフレーズ BOOK       (研究社、平成24年刊)   滝田佳奈子 著
(久々のドイツ語の学び。良書だが、キーセンテンスのカタナカ発音表示がアクセントを無視し、メインとなるダイアローグの文字が辞書なみに小さいのも惜しまれる。)

令060721  The Power of Language  How the Codes We Use to Think, Speak, and Live Transform Our Minds     (Dutton, New York 2023)   Viorica Marian 著
(multilingualism が脳の無意識に与えてくれるプラスの効果をしきりに語ってくれる。それは creativity であり openness to experience である。dementia や cognitive decline も遅らせる。|移民の子供たちの教育で、子供たちの母語をないがしろにして不十分な教育を行った場合の社会的なツケ。一文惜しみの……だ。|bilingual だと多言語の干渉を inhibit することを脳がわきまえているので、さらなる言語を習いやすくなる。|数詞が短い言語の使い手は暗算が速い、らしい。だから(そうは書いてないが)漢字圏の生徒は優秀?|neurograins という microchips を脳内各所に移植する構想があるよし。|子供を育てるときに親が使う言語は、親が richest linguistic input (= larger vocabulary and better grammar) を子に与えられる言語であるべし。)

令060716  人は話し方が9割  1分で人を動かし、100%好かれる話し方のコツ     (すばる舎、令和元年刊)   永松茂久 著
(「(相手が)幸せでありますように」この思いに勝る話し方のスキルは存在しません――難物の奥義だが著者は苦労の末にこれを極めているようだ。苦手な人との会話を避ける、と冒頭に言っているのも率直。人は自分に深い関心を寄せてくれる人を好きになる。「口は悪いけどいい人」なんていない。)

令060708  風の配分       (水声社、平成11年刊)   野村喜和夫 著
(高見順賞受賞の詩集。意味なく行替えすることなく、散文詩というよりアフォリズムの拡大版のような旅の記。フランスについての予備知識をアテにしているかのような地名の羅列ものには閉口するが、モロッコものは素直に読ませる。≪私はもう単体としては終わっているが、私から飛び出た見知らぬパーツが、なお自由に跳ねまわるのを見るのは、不思議に平安な気分、子供を得たような悦び≫|「臨終博物館」がおもしろい。)

令060702  美しい人生       (港の人、令和4年刊)   野村喜和夫 著
(大岡信賞受賞の詩集。坂を走ればからだがふわっと浮きウルトラマンにもなれそうとつぶやき、ジャミラよペギラよ夜のみだらなアンギラスよ おまえたちまつろわぬ者たちといとおしむ。≪心は折れるのではなく卵の殻のように割れる≫ ≪追想とは生きうる時間のなかへと思い出を濾過すること≫ ≪いかに生きるべきかという問いから離れれば離れるほど人生は美しい≫)

令060701  失われた時を求めて7 ゲルマントのほう Ⅲ       (岩波文庫、平成26年刊)   Marcel Proust 著、吉川一義 訳
(パラメードことシャルリュス男爵の理不尽ぶりも単なる芝居を超えているが、オリヤーヌことゲルマント公爵夫人の素っ頓狂な才気には、幾度もケラケラ笑いを誘われた。オリヤーヌによれば ≪才気とは知性がもっと高次のはるかに洗練され類まれな形にまで高められ、ことばに顕在化した才能の一形態≫。ゲルマント公爵の目下の愛人は、シュルジ=ル=デュック侯爵夫人。|エルスチールの作品は「視覚上の錯覚を再現して」おり、≪エルスチールは、自分がじかに感じたものから、自分が頭で知っているものをはぎ取ってしまおうと努めていた。しばしばその努力は、われわれがヴィジョンと呼んでいる論理の集合体を解体することに傾けられていた。≫|≪真の学者は知識をなんら重視しないから、無学な者よりも他人に気後れを感じさせない。≫)

令060628  パッサル、パッサル       (思潮社、令和6年刊)   野村喜和夫 著
(今月読んだ渡邊十絲子さんの本にも感謝。久々に、日本語の現代詩の新作もいいなと思ったが、詩人はぼくの8歳上で、南川航を彷彿とさせる言葉あそびの語り口もそこここに。1970年代の時代精神だったんだね。表題詩「パッサル、パッサル」はジャワ島の旅がベースという。≪ぼくがこぼしたギムレットが、黒光りするバーの木目をつたい、時間の穴ぼこに落ちて≫と断続しつつ つながる。「清少納言詩集」は枕草子を潤沢に引用して ≪ああ私も清少納言のように詩が書けたら≫ と率直だ。「内戦」では ≪自由とは、身に動詞を氾濫させること、またその氾濫に耐えること≫≪もうどうしたって、俺ら、逆立ちで踊れ、みたいな、≫ と像が結ぶ。「幻獣ルーアッハ」もいい。)

令060626  性と欲望の中国       (文春新書、令和元年刊)   安田峰俊 著
(貴重なる時代の記録だ。やや数値化しにくいものの、皮膚感覚で社会・政治状況を語ってくれる指標としての「性と欲望」。胡錦濤時代の開放120%状況から習近平の渋チン状況へと急変した当初の動機は周永康や軍の支配層を排除したり兵糧攻めにしたりすることにあり、貧困層の支持も集めたというが、さて、この統制の雁字搦めへの現在のホントの支持率はどれほどなのか。技術的な統制強化が極限を極める中国だが、人々の内的思想感情は存外に自由化しているようだが。は今も本当の支持をキープしているのかどうか。そもそも近平に性的潔癖があるのか。沢東に習うなら、近平も相当なもののはずだが。)

令060622  選択の科学  コロンビア大学ビジネススクール特別講義      (文藝春秋、平成22年刊)   Sheena Iyengar 著、櫻井祐子 訳
(米国の公立学校では「選択こそアメリカの力」と繰り返し教えられる。選択力を高め、多彩な選択肢に対処する方法を学ばせることも教育の課題のひとつとなる。諸研究によれば、状況を自分でコントロールしたいという欲求が人間のみならず動物を支配する衝動でもある。裁量権欠如と認識される仕事は身体の不調すらまねく。逆に、ささいな選択でもそれを頻繁に行えばストレスや不安が休まる。その一方で、原理主義の制約は自己決定感を必ずしも損なわず、思考と行動の自由が自己決定感を高めるわけでもないと。人間は適度の選択ができるとハッピーだが、自分の力に余る選択可能性を提示されると潰される。)

令060620  今を生きるための現代詩       (講談社現代新書、平成25年刊)   渡邊十絲子 著
(名著。現代詩の読み方について目を見開かされること多し。音読不可の、ひたすら視認による詩の存在を著者は主張し、この点には多分に抵抗ありだが、文字ナラティブとでも名づけるならそれもありかもしれない。黒田喜夫の「毒虫飼育」にしびれた。川田絢音の「トマト」「日曜」「外側から」「グエル公園」―1篇1篇が映画だ。|詩を「あらすじを言うことができない」「要約が不可能で、一文字もけずれない」ものと定義するのは正解だ。≪ある詩を何年経っても読みあきないというのは、番地をさがしつづけ、謎をときつづけているから。角度や深さを変えながらさまざまなアプローチで接近しようとする試みの途上にあるとき、ひとはいろいろなことを知り、感じ、考える。あらたな自分が生まれる。≫|安東次男の抽象画のような詩も、連句として2行単位でイメージをとらえ、1行ズラして次の2行でイメージをとらえて交錯させるという読み方をすると、じつに面白かった。)

令060617  もっとさいはての中国       (小学館新書、平成31年刊)   安田峰俊 著
(著者写真あり、若き魁傑の趣き。中国伝統社会の宗族どうしの武力衝突「械闘」に著者はもともと造詣が深く、広東省東端の村のルポが読ませる。また、かねてよりの恐竜オタクぶりの延長線で中国の恐竜学者・邢立達氏を取材;邢氏は高2から大2で恐竜の属名を800ほど中国語に訳した。ヤワラートで出くわすのは、数十年前に雲南省経由でタイに逃げた国民党軍の末裔の女だ。タイの軍事政権が中共当局とつるんで亡命ウイグル人を引き渡すとは!)

令060613  さいはての中国       (小学館新書、平成30年刊)   安田峰俊 著
(著者の見識と行動力と不屈の精神に打たれる。20世紀の中国について張戎 著 Mao: The Unknown Story を読めば足りるがごとく、21世紀の中国の本質を知るには安田峰俊さんの中国シリーズの肌感覚を体感すれば足りる。|習近平がターゲットの人格を破壊し過剰摘発をやらかすのは、文革の殺伐で培われた人格ゆえならんと。近平はインテリや穏健派から嫌われても、地方農民や都市部の貧困層から支持がある。それにしても河北省「雄安新区」の狂態には驚愕した;今後、北京から強制移住させられる市民が悲惨だ。内蒙古・オルドス市は、山手線の内側総面積に相当する鬼城がある。カナダ・トロント在住の ALPHA Education 創立者 Joseph Wong(王裕佳)の善辣さも強烈。歴史の事実に誠実に向き合うことなく無邪気な正義感に突き動かされて Iris Chang(張純如)の The Rape of Naking を仕掛け、カナダの教育界・マスコミに絶大な影響力。中共も笑いがとまるまい。)

令060610  Franny and Zooey       (Little, Brown and Company, New York 1961)   J. D. Salinger 著
(The New Yorker 誌掲載作。ひと癖ふた癖どころではない Frances Glass と Zachary Martin Glass のそれぞれの数時間をズームアップする。佛教への肯定感を帯びたキリスト教談義が織り交ぜられ、Jesus の祈りにはまった Franny がじつは Jesus の寺院での暴発や Jesus の人間至上の世界観 (人間は当然に鳥よりもすぐれる云々) に反発した過去があるのもおもしろい。You're beginning to give off a little stink of piousness などと突っ込みに終始するかに見える Zooey だが最後に、Seymour がだいじにするよう言っていた the Fat Lady について "There isn't anyone out there who isn't Seymour's Fat Lady." と言い "That Fat Lady really is Christ Himself." と付言するとき、軽やかなカタルシスがおとずれる。|Jesus のことは Jesus のありのままを見るべきで、St. Francis of Assisi など別人の人生まで Jesus に読み込むなという Salinger の啓発は絶妙。When you don't see Jesus for exactly what he was, you miss the whole point of the Jesus Prayer. 解脱論を展開した箇所もある。the only thing that counts in the religious life is detachment. Desirelessness. Cessation from all hankerings.|Seymour 自死のホテルの部屋に残された3行詩: The little girl on the plane / Who turned her doll's head around / To look at me. |一茶の句という O snail / Climb Mount Fuji, / But slowly, slowly! は「かたつむり そろそろ登れ 富士の山」)

令060609  ゆく川の流れは、動的平衡       (朝日新聞出版、令和4年刊)   福岡伸一 著
(最初のうち『動的平衡』三部作に比べ格段に短い各篇がときにもの足りなくも感じられたが、それ以上にさらに多くを学んだ。おすすめの "Infinite Powers" もさっそく注文した。|かつてのスプーン曲げのスプーンは多分ガリウム。融点29度。|ロックフェラー大の恩師の扉文字「発見の障害になるのは無知ではなく既知である」|日本遺伝学会が「優性」「劣性」の訳語を「顕性」「潜性」に改めた。≪高校以上の教科書には術語の原語を併記するよう提案したい≫|≪遺伝子が運びきれない知恵を運ぶもの、それが文化だ≫|ヒトの子供時代は長い。≪なかなか成熟しないかわりに、遊びの中で学び、試し、気づく。これが脳を鍛え、知恵を育むことにつながった。こうしてヒトはヒトになった≫|≪表現者あるいは科学者がまず自戒せねばならぬことは、why 疑問に安易に答える誘惑に対して禁欲すること。そして解像度の高い言葉で丹念に小さな how 疑問を解く行為に徹すること。なぜなら、いちいちの how に答えないことには、決して why に到達することはできないからである≫|石炭紀以降の植物が化石燃料にならなかったのは、菌類が活躍しだして植物を糖やアミノ酸に変えて環境の循環に戻しはじめたため。)

令060606  英語の読み方       (中公新書、令和3年刊)   北村一真 著
(この著者は何かといえば「構文」の話に持ってきたがる。わたしは「語彙」志向だ。I read the entire vacation away. とか drink the night away を称して「専門用語で time away 構文などと呼ばれる」とあるのを読むと、こいつバカではないかと思う。read away, drink away という句動詞だろうが! perverse(ness) を「天邪鬼」と訳してスマシ顔をしているのも安易の極み。perverse の本義をまずは英英の語釈で示すべし。「天邪鬼」はコミカルで愛すべきものというニュアンスがあり、perverse の一側面に過ぎない。Otto Jespersen が The essence of language is human activity と書くときの language がなぜ不可算なのか、というあたりを解き明かすのが英語の本質に触れることにつながるのだが、この著者は冠詞への関心も薄い。本質的に英文和訳屋だから、和訳から捨象される英語の本質を見ていないのである。)

令060601  仕事にしばられない生き方       (小学館新書、平成30年刊)   ヤマザキマリ 著
(「仕事にしばられない」といっても『テルマエ・ロマエ』が当たって仕事が殺到したときをはじめ、幼称「馬子」はがむしゃらに仕事にのめり込んでいる。転々飄々と余裕をブチかますわけでもない。日々、たたかい。壮絶な実況中継的回顧だ。|「蟻と蟬」の結びは、こんなすてきな蟬から蟻へのセリフ「歌うべき歌は歌い尽くした。私の亡骸を食べて生き延びればいい」|手塚治虫さんがトキワ荘時代の赤塚不二夫さんに言ったこと「いい漫画を描きたいなら、漫画から学ぶな。一流の映画や小説、音楽と接しなさい」|≪真面目な人ほど与えられた環境を受け入れようとして自分を追い込んでしまう≫ ≪日本はどこかに、自分だけ浮いてはいけない、無難な社会環境に帰属しなければ生きていけないというプレッシャーがあり、それが大きすぎる≫ ≪なんか違うな」と思ったらパッと離れたっていいんだと思います≫ ≪好きなことに打ち込んでいると、どうしても視野が狭くなって、自分のことしか考えられなくなるけど、今の自分がしがみついていることだけがすべてじゃないってことが、いろんなキッカケで見えてくる。それが潮目が変わるとき≫|ヤマザキマリさんのお話し仲間:谷口ジローさん、とり・みきさん、寺田克也さん、羽海野チカさん。|フランスの bandes dessinées 読みにそろそろ進出しようかな。)

令060525~28
やさしくわかる! 文系のための東大の先生が教える ChatGPT       (ニュートンプレス、令和6年刊)   松原 仁・監修
ChatGPT の衝撃 AI が教える AI の使い方       (実業之日本社、令和5年刊)   矢内東紀 著
ゼロからはじめる なるほど! ChatGPT活用術  仕事の効率が劇的に変わる AI 使いこなしのヒント     (技術評論社、令和5年刊)   マイカ 著
ChatGPT の全貌  何がすごくて、何が危険なのか?     (光文社新書、令和5年刊)   岡嶋裕史 著
(「文系のための 東大の先生が教える」シリーズ、めちゃいい。シリーズの他の本も次々読むつもり。
岡嶋さん clever なひとだ。「ここだけの話」「まだ出せない話」「ちょっと人前では語れない話」の価値を知ってる。SNS 時代の大学の授業は SNS 流出のリスクがあるから、そういう話ができなくなったと。「自発的な学び」を追求しようとしても、それでめりめりと力をつけるのは優れた生徒のみ。学習の習慣がないから予習はして来ず、だから「授業は演習だけ」といってもムリ。ある程度は授業内で知識を詰め込んでやらないと予習のための教科書が読めない。学生の二極化だ。AI 活用、また然り。)


令060525  新版 動的平衡3  チャンスは準備された心にのみ降り立つ     (小学館新書、令和5年刊)   福岡伸一 著
(本書副題はルイ・パスツールのことばとされる Chance favors the prepared mind.「教養とは、知識が時間軸に沿って、その人の体験の中にきちんと組織化されていること。物知りはネットのアーカイブのような、知識の羅列でしかない」|生命は「常に動的な状態を維持することによって、いつでも更新でき、可変であり、不足があれば補い、損傷があれば修復できる体制をとっている。だからこそ生命は、柔軟で環境に適応的であり、進化が可能になる」|「もし21世紀に癌治療に何らかの革新があるとすれば、それは敵と直接対決するのではなく、むしろあらかじめ身体に備わっている味方の力を応援し増強することにこそ活路があるのではないか」|「DNAのメチル化は付箋にあたり、その有無によってDNA情報の読み出し方が変化する」|「生命体はひたすら過剰さを準備する。シナプス結合の過剰なネットワークを作って、環境からの入力を待ち構える」。免疫システムも、抗体産生細胞(=B細胞)ごとに千差万別の抗体が100万とおり以上もランダムに、過剰に準備される。)

令060523  未必の故意       (書下ろし新潮劇場、昭和46年刊)   安部公房 著
(それぞれに演じどころが強烈な登場人物9名。うち3名の青年は「ちんば」「めっかち」「つんぼ」で、今となっては出版も上演も苦しい。貴重な本を下北沢で100円で入手した。|「同情される側の人間が、柄にもなく、同情する側にまわったりして…」「生きとる人間の声が、聞えんようになったかわりに、死人の声が聞えはじめたんじゃ」と、つんぼ。公房さんの香りがするねぇ。)

令060520  英文法再入門  10のハードルの飛び越え方     (中公新書、令和3年刊)   澤井康佑 著
(上手に書いてはあるが、英文の理解ではなく「和訳」を終着点としてとらえ、英会話力アップは多くの英文を「暗記する」ことにあり、というあたりに、英語の使い手ではないことを嗅ぎ取れる。「日本の5文型理論が英語を日本語に移し替えるためのツールである以上、日本以外の国で5文型理論が定着していないのはむしろ自然なことです」という恥しくも視野の狭い論述はわたしには絶対に書けない。|現在完了のところで「出来事動詞」「状態動詞」に言及していく手法は良い。同じ動詞にこの両面が内包されていることに言い及んでいるのも適切。『ジーニアス英和』は D と S で「出来事動詞」「状態動詞」を表記していたが、一刀両断の分類ができないことを悟り、2001年の第3版で廃した由。正しい判断だ。|「1項動詞」「2項動詞」「3項動詞」。)

令060519  新版 動的平衡2  生命は自由になれるのか     (小学館新書、平成30年刊)   福岡伸一 著
(動的平衡:合成と分解を繰り返しつつ一定の恒常性を維持する、自転車操業的なあり方。「ゴルトベルク変奏曲」グレン・グールド、ボリス・ベレゾフスキー、ユリ・ケインのアンサンブル、シュ・シャオメイ、イム・ドンヒョク、今井信子、小林道夫……楽譜という遺伝子は同じでも、多様な遺伝子のスイッチやボリュームは、生命体が置かれた環境によって調整される。巧みな比喩だ。|窒素循環は、土壌内の窒素細菌(根粒菌)が空気中の窒素を酸化させアンモニアや酸化窒素に変えたものを植物が吸収することで起こる。根粒菌のプロセスを人工化したのが化学肥料。|「おもしろい写真」とは著者によれば「そこに流れ込んだ時間を内包しつつ、次の一瞬への動きの再開を予感させる写真」。|プラスミッドは軽快に大腸菌のあいだで水平にパスされ、たとえばプラスミッドに耐性遺伝子情報が書き込まれるとそれを素早く大腸菌間で受け渡しできる。|無細胞的な化学進化が宇宙のどこか他の場所で何十億年もかけて生成され、そこに最初の動的平衡が生み出されたと考えることは合理性がある。|卵細胞には maternal RNAがあり、母由来の遺伝子。これが最初のスイッチとなって新しいゲノムの働き方を決める。)

令060517  The Happiest Man on Earth: The Beautiful Life of an Auschwitz Survivor       (Pan Macmillan Australia 2020)   Eddie Jaku 著
(1920年 ライプツィヒに生まれた Abraham Salomon Jakubowicz の凄絶な一代記。図らずも happiness から最も遠い路を文字通り心身傷だらけで歩んだ Jaku を支えた、稀有なできごとと人のつながり。Hitler をあえて hate せぬが決して forgive しない Jaku にとって、しあわせであることこそが最大の revenge だ。)

令060512  水死       (講談社、平成21年刊)   大江健三郎 著
(大江健三郎のことを長らく忌避してきた (彼へのノーベル賞授賞こそ賞の一大汚点と思ってきた) が、もと光文社勤務の友人の薦めでこの小説を読み、大江観が変わった。彼は単に戦後文化人の言説に連なる媚び媚び男ではなく、すばやい切り返しと激しい突っ込みで通念・風説そして何より自分自身をとことん弄んでみせる。失われゆく大江の名を文学史に残すべく、ノーベル賞はいい仕事をしたのである。『万延元年のフットボール』単行本を先日入手 (刊行時ぼくは8歳だった) 。|本作は、人間の業の深さと歴史の反復を主題としつつもスピード感に満ち、散漫にも思える展開が納得のカタルシスで大団円を迎える。小劇団の若き人々を織り込むことで、現実との接点・接線が確保され、虚構のちからで晦渋を免れ、リアリティが高揚する。漱石『こころ』の「先生」の明治の精神への殉死に対して諸観点の掛け合いがおもしろい。|メイスケ母の「もしあなたが死んでも、私がもう一度、産んであげるから、大丈夫」― これより凄絶な愛はない。)

令060511  失われた時を求めて6 ゲルマントのほう Ⅱ       (岩波文庫、平成25年刊)   Marcel Proust 著、吉川一義 訳
(プルーストの描写は注意書きもなく時をワープし、おりおりもったいぶった人間性分析をしてみせたりする。ようやく少し読み方が分かってきたか、延々とつづくヴィルパリジ夫人のサロンの諸人士の会話の読み解きもそれなりに楽しい。本巻は「私」の愛する祖母がうら若い乙女となって横たわり逝く美しい描写でおわる。サン=ルーが突然に「私」を裏切り者あつかいした経緯が次巻以降へのミステリーだ。)

令060428  Nine Stories       (Little, Brown and Company, New York 1991 - copyright renewed)   J. D. Salinger 著
(1948~1953年に The New Yorker 誌と Harper's Manazine に掲載の短篇9篇。いちように初めのうちは何がおもしろいのかさっぱりわからない文の流れで、これがもと光文社勤務の友人のすすめがなければ早々に読み進めるのを断念していたろう。読みやすいのは、在米日系 Yoshoto 夫妻との不思議な数ヶ月 De Daumier-Smith's Blue Period. そして圧巻は、サリンジャーの分身かと思われる10歳の天才少年 Theodore McArdle が Bob Nicholson 相手に輪廻転生を論じる佳篇 Teddy だ。その Teddy が引用してみせる俳句が2篇あり "Nothing in the voice of the cicada intimates how soon it will die," 蟬鳴くやいのちのゆくえ知らせざる;"Along this road goes no one, this autumn eve," この径を行くひとなくて秋の宵。以上2句は拙訳。)


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