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株式会社の社外役員で構成される調査委員会作成に係る調査報告書が民訴法 220 条 4 号ニの文書に該当しないとされた事例(大阪高裁令和元年 7 月 3 日決定)
「事案の概要」
本件の基本事件は、 X において、分譲マンション用地を購入するに際し、いわゆる地面師詐欺に遭った詐欺被害に関し、 X の株主 Y が当時の取締役 2 名を被告として X への賠償を求める株主代表訴訟である。
本件は、 Y が、 X において所持する本件詐欺被害に関する複数の文書につき、文書提出命令の申立をした事件であり、 X 社外役員で構成される調査委員会作成に係る調査報告書はその一部である。
本件調査報告書について、 Y が主張する文書提出義務の原因は、民訴法 220 条 1 号及び 4 号であったが、 X は、本件調査報告書は、同条 4 号ニ所定の自己利用文書に該当するなどと主張して文書提出義務を争った。
「判旨」
本件調査報告書は、関係者の発言あるいは関係者による論争を赤裸々に記録した文書ではなく、会社の組織としての意思決定や行動のあり方の問題点を客観的に指摘するものであって、本件委員会の目的に適った内容となっている。
本件調査報告書が上記のようなものである上、抗告人の代表取締役会長であった D が、平成 30 年 3 月 6 日、報道関係者に対し、 A 版用紙 3 枚にまとめた本件調査報告書の概要を公表した事実に照らせば、本件調査報告書が、外部の者に開示することがおよそ予定されていなかった文書であると断定することは困難である。
また、本件調査報告書中の東京マンション事業部営業次長を非難する部分は同人に手厳しいものではあるが、これが開示されれば、個人のプライバシーが侵害されるとか、関係者個人の自由な意思形成や抗告人の団体としての自由な意思形成が阻害されるといった不利益が生ずるおそれがあるとは認められない。
したがって、本件調査報告書は自己利用文書に該当するとは認められない。
判例タイムズ 1466 号 96 頁