ザ・スーパー・ポップ宣言

音壁の世界(2)

音壁の世界(2)

THE WORLD OF "WALL OF SOUND"(2)

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【 ポップ偏差値 71

Ronettes / I Saw Mommy Kissing Santa Claus '63 「A Christmas Gift for You from Phil Spector」

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史上最高のアルバムは?
で既に取り上げた1963年のフィルスペクター製作のクリスマス・コンピ『A Christmas Gift for You from Phil Spector』収録の音壁曲。発売当時はシングル・カットされていないので企画アルバムの中の一曲ということでポピュラー・ミュージック史的には埋没ぎみの作品だけれど、ウォール・オブ・サウンド的にも、オールディーズ的にも極めて重要な作品。ポップス好きにはアルバムは一定の評価が確立していると思うのだけれど、曲単体としての評価ももっと高まって欲しいですね。

曲のオリジナルは1952年のNorman Luboffでポールアンカ、フォーシーズンズ、ジャクソンファイヴなど実に多くのカバーがあります。もちろんその中でもサウンドに一番力が入っているのはフィルスペクター版。テンポアップし軽快で躍動感のある曲調に変貌させたうえに分厚い音壁仕様なのですから堪りません。間奏のストリングスも優雅で切ないメロディと相まって感動的で、ここだけでも一聴の価値ありって感じ。リードのロニー・スペクターの声も瑞々しく魅力的ですね。ロネッツといえばBE MY BABYなどのシングルカットされた有名曲ばかりが脚光を浴びていますけれどね。個人的にはクリスマスシーズンだけではなく一年中定期的に愛聴しているのだけれども、多くの方にクリスマスの企画曲というくくりではなく、オールディーズ、ポップスの重要曲として愛聴して欲しいものです。

「YOU TUBE」 で聴けます。
明るく元気 テンション 高揚感 疾走感 グルーヴ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(名曲音壁) ポップ偏差値合計
8
8 8 7 7 10 10 8 5 71


岩崎元是(IWASAKI MOTOYOSHI) / 君のいないクリスマス '07 作曲編曲岩崎元是 「FOR A LONG TIME」収録

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アニソンポップ史に燦然と輝く歴史的名曲群 「・・・」4部作 を残した世界的名アレンジャーの岩崎元是の2007年のアルバム収録曲。ライナーによると89年には既に書かれていた曲で、91年のフジテレビの昼の帯番組のエンディング曲として売られていったとか。(ということは別人による別アレンジのバージョンが存在するということになりますね。)

曲はゆったりとしたクリスマス・バラードで感傷的なメロディが情感深く歌いこまれています。なかなか良く出来たメロディで個人的にも好みのタイプですが、世界的レベルでみれば何千、何万単位で存在するであろうバラード佳曲の一つと言わざるを得ません。然しながら、この曲に施されているクリスマス仕様の音壁=ウォール・オブ・サウンドは、間違いなく今現在世界に存在するウォール・オブ・サウンドの最高峰に位置する、世界一の名アレンジと言うことが出来ます。

季節は冬ということで、細やかなシンセ音で冷やりとした空気感を演出。それでいてエコーのかかったエレピの音色は温かみを感じさせます。更に繊細な弦の音色やエコーのかかった重量感のあるバスドラムなどにより奥行きのある広々とした音空間を形成。サビに入ると雪が降る様を表すかのようにスレイベルがシャンシャンと鳴り響き、クリスマスムードをグッと高めます。そしてそのバックでは甘いエレピの音色が恋人達の幸せな一時を優しく包み込むかのように響き渡ります。このスレイベルとエレピのコンビネーションは本当に素晴らしく鳥肌級に感動的。他にも鐘の音、エレキギターなどを幾重にも厚く重ねたサウンドは将に芸術中の芸術と言ってよく、長年ウォール・オブ・サウンドを手がけてきた岩崎元是流アレンジの現時点での集大成となっています。

ソロ、グループを問わず音楽家ならば誰でも一曲は、上質なアレンジの施されたムード満点のクリスマスソングを持ちたいところでしょうが、そんな時は迷わず、 岩崎元是 氏にアレンジを依頼される事をお勧めします。

竹内まりや / もう一度 '84 作曲竹内まりや 編曲山下達郎

TAKEUCHI MARIYA LETS TRY AGAIN.jpgYAMASITA TAKEUCHI kaiken 2.jpg

英語題「LET'S TRY AGAIN」。山下達郎がサウンドストリートでオンエアしたソウルグループChampaignのTry Againが83年作で、竹内まりやの「LET'S TRY AGAIN」が84年だからタイトルはこの曲からインスパイアされたことが濃厚とみている。曲調は全然違うけどね。

軽やかなピアノの音色と山下達郎の高揚感あるコーラスで始まる明るくポップに弾けまくるこの曲はナイアガラな音壁的にも魅力いっぱいなのだが、竹内まりやの書いたメロディも甘酸っぱい胸キュンもんで素晴らしいネ。この二人のコラボレーションとしては最高傑作と言っていい。瑞々しさもこの頃がピークかな。それと時代的空気感もこの頃でしか有り得なかったという気がしてならない。山下達郎と竹内まりやのナイスな出会いによって生まれた一品。

現役ナイアガラフォロワーの第一人者、岩崎元是作品の 「小西寛子 / きっと きっと・・・」 はこの曲を元ネタにしているがナイアガラ壁音的には岩崎元是作品の方が数倍分厚く素晴らしいので「もう一度」好きな方は是非お試し下さい。

追記:2014年のSSBでの山下達郎氏のコメント「完全にフォーシーズンズのパターン。フォーシーズンズにトーケンズとハプニングスという胡椒をふりかけてビーチボーイズの匂いを振り撒いた。」とのことでした。具体的に何て曲なのかな。
明るく元気 テンション 高揚感 疾走感 グルーブ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(高揚感&音壁) ポップ偏差値合計
7
9 9 7 7 9 10 8 5 71


【 ポップ偏差値 70

Ronettes / I Wonder '64 「...Presenting The Fabulous Ronettes Featuring Veronica」



60年代ガールポップ・サウンドの代表的グループにして、ウォール・オブ・サウンドの魔術師フィル・スペクターの手がけた最高の音壁グループとも言えるロネッツの64年の作品。「Be My Baby」、「Baby, I Love You」、「Walking In The Rain」といった有名なヒット曲と違って何故かシングル・カットされなかった不遇な曲です。そういった意味では隠れた名曲と言えるかな。シックスティーズ・ガールポップは好きでもこの曲は知らないという人は意外と多いかも。PHIL SPECTORのベスト作品集なんかでも未収録だったりするし。

曲はスペクターものとしては比較的珍しいスピード感のある作品。音壁もてんこ盛りでカスタネットなどのシャンシャン感、迫力あるドラムの重低音感、ストリングスの優雅さなどが一体となって実に奥行き・拡がり感のある聴き応え十二分な音壁が構築されている。瑞々しいヴォーカルにコーラス陣というガールグループの持つ楽しさも堪能できるし何よりメロディも素晴らしい。ちょっと激しくて一般受けは多少疑問だけど、逆に実に玄人受けしそうな聴き応えのある曲だと思います。(1984年の日本のアイドルポップ音壁名曲「成清加奈子 / ハートのピアス」の元ネタにもなっています。)この頃作られ始めたばかりの音壁だけど、64年にして究極の形態が完成されていたことには驚くばかり。フィルスペクターは個人的に最も尊敬する天才音楽家の一人です。

「YOU TUBE」 で聴けます。
明るく元気 テンション 高揚感 疾走感 グルーヴ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(音壁) ポップ偏差値合計
8
8 8 7 7 9 10 8 5 70


村田恵里(橋本舞子) / オペラグラスの中でだけ 作曲/亀井登志夫 編曲/井上鑑 '85

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アイドルの歌うバラード系の曲に全く興味が無いので、明るくポップな曲ばかり取り上げている私ですが、あちこち捜し求めてコンピを聴いてますと時折予期せぬバラード系名曲に出会うことがあります。それがこの曲なのですが、ナイアガラ風音壁というほどのものでもないかもしれませんが、それに近いサウンドと大滝詠一的メロディ使いなどがあちこちで聴け、まずサウンド面が素晴らしい。またメロディがそれ以上に素晴らしく、胸をえぐるように心の奥深く突き刺すメロディとそれを淡々と歌い上げる様、その対比でより感情を揺さぶられる妙味がとても感動的です。

バラード系ナイアガラな名曲というと本家大滝詠一の「松田聖子 / 風立ちぬ」が挙げられますが、それを上回る胸キュンメロディを持った隠れた大名曲と言えるでしょう。CD「アイドル・ミラクルバイブルシリーズ 高橋美枝・渡辺千秋・村田恵里 シングル・コレクション」収録。【注意】明るくポップな曲ではありませんのでご注意下さい。

大滝詠一 / BACHELOR GIRL '85 作曲プロデュース大滝詠一 ミックス吉田保 CD「B-EACH TIME L-ONG」収録

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シングルや「EACH TIME」収録の「バチェラー・ガール(4分38秒)」より長い6分32秒ものロング・バージョン。おそらくオリジナル・アルバムには未収録なので聴き逃している人も多いかも。詳細としては元バージョンの前半に約1分30秒、後半に約30秒ものインスト部分が接続されています。

まず前半のストリングスが主旋律を奏でるパートですが、その上品かつ少し物悲しい雰囲気が秀逸。その弦の音色も高音域から低音域に至るまで優雅に伸びやかに響き渡ります。煌びやかな装飾音やエレピのエコー感も加わりとても程良くバランスのとれた音壁サウンド。生音を厚く重ねることの心地よさを心ゆくまで体感出来ます。これはプロ中のプロ、間違いなく世界最高峰の仕事であります。

ヴォーカル・パートに入ってからは、湿っぽいものの胸に沁みる泣きのメロディを大滝詠一が何とも言えない熟成された唱法で歌い上げます。ちょっとヘタウマ入っていて味わい深いですね。その間のバックの音壁も厚く高く、特にここでも要所で鳴り響くエコー感いっぱいのエレピが秀逸。歌の最後は「忘れるさー」と歌詞を途中で端折ったまま終わるという心憎い演出があり、これがメロディの余韻を残し実に効果的。そして更に雷、雨音といった擬音をこってりと挿入し、臨場感を膨らませながら長めにフェードアウトしていくという素晴らしい展開。

こうしてインスト部分が多いバージョンなので、より音壁を堪能出来、さながらレゲエ/ラヴァーズ・ロックのダブが接続されたロング・バージョンのような味わいがありますね。是非とも大型スピーカー・システムの程よい爆音で細やかな音の響き、振幅を楽しんで頂きたい逸品です。【注意】明るくポップな曲ではありませんのでご注意下さい。

【 ポップ偏差値 69

夕暮れを止めて '91 作曲/楠瀬誠志郎 編曲/清水信之



当ブログで以前、 アイドル音壁大作、再び 薬師丸ひろ子 / 夕暮れを止めて として取り上げ済みの音壁名曲からヴォーカルのみを取り除いてカラオケ化(インスト化)したもの。近年の音楽編集ソフトの進化により、「ヴォーカルとサウンドとの分離」が容易になり、当ブログでも 史上最強のウォール・オブ・サウンド として複数の禁断の良曲を公開・紹介してきました。そこでは「ヴォーカルだけ抽出しサウンドは新規録音」という手法で行ってきましたが、今回はその逆パターンということになります。オリジナルは素晴らしいアレンジのウォール・オブ・サウンドでありましたが、アイドルの歌った曲ということで声質や唱法が少々残念な作品でありました。これは多くのアイドルもの又はアニソン系の音壁曲に言えることでありますが、音壁の著しい進化と歌手を本職としていない方の歌声との出来の著しい乖離は宿命ともいえますね。もちろん音壁自体アイドルやアニソン産業と密接に関わっている構造上、個人的にもそれは仕方のないことと心得ております。然しながら音壁者としては折角作られた素晴らしいサウンドを思う存分心の底から楽しみたいという気持ちを捨てることは耐え難い。そこで音楽編集ソフトの登場ということになった訳ですが、所謂カラオケ作成用のソフトは無料版含めて幾つも出ています。ある程度私のような全くの素人でも容易に作れるようなのですが、私はココナラというサイトでセミプロの方にかなり安価にて(ほぼ依頼の最低料金程度)作って頂きました。

そうして出来上がったカラオケバージョンは若干の雑音混じりながらも十分満足出来る仕上がりとなりました。オリジナルのヴォーカルに隠れて良く聴こえなかった様々な楽器が活き活きと鳴り響きます。特にベースとドラムの重低音はこれまで以上の迫力をみせ、「これがアイドル歌手の歌っていた曲なのか?」と疑ってしまうほどの素晴らしさ。他にもカスタネットの響きは饒舌に尽くしがたいほどに繊細で美味。ここでのカスタネットの響きは長い音壁史でも最上位と言えるほどの出来と言えますね。またピアノの軽やかで綺麗な音色はヴォーカルにとってかわって主役を務めた感があり、単なるインスト化では物足りなくなりがちなカラオケ版を大いに盛り上げてくれます。更にヴォーカル入りだとなかなかフルヴォリュームで聴く気になれませんでしたが、これなら!と大音量で堪能出来、曲の評価も爆上がりです。 優れたウォール・オブ・サウンドは大編成オーケストラのように楽しめる 岩崎元是 / 勇気のつばさ でも書きましたが、緻密に細部まで計算し数多くの楽器を丁寧に配置したウォール・オブ・サウンドはインストで聴いてこそより楽しめるという側面が非常に大きいので、是非皆さんも気になる音壁作品をカラオケ化して楽しんで欲しいものです。私は今後もここで幾つかのカラオケ化した作品を公開していきたいと思っています。

こちら で聴くことができます。

ASSOCIATION & COURETTES / NEVER MY LOVE (2022 Wall Of Sound Version)



2015年から活躍しているブラジル人とデンマーク人の男女デュオ、ザ・クーレッツの2022年の作品。フィルスペクターを深く敬愛しているようで、モノラルにこだわったウォール・オブ・サウンドを得意としています。オリジナル作品も良質なウォール・オブ・サウンドを展開し、実に好感が持てますが、彼らはオリジナル作品以外でもウォール・オブ・サウンドを展開しています。下記に列挙した作品がそうなのですが『往年の名曲のヴォーカルのみを抽出し、サウンドは全て新たにウォール・オブ・サウンドとして作り直したもの』です。つまり、私が@otokabe_master氏に作って頂いている「名曲のウォール・オブ・サウンド化」と全く同じことをされている訳ですね。しかもどの作品もしっかりと作りこまれ、フィルスペクターが60年代当時に作ったかのような素晴らしいサウンドが施されています。ウォール・オブ・サウンド史上、このような二次創作を行っているのは、彼らザ・クーレッツと@otokabe_master氏しかいない訳ですので、これは応援しない訳にはいきません。

その中でも特にNEVER MY LOVEの出来が素晴らしい。本曲は1967年のAssociationの世界的ヒット曲をウォール・オブ・サウンド化したもの。オリジナルのコーラスを主体としたソフトロックサウンドとうってかわって迫力あるウォール・オブ・サウンドに仕上がっています。しかもモノラル!カスタネットもこのタイミングでしかあり得ないでしょってな絶妙なタイミングで決め打ちしてくれますね。オリジナルのメロディの出来の良さを活かしつつ、新たな迫力ある味わいあるサウンドで本曲を作り替えたその発想とセンスには敬意を表したい。近年は常々どの曲が「ウォール・オブ・サウンド化」に適しているかと模索している私ですが、この曲は全く候補に挙がらなかっただけに嬉しいプレゼントという感じです。ただ個人的には、奥行や空間的拡がりを感じさせるステレオ感のあるウォール・オブ・サウンドが好きなので、例えば、同じ1967年のヒット曲であり、@otokabe_master氏が作成した Frankie Valli / Can't Take My Eyes off You (2022 Wall Of Sound Long Version) のような現代的なアレンジがより好みではありますね。クーレッツの「名曲のウォール・オブ・サウンド化」はまだまだ続くと予想されますが、こうしたステレオ感のあるウォール・オブ・サウンド化にも期待したいところではあります。COURETTESの今後の益々の活躍を期待します。

「YOU TUBE」 で聴けます。
明るく元気 テンション 高揚感 疾走感 グルーヴ メロディ 楽器 瑞々しさ ボーナス(音壁&二次創作) ポップ偏差値合計
7
8 7 6 6 10 10 7 8 69


【 COURETTESの他の「名曲のウォール・オブ・サウンド化」作品 】

JAY & THE AMERICANS, COURETTES / COME A LITTLE BIT CLOSER
GRASS ROOTS, COURETTES / WAIT A MILLION YEARS
MAURICE WILLIAMS & THE ZODIACS, COURETTES / STAY
FOUNDATIONS, COURETTES / BABY NOW THAT I'VE FOUND YOU
JOEY DEE & STARLITERS, COURETTES / PEPPERMINT TWIST
FLAMIN' GROOVIES, COURETTES / SHAKE SOME ACTION
JOHNNY THUNDERS, COURETTES / YOU CAN'T PUT YOUR ARMS AROUND A MEMORY

岩崎元是(IWASAKI MOTOYOSHI) / 泣き顔のPINUP GIRL '07 作曲編曲岩崎元是 「FOR A LONG TIME」収録

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89年には既に書かれていた幻の曲が18年の歳月を経て2007年についに陽の目を見ました。そのせいか2007年のものにもかかわらず80年代特有の青く澄み切った空気感を持った曲で83年の「MELODIES」の頃の山下達郎の持っていた雰囲気に近いものがあります。基本メロディは少しほろ苦感のある爽やかで陽性なもの。サビのテンション高めの高揚感あるメロディラインは実にキャッチー。更に特筆すべきは壮大で重厚なるフィルスペクター/大滝詠一系音壁サウンドの迫力。ドラムのエコー感、グロッケンやカスタネットの煌びやかさ、コーラスの爽快感、エレピの響きなどの奏でる心地よさは大音量で聴いてこそ真価を発揮する。歌声も岩崎元是&WINDY時代よりも円熟味が増し、いい意味で湿り気と適度な重量感が加わっている。メロディもシティ・ポップというよりは濃いめのもので味わい深い。

岩崎元是氏が「声優/アニソン音壁ポップ」に残した歴史的名曲群 「・・・」4部作 に匹敵する、氏の最高傑作と言っていい、5分33秒にも及ぶ感動の大作ポップです。そのサウンドの爽快感、乾燥感、メロディのキャッチーさ等を考慮すると清涼飲料水のコマーシャル・ソングに最適かと思われます。広告代理店の皆様、急いで契約を!
明るく元気 テンション 高揚感 疾走感 グルーブ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(迫力の80S音壁) ポップ偏差値合計
8
9 8 6 7 8 10 8 5 69


キンモクセイ / 七色の風 '02 作曲伊藤俊吾 編曲キンモクセイ&佐橋佳幸(BVCR-19050)

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洋楽志向なんで邦楽、特に近年のものを食わず嫌いしていたのですが、ねのすけさんのサイト 「Niagara Sound Followers」 でオススメのこの曲を聴いて、近年の邦楽にも素晴らしい楽曲があることに気づきました。といってもサウンドは明らかに70/80年代を志向しているから2000年代という時代の空気を良いと感じているのではないのだけれども。(尚、画像2はプロモーションCDジャケット、画像3はCD購入特典ステッカーだそうでコワタさんという方のHP Eiichi Kowata's Home Page から拝借しました。)

出だしのキャッチーなベースソロと直後に入る空高く舞い上がる弦の響き、高揚感&幸せ感いっぱいのサビのメロディが実に70年代していて素敵です。エレピの澄んだ響きと軽やかなカスタネット、深いエコーのかかった分厚いサウンドはナイアガラファンには堪えられないでしょう。約5分と長く楽しめるのは良いがちょっと詰め込み過ぎ感はある。が、こういうサウンドをやってくれちゃうと、それさえも若さゆえの「若気の至り感」があって魅力的に感じてしまうな。それにしても個人的には未だこの一曲しか知らないんだけど、これから他の曲を聴き進めていくのが非常に楽しみなグループ。
明るく元気 テンション 高揚感 疾走感 グルーブ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(70年代の空気感) ポップ偏差値合計
8
9 9 7 7 8 9 7 5 69


小西寛子 / きっと きっと・・・ 作曲編曲/岩崎元是(IWASAKI MOTOYOSHI) '98
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岩崎元是作曲編曲作品。魔法使いTai! 沢野口沙絵キャラクターソングとのことで私の好きな魔法少女もの。「魔法」というポップにおける大事なキーワードが頻繁に使われ、その世界観を岩崎元是さんが見事に体現しきった快作。出だしドドドーンと始まる大ナイアガラ花火大会とともに入る抜けるように爽快なコーラスは「竹内まりや/もう一度」での山下達郎風。ピアノの連打を中心に、ここぞというところで盛り上がる音壁のぶ厚さ、音像の奥行きの深さはすさまじく、ナイアガラサウンドここに極まり、岩崎元是さんやりたい放題という感じ。爽快で明るくてテンポも良く、高揚感も申し分ない曲調。鐘の音や手拍子が入るのもいいね。強いて言うなら声優さんの歌声が生真面目っぽいかな。ちょっと「ドジっ娘」の要素も入ってるようですので「ドジっ娘」萌えな方にはいいかも。『魔法使いTai! ボーカルコレクション~魔法使いTai!と千億の愛ときゅーきょくのうた~』、『OVA 魔法使いTai! ベストセレクションアルバム 沢野口沙絵のダイヤリー』等に収録。*元ネタ=「竹内まりや / 不思議なピーチパイ」
明るく元気 テンション 高揚感 疾走感 グルーブ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(音壁サウンド) ポップ偏差値合計
7
10 9 6 6 8 10 8 5 69


【 ポップ偏差値 68

Beach Boys with Wrecking Crew / Don't Worry Baby '24



ビーチボーイズの1964年のヒット曲からヴォーカルなどを抽出し、新たにウォール・オブ・サウンドを施した2024年の作品。所謂二次創作にあたる非公式・未公認の楽曲です。製作、公開したのは「YOU TUBE」にチャンネルを持つamajor2002さんで、2024年9月に公開されています。元々は、 The Ronettes w. The Beach Boys - Don't Worry Baby (an impression) として製作、公開されていたものなのですが、サウンドは素晴らしいもののRonnie Spectorの歌声はオリジナルを凌駕するほど相性の良さをみせたものではありませんでした。トラック自体は大変素晴らしいものなので、駄目もとでオリジナルのビーチボーイズのヴォーカル版を所望したところ、なんと親切にもamajor2002さんが速攻で作ってくれたのが、このビーチボーイズ版ウォール・オブ・サウンドです。製作手法を伺ったところ、例えばカスタネットはロネッツのレコード盤から抽出したものだとか。(そのためwith Wrecking Crewというクレジットにされたようです)その閃き、情熱と膨大な手間等を考えると尊敬せずにはいられません。

オリジナルは世界的名曲ということで、美しくなだらかなメロディとビーチボーイズのヴォーカル&コーラスが素晴らし過ぎる作品。歌声を聴かせる曲ということでバックのサウンドは簡素です。これをamajor2002さんは同時期のフィルスペクター製作のロネッツなどを参考にウォール・オブ・サウンド化。ドラムにメリハリをつけ迫力を増幅し、カスタネットを大幅に導入し瑞々しさと快活さが加わり、かなり新鮮な味わいのウォール・オブ・サウンドになりました。特にサビでのカスタネットの連打による盛り上がりは素晴らしいですね。音壁好きにはたまらない瞬間です。

過去の名曲のヴォーカルのみを抽出し、新たにウォール・オブ・サウンド化した作品としては、当ブログで既出の @otokabe_master氏の「名曲のウォール・オブ・サウンド化」作品群 COURETTESの「名曲のウォール・オブ・サウンド化」作品群 が代表的なものと思われますが、こうして新たに作品を製作、公開する方が現れるのはとても喜ばしいです。テクノロジーの目まぐるしい進化に伴い、今後はこうした過去の優良曲を再構築し有効に活用していく時代になっていくのではないかと思います。amajor2002さんの今後の作品には大いに期待してしまいますね。(素晴らしい作品をどうも有難うございました。)

「YOU TUBE」 で聴けます。

Beach Boys / Don't Worry Baby (オリジナル)
明るく元気 テンション 高揚感 疾走感 グルーヴ メロディ 楽器 瑞々しさ ボーナス(音壁&二次創作) ポップ偏差値合計
7
7 7 6 6 10 9 8 8 68


楠瀬誠志郎 / 一時間遅れの僕の天使 '90 作曲楠瀬誠志郎 編曲武部聡志/楠瀬誠志郎

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近年、日本におけるクリスマスソングといえば「山下達郎/クリスマスイブ」が定番ですが、ことスペクター/ナイアガラ系音壁サウンド的視点からみればそのサウンドの派手さにおいてこの楠瀬誠志郎版の方が遥かに上をいきます。キラキラ、シャラシャラとしたカスタネットやグロッケンなどの眩い程に煌びやかな装飾音。多重コーラスはもちろんのこと多重ヴォーカルとでも呼べばいいのか?な凝ったヴォーカルワーク。ステレオ感いっぱいのサウンド的な拡がりとそしてなんといっても深いエコーのかかったドラムスの重低音が快感です。陽性な声質に明るいメロディ、クリスマス観も夢があっていいネ。クリスマスはこうじゃなくっちゃ!

ところで、この曲の他にも音壁度の高い名曲をいくつか残している楠瀬誠志郎氏だが、意外なことに山下達郎氏のFM番組では一曲もオンエアされたことがない。大滝詠一氏は120曲ぐらいかかっているというのにだ。これは一体どういうことだろうか。もしかして、敵(笑)?この曲の歌詞の中でも「きっと君は来ない、と誰かが余計な歌を口ずさむけど」と「山下達郎/クリスマスイブ」を茶化す内容を歌っていることからも怨みでもかったんじゃなかろうか、と邪推してしまいます。(後に楠瀬誠志郎氏は『山下達郎氏の『Sings SUGAR BABE』にバックコーラスの一人として参加された』との情報を頂きました。)

「季節がとうりすぎても」(CSDL-3159)のカップリング曲。「いつも逢えるわけじゃないから…」、「GOLDEN BEST」等に収録。尚「Seven Winter Songs」収録の「98 Jam. Version」は試聴した感じではつまらない出来なのでご注意を。

また、この曲には約50秒ほど長い別バージョンが存在します。冒頭に「A CHRISTMAS GIFT FOR YOU FROM PHIL SPECTOR」の「RONETTES / SLEIGH RIDE」のイントロ部分をサンプリングしたような音が入り、正規版では終盤だけの「RONETTES / BE MY BABY」風コーラスが冒頭から入るのです。どこかのサンプル盤に収録されていた模様です。
明るく元気 テンション 高揚感 疾走感 グルーブ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(煌きの音壁サウンド) ポップ偏差値合計
9
10 8 6 6 7 10 7 5 68


【 ポップ偏差値 67


中嶋美智代 / 泣いていいよ 作曲都志見隆 編曲新川博 '92 「たんぽぽ」収録



90年代に活躍したアイドル中嶋美智代の3rdアルバム「たんぽぽ」収録曲。ゆったりとしたリズムの悲し気な曲だけど聴いてビックリの素晴らしいウォール・オブ・サウンド曲。アイドルポップとしては5分43秒と異様に長い曲で、それだけでも製作陣の気合いの入り具合が伝わってきます。基本はAメロを中心にほとんど盛り上がることなく淡々と歌われるんだけど、重量感のあるドラムやシャンシャン感のあるカスタネットなどで構成されるウォール・オブ・サウンドは実に心地よく、壁の厚み、空間的拡がり、エコー感、とその完成度は非常に高い。メロディもなかなかいいですしアイドル音壁ものの大作と言っていいでしょうね。ただ音壁ものの聴き所であるはずの間奏部分が短く内容もいまいちなのと、感動的であるタイトル部分「泣いていいよ」を含むCメロが一度しか使われることが無いという構成がちょっと惜しい。個人的に先日「YOU TUBE」で見つけたばかりで驚いたのだけれど音壁者の間で話題になったことも無さそうなので、なかなかの発掘と言えるかも。

編曲は当ブログでもお馴染みの新川博氏で、アイドルポップ名曲の 志村香 / 秋風はあなた 、音壁名曲の ERI(菅井えり) / 恋はドーナツショップで そしてやはり音壁の オレンジ・シスターズ / サマー・ホリデー を既に紹介しています。素晴らしい音壁職人ですが探せばもっといい曲あるのかな。

「YOU TUBE」 で聴けます。(5分33秒からの曲)

DION / ALWAYS IN THE RAIN '89 「Yo Frankie」収録

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遥か50年代のDOO-WOP時代から活躍するディオンの晩年の作品。Dave Edmundsがアレンジなど多方面に渡って活躍。ここでは怒濤のフィルスペクター/ナイアガラ系音壁サウンドやってます。ポップという観点からすると、どんなアーチストでも経年による鮮度の劣化からは逃れられない。然しながらアレンジ次第ではこれだけポップな作品が出来あがるのだという好例。ちょっと泣きの入った湿ったメロディでヴォーカルの鮮度は落ちるが唱法はさわやかで高揚感、開放感があり熟成した味もする。それに加えて、山下達郎でお馴染みのドゥルドゥルコーラス、カスタネット、グロッケンなどの音色とエコーのかかったドラムスの響きなどがひたすら気持ちいい。ド派手なアレンジだがメロディや歌を殺すことなく絶妙に盛り上げるセンスが素晴らしいネ。
明るく元気 テンション 高揚感 疾走感 グルーブ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(WALL OF SOUND) ポップ偏差値合計
7
8 8 7 7 8 10 7 5 67


LINDA SCOTT / YOU BABY '65 LP(ワーナーパイオニア P-11574)

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60年代の可愛い子ちゃんアイドル歌手、リンダ・スコットの65年にシングルカットされた曲で、日本編集盤の「SINGLES」収録。BARRY MANN-CYNTHIA WEIL-PHIL SPECTORチームによるRONETTESの64年のLP収録曲のカバーです。原曲はシングルカットはされなかったながらも「PHIL SPECTOR / BACK TO MONO(1958-1969)」に収録された程の美しいメロディを持った「WALL OF SOUND」の名曲ですが、ゆったりとしたテンポでポップというには大人しすぎる作り。

それに対しこのリンダ・スコットのカバーは、テンポをグッと早くして全体に元気でメリハリのあるポップな作りとなっています。まずヴォーカルがハキハキと元気で適度に可愛らしいフェロモンを振り撒き、気張ったりするところなんか含めて表現は豊か。コーラスも同様に豊かな表現力で、華やかさと奥行き感を曲に与えています。特に「フゥーウゥーウゥー」と胸の奥深くまで切れ込んでくる、高揚感のある甘酸っぱいコーラスが素晴らしく美味。このフレーズはストリングスでも甘く切なく優雅に奏でられていて、この曲の最大の魅力の一つ。そのストリングス含めて肝心のバック・サウンドもフィルスペクター・クローン的に適度に厚めのサウンドで特にドラムスの重量感と躍動感が高ポイント。

全体として感じられるアップテンポでノリのいいグルーヴ、歌やコーラス、ストリングスなどで奏でる甘く切ないメロディライン、それと重量感のある厚めの音と何拍子も美味なポップの要素が揃った名曲です。ポップという観点からすると当然本家を凌駕する名カバーと言えますネ。なお、ライナーには曲は特定されていませんが「ステレオのマスターテープが届かなかった」とあるので、もしかしてステレオ版が存在するのかも知れません。「YOU TUBE」でも見られる ロネッツ版 はある程度は有名ですが、このリンダ・スコット版はかつて山下達郎氏によりオンエアされたものの、あまり広く知られていない隠れた名曲と言えると思います。
明るく元気 テンション 高揚感 疾走感 グルーブ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(名カバー) ポップ偏差値合計
7
7 8 7 7 9 8 9 5 67


荘真由美 / わたしと踊ってくれませんか (私と踊ってくれませんか) '87 作曲小林亜星 編曲稲川徹 「BUGってハニー メガロム少女舞4622」主題歌

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このブログを読んで頂けてる日本全国約一桁のアニソン・ナイアガラっ男の皆さん、こんにちは。私は相変わらずポップなアニソンを求めて県内の遠ーくの図書館にあるアニソンコンピを片っ端から取り寄せてもらって日夜聴きまくってます。その甲斐あってか久々に凄いのを発見しました(既出御免)。それがこの曲で、アイドルポップ屈指の泣きナイアガラ名曲 「村田恵里 / オペラグラスの中でだけ '85」 タイプのバラードで、音壁度は前者以上、メロディもそれに匹敵するほど胸を撃つ黄金旋律です。

出だしのエレピのエコー感ある響きと切ないメロディは「美裕リュウ / ひとりぼっちの僕たち '95」似で、もしかしたらこの曲に影響を与えたのかもしれない。同時に入る男性コーラスの高揚感は山下達郎系。カスタネットの軽やかな音色、ドラムの奥行き感などは典型的なナイアガラのそれ。ヴォーカルの荘真由美さんの声質もまた村田恵里さんに近くちょっと湿り気があり粘着質で、生真面目に切々と歌う雰囲気も似ていますね。更に声優系フェロモンを漂よわせているところがプラスポイント。

劇場用アニメ「BUGってハニー メガロム少女舞4622」主題歌。「BUGってハニー」二代目エンディングテーマで、こちらのTVサイズ版(1分30秒)がCD「東京ムービーアンソロジー4 1983-1991」に収録されています。ただし音がシネテープ?起こしの為か非常に悪いです。私が聴けてるのはこのショートバージョンなのですが、それでもこの曲が村田恵里版に匹敵する名曲であることがヒシヒシと伝わってきます。

正式版は、あのファミコンの高橋名人のシングル皿「グレートキャラバン'87 (Fun House)」のB面に収録。ゲーム関連レコードということで発売枚数の少なさに加え、このB面曲が一部ファンには名曲として知られているようなので、仮にオークションなどに出品されてもかなりの高額になることが予想されます。そうなると自分の手に負える額になりそうにもないので、そっとこのお皿を入手するまで黙っているよりも、ここでこの曲の魅力を広く知らしめた方がフルバージョンが聴ける確率は高まるであろう、という小狡賢い計算のもと日記に書いてみました(笑)。関係者の方、どうか正式版にもう一度陽の目を見させて下さい。フルバージョンお持ちの方、どうか私にお聞かせ下さいませ。

「YOU TUBE」で この曲 のTV版が聴けます。(出だし僅かに切れてます。)

以上を書いた後、レギュラー音源のダウンロード出来る場所を教えてもらえました。

ファミコン少年団 R E U N I O N : 高橋名人ホ完計画

↑こちらです。ちょっと音悪いです。しかしじっくり聴いてみるとあんまりドラムに奥行きの深さは無いですね。カスタネットやエレピ、コーラスなどのナイアガラ・オカズは美味だけど、エコーは浅めだし間奏もいまひとつな出来。でもヴォーカルとメロディはやっぱりいいなあ。(後にモノラル音源であることが判明しました。)

「ニコニコ動画」の こちら でこの曲をステレオで聴くことが出来ます。

岩崎元是(IWASAKI MOTOYOSHI) / 君は夏色の風 '08 岩崎元是作曲編曲 「SUMMERY」収録

IWASAKI SUMMERY.jpg

現存する世界NO.1の音壁職人、岩崎元是氏の最新ミニアルバム収録曲。ことさら「夏」を強調したタイトルや帯コピーで売り出されてます。元々「シティポップ」ジャンルで活躍していただけあって、軽やかな声質に爽やかなメロディ、往年の山下達郎を彷彿させるものを感じさせますね。ただしこの曲は「海辺の避暑地でトランジスタ・ラジオから流れる」だけでは決してその真の良さは味わえません。

綿密に作りこまれた音壁サウンド(WALL OF SOUND)は大型スピーカー等で爆音で聴いてこそ真価が発揮されるからです。鈴や鐘、カスタネットといった高音域からストリングス、エレピ、コーラス、ギターなどの中音域、ベースやドラムスの低音域など多種多様な装飾音が万華鏡のように色鮮やかに散りばめられたサウンドは、さながらべらぼうに高い金を払って食べる高級料理でも味わうかのように真剣に向かい合って味わうべき逸品なのです。

曲の展開もじっくりと聴けば、サラリと流暢に流れてはいなくて、音壁を強調するために、タメ、遊び部分を多く取り、よりウォール・オブ・サウンドが楽しめる「くどい」作りになっています。また、ドラムスの低音部分もいつにも増して過剰に強調されており、特に終盤で聴けるエコーの効いた重低音ドラムスの乱れ打ちが素晴らしく、これはヘッドフォンではなく是非ディスコなどの大型スピーカーでボディソニック的に全身で体感して欲しい内容。

もちろん良質なシティポップとして、そのメロディや歌の出来は標準以上のモノがありますが、逆に言えば、このレベルの「メロディや歌」のポップソングは探せば幾らでも有るということ。然しながら、ここで聴ける2008年度/国内産の重厚で煌びやかな音壁サウンドは紛れも無く世界最高峰かつ希少な逸品である、ということです。
明るく元気 テンション 高揚感 疾走感 グルーブ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(重厚な音壁) ポップ偏差値合計
8
8 8 6 6 8 10 8 5 67


【 ポップ偏差値 66

JAMES DARREN / ALL '66



1966年のイタリア映画 「Run For Your Wife」のテーマ曲 のカバーで、ウォール・オブ・サウンド仕様曲。この「ALL」については既に CAFE APRES-MIDI ベスト10 優雅で上品 LES MCCANN LTD. / ALL '67 としても取り上げています。ジェイムズ・ダレンは当初はアイドル、後にはナバロンの要塞出演など映画俳優としても活躍していたアメリカの歌手で、このバージョンは1966年にシングルカットされ中ヒットとなっています。アレンジはLeon Russellで、彼はフィルスペクター作品に参加していたようなので、ウォール・オブ・サウンドに対する興味が高かったのかも。オリジナルはメロディの良さはあってもいまいちキャッチーさにかけメリハリの無いアレンジもあり魅力薄だったけれども、本曲はテンポを上げゴージャスな雰囲気を出して音壁仕様にしたことで見事に魅力的な作品に仕上がりましたね。全編に渡って響き渡るカスタネットの快活な響きが特徴的で実に心地よく、更に特筆すべきは間奏部分のインストパートで、オリジナルの持つ優雅で上品かつ情緒的で魅力的なメロディがストリングスやコーラス、更にカスタネットと混然一体となって織り成す厚い音壁世界は、フィルスペクターのクリスマスアルバムでのインストパートに匹敵するかのような魅力を持っていると感じます。

「YOU TUBE」 で聴けます。
明るく元気 テンション 高揚感 疾走感 グルーヴ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(優雅さ) ポップ偏差値合計
7
7 7 7 7 9 9 8 5 66


FOUR SEASONS / DAWN (GO AWAY) 悲しき朝やけ '64



フランキー・ヴァリ率いるザ・フォーシーズンズの1964年の音壁ヒット曲。前年の1963年にヒットしたフィルスペクター制作の 「CRYSTALS / THEN HE KISSED ME」 とか、アルバム「A CHRISTMAS GIFT FOR YOU」辺りのジャンチャカ、ジャンチャカ・タイプのウォール・オブ・サウンドの影響をモロに受けてますね。そういったサウンドの曲は数多いけど、この曲はメロディも抜群に良い所に価値があります。ちょっと憂いを帯びた悲しげなメロディだけど、瑞々しいサウンドの快活なリズムにのって暗くなりすぎず元気な曲調に仕上がったのがイイ。時折気張ったりファルセットを交えたりと変幻自在なヴァーカルも魅力的ですね。大好きな曲です。

「YOU TUBE」 で映像付きで楽しめます。
明るく元気 テンション 高揚感 疾走感 グルーヴ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(ファルセット) ポップ偏差値合計
6
8 7 6 7 10 9 8 5 66



BAY CITY ROLLERS / SUMMER LOVE SENSATION '77

BCR Summerlove.jpgShelleys Children  Everything.jpg

ベイシティーローラーズのヒット曲で邦題「太陽の中の恋」。まさに邦題通りの明るく幸せ感に満ちた陽気なポップス。ピアノの連打と鐘の音が鳴り響いて始まるという個人的にとってもツボな出だし。ここはフィルスペクター/ナイアガラ系音壁サウンドと言っていいでしょう。その後のAメロこそ単調なベース中心の暗めのトラックだけど、サビに向かって徐々に盛り上げていく様が楽しい。そしてサビで一気にメロディ大爆発。ストリングスやコーラスと一体になってハイテンションで歌うレスリーも能天気でいいのです。途中「ドゥワップ、ドゥビドゥ」なコーラスでブレイクが入ったりと展開もなかなか。

最近Shelley's Childrenというグループが女性ヴォーカルでカバーしていてこれもなかなかの出来でオススメです。基本的に忠実なカバーなのですが、ヴォーカル含めて全体的にエコーがかかり、ドラムス、ベースなども重量感が増した感じで、より音壁っぽいです。流石にボーカルに能天気さが足りず、こういうカバーを聴くとあらためてレスリーの能天気さの偉大さに気づきます。それにしても小学6年生の頃に聴いたBAY CITY ROLLERSが洋楽初体験な私ですが、まさか40歳過ぎてこの曲の感想を書くようになるなんてねえ。

「YOU TUBE」で この曲 の映像が見れます。出だしでウッディ(二宮和也似だな)が叩いてる鐘って正式にはなんて楽器名でしょうか?またこういうピアノの連打って何か専門的な言い回しがあったような気がするのですが?
明るく元気 テンション 高揚感 疾走感 グルーブ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(ピアノ連打と鐘) ポップ偏差値合計
9
9 9 6 6 7 8 8 4 66


【 ポップ偏差値 65

フランス・ギャル / 夢みるシャンソン人形(Poupee de Cire Poupee de Son) '65



フランスのギャルによる1965年の世界的ヒット曲でウォール・オブ・サウンド仕様曲。作曲は「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」などで知られるセルジュ・ゲンスブール。バックの演奏はAlain Goraguer Und Sein Orchesterということで、65年ものとしてはサウンドに厚みがあるのが特徴的。ドカドカと激しいドラムに延々と鳴り響くカスタネット、緊迫感のあるストリングスなど音壁要素は濃く出来も良い。前年の64年産フィルスペクターの Ronettes / I Wonder 辺りの影響を強く感じます。キャッチーで出来の良いメロディで有名だけど、音壁曲としてももっと評価されてしかるべきかと思いますね。特にカスタネットの鳴りっぷりが素晴らしく、ぶっちゃけトラックの使い回しがあって良し。カバーも沢山出ててSPOTIFYで沢山聴いてみたけど、やはり安直にメロディだけ頂きました感が強い曲がほとんどでがっかり。カスタ入りは皆無に等しいですね・・・。(以下に気になった曲を幾つか取り上げておきます。)因みに71年の手塚治虫のアニメ 「ふしぎなメルモ」 のOP曲の元ネタになってると思うんだけどどうでしょう。

「YOU TUBE」 で聴けます。

CALOGERO (LIVE)
なかなか迫力あるハードなサウンド。ドラムがいいね!

NICOLE FELIXOVA , KAREL VLACH SE SVYM ORCHESTREM
忠実なコピーに近いけど。やはりオーケストラは一味違う。
明るく元気 テンション 高揚感 疾走感 グルーヴ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(カスタネット) ポップ偏差値合計
7
7 7 7 7 9 9 7 5 65


GIRLFRIENDS / MY ONE AND ONLY JIMMY BOY '63



63年の即席的に作られた3人組ガールグループの63年の 「Crystals / Da Doo Ron Ron」 タイプの音壁ポップ。「ダドゥロンロン」が同じく63年産なので、将に2匹目の泥鰌を狙った感じですが、作者はなんと後のブレッドのデビッドゲイツ。なるほど流石のメロディラインとなっています。更に疾走感とヴォーカルの瑞々しさ、手拍子の入る楽しさ、グルーヴ感など、その爆発力は本家に引けをとらない素晴らしい内容。「ダドゥロンロン」タイプの名曲って探せば結構ある気がするんだけどどこかまとめてらっしゃる所ないですかねえ?

SONYから出たフィルスペクター以外の音壁ものを集めたコンピ THE TASTE OF WALL OF SOUND にも収録されています。因みにこのコーナーではフィルスペクターがプロデュースしたもの以外のウォール・オブ・サウンドを取り上げることが多いけど、あくまでスペクター関連を一通り網羅されている方のご来場を前提にしています。

「YOU TUBE」 で聴けます。
明るく元気 テンション 高揚感 疾走感 グルーヴ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(音壁サウンド) ポップ偏差値合計
8
8 7 7 6 8 9 7 5 65


小西寛子 / BE ALL RIGHT・・・~高石タケルのテーマ~ '00 作曲編曲岩崎元是(IWASAKI MOTOYOSHI) デジモンアドベンチャー
BE ALL RIGHT.jpgBE ALL RIGHT.jpg
岩崎元是作曲編曲で大滝詠一系ナイアガラサウンド炸裂の傑作曲。この曲もタイトルに「・・・」が付き、先に紹介済みの「鈴木真仁 / あのね・・・。」,「金月真美 / 夏に、まだ少し・・・」,「小西寛子 / きっと きっと・・・」と並んで名実ともに岩崎元是、ここぞという時に付ける勝負の「・・・」4部作の一つと言えるでしょう。4部作の中では最も近年の作品で、かつかなり湿っぽいメロディを持ちます。個人的にこの湿度はどうかというほどの大泣きのメロディですが、お好きな方の中には4部作中最高のメロディと感じる方もいるはず。サウンドはカスタネット、エレピ、鐘の音等が深く鳴り響くいつもの重厚な岩崎元是サウンド、素晴らしい出来です。「高石タケル(画像2)のテーマ」ということで歌詞は「ボクら」,「天気になれ」など「男」言葉も多い。それを声優フェロモンたっぷりな可愛い女性ヴォーカルで歌うので、かなりそれ系属性(何と言うんだろう)を持つ者は堪えられないはず。いや、私もいいなと感じ始めてるんですがね(笑)。

「デジモンアドベンチャー・ベストヒットバレード」など幾つかのCDに収録されています。このデジモンアドベンチャーというのは子供たち(と一部のショタコン腐女子/因みに受けキャラのもよう)に人気のようで、レンタル店や図書館など置いてあるところが多いようです。また、 「デジモンアドベンチャー・キャラクターソング+ミニドラマ3」 で試聴できます。ここにはカラオケバージョンも収録されています。内容も素晴らしく岩崎元是音壁サウンドをより堪能するには絶好の機会かと思われます。それにしてもこれもまたジャケ買いでは絶対に辿り着けないナイアガラ系作品だろうなあ。*元ネタ=「BRUCE SPRINGSTEEN / HUNGRY HEART」、「佐野元春 / SOMEDAY」
明るく元気 テンション 高揚感 疾走感 グルーブ メロディ 器楽 瑞々しさ ボーナス(音壁サウンド) ポップ偏差値合計
6
9 8 5 6 9 10 7 5 65




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