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無音の中 かなしみ褪せり 曼珠沙華
2010.10.16
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朝の気配が薄まるころ、池のほとりでは猫が気持ちよさそうにあくびをしていました。いたずらな風はさざ波を起こし、猫を驚かせます。身を震わせて茂みに隠れた猫は、それからきっぱりと姿を現しません。 陽射しが力いっぱい降りそそぐころ、とっとっ…と幼子が駆けてきました。柵の前でつんのめりそうになりながら、 「ここからさきは、はいっちゃいけないんだよー」 言葉とは裏腹にひょいと頭をくぐらせ、水面をぱちゃぱちゃ。そのたびに飛沫が跳ね、波紋は優しく広がります。 反射する光に朱が混じり、いつまでも続くと思われた遊びも終わりを迎えました。幼子はそれでも名残惜しげに池を見ていましたが、辺りから漂う夕餉の香りに気付くと、歓声をあげて母親との追いかけっこを始めました。 月がしずしずと顔を覗かせたころ、少女の面影を残した女性が池のそばを通りかかりました。彼女はそっと柵に手をやり、揺れる水面の月を見つめます。やがて、ふ…と息を漏らすと泣き笑いのような表情を浮かべ、来た時と同じく静かに去ってゆきました。 夜が空気を鎮めたころ、池には男の姿がありました。彼は柵に背中を預け、煙草をくゆらせながら何事かを考えているようです。ときどき、呟く声がこぼれては煙とともに流れてゆきます。すると、まるでそれらが辺りを埋めつくしてゆくかのように、霧が池を覆い始めました。目を細めて新しい煙草に火をつけた彼は、なおも何かを考えている様子でその場を後にします。 そして。 誰もいなくなった池では、静かに風が吹き始めました。水面はかすかに揺れています。 少しずつ白みゆく空のなか、月の姿がおぼろげでした。
2009.11.29
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白い服を着るのが好き夜のような貴方のその瞳に月が見えるから
2009.11.03
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なくしてしまうなら視覚が良い 私の目は正直で 見ずにはいられないし 見れば感じずにはいられない 許せないものが多すぎて 否応なしに 冷たくなってしまうのです そしてそれは決して 良心によるものではないのですから
2009.07.29
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そっと破滅に触れたい余計なものを切り落としたその人はイヤホンのコードを首に巻きおやすみの歌を聞く
2009.07.17
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お月様は無機質で冷淡で陰鬱で無関心でちっぽけで不完全で無意味でみっともなくてそしてあるがままでとてもきれい
2009.06.25
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携帯のストラップが千切れた私を守ってくれるというその石はまるで自然に散り散りになったあーあただの石なら好きでいられたかもしれないのに
2009.05.15
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きれいなものは欲しくなるきれいなものは壊れやすいきれいなものは辛いみにくいものはイライラするみにくいものは動かないそしてみにくいものは落ち着く
2009.05.14
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あの時の本当はもうずっと前に「嘘」になってしまっていつかの嘘が「本当」になる日はもう目の前にまで来ているのかもしれないそれでも私は繋がっている
2009.05.13
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新しい 万華鏡のかたち
2009.05.10
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セピア色の雲セピア色の光セピア色の青ただ彼岸花だけが鮮やかな赤
2009.02.09
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何事もなかったふうに帰ってきて微笑む君に会いたいと思う狂った君が好きだ関係を手放して存在だけを残し毎日を消費するのも悪くない理性を繋いだままで記憶を微分するよ僕は大丈夫
2009.02.08
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8番目の虹の色いつまでもあなたの空に――。
2008.11.30
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今 空から私を圧倒しているそれを私は「雲」と呼ばなければいけないのかこれを雲と呼ばなければならないのかこんな無意味な入れ物に今の私は想いを込めている「今日の雲は綺麗だった」
2008.11.11
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(まるで青春が通り過ぎる自然さで あるとき日常が深海に包まれる)一粒の泡はどこまでもどこまでも……
2008.09.11
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ただいまの挨拶をするために顔を上げると空が綺麗だった手を合わせてもずっとそぞろで申し訳なさを空色に塗りかえるありがとう
2008.08.16
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乗継ぎの駅に佇む清掃員閑かな箱は次の光へ
2008.08.12
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私たちの頭の中はひょっとすると一つの巨大な蜂の巣遺伝子と経験で編まれた寝床を破り子どもたちは飛び立ってゆく一羽また一羽ある蜂は踊りある蜂は戦いある蜂は愛する一羽また一羽やがて蜂の巣は空になる老いた女王蜂は繰り返し繰り返し壊れゆく揺籠を撫でては謳う一話また一話繰り返し繰り返し
2008.02.05
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現状を分析せよ目的と前提から着地点を見出だせお前は何なのか答は途中までしか出ないに決まっている立ち止まるな無為と遠回りは比べるべくもない今やれる事はここまで。
2007.11.19
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前を向くことが単なるポーズでしかなくなったのはいつだろういつから僕の足は止まっていたのだろうかみんな 強いねみんな 優しいねごめんね
2007.09.26
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その晩私は学術的な思考を引っ掻き回していたひとしきり友人と話を投げ合い気怠い興奮と未練!外は朝焼けであった右手には光差す雲流れた先澱む雲和紙ひとひらの雲向こうに月自然と朝焼けのその様を語るものを探した水彩絵の具子どもたちの感受性…ドライアイス突き当たりを幾度か往復したころふと過去という言葉が浮かんだそうして顔を上げるともはや過去はどこにも見当たらず空は目もくらむほどの太陽
2007.08.07
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だけど…だけど、だけど。やっぱり
2007.07.18
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ありふれた言葉の組み合わせがかくも深く突き刺さるその力に源に狂いそうだ
2007.07.15
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The child wished for all the stars in the skyThe child wished for all the stars in the skyThe child wished for all the stars in the skyChildren,cry for…
2007.07.07
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見えぬ空フロントガラスに流れ星
2007.06.30
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白く倦んだ涙あるいは産声
2007.06.17
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どれほど夢を詠っても“そこ”には辿り着けません月は光を浴びた大きな大きな石それ以上でもそれ以下でもないことにひたむきなのでありだからこそ私たちは月のもと眠りにもつくのですまるでひとりぼっちを忘れるように
2007.06.15
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カレンダーの向こうの亡霊に今日の亡骸を繋ぎ合わせているおやすみ癒えぬまま罪重なる明日
2007.06.05
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誰そ彼や予報外れの濡れ鼠誰そ彼や花盗人は影もなし
2007.04.24
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不死の山に昇る灰色の煙その炎は赤く激しくけれど今にも消え入りそうで重ねた夜と巡る夜に虚ろな権力者の物語は許される温もりは衣で拭い私は見下ろす雲が晴れるまで
2007.04.05
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最大公約数みたいな語彙で周囲と意志の疎通を図らなくてはいけない場面に遭遇するとそこはかとなく惨めな気持になってしまうのだ。(山田詠美『無銭優雅』)膨らんだ素数が仰ぎ見た共役の愛は巡りあわぬこと夢のようで覚めぬこともまた夢のよう線の世界で近似する
2007.03.29
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三日月の背中にもたれかかっていつもと違う世界をごらんなさい(RYTHEM『三日月ラプソディー』)涙の白溜め息の青苛立ちの赤届かない黄色暗闇に浮かぶ砂糖菓子落ちないように気をつけてさあ召しあがれ
2007.03.27
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己から肉体を引き剥がすべく聖人は磔を賜った。末裔たちは呻くこと叶わず罵ること赦されずいつしか現人神へと還る。残されたのは穢れの墓守。
2007.03.23
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引き寄せる赤い大地削られた青い月大空の孤独暗い海の夢
2007.03.22
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慰めや称賛は思い付く限り並べてしまいましたそれらに勝る満ち満ちた手応えも既に染み込み蓄えられています必要なものは欺瞞への懐疑自惚れに対する戒め欲しいものは大きな世界それと少しの体温だけ
2007.02.07
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18時54分15秒外を向こうにも記号ですら持て余すほど今日の私は出遅れている追いかけるため迎えるためただ眠る
2007.02.06
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剥き出しの言葉は己にしか投げ掛けられない私ですので優しい貴方どうぞお気に病まず飾らずにはいられないこの性分を嗤ってやって下さいませ丁度良い貌を宛行われないこのもどかしさを憐れんでやって下さいませ跡になって残るような確かで真っ直ぐな光など自らが求めるほど持ち合わせておらぬことは先刻承知の上ですどうかどうか貴方は心揺さぶられ悲しむことなく是も一つの空言夢物語と雑事の中に埋めて下さいその目に捉えた輝きは貴方の瞳の照り返しなのですから月などそれだけのものに過ぎないのですから
2007.01.27
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今日、祖母が手術を受けた。 父の連絡では無事に終わったそうだ。 胃の3分の2が失われたのに「無事」? ふざけんなよ。 父は悪くないのに、もちろん執刀医も祖母も誰も悪くないし何も哀しむべき要素もないのに、気分がざわついてささくれ立って、うまく口に出来ない衝動が神経質にさせる。 だってそうだろう。 考えないわけはないんだ。 おばあちゃんは僕よりも両親よりもずっとずっと時間が残されてないってこと。 どんなきっかけが「別れ」に繋がってもおかしくないってこと。 だから、悪いところが無くなったからってそれだけで何もかも元通りになるわけなんてないんだ。 入院中に低下した体力が戻らないかもしれない。 寂しさや疲労感がどっと押し寄せてくるかもしれない。 3分の1しかない胃では食生活を維持できないかもしれない。 ひょっとしたら腫瘍が転移してる可能性だってある。 「腫瘍」 帰省した時に母が口にした言葉。 「それって癌なんでしょ」なんて言ってしまったら、取り返しのつかない何かが起こりそうで、話を聞きながら僕はただ相槌ばかり打っていた。 今もそれは変わらない。 父からの連絡をただ受け取るだけ。 何も出来ずに考える。 考える。 そう、残酷な僕はもう保険をかけ始めている。 「どうしよう」という不安や哀しさ、辛さもろくに感じず、積極的に万一の事態に備えている。 未来図を修整している。 「世の中薔薇色じゃないさ」なんて訳知り顔で。 小さい頃、皆で夕食を囲みながら将来の家族構成について話したことがあった。 一人前の大人に憧れていたのであろう、短絡的な僕は妻や子供を持てるかどうかに夢中で、その予想に祖母を入れなかった。 目の前で孫から自分自身のいない未来を思い描かれるのはどんな気持ちだっただろう。 僕は相変わらず、あの頃と同じことを繰り返している。 そう、僕は祖母の病気に哀しんでなどいない。祖母の気持ちなんて見えていない。 自分はなんて無力なんだろうと、己を見つめて嘆いているだけだ。 自分の預り知らぬところで世界が動くことに納得がいってない…それだけ。 おばあちゃん、こんな孫でごめんね。 また電話するからね。 2月には帰るからね。 せめておばあちゃんの前だけでも優しい子でいられるようにするからね。 哀しそうなネタに飛び付いては悲観に悲観を重ね騒ぎたて、言葉が全部嘘に変わる。 誰かに何かを伝えるのは、何て勝手で欺瞞に満ちた行為だろう。 お願いですから僕の文章で僕を見ないで下さい。 「本当のあなたは…」などと考えず、この事実だけを知っておいて下さい。 慰めが欲しければ、もっと賢いやり方を取りますから。 だから僕にただ考えるだけの場所を下さい。
2007.01.17
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おもいくちこがらしなきてうたこごえ重い口声枯らし泣きて歌小声想い朽ち木枯らし鳴きて歌凍え
2007.01.07
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除夜の鐘 便り願いて 旭待つ
2006.12.31
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今一度問おう見えているか掌がその大きさが掴んでいるものの多さが零れそうなものの重さが見えているか疾走に追われる者よ
2006.11.25
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あなたを追いかけているうちに私は彼方で言葉を探していたやっと気付けた今でもなおあなたは言葉の向こう側
2006.11.24
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シーソーに腰掛ける二人私は一番前で君は一番後ろそれでも大きく大きく膨らんでしまった私の存在は両の足が支えているよSEE-SAWゆらゆら揺れる揺れているだけどそろそろくたびれてきちゃった時間だよもう降りないと宙ぶらりんになっちゃうよだって私は一番前もう動けないの一緒に座れる場所もないのよSEE-SAWゆらゆら揺れた揺れていた元気になったらまた遊ぼうね
2006.11.18
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夢を追う夢に眠る旅人よやさしい いとしい かなしい旅人よあなたの問いに答えたとき曇った両目は頼りなき足を映すだろう標なき道は無機質に代償を迫るだろう知りたくなくば失いたくなくばやわらかな歌にその身を委ねもう一度眠りなさいそれでも蜃気楼はいつかその手に
2006.11.17
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たったひとつあなたは願いの意味に気付くべきでした代わりなどいないと知りながら代わりでしかないと知りながら足りない覚悟ゆえに涙を流し続け先のない想いを抱く蜜滴る棘を握り締め叫びを貫くひらり舞う花びらを集め一人慈しむ背けていた目を今こそ
2006.11.14
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『あの人がそばに来たら あなたのそばにもし来たら 私を捨ててあの人つかまえるの?』(CHATMONCHY『恋愛スピリッツ』)海の記憶、空の夢。みんな足掻いてる。
2006.11.07
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光に乱れることなく花に頽れることもなく凛と凛と―
2006.11.03
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想いが言葉に変わるんじゃない言葉が想いを切り取るんだ。まだ言葉が見付からないからしまっておくんだ嘘にならないように傷が付かないように私だけの想い私だけの言葉私だけの……。だれか砂時計が止まらないよ
2006.10.26
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ほどいて下さいせめて私を壊し私を縛る完全など望めないなら。
2006.10.11
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すべてが其の許に。月よ在れ。
2006.10.01
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