ボリスの部屋

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2007年05月31日

ため息の時間／唯川　恵

テーマ：今日どんな本をよみましたか?(91745)

カテゴリ：本

恋をせずにはいられない、男と女のための、
短編恋愛小説９編収録。

短編ながら、どれもこれも、考えさせられてしまう内容です。

『口紅』
化粧をしないことを条件に、結婚した原田。
１度、原田の同級生を家に招待した時に化粧をして、
原田に注意された以外には、
その約束どおり、化粧をしなかった妻。

その従順な妻の命が、残りわずかになった時、

何故今頃、そんな色の口紅を欲しがるのだろう、と
疑問に思いながらも、愛人の孝子に、頼んで買ってきてもらう。
しかし、孝子は、
『口紅を欲しがる妻の気持ちがわからない』
と言う原田に、別れを告げる。

口紅を渡すと、妻は、嬉しそうに受け取りながら、
“本当に買って来てくれると思っていなかった”と言う。
妻は、結婚してからの２０年を振り返り、
原田に対する思いを、初めて打ち明けた。
何不自由なく暮らしてこれて、感謝しているが、
それも、自分達の為だとわかっているけれど、

妻の通夜の席に、原田の友人・笹原が訪れ、
贈られた口紅を付け、きれいに化粧をした妻が、昨夜、笹原の夢に現れた事を伝える。

妻の何を見てきたのか、妻の何を知っていたのか、
２０年という月日は、一体何を、妻と自分に残していったのか・・・。

初めて、妻の気持ちに触れた原田の、何とも言えない後悔と、

その他、『夜の匂い』『終（つい）の季節』『言い分』など、
さまざまな立場の、男と女の、さまざまな愛の形と、
心の動きを描いた、９編の作品です。