2004年05月18日
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「汚れちまった悲しみに」
汚れちまった悲しみに 今日も小雪の降りかかる
汚れちまった悲しみに 今日も風さえふきすぎる
汚れちまった悲しみは たとえば狐の革裘(ｶﾜｺﾞﾛﾓ)
汚れちまった悲しみは 小雪のかかってちぢこまる
汚れちまった悲しみは なにのぞむなくねがうなく
汚れちまった悲しみは 倦怠(ｹﾀﾞｲ)のうちに死を夢む
汚れちまった悲しみに いたいたしくも怖気づき
汚れちまった悲しみに なすところもなく日は暮れる……
幾時代かがありまして 茶色い戦争がありました
幾時代かがありまして 冬は疾風ふきました
幾時代かがありまして 今夜此処でのひと盛り 今夜此処でのひと盛り
サーカス小屋は高い梁(ﾊﾘ)
そこに１つのブランコだ 見えるとも無いブランコだ
頭逆さに手を垂れて 汚れ木綿の家蓋(ﾔﾈ)のもと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆおん
それの近くの白い灯(ﾋ)が 安いリボンと息を吐き
観客様はみな鰯 咽喉がなります牡蠣殼と
ゆあーん ゆよーん ゆやゆおん
屋外は真っ闇 闇の闇 (ﾔｶﾞｲﾊﾏｯｸﾗｸﾗﾉｸﾗ)
落下傘奴のノスタヂアと(ﾗｯｶｶﾞｻﾒﾉﾉｽﾀﾙﾁﾞｱﾄ)
ゆあーん ゆよーん ゆやゆおん
「湖上」
ポッカリ月が出ましたら、舟を浮かべてでかけましょう。
波はヒタヒタ打つでしょう。風も少しはあるでしょう。
昵懇(ﾁｶ)しいものに聞こえましょう、
--------あなたの言葉の杜切れ間を。(ﾄｷﾞﾚﾏｦ)
月は聴き耳たてるでしょう、すこしは降りても来るでしょう、
われら接吻するときに 月は頭上にあるでしょう。
あなたはなおも、語るでしょう、よしないことや拗ね事や、
もらさず私は聞くでしょう
--------けれど漕ぐ手はやめないで。
ポッカリ月が出ましたら、舟を浮かべてでかけましょう。
波はヒタヒタ打つでしょう。風も少しはあるでしょう。
「幻影」
私の頭の中には、いつの頃からか、薄命そうなピエロがひとり棲んでいて、
それは、紗かなんかをきこんで、そして、月光を浴びているのでした。
ともすると、弱々しげな手付きをして、
しきりと 手真似をするのでしたが、その意味が、ついぞ通じたためしはなく、
あわれな 思いをさせるばっかりでした。
手真似につれては、唇も動かしているのでしたが、
古い影絵でも見ているよう--------
音はちっともしないのですし、何をいってるのかは、分かりませんでした。
しろじろと身に月光を浴び、あやしくもあかるい霧のなかで、
かすかな姿態をゆるやかにうごかしながら、
眼つきばかりはどこまでも、やさしそうなのでした。
「生い立ちの歌」
私の上に降る雪は真綿のようでありました
私の上に降る雪はみぞれのようでありました
私の上に降る雪はあられのようでありました
私の上に降る雪はヒョウであるかと思われた
私の上に降る雪はひどい吹雪とみえました
私の上に降る雪はいとしめやかになりました……
「生い立ちの歌２」
私の上に降る雪は 花びらのように降ってきます
薪(ﾀｷｷﾞ)の燃える音もして 凍るみ空のくろむ頃
私の上に降る雪は いとなよやかになつかしく 手を差し伸べて降りました
私の上に降る雪は 熱い額に落ちもくる 涙のようでありました
私の上に降る雪は いとねんごろに感謝して、神様に
長生きしたいと祈りました
私の上に降る雪は いと貞潔でありました。
汚れちまった悲しみに 今日も小雪の降りかかる
汚れちまった悲しみに 今日も風さえふきすぎる
汚れちまった悲しみは たとえば狐の革裘(ｶﾜｺﾞﾛﾓ)
汚れちまった悲しみは 小雪のかかってちぢこまる
汚れちまった悲しみは なにのぞむなくねがうなく
汚れちまった悲しみは 倦怠(ｹﾀﾞｲ)のうちに死を夢む
汚れちまった悲しみに いたいたしくも怖気づき
汚れちまった悲しみに なすところもなく日は暮れる……
幾時代かがありまして 茶色い戦争がありました
幾時代かがありまして 冬は疾風ふきました
幾時代かがありまして 今夜此処でのひと盛り 今夜此処でのひと盛り
サーカス小屋は高い梁(ﾊﾘ)
そこに１つのブランコだ 見えるとも無いブランコだ
頭逆さに手を垂れて 汚れ木綿の家蓋(ﾔﾈ)のもと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆおん
それの近くの白い灯(ﾋ)が 安いリボンと息を吐き
観客様はみな鰯 咽喉がなります牡蠣殼と
ゆあーん ゆよーん ゆやゆおん
屋外は真っ闇 闇の闇 (ﾔｶﾞｲﾊﾏｯｸﾗｸﾗﾉｸﾗ)
落下傘奴のノスタヂアと(ﾗｯｶｶﾞｻﾒﾉﾉｽﾀﾙﾁﾞｱﾄ)
ゆあーん ゆよーん ゆやゆおん
「湖上」
ポッカリ月が出ましたら、舟を浮かべてでかけましょう。
波はヒタヒタ打つでしょう。風も少しはあるでしょう。
昵懇(ﾁｶ)しいものに聞こえましょう、
--------あなたの言葉の杜切れ間を。(ﾄｷﾞﾚﾏｦ)
月は聴き耳たてるでしょう、すこしは降りても来るでしょう、
われら接吻するときに 月は頭上にあるでしょう。
あなたはなおも、語るでしょう、よしないことや拗ね事や、
もらさず私は聞くでしょう
--------けれど漕ぐ手はやめないで。
ポッカリ月が出ましたら、舟を浮かべてでかけましょう。
波はヒタヒタ打つでしょう。風も少しはあるでしょう。
「幻影」
私の頭の中には、いつの頃からか、薄命そうなピエロがひとり棲んでいて、
それは、紗かなんかをきこんで、そして、月光を浴びているのでした。
ともすると、弱々しげな手付きをして、
しきりと 手真似をするのでしたが、その意味が、ついぞ通じたためしはなく、
あわれな 思いをさせるばっかりでした。
手真似につれては、唇も動かしているのでしたが、
古い影絵でも見ているよう--------
音はちっともしないのですし、何をいってるのかは、分かりませんでした。
しろじろと身に月光を浴び、あやしくもあかるい霧のなかで、
かすかな姿態をゆるやかにうごかしながら、
眼つきばかりはどこまでも、やさしそうなのでした。
「生い立ちの歌」
私の上に降る雪は真綿のようでありました
私の上に降る雪はみぞれのようでありました
私の上に降る雪はあられのようでありました
私の上に降る雪はヒョウであるかと思われた
私の上に降る雪はひどい吹雪とみえました
私の上に降る雪はいとしめやかになりました……
「生い立ちの歌２」
私の上に降る雪は 花びらのように降ってきます
薪(ﾀｷｷﾞ)の燃える音もして 凍るみ空のくろむ頃
私の上に降る雪は いとなよやかになつかしく 手を差し伸べて降りました
私の上に降る雪は 熱い額に落ちもくる 涙のようでありました
私の上に降る雪は いとねんごろに感謝して、神様に
長生きしたいと祈りました
私の上に降る雪は いと貞潔でありました。
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