父は仕事の分野で本を2回出している。
祖父はラジオで源氏物語を話していたらしいけど、
本を出していることはずっとずっと後年になってから分かった。
分かったのは弟の妻のほうが研究者のごとく熱心に探したからだ。
ひとつは辞典の編纂だったけど、
最近分かったのは共著だがこれだった。

僕は一度も本を出さなかった。
いや出せなかった。
でも、
出せそうにはなってはいた。
あのとき、
共著の申し出があった。
その人は本を出すことに関係していた。
でも、突如スキャンダルが週刊誌に出て、
追われて海外勤務になった。
本の話は宙に浮き、
本を出して転職しようという僕の転職欲もその時は消えていった。
あの人はどうしているだろう。
スキャンダルの相手は
当時も知名人だったけど、
今はもっと有名人だ。
才気煥発だったそのままに
今も才気煥発だ。
でも、才気煥発過ぎて少し空回りしていることが
なんだか胸がチクリと痛い。