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月の旅人
フルーツ園・メコン川クルーズ終了編
フルーツ園・メコン川クルーズ終了編
次に訪れたのはココナッツキャンディー工場。
椰子の実を、皮だけを除いて大きなフライパンのような物で煮込んでいた。燃料はその皮である。なんて効率的なんだろう。
試食をさせてもらったけれど、これがなかなかおいしかった。ココナッツは白いのになぜか木の葉のような緑色をしたキャンディーになっていたけれど、自然な甘さと出来立ての温かさが口に広がっていい感じだった。固さは、キャンディーというよりはキャラメルにかなり近い。
“工場”とはいうものの、ほとんど木の柱と屋根だけの素朴なワンフロアの建物で、その入口で箱詰めされたキャンディーを売り、真ん中あたりで手馴れた素早さで女の子たちが出来立てキャンディーを白い紙に包み、一番奥にある1つの釜でココナッツを煮込んでいるといった素朴さだった。
今思うと、なんだかあの味が懐かしい。買っておけばよかったかなぁ。
タイソン島最後の訪問場所は、フルーツ園。
フルーツ園というからには果実のなった木がたくさん見られるのだろうと思っていたけれど、私たちが案内されたのは家の前に設置された屋根付きのベンチ。辺りを新緑のようにきれいな葉をつけたそれほど高くない木が囲んでいたけれど、果実がなっている様子は皆無だった。きっと、フルーツ園は奥まった所に広がっているのだろう。
ここでも、蜜蜂が私たちを襲った。正確には“邪魔をされた”と言うべきか。それも例によって私たち4人だけが……。
なんで!?
しかも蟻までが石のベンチを這い上ってきて、ふと見ると腕や服の上を歩いていたりした。
もう~っ、虫は嫌いなんだ~っっっ!!
蜜蜂とフルーツを奪い合い隙を突いてサッとフォークを刺しては口に運んでいた私たちのテーブルの横へ、フルーツ園のおじいさんが胡弓に似た楽器を持ってやってきた。ニ胡と言うらしい。
お風呂場で使うようなベトナム特有の低~い椅子に座り、やさしげな笑顔を浮かべながら穏やかでやわらかい曲を披露してくれた。音色も胡弓に似ていて、高く澄んだ音色がとても美しい楽器だった。
おじいさんの演奏が終わると新たに打楽器を持った青年とアオザイ姿の女性が横に加わり、彼女は演奏に合わせてベトナムの歌を歌ってくれた。日本の民謡のようなものだろうか。
3曲ほどで生演奏も終わり、私たちもフルーツに食べ飽きた。まあ、飽きたというほど食べてはいないけれど。だって、いまいちおいしいと思えなかったし。(;ーー)ゞ
フルーツに用がなくなると自然に視線はキョロキョロと辺りの観察を始め、そのうち立ち上がって建物の向こう側を覗いてみたり、テーブルのすぐ傍に陳列されていたお土産に蛇やトカゲの入った酒瓶を見つけて驚愕したりした。
ま…まさか、さっきの濃い~アルコールって……。
いや、考えないようにしよう。( ̄  ̄)(_ _)うんうん
それからフルーツ園の人たちやガイドさんが談笑している建物の側面に移動し、窓の格子に引っかけられていた楽器をみつけた。先刻おじいさんが演奏していたニ胡という胡弓に似た楽器である。バイオリンを習っている友達がさっそく興味を示し近くに寄って観察を始め「さわってもいいのかなぁ」とおじいさんに視線をやると、おじいさんはにこにことほほ笑みながらこっくりと頷いた。
初対面なうえ言葉がわからないのに“ツー・カー”状態で通じている。(笑)
格子から楽器を外し、「これに座ってね」とばかりにおばさんが笑顔で傍に置いてくれた低い椅子に座った彼女は、楽器を構えて2本の絃の間に通された弓を左右に引いてみた。弦楽器を演っている人はやはりコツを知っているのか、最初から音が紡ぎ出された。
さすがに“音が出た”という程度だったけれど、なんか尊敬したな。
ガイドさんに連れられて次に着いたのは、手漕ぎボート乗り場。
すでに何槽も連なって私たちが乗り込むのを待っていた。粘土質の土が剥き出しのままの狭い乗り場に並んでいるとき、ふと足元の川辺に目をやった。するとそこに、土に貼りつくようにして胸ビレで体を支えながら口をパクパクと動かしている
ムツゴロウに似た魚を見つけ、
「あっ、ムツゴロウに似た魚が居る!」
心に思ったそのままを声に出して指し示すと(笑)、友達や私の後ろに並んでいた女の子たちがすぐに私の指先を目で追った。そこに土と同化してしまいそうなそれを見つけて、口々に「ほんまや~」とか「かわいいねー」などと言って見つめていた。
それでもそのムツゴロウもどき(本物のムツゴロウかも?)はその場から動くでも警戒する様子でもなく、呑気に口をパクパクさせながら目だけをくるくると動かしていた。
「人懐こいのか?」と思いつつ「生きていけるのか?」とちょっと心配になったりもした私の心など知らぬげにそこから動かず、私たちのほうが小舟に乗る順番が回って来て移動することに。
あ、そうなることを知ってたのか?(笑)
漕ぎ手と舵取の他に2人しか乗れない手漕ぎボートに恐々と乗り、『ノン』という三角笠を一人にひとつ手渡された。やけに三角笠が似合う友達を振り返ってパチリとカメラに収め、「絶対現地人に紛れられるねっ」と冗談を言い合う中、ガイドブックには川幅5mくらいと書かれているけれどどう見ても“嘘”としか思えない狭くて土色に濁った川を、熱帯の木々や剥き出しの粘土質な土に何度もぶつかりながらメコンデルタを抜けるべく進んだ。
メコン川と合流した所に木で組まれた質素な船着き場があり、ツアーに組み込まれているはずなのにもかかわらず「皆サン、オ金ハ1ドルズツデス」とガイドさんが言い、ボートを漕いでくれたおばさんと舵を取ってくれたおじさんに支払った。(~_~+)
でもこのときはまだ両替ができていなくて、一人を除いてはドルを持っていなかった。
一日目は観光ツアーだから必要ないだろうと思っていたということもあるけれど、とにかく両替をする機会がなかったのだ。
唯一の機会だったバンコク空港の両替所では「NO!」とひとことで断られたし。(^_^;)
そんなわけで、日本からドルを用意してきた友達が立て替えて支払ってくれた。
今度から海外旅行するときは日本で外貨を用意して行こう、と改めて心に誓った瞬間であった。
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