月の旅人

月の旅人

Miss Aodai編

Miss Aodai編


最後にワゴン車に少し長く揺られて着いた場所は、『Miss Aodai』というお店。
その名のとおり、店内に入った途端クリーム色のアオザイを着た店員さんたちが迎えてくれ、アオザイを作りたい人は入口のすぐ右側にたくさん掛けられた布地の中から店員さんが一緒に選んでくれる。他にもアクセサリーや小物、鞄や置物などもあり、紳士物のシャツなども置いてある。見るからに安くなさそうなお店だった。
でも、もうそんなことは言っていられない。ここで買わなければもう買えないかもしれないと思った。時間がないのだ。(←これが策略?)
だから、友達もみんなそれぞれに店員さんと共に店内に散っていった。
私は店内に入ると同時に、
“オーダーされたアオザイも佐川急便で3日間でお届けします”
と書かれた日本語の張り紙が目につき、「アオザイ作リマスカ?」と長い髪を高く結い上げた綺麗な店員さんに声を掛けられ、すぐ様布地選びに入った。
「ドンナ色デ作リマスカ?」と訊かれ、「黒とか紫とか、濃い色がいいです」と答えた私に、店員さんが大きな目をぱちぱちとさせて首を傾げた。どうやら紫がわからなかったようである。
「パープル」と言えば良かったのだけれど、この時の私の頭の中にはまったく思い浮かぶこともなかった。で、私はかけてあった紫の布地を示して、「この色です」と言ったら、店員さんは嬉しそうにほほ笑んでその布地を手に取って私の首下に添わせた。
「コレ似合イマス」
そう言われたものの、刺繍のデザインがあまり私の好みではなかった。すると他の布地もいろいろ取り出して私に合わせてくれる。その度に店員さんは自分の体にもあててみて、刺繍がどの辺りに来るか、どういう感じになるかなどがよくわかるように見せてくれた。
綺麗でスタイルも良ければ仕草も可愛い店員さんだったためどれもこれも良く見えて、たいそう悩むことになった。(笑)
その店員さん、たまに自分の取り出した布地に首を傾げて「コレハオバサンネ」とか、「コレハデザインガヘンデス」とか、私の耳元に顔を寄せて小声で言っていた。
女の目から見ても、なんだか可愛いと思える雰囲気を持った人である。そんな彼女のことだから、男の人の担当についた時にはそれはそれはたくさん買わせてしまうことだろう。(笑)
が、残念ながら(?)私は女である。悩んだ末黒と紫のシースルーの布地が2枚重なり、胸元と腰から下に小ぶりの花の絵が入ったものを1着だけ選んで採寸してもらった。採寸しているそばから、店員さんが渡した布地を職人さんがハサミを入れて切っていった。ものすごい早業である。
何を隠そう、アオザイは即日届けてくれるということだった。5時にはホテルに持って着てくれるらしい。もう正午を過ぎていたため、非常に驚いた。
他にもその店員さんに店内を案内されながら、お土産を何点か選んだ。妹へのネックレスは70$を35$にまで安くしてもらった。ミニバックなど何点かをすでに手に持ち、最後に選んだのがそれだった。始めは「アオザイ買ッテクレタカラ、45$ニシマス」と言い、「シーッ。内緒」と唇に人差し指をあてて、また私の傍に顔を寄せて言っていた彼女。私が「35$にできませんか?」と頑張って訊いてみたら、「私ノ限界。40$」と言われたけれど、私はそれに満足できなかった。(^^;
「う~ん……」と更に悩んでいたら、とうとう負けたとばかりに「……35$ニシマス。
限界。私、社長サンニ怒ラレマス」と彼女は周りをキョロキョロと見回しながら、唇に指をあてて「シーッ」と言った。
木の皮で編まれた団扇を3つもサービスでもらい、アオザイ以外の会計を済ませて、店員さんに店の奥へ案内された。そこにはお茶とお菓子が用意されていて、すでにガイドさんが椅子に座っていた。テーブルは一本木の幹を使った立派な物なのに、椅子はここでもやっぱり赤いプラスチック製のおもちゃのようなミニ椅子だった……。
結構時間がかかったと思っていたけれど私がその場には一番乗りで、お茶を飲んで
いるうちに一人、また一人と友達も買い物を終えてやってきた。
私が今日の5時にアオザイを届けてもらえることを告げると、やっぱりみんな驚いていた。私も思わず力説してしまうほど、その時まだ驚き中だった。(笑)


コロニアル風の西欧建築である中央郵便局へ行った。
外部の赤い屋根とクリーム色の壁、緑の窓枠も美しいけれど、内部の艶やかなタイルの模様も吹き抜けの高い天井も緑を基調として、華やかであり品があり落ち着いた雰囲気を持ったとても美しい作りである。
正面入口に売店があり、ガラス張りのショウケースにポストカードを並べて売っている。私たちもそこでポストカードのセットを1つずつ購入し、窓口でガイドさんに切手を買ってもらった。
これで、ショッピングツアーは終了。
行きたいお店の半分も行けなかった……。




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