月の旅人

月の旅人

象乗り編

象乗り編


市内観光終了後、高層ビルの中にある宝石店に寄った。
ガイドさんがお店に連れて行ってくれると言うからすごく期待していたのに、宝石店だったのだ。がっかり。目的が違う。今回の旅はアジア旅行を満喫したいのだから、アジアン雑貨店に連れて行ってほしかった。
そんなわけで、店内にあるミニCafeでTakeFreeのお茶をすすって友達と談話して時間を潰した。
この時ガイドさんとも話したりしたのだけれど、その間にとんでもないあだ名を付けられてしまった私。その名とは――『アニキ』。
不意に言われて、それからはさよならするまでずっとアニキ呼ばわりだった……。覚えた日本語を使いたい気持ちはわかるけど、何も女の私をアニキだなんて呼ばなくてもいいと思うぞ。せめて姉貴にして。……って、そういう問題じゃないか。
私って、いったいどんな風に見えるんだろう……。( ̄  ̄;)うーん
と、恐ろしく不安になった。


昼食はサイアム・シティホテルの『リンファ』で飲茶を食べた。
食べ放題と銘打たれていたはずなのに、高級そうな店内で大きな円テーブルをツアー客全員(10人)で囲み、そこへチャイナドレスを着た店員さんが料理を運んできた。シュウマイや春巻きなど3つずつ盛られたお皿が3皿ずつテーブルに並んだ。1人1個どころか、誰か1人は食べられない計算である。
みんなそれを無言のうちに察知して顔を見合わせて戸惑った。でも誰からともなくお箸を手に持ち、お皿に手を伸ばして自分の受け皿に取っていった。おいしいものは早い者勝ち状態である。まぁ、品数は多かったから10人でも全てのお皿が空にはできなかったけれど。
いや、9.5人かな。このときの私は暑さに当たったのか非常に疲れていて、ほとんど口をきかないばかりか食欲もなかった。それぞれの前にも3種類ほどのメニューが用意されたけれど、それも完食できなかった。
ああ、食べるの好きなのになんてこと……。
反面、友達は食べ過ぎてあとで苦しそうだった。
食べられないのと食べ過ぎて苦しむのとどっちがマシなんだろう。なんて、ふと考えてしまった。


バンコクを出て、古都アユタヤへ。
最初に訪れたのはバン・パイン離宮である。今でも王室関係者が実際に利用することもあるという。手入れの行き届いた緑と水の豊かな庭園が広がっていた。大小の象の形に刈り込まれた低木が芝生の上にあったり、ヨーロッパのデザインを取り入れたパステルカラーの壁をした建物があったり、東屋があったりした。
散策中、急激に空模様が怪しくなった。風も強くなり、髪が煽られる。
池に住む鯉にもらったパンくずをあげているとき、ガイドさんが早く行こうとせかした。
絶対に雨が来ると言う。この時期はちょうど雨期だったのだ。
ガイドさんが急かす直前、友達が池の縁に放り投げたパンくずを鯉ではない何かがパクついた。
「うわッ、何これ~っΣ( ̄ロ ̄lll)」
最初、それが何だかわからなかった。うなぎかと思うくらい細長い頭部だけが見えていたから。でもすぐにその下の体が見えた。それが首を縮めたのだ。スッポンだった。
「な、なんでスッポンがこんな所に!?」
鯉とスッポンが一緒にいるところなんて初めて見た。というより、スッポン自体を生で見るのは初めてだった。
急いで移動して離宮の奥へと向かい、明天殿という名の中国風の建物へ。屋根の角には龍が乗っていたり朱塗りの柱だったりと、中国の雰囲気たっぷりである。中には一応入ることができるけれど、立入禁止の部屋を廊下の窓から覗き見るだけしかできない。でもさすが、王族が現在も利用するだけあって立派である。
ここで初めて他のツアー客たちの前でガイドさんに「アニキ」と呼ばれた。クスリと、笑われた。
せめて他の人の前で呼ぶな~!!(T_T)
明天殿からバスへ向かう道中で、とうとう雨が降り出した。ガイドさんは先頭を切って走り出し、後ろも振り返らない。私は走れなくて、すぐさま鞄から折りたたみ傘を取り出して差した。後姿の遠くなっていく人たちを見送りながら歩いていた私に、友達の1人が付き合ってくれた。
ああ、なんて優しい♪
隣を歩く友達を視界の端に映して、なんだか涙が出そうだった。
この場を借りてお礼を。「ありがとうっ!!」


次の訪問地は日本人街跡。到着時にはもう、雨は糸雨ほどしか降っていなかった。
ここには、一時は3000人近くの日本人が逗留していたという。でも現在は、日本人街の首領として義勇兵を従えアユタヤ王朝に仕えた山田長政の功績を称えたブロンズ像と“アユチヤ日本人町の跡”と書かれた石碑があるのみ。そのブロンズ像も、私たちは見ていない……。
入口からして歩くのが困難なほどの水溜りと、案内された石碑の頭上を覆っている木の枝から垂れる雫が気になったことだけが印象に残った。(笑)


そしてアユタヤでのメインイベント(?)であるエレファント・キャンプへ。
象乗り初挑戦である。
象に乗るための専用台に登り、待ち構えていたキャンプのおじさんの手を借りて象の背中に設置されたビーチパラソルのような傘がついたミニベンチ型の椅子に移った。像の背中と専用台が同じ高さのため、思ったよりは乗りやすかった。
さて、カメラを片手にいざ出発。
象の背中から見下ろした図
が、困ったことに象の背中は揺れが激しかった。写真を撮るタイミングがひどく難しい。
でもせっかくの記念だから絶対に撮っておきたかった。私はもちろん友達もそれぞれに互いを写そうと必死にカメラを構えた。その甲斐あって、何とか互いに1枚ずつ成功した写真が撮れた。現像した写真を見て、思わずホッと息をついたものである。
ちなみに象使いのおじさんにも1枚撮ってもらった。象の上から撮ってくれるから写っているのは上半身だけで、象に乗っている意味はあまりない写真なんだけれど。(笑)
ワット・プラ・シー・サンペットを象に乗りながら見ると日程表には書いてあったけれど、実際にはエレファント・キャンプからすぐ横の車道へ出て50mほどを往復して終わりだった。なんだかあっけなかったなぁ……。




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