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月の旅人
ニュルンベルクの旧市街散策
ニュルンベルクの旧市街散策
2時間近く移動して到着したのは、城壁の残る伝統の町ニュルンベルク。
城壁内の大通りでバスを停め、中央広場で添乗員さんから少しだけ説明を受けた後、それぞれの自由散策となった。集合時間は1時間後と告げられる。時間があるようなないような、微妙な設定だった。
ニュルンベルクは旧市街と新市街の2つからなり、私たちが散策したのは旧市街側である。ニュルンベルクの中心となる中央広場には、ボ~ッとしていても目に飛び込んでくるほど目立つ建造物が2つあった。1つは『フラウエン教会』。とにかく派手なゴシック様式のファサードがど~んと中央広場に向かって建っているのだ。ここまで存在をアピールされては無視などできない。(笑) 強引に招かれるようにして、まずはここから見学することになった。
ファサードに近づいてみると、もうこれ以上飾る所はないだろうというほど彫刻で埋め尽くされていて、銅製だか何だかの重そうな扉も浮き彫りが施されていた。人の2倍ほどの高さのあるその扉を開けて中に入ると狭いエントランスのような場所になっていて、そこにも金色に輝く聖人たちが壁に柱に刻まれていた。
が、そこで私と妹が目を奪われたのはそれらの彫刻ではなかった。そこに5、6人の老齢の人たちがいた中で、眼鏡をかけ、太めの体型にロングスカートを穿いたどう~見ても女性にしか見えない人の、ある部分に驚愕したのだ。
なんと、その人は胸にまで届くほどに長い顎鬚(あごひげ)を蓄えていた。顎の先からだけの細いものだったが、それでも髭には違いない。
あまりじろじろ見るのも失礼だと思い興味に誘われて名残惜しむ視線を無理やり外したが、その姿は脳裏にしっかりと焼きついた。
その人はまだそれほど歳にも見えなかったが、女性なのにあれほど髭を伸ばしているなんてどういうことだろう。周囲の視線も気にならないのだろうか。それとも髭以外は女性に見えるのに、実は男性だったのか?
解明する術を持たず、妹と2人で何度も首を傾げていた。
「そういえば」と、その時に思い出したことがある。誰の肖像画で誰が描いたものかすっかり忘れてしまったけど、かつてどこかの国に髭を生やした貴婦人がいて、その肖像画が残っているのだ。稀に、そういうこともあるのだろうか。
50人くらいはいたのにとても静かだった教会内部は、信者でもない私たちは場違いな雰囲気が漂っている気がした。それでも気がつくと10分近く経っていて、急いでフラウエン教会を出た。
この教会には、カール4世の金印勅書によって選ばれた7人の選定候が時間になると行進する、という仕掛け時計があるらしいが、残念ながらそれを見ることはできなかった。
長くなったが、中央広場でもう1つの目立つものは『うるわしの泉』と呼ばれる噴水である。噴水というより塔、うるわしというより賑やかしといった感じだった。キンキラと派手なその噴水を飾る人物像は、ユークリッドやソクラテスなどであるらしい。あまりに派手過ぎて、人物像などにはちっとも目が行かなかった……。
右の写真が、その『うるわしの泉』。
このうるわしの泉には柵が設けられているが、その柵に黄金の輪が嵌め込まれており、それを3回転させることができた者は願いが叶うという言い伝えがあるらしく、連日人が訪れて挑戦するようだ。
添乗員さんの案内にその部分が含まれていなかったのか聞き逃したのか、それを全く知らなかった私たちは塔の写真を1枚撮っただけであっさりと素通りした。ああ…せっかく願いを叶えてもらえるかもしれないチャンスを、みすみす逃してしまった……。
中央広場から北へ進路を取り、坂道を上る。が、ガイドブックの1冊も持っていなかった私たちはその先に何があるのかを一切知らなかった。
並び立つ旧市庁舎、市庁舎もフェンボー市立博物館も素通りし、道路工事中のオレンジ色のつなぎの作業服を着たお兄さんと「こんにちは!」と日本語で挨拶を交わして手を振って別れ、左の路地に逸れた。そこにはとても可愛い木組みの家々が建ち並んで石畳の路地もいい味を出していて、2人して口々に、「めっちゃいいやん♪」と大はしゃぎ。
そこでそれぞれの記念撮影をしている時、とても仲の良さそうな老夫婦がはしゃぐ私たちを微笑んで見ながら通り過ぎていった。が、数m先で立ち止まり、おじいさんが木組みの家をバックにおばあさんを撮影しようとしていたのを見て、
「せっかくやし2人一緒に撮ってあげよう」
と妹と言い交わした。駆け足でおじいさんの傍へ行き、それを片言の英語とジェスチャーで伝えた。ちゃんと伝わったようで、「ダンケ」と言いながらおじいさんがおばあさんの隣に立つ。とっても絵になる、可愛くて素敵な夫婦だった。全然知らない人なのに「その写真、私にもください」とちょっと言いたくなった。( ..)ヾ
そのあと私たちも同じアングルでおじいさんに撮ってもらい、ささやかだけど楽しい交流を終えて別れた。
さらに路地を進むと城壁に突き当たり、そこの広場にある建物が『カイザーブルク(皇帝の居城)』だとも知らずにチラリと見上げただけですぐにその場を離れ、ティアゲルトナー門前広場でまた異様な存在感を放つ物体を見つけてしまった。皇帝の居城のわりにずいぶんと質素なたたずまいのそれより、よほど目立っていたのだ。
それは奇怪で大きなウサギの像。デューラーという画家の有名な銅版画を模しているらしいが、ぎょろりと見上げている目もその姿形も実に不気味だった。目にだけ彩色が施されているのが、より不気味さを増していたのかもしれない。
それからデューラーという有名な画家の『デューラーハウス』も見事に素通りして坂道を下り、無料の公衆トイレを見つけて借り、そびえる2本の塔を目指して『ゼバルドゥス教会』へ。
少しだけ中に入り、静寂の中で小部屋風になっている祈りの場を見つけてお祈りしてみた。その光景を妹が写真に収める。こんな不謹慎なことで祈りが届くのだろうか……?(ーー;)
集合時間も迫り、これで散策を終えてバスの待つ大通りへと戻った。1時間など瞬く間である。もっとじっくり散策したかったなぁ。新市街側にも行ってみたかったし。これがツアーのツライところだ。また機会があれば、きっと訪ねよう。
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