月の旅人

月の旅人

日没のローテンブルク

日没のローテンブルク


ローテンブルクに到着したのは、日没間際の夕刻だった。ツアーのパンフレットや日程表には午後に到着後散策と書いてあったのに、ちょっと騙された気分である。ロマンチック街道は渋滞することなくスムーズに走れたことを思えば、当初から到着は夕刻だったはずなのだから。ローテンブルク散策もこのツアーの楽しみの1つだと思っていただけに残念である。他の人もちらほらと私と同じ意見の人がいた。
が、文句など言っている時間などもったいなさ過ぎる。とにかく一刻も早くチェックインして、1分1秒でも早く散策しなければ夜になってしまうのだから。
まさにチェックインだけを済まし、宿泊するプチホテル前の駐車場になっているシュランネン広場に18時40分に集合し、まっすぐにマルクト広場へ向かった。

ドイツのどの街にもあるマルクト広場は、中世の町を取り囲む壁のほぼ中心にある。そして決まった日に市が開かれるのだ。そしてそこにはほとんどの場合、町の人たちが水を汲みに来る泉があるらしい。その広場に面して市庁舎、迎賓館、町の守護聖人を祭った教会がある。これがドイツのマルクト広場の一般的な姿のようだ。ローテンブルクも中世そのままの町であるため、このような典型的な姿をしている。ただし教会だけは広場に面しておらず、少し奥まった所にあった。

迎賓館謙宴会場となっている『ラーツトリンクシュトゥーベ』では、毎日定時に“マイスタートゥルンク”の様子がからくり時計によって再現される。これは町を破壊、略奪しようとしたティリー将軍が3リットルの大杯に満たされたフランケンワインを前にして「この杯を一息で飲み干す者がいたら許してやろう」と提案し、それを元市長ヌッシュが受けて立ち、見事に杯を空にして町を救ったというエピソ-ドの、まさに杯を飲み干すシーンの再現である。ヌッシュ氏はその後も37年間健在で80歳の天寿を全うしたというから驚きである。すごい人物もいたものだ。
そのからくり時計が次に作動するのは夕食後の21時ということで、その時は添乗員さんから説明を受けただけだった。
ラーツトリンクシュトゥーベは上から日時計、帝国の鷲の紋章、日にち時計、そして主時計と配置されていて、からくり時計が作動する時刻以外にも人々が見上げる、マルクト広場のシンボルのようだ。

その西側を埋める市庁舎は、上部のルネッサンス様式と下部のバロック様式のアーケードが見事に調和した美しい建物だった。その背後にはゴシック様式の切妻塔を持つ部分があり、その塔にはローテンブルクを訪れたほとんどの人が登るという。私たちは登れなかったけど……。(T_T)

夜景そこで19時30分の夕食時間まで自由行動となり、刻々と闇が迫るローテンブルクを急ぎ足で散策した。ショウウィンドウを見るだけでも可愛いお店がたくさんあったがどこもすでに閉店していて見られず、かなり心残りだった。翌日も出発時間が7時過ぎのため店など開いているはずもない。ああ……。(;_;)


市庁舎の西でくるみ割り人形のお店を見つけ、その店頭にあった2mほどの兵隊人形とツーショット写真を撮り、可愛い人形のお店のショウウィンドウを名残惜しげに眺めている妹の後姿を撮り、東に路地を抜け北の坂道を下り宿泊するプチホテル『シュランネ』の前を通って城壁へ出た。すでに19時10分である。
城壁の通路でもここまで来たら市壁上を歩かねばと、細くて急な石段を登った。市壁上は木組みの屋根があり、足元は狭くてすれ違うことも難しく平らでもない。木造の手摺りは古くて不安なため頼れず、さらに日没のためもう太陽の残光がかすかに町を明るくしているだけなので暗かった。それでもかつて貯水槽の役割も果たしていたというクリンゲン門までの100mほどを何とか進み、これまた急な石段をこわごわと降りた。ついでにと門を少し抜けてみたが、時間も迫っているためそこにあったボロい橋を渡っただけですぐに戻り、市壁沿いをプチホテルまで歩く。その間に、風景は完全に夜になってしまった。

きちんと5分前にホテルに入ることができ、初めて部屋に入った。私たちの部屋は2階の一番奥だったが、開けてビックリ。Σ( ̄□ ̄*)
ドアを開けた途端にクローゼットが見えて左側に続く短い廊下があり、突き当たりにドアのある広い部屋があった。しかもベッドが3つもあり、木のぬくもりのある白と紺で統一された可愛い部屋だった。
プチホテルの部屋2「最高~♪」「めっちゃいいや~ん♪」とそれぞれ歓声を上げて興奮し、妹はさらに、「こんな部屋に住みたいっ。こんなんがいいねんっ」と部屋を眺め回していた。
バスルームはどんなだろうと廊下に戻り、左側にあったドアを開ける。期待通り、広くて小綺麗なバスルームがそこにあった。
あまりに感動して部屋で何枚も写真を撮り、気づいたら夕食の時間だった。急いで階下へ降りて食堂へ入ったが、私たちが一番乗りだった。みんな名残惜しげに町を散策していたのだろうか。

両側にテーブルが並ぶ細長い食堂で、おいしい夕食をいただいた。この日は白身魚のムニエルとリゾット風の白ごはんが登場した。プチホテルの女主人が日本好きで、日本人の口に合う料理を日々研究しているらしい。しかも日本語も少し話せて、「気軽に日本語で話しかけてください」という陽気なおばさんだった。
このとき相席になった2人連れのおばさんに私たちが葡萄ジュースのおいしさを熱い口調で語ったら、2人とも是非飲んでみようと葡萄ジュースを頼んだ。が、1人は「ほんとにおいしい♪」と言って飲み干してくれたが、もう1人は甘いのが苦手だったのかほとんど飲まずに残していた。やはり味覚は人それぞれのようだ。申し訳ない……。変わりに全部飲みたいところだったが、さすがにそれもどうかと思ってやめた。ちなみに最初に飲んだ葡萄ジュースは赤、このときは白だった。ワインと同じように葡萄ジュースにも赤と白があるらしい。ただし注文時に色を訊かれなかったところを見ると、その地方によって違いがあるだけなのかもしれない。

からくり時計8時45分頃に夕食を終え、そのまま21時のからくり時計を見るべくマルクト広場へ向かった。特に時計に照明が当たっているわけでもなかったので、ブレずに撮るのにかなり苦労した。広場なのでカメラを置く場所などなく、三脚がなければ自力で動かないようにして撮るしかないのだ。1分ほどしかないそのからくりを何枚も撮り、液晶画面でその中に何とかブレずに撮れた写真を見つけてニヤリとし、その後は再び自由行動となったので夜景の綺麗な場所を探して写真を撮った。
まずマルクト広場で木組みの美しい家をバックに撮り、ライトアップで浮かびあがるザンクト・ヤコブ教会の前で互いに撮り合い、その撮影場所の前にあったインテリア小物のお店のショウウィンドウを覗き込んでいる私の後姿を妹が撮り、道中で見つけたプチホテル前の籠で花が咲き誇っている黒い自転車を妹がマイ自転車風にハンドルを握っているところを撮り、シュランネに戻ってその前でも写真を撮り合った。
たった30分ほどだけ夜のローテンブルクを散策し、部屋に戻る。今日はかなり歩いたため、すでに少しお疲れモードだったのだ。もっと元気が残っていれば、他のスポットも探し歩いていたかもしれない。だって、夜もとても情緒のある素敵な町だったから。
つくづく日中に歩けなかったのが残念でならない。
またいつか絶対……って、これ何度目……? f(^^;)

部屋に戻ってすぐに私から入浴し、次いで妹が入った。絶対にやりたかったという泡風呂にし、そこに入浴している姿を記念に撮ってくれと言うので、私はなんだか怪しげなバスルームカメラマンと化した。(笑) 
疲れているわりに、こんなことをしているお馬鹿な姉妹である。(^o^;
それでもちゃんと11時過ぎにはベッドに入って就寝した。えらい? ←普通やろ…


© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: