最初に目にしたのは、そんな廃墟の入口に建つ『エリザベート門』、別名『一夜の門』だ。ルートヴィッヒ5世が妃のエリザベートの誕生日のために、彼女のお気に入りの散歩道だった庭の入口にたった一晩で作らせた門である。毎朝この庭を歩いていたエリザベートが、誕生日の朝もいつものように散歩していると昨日までなかった門があり、それに彼女は驚いて、王からの誕生日プレゼントを喜んだという。そりゃそうでしょうとも。ロマンチックな話だ。ツアーのおばさんたちからも溜め息が洩れていた。その時のだんなさんの反応も見ておけば楽しかったかも?
そして城門の正面に位置するのがルネッサンス風建築の『フリードリッヒ館』。1607年にフリードリッヒ4世に建てられて以来、代々の選帝候たちの住まいとして使われてきた館である。この館だけは戦禍を免れたのか、それとも再建されたのか綺麗に残されていた。
そして、このテラスにも伝説が1つ残されている。テラス中央の建物寄りの部分に、『浮気者の足跡』と呼ばれるめり込んだ足跡があるのだ。それは、王があまりに浮気をすることに腹を立てた妃が復讐のために王が狩りで留守中に若い騎士を部屋に呼び込んだのだが、狩りに出たはずの王が急に帰宅しあわてた騎士が鎧をつけたまま妃の部屋の窓から飛び降り、その時にできた足跡だと伝えられている。が、足跡はなぜか片足である……。すかさずそれにツッコミを入れるおばさんもいた。
この樽の前で解散して20分間の自由行動が許され、樽の右側から階段を登って樽の上の踊り場を通り、ペルケオの像の前を通って元の場所に戻った。