月の旅人

月の旅人

短い長旅の終わり

短い長旅の終わり




持参した目覚ましをかけてしっかり6時に目覚め、起き出したのはその15分後、そして準備を終えて部屋を出たのはさらにその30分後だった。階段で写真を撮っていた時、降りてきた添乗員さんと会った。
「おはようございます。早いですね」
と少し驚かれ、「おはようございます」と声を重ねるようにして言いながらへへっと笑う。非常口のマークと同じ格好で写真を撮ろうとしていた所を目撃されたかもしれず、早起きに胸を張る気分と恥ずかしい気分が混ざった笑いだった。(^o^;

7時になったと同時に食堂へ向かう。添乗員さんの他は誰もおらず、お客の中では私たちが一番乗りだった。席は自由にとのことだったので、ライン川の見える窓側の席を取った。外はまだ空が白み始めたばかりで薄暗い。
朝はやっぱりビュッフェスタイルで、奥に用意されたハム類や数々のパン、数種のヨーグルトとチーズやフルーツジャム、さらに数種類置かれていた紅茶をどれにするかで迷った。挙句、結局そのどれでもなく妹と同じ牛乳にする。そして迷いなくお皿に幾つも盛ったのはメロンである。(笑) 1度どころか3度も席と料理の間を行き来し、ようやく席についてテーブルの写真を撮ると、それはそれは豪華な朝食が画像に収まった。2人で画像をチェックして「おぉ~っ」と感動し、その豪華な朝食を食べてみてまた感動した。
実は、ドイツのパンもこの旅でハマった物の1つだ。この日までに何度か食べたドイツのパンはどれもおいしかったが、ラインフェルス城で食べたパンはそのどれよりおいしくて、表面のカリッとした部分の香ばしさと内側のふっくらとした部分が絶妙だった。
ドイツのパンは日本ではあまりなじみがないが、ケシの実をつけたりライ麦をふんだんに使ったりハーブを練り込んだりとバラエティも豊富で、どれも何もつけなくても充分に旨味のあるパンである。前日にこねて仕込んだタネを朝まで寝かせて焼くそうだ。町のパン屋さんも7時には開店していて、ドイツで一番早起きの職業はパン屋さんだといわれているくらいである。
この時の朝食のパンも焼きたてホカホカで、全種類はとても食べられないからせめて何個か持って帰りたいと真剣に思った。同じく、妹も。(^-^;

私たちのテーブルにクルーズで席を確保してくれたおばさんが同席し、あれこれ話しながらさらにメロンや生ハムをおかわりして食べていたら、気がつくともう1時間も食事をしていた。
「うわっ、もう8時や! 早く行かなっ」
あわてて残りを口に運んでいる間にも、後から来た人たちもどんどん席を立って食堂を出て行き、一番乗りだったはずの私たちが取り残されていった。


ようやく席を立って部屋に戻り、スーツケースを部屋の外に出して散策を開始する。ホテルとなっている部分は昨日他の人の部屋まで見せてもらって探険済みなので、昨夜暗くて断念した廃墟部分や古城周辺を巡ることにした。
古城ホテルの外観
ところが、廃墟部分は入口の扉が施錠されていて開かず、泣く泣く諦めることになってしまった。悔しいので、その傍にあった望遠鏡を覗いているところやライン川を見てたそがれているところを廃城をバックにして写しておいた……。
それから駐車場へと続く道と別れてラインフェルス城の別館であるヴィラ風の新しいホテルへと続く雰囲気たっぷりの橋へ向かった。その手前の短~いトンネルに大砲がドンッと置いてあり、せっかくだからそれを覗いているところも互いに記念撮影。f(^^;) そこから橋を見ると、アーチ型に切り抜かれたように見える景色がとっても可愛く、欄干に飾られた赤い花が彩りを添えていて、その景色に惚れた私たちはまたまた互いに写し合った。
そして橋を渡ってラインフェルス別館へ進み、そこで頭上に鉢を抱え裸体で膝立ちしている女性像を見つけ、同じポーズをして撮ったりした。もちろん服は着たままで。(笑)
それから城壁に沿って坂を下り、先刻渡った橋の下を抜けて、7、8本の木が一列に並んだラインフェルス城の裏口らしき場所に出た。赤いベンチが木の下に等間隔に置いてあり、とても絵になる場所である。そこからはライン川が望め、景色も最高だった。

そろそろ出発時間も近づいてきたため少し景色を眺めてから引き返すと、大半の人がもう古城ホテル前のちょっとした広場に集まっていた。トイレを済ませてから私たちもそこでバスの乗車が始まるまで待とうと思ったが、クルーズも朝食も一緒だった一人旅のおばさんが私たちの傍にやって来て「あの橋の所で写真撮った?」と訊いた。撮ったと2人して頷くと、城側をバックにして撮ったかと訊かれ、そういえば振り返って見ていなかったことに気づいて首を振る。すると、これぞ古城といった感じのいい写真が撮れるとお勧めされ、残り時間も少ないため3人で橋まで駆け足で向かった。
2人並んで1枚だけ撮ってもらい、入れ替わっておばさんの写真も撮ってあげる。それから戻るとちょうど添乗員さんがバスへ乗るようにと促しに来たところで、29人がぞろぞろと名残惜しげな足取りでバスの待っている駐車場へ。

ドライバーさんが、全員のスーツケースをバスの腹部へ収納していた。初日のビジネスマン風スタイルではなく、とーってもラフなトレーナーにチノパンだった。実は昨日と同じ服装である。
このドライバーさん、初日こそスーツにネクタイ姿でひとことも話さずに黙々と運転をしていたが、翌日はネクタイなしのYシャツ姿になり小さく音楽を鳴らしながら運転し、さらに翌日はトレーナーにチノパン姿になって携帯電話で誰かと話して大笑いしたりしながら運転していた。その変化がおもしろかったため、私と年齢の近い2人連れや同じく姉妹で参加していた女の子たちと、
「だんだんカジュアルになってきてはるなぁ。最後はどんな格好にならはるんやろ」
と笑いながらオチを期待していたのに、前日と全く同じだったため少しガッカリした。(笑)

ベンツタクシーの群れ9時過ぎに古城を出発しアウトバーンを走り抜けて1時間半弱でフランクフルト空港に到着し、たくさんの純白のベンツタクシーが乗客を待って並んでいる横を通って国際線乗り場の入口に入った。
とにかくお土産を買う時間がほとんどなかった強行ツアーだったため、本当なら空港の近くにある三越百貨店でお土産を少し見る予定だったのだが、なんと運の悪いことにこの日10月3日は“ドイツ統一の日”で国中が休日のため、お店というお店がすべて休んでいて三越百貨店もその例外ではなかった。
そのお詫びということで、三越百貨店の方が空港で私たちを待っていて、昼食にとフレンチサンドとバナナとミネラルウォーター1本をそれぞれにくれた。そしてモニターツアーであるためプレゼントもあるとかで、これも1人に1つティーパックの紅茶セットを手渡してくれた。
それを手にして、「これもお土産にしよう」と何人かが言ってた。(^o^;

さて、搭乗手続きが始まり、列に並んでいた私たちの番がやってきた。妹が係員のお姉さんにこの名前は日本名なのかと英語で訊かれて意味がわからず「え? え?」とうろたえたが、添乗員さんがそんな妹に気づいて傍に来て通訳をしてくれた。妹の名前は海外の人にもたまにいる名前なので、その名前は日本でもよくある名前なのかと訊きたかったようである。ちなみに、私の名前は海外の人には発音しづらいらしく、まともに呼ばれたことがない。(_ _。)…シュン
その後は何事もなく出国手続きを済ませ、3時間近い時間を空港内の免税店をうろついたりリクライニングチェアで休んでみたりもらったランチを食べたりして時間をやり過ごした。
それから搭乗ゲートを潜ると、あとはまた長い長いフライトが待っている。

行きが窓側席だったため本来の席は真ん中の座席だった私たちだが、ドイツを離れてしばらくしてから窓側席と替わってもらった。妹が窓の外をしきりに気にしていたら、「私たちは寝るから替わってあげるよ」と2人連れが言ってくれたのである。行きはず~っと夜だったため、雲海を眺めることはできなかったので喜び勇んで窓側の席に移る。そして妹は長々と窓の外に魅せられ、何枚も何枚も写真を撮っていた。

夕食は鶏のから揚げとピーマンや玉ねぎを中華たれに漬けたユーリンティーと呼ばれる料理がメインのものを選び、行きのフライトと同じくとても美味な機内食に満足。そこで、ふと思う。エコノミーの機内食がこんなに美味しいということは、ビジネスやファーストクラスの機内食はいったい……と。ま、考えても仕方ないことなんだけど。( ..)ヾ
そのうちに窓の外は闇になり、私の左隣の一人旅のおばさんはずーっと映画を観ていて、私たちも寝ればいいのに夕食後も2人でおもしろい顔をしたりしてデジカメのシャッターをパシャパシャと切り、画像を見てはくすくすと笑い合った。変な姉妹である。(^o^;

それからいつの間にか少し眠り、妹に起こされて目を覚ますと、「姉ちゃん、明るくなってきたで」と窓の外を指し示した。確かに雲海の彼方が赤く染まり、その上空が白み始めていた。空の芸術を見ているようで、私もその光景に魅了される。妹は見るだけでは我慢できず、またまたデジカメを取り出して何枚もシャッターを切っていた。
そのうちに朝食が運ばれてきて、オムレツを頼んで食べる。朝の5時過ぎだろうか。早い朝食である。6時40分に香港空港着予定だから、それも仕方がない。朝陽に照らされた綺麗な雲を眺め、約2分遅れで無事に空港に着陸した。

香港空港で出会った女の子関空へ向かう機に搭乗するまで2時間ほどの待ち時間があり、行きはすでに閉まっていたお店を見て回った。雑貨店で中華風のペンダントとブレスレットをそれぞれ色違いでゲットし、ドライフルーツ専門店でいくつか試食だけして(笑)、特にもう欲しい物もなかったためおもしろスポットを探しながら搭乗ゲートのほうへ向かう。
子供の遊具場所を発見し、そこで西洋人のとっても可愛い女の子と出会った。まだ2歳くらいでおしゃぶりをくわえている姿が何とも言えず、ゆるやかにウェーブした長い金の髪とくりくりの深い青の瞳が綺麗でとってもと~っても可愛かった。アスレチック風の遊具に付属したミニ滑り台に夢中な彼女に何とか止まってもらうことに
成功し、妹とツーショット写真を撮る。そのあとも彼女はパパに見守られながら、何度も何度も何度も何度も何度も(笑)滑り台を堪能していた。

香港の空港で楽しい時間を過ごして最後のフライトとなる飛行機に搭乗し、今度はおとなしく真ん中の席に座ったまま、相席になった同行者の母娘と会話を弾ませているうちに昼食が運ばれてきて、これまた満足な味に妹とにんまりし合い、食後は背もたれを倒すのも忘れて眠りこけたりしているうちに関空に到着した。行きと違い、帰りはずいぶんと早い気がする。勘違いせず、正確に時間を把握しているせいもあるのかもしれないが。f(^^;)

妹と2人での初めての旅行は、こうして終了した。
自分たちでも驚くほど互いに写真の枚数がかさんだが、それもいい思い出である。…ということにしておく。(笑)
これが最初で最後になるのか、次があるのかまだ定かではないけど、これからもどうぞよろしくね、妹。(*..)ヾ


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