月の旅人

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修道士の谷と陶器工房

修道士の谷と陶器工房




デヴレントバレートルコ絨毯店を後にし、15分弱で『デヴレントバレー』で写真ストップ。
2000万年前は海の中だったらしい。とてもそうは思えない白い岩々が連なる乾燥した大地が続いている。中には風雨の浸食によってできた犬、フクロウ、トカゲやキスをしている鳩、ナポレオンハットなどにも見えるおもしろい形をした岩があるらしいが、私たちが見ることのできたのはラクダ岩だけだった。
しっかり手乗りラクダに見えるように撮り、大学生の2人もおもしろがって同じように撮った。


5分ほどですぐに出発となり、夕陽を浴びると谷が真っ赤に染まるという『ローズバレー(赤い谷)』を窓越しに見て通過し、別名『修道士の谷』と呼ばれている『パシャバー』でバスが停まった。ここはきのこ岩の形状が見事なスポットで、観光客は必ず訪れる場所らしい。お土産屋もこれまでで一番多く建ち並んでいた。
バスを降りて、より奇岩のよく見える位置へ移動しようと砂地を奥へ進むとその奥にも露天が広げられており、青年かおじさんかよくわからない青のチェック柄のシャツを着た男の人に「アナタキレイ」と連呼されてとても気に入られたみきちゃんは、ベストスポットへ案内してあげようと手を引かれて行った。私も後に続いて行ってみると、確かに現地の人が勧める場所だけあってそれは見事な景観だった。
カッパドキアの奇岩低い木は葡萄らしく、この辺りで多く栽培されているらしい。11世紀頃にこの谷で多くの修道士が岩窟で暮らしていたそうで、彼らがワインを作り始めたのだろうか。
トルコの魔除けとして誰もが持っているらしいナザール・ボンジュー(Nazar boncugu)というこいのぼりの目玉のようなお守りがデザインも大きさも様々にたくさん売られている露天の傍に、内部を見学できる岩窟が1つあった。
みきちゃんを気に入った男の人が是非入るよう勧めたが、その入口の急なことといったら半端ではない。階段とは形ばかりのほぼ垂直のそれを、手すりも無いため壁を支えに登るのだ。私は下から覗いてみただけで断念した。とても無理である。
そこで、みきちゃんだけ登ることになった。先にみきちゃんが登り、下から現地の男の人がついていく。途中で仰ぎ見るようにして写真を撮ると、そのまま登って姿が見えなくなった。男の人はみきちゃんを支えるためなのだろうが、手つきがとてもいらやしい感じがした……。(ーー;)

その写真を撮るとき、ちょっと困ったことがあった。同ツアーのおじさんが岩窟に登るためにみきちゃんが預かっていた同ツアーのおじさんの一眼レフカメラを、みきちゃんも共に登ることになったため代わりに私が預かることになったのだが、私がストラップに手を掛けながら仰ぎ見て自分のデジカメで写真を写そうとしたとき、傍にいた他の現地の男の人が自分が持っていてあげようとストラップを強引に引っぱり、「No,Thank you!」と言っているにもかかわらず引っぱるのをやめず、力負けして取られてしまったのだ。
自分のカメラでも厭なのに、人のカメラを、それも高価そうな一眼レフのカメラを無理やり取られ、もし預かるだけじゃなくそのまま逃げられたらどうしようかと、心底不安だった。幸いそういうことはなく、傍に来たおじさんの奥さんが一眼レフカメラに気づいて奪うように取り戻し、写真を撮ってあげようと言う男の人に「自分で撮るからいいっ」と怒ったように拒絶していた。
力負けしてしまったとはいえ預かったのは私だったから、ものすごく申し訳ない気分になった。(;一_一)

ま、そんなことがあったが岩窟に無事登ったみきちゃんが窓になっているらしい穴から手を振っている所を見上げて写真に撮り、おじさんも奥さんに無事撮ってもらっていた。
そうしてしばらく手持ち無沙汰でみきちゃんが降りてくるのを待っていたのだが、なかなか降りてこない。私は土産物はどうだとナザール・ボンジューやタイルをしつこくあれこれと勧められ、その場にいるのがつらくなって先にバスのほうへ向かうことにした。
みきちゃんはおじさんが一緒にいるから大丈夫だろう、と思っていたのだが……。
出発時間を少し過ぎてようやく戻ってきたみきちゃんは、ほうほうの態で逃げてきた、といった様子で、「危なかった~っ~(>_<。)~」と話し出した。
なんと岩窟の中で触られまくったのだそうだ。青チェックシャツの、私がいやらしい手つきだなぁと思った男の人に。しかもツアーのおじさんが先に下りてしまい、2人になってしまってさらに危険なことになりそうだったとか。
みきちゃんが登るときに支える手つきがいやらしいとは思ったけど、まさかそんなことになろうとは……。
無事に逃げ出せてよかったね、みきちゃん。(; ̄o ̄)=Эホッ


次に訪れたのは、アヴァノスという陶器で有名な場所にある陶器工房。
カッパドキアらしく、岩窟に作られている工房だった。
ここで陶器作りの第一人者らしい知る人ぞ知る有名人のG先生が、足でくるくると轆轤(ろくろ)を回して実演してくれた。その動きがなんだかユーモラスだったが、瞬く間に作られていくポットはとても見事で、最初に作った蓋を持って「うまく嵌まるかな?」ってな仕草と表情でお茶目なところも見せるほど簡単に作り上げてしまった。もちろん、蓋はポットにぴったりと嵌まった。
陶器工房「おお~っ、すご~い!!Σ( ̄□ ̄*)」
その場から一様に声が漏れる。
すっかりその技巧に目を奪われ、G先生の横でいろいろ説明してくれていたお兄さんの説明内容は何も覚えていなかった……。f^_^;)

実演が終わると、奥へと移動し、別の部屋でお兄さんが陶器の説明をしてくれた。
高品質の陶器はこつんと叩くととてもいい音がして、その音もまるでシンバルのように長く響くものらしい。が、質の悪い陶器は音も短くこつん、というだけなのだとか。
良い陶器の例としてお兄さんが持っていたのは、『生命の樹』という、広げた孔雀の羽根のような柄の上に同じように枝を広げて花が咲いていて、その周囲に円形に違う花が描かれ、さらにそれを縁取るようにレース状の模様が入れられたお皿で、トルコでは幸福を呼ぶ色とされているらしい青を貴重にして描かれた、とても綺麗な絵皿だった。
『生命の樹』は絨毯などにも使用されていて、トルコではポピュラーな図柄だそうだ。
その絵皿を、ふいにお兄さんが落としそうになった。
「ああっ!!Σ( ̄□ ̄∥)」
誰もが驚く中、一番前で見ていたおばさんが咄嗟に落ちる前に受けようと両手を下に突き出した。
ところが、それはなんとお兄さんの悪戯で、絵皿の後ろに手を入れられるロープが取り付けられていて、お兄さんはしっかりそれに手を通していたため落ちることはなかった。
おぬし、やるな。(ー_ー)!!
と思ったかどうか、みんなホッとしたり笑ったり「もうっ」とちょっと怒ってみたりして、次の部屋へと進んだ。

壁一面に絵皿が飾られた部屋が、眼前に広がった。
その部屋はガリップ先生のお弟子さんたちが作った絵皿ばかりだったが、素人目にはそれでも充分な美しい絵皿が数多くあった。その一角に、鉄格子で仕切られて続く部屋があり気になっていると、その仕切りの向こうはすべてG先生の作品だけが置いてある部屋だと説明があった。そこには入れないのかと思ったが、しばらくして案内してもらう。
絵皿黄丹色に塗られた壁一面に同じく絵皿が整然と飾られ、真ん中に置かれたガラス天板の展示棚にはカップやポット、花瓶などが色合いも計算されたかのように乗せられていて、なんだか見るからに高級品という気分になって圧倒された。
それらはもちろん、お弟子さんたちが作った物もすべて実際に販売されている商品で、購入希望の人たちがさっそく見て回る。
みきちゃんと私は再び現れたG先生と並んで記念撮影し、商品は美術品として鑑賞するのみだった。「これなんかどう?」と言いたげにG先生本人に幾つか勧められたが、2人とも首を縦に振ることはなかった。
ところがG先生はみきちゃんのことをたいそうお気に入りになったらしく、お店のカードにサインしてあげたうえ、手招きして部屋の端に呼び、ちょっと売り物ではなさげな商ケースの中から小皿を出してプレゼントした。しかも裏面に日付入りのサインまでして。
そのお皿は同じものが他にもあったため私にももらえるのかと思っていたが、私には見向きもせず去っていったため、「え……( ̄- ̄;)」とみきちゃんと顔を見合わせ、再び2人でG先生を掴まえ、「私にもくださいっ」とお願いしてみた。
すると真顔でちょっと考えたあと部屋から出てお弟子さんたちの商品ルームに行き、しばらくして餃子のタレを入れるくらいの小さな絵皿を持って戻ってきた。それをポンッと無言で私に手渡す。
「これって……先生の違うやんなぁ。だって向こうの部屋から持ってきはったもんなぁ」
ガッカリしつつ、サインをお願いしてみる。するとそれは自分のじゃないからサインはできないと言い、日付だけを裏に書いてくれた。
……それ、意味ないよ。
せめてお店のカードにサインしてほしかったな。(T_T)

そのあと持参していた和柄の折り紙をお返しにプレゼントしたみきちゃんが再び先生とツーショット写真をデジカメに撮ると、先生はカメラマンの私に「その写真を送ってくれ」とジェスチャーで訴える。余程みきちゃんが気に入ったらしい。
少し悩んで「OK」と返事をすると、その瞬間にはもう私には見向きもせずみきちゃんと話し出した。
……なんかおもしろくないぞ?(;^_^A
さらに名前と住所、電話番号を教えてくれと紙に書くよう言われたみきちゃんは、「日本語でいっか」と電話番号は省いて漢字でさらさらと書いて渡す。一瞬沈黙したものの、先生はそれ以上何も言わなかった。
それからもちょっと書きづらいこともあったりしたが、目の保養となる絵皿をたっぷりと見て工房を出る。
まだ商品の値段交渉をしている人たちもいたため、外で待つことにした。
工房のすぐ近くに、これも洞窟を利用して造られているらしい住居が見えていた。中見せてもらいたいなぁ、とみきちゃんと話していたのだが、なんといつの間にかMのだんなさんは1人でそのお宅に訪問し、ちゃっかり家の中に招かれておじいさんと孫らしき子供と交流を深めていたらしい。出発時間直前に戻ってくるなり、楽しそうにそのときの様子を話して聞かせてくれた。
ほんっっっと、行動派で物怖じしないおじさんだなぁ。( ̄- ̄*)尊敬~


12時半頃、カッパドキアらしい洞窟レストランを貸し切っての昼食となった。
入口にはトルコと日本の国旗が吊るされていて、その国旗の下にたくさんのナザール・ボンジューがコルクボードにピンを刺して掛けられていた。
『ボラレストラン』という思い出してちょっと嬉しくない魚の名前がついたレストランだったがf^_^;)、野菜のスープもフランスパン風のパンもおいしかった。ここでもボラらしき魚が出されて内心あせったが、しっかりと焼き色がついて中まで火が通っていたため無事食べることができて一安心。o(-。-;)ほっ
そしてこのレストランでも売られているのが、名産品の1つであるカッパドキアワイン。みきちゃんと私でそれぞれ赤と白を頼み、互いの味比べをしつつ飲む。なかなか飲みやすくておいしいワインだったけど、購入する気にはなれなかった。
理由は、荷物が重くなるから。( ̄▽ ̄;)
でもカッパドキアの奇岩をデザインされたオブジェのような容器にワインが入っているのが珍しくて、購入している人も何人かいた。

カッパレストランへとつながる階段脇に愛嬌のある河童の絵が描かれた黒いツボを見つけ、写真を撮る。
カッパドキアだけにカッパ? ……誰が考えたんだろう。
河童って、日本の妖怪だよねぇ。
日本人が言ったのか、トルコの人が河童を知ったのか……。
ま、どっちでもいいんだけど。(笑)



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