月の旅人

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建築の詩人ガウディ

建築の詩人ガウディ




サグラダファミリアに続いて訪れたのは、こちらもガウディ作品として有名な『グエル公園』。
ここは、バルセロナ一の富豪でありガウディのスポンサーでもあった実業家のグエル氏が新市街の山手に12ヘクタールもの広大な土地を購入し、ガウディに60戸の庭園住宅の設計と建築を依頼してバルセロナ市街と地中海を見下ろす田園住宅地として1900年から1914年にかけて造成された分譲住宅地である。ところが市街から遠く交通の便が悪かったのが災いしたのか、ガウディの創造する斬新な建築が理解されなかったのか、売れたのはたったの3戸で、そのうち2つはグエル氏とガウディ自身が購入したものだった。
こうして分譲は失敗に終わり、1922年から市が管理することとなり公共公園となって現在に至る。もし分譲住宅地として成功を収めていたなら、完成な高級住宅地としてガウディの素晴らしい建築の数々を見ることができただろうに……。(_ _。)あぁ…
公園としては完成していて、入場料を払う必要もなく一般に公開されている。ガウディは地形をなるべくそのままの状態で保ちながら計画を進めようとし切り崩しや盛り土をすることも避けたため、園内はけっこう起伏があり入り組んでもいる。自然を手本としたガウディらしい。
『ギリシャ劇場』と呼ばれている中央広場『ギリシャ劇場』と名づけられた中央広場はぐるりと囲むようにベンチが設けられていて、破砕タイルを用いたモザイクが美しく、人体にそうようにして作られた流れるような曲線を描くユニークなベンチは座り心地も抜群である。
1984年に世界遺産に登録された後も、市民の憩いの場であり観光の人気スポットとして人々を魅了している。


駐車場でバスを降り、ピクリとも動かない大道芸人の傍を通ってグエル公園に入る。たくさんの人で賑わう中、入って間もない場所で日本人ガイドのIさんが立ち止まり集合をかけた。日陰だってあるのに、燦々と強い陽射しが照りつける場所で。そこで説明を始めるのかと思いきや、たくさんいるらしいスリについての話が始まった。そんなことは移動中のバスの中で言ってもらいたい。しかも「あるスリはこうやってやってきて……」などと手前にいたおばさんを引っ張り出して被害者の役をさせ、芝居つきでスリの方法の数々を語り始めたのだ。
これがまた長い……。大事な話かもしれないけど、だからバスの中で話してほしいんだってば。3人とも辟易し、つつっと下がって日陰に避難する。
軽く5分以上もスリについて語ってから、ようやく移動が始まった。週末には散策に訪れる市民も多く、あとでみなさんもゆっくり散策してみるといいなどと言うIさん。その時間をまたも削っているのは他ならぬ自分自身だということに気づいてほしい……。


グエル公園のガウディ邸緑に囲まれた園内を歩き出してすぐに、高架橋になっている道が見えてきた。斜面にあるため、その勾配をゆるめようとガウディが設計したものらしい。椰子の木をイメージしたという支柱に支えられたその石の造詣はとても見事だ。
その高架橋の前にはサーモンピンクの壁を持つガウディ邸がある。現在は、ガウディが生前に使用した家具や身の回りの品などを展示している『ガウディ博物館』となっている。残念ながらその前で写真を撮るくらいしかできず、入場は叶わなかった。(/_;)見たかったよぅ…

入口からもそうだったが、中央広場へ続く道の左端に転々と球体の石が置かれている。高架橋などのように馬車も走るよう設計されていたため、歩道には球体の石を置いて目印にしたそうだ。が、それは単なる歩道の目印ではなく、なんとそれらをつなげるとロザリオの形になるという。敬虔な信者だったガウディならではの発想だろう。
そんな球体石の並ぶ道を進んでいくと、中央広場も正面入口に建つ守衛館もバルセロナの街もまとめて一望できる場所に出た。しっかりと写真に収め、さらに進む。
百本柱のプロムナード壁から柱と共に突き出した感じで作りつけの巨大な植木鉢のようになっている場所があり、植わっている黄色い花が溢れんばかりに垂れ下がっていて、その下にはオープンカフェのようにアイボリーのパラソルが広げられ椅子が置かれてくつろぎのスペースとなっていた。そこを通過して左にカーブしているゆるやかな坂を下ると階段があり、中央広場へと出た。
この広場は演劇や演奏会などの野外劇場として、また住人たちの集会所として使用されるはずだった場所である。そのため『ギリシャ劇場』と呼ばれているのだろう。

実際にベンチに座ったり市街を眺めたり破砕タイルのモザイクに触れたりしたあと、広場から出てさらに階段を下る。
そこに、『百本柱のプロムナード(散歩道)』と呼ばれるトンネルのようなアーケードのような通路があった。射し込む光もアーチを描き、壁も柱も天井も石がぐるぐる回っているかような躍動感を生み出していて、色がなくとも素敵な場所である。入口には、サグラダファミリアの降誕のファサードでもこだわりを見せたつらら状の石が施されている。あるいは洞窟の鍾乳石といった感じだ。

天井のモザイク百本柱そんな百本柱のプロムナードの入口のすぐ傍にまた下っていく階段があり、あわただしくそれを下りる。すると今度は整然と直立の柱が立ち並んでいる『百本柱』と名づけられた場所があった。実際には100本もなく86本だそうだけど。
中央広場を支えているその柱はドリス式で、上がギリシャ劇場ならこちらはギリシャ神殿といった風情の空間になっている。といってもそこはガウディ。天井は碗型の窪みが連なり、所々に破砕タイルや破砕陶器を利用してモザイクが作られている。タコの足を思わせるような装飾もあり、楽しげな雰囲気が加えられていた。
柱にも工夫がされていて、正面から奥を見たときにはタイル貼りの部分の高さが一定になるように作られている。実際よりも奥行きを感じるようにと設計されたとか。
予定ではこの場所を市場にするつもりだったようだが、現在は演奏会や子供向けの催し物などが行われているそうだ。

ギリシャ神殿風の百本柱からさらに下ったところに、グエル公園の象徴的な存在である破砕タイルで彩られたトカゲがいる。でもとてもカラフルなため、私たちは示し合わせたわけでもないのに揃ってカメレオンと呼んでいた。
カメレオン愛嬌のある顔が可愛く、口からは涼しげに水が絶え間なく流れ出ている。大半の人がそこで記念撮影をしたくなり、カメレオンの周りは人だかりになっていてシャッターチャンスを掴むのが難しい。
ここはエントランスになっていて、つまり分譲住宅の正面入口となるはずの場所だったのだ。まるでおとぎの国への入口のようなエントランスである。ここが住宅地になっていたら、きっと住みたくなったに違いない。(^-^*)

守衛館エントランスの正面にグエル公園の正門があり、その両脇に可愛い家が建っている。守衛館と住宅管理事務所となる予定だったそうで、こんなに可愛い家に住めるなら喜んで働くよ、なんて思ってしまった。現在はお土産を販売しているお店として使われている。それこそ喜んで売り子さんやります、って感じ。でもその前に、カタルーニャ語と英語を覚えねば……。( -_-)フッ ←そこですでに諦めた人(笑)


ここで、10分間だけフリータイムとなった。広いグエル公園でたったの10分……。
あとでゆっくり散策を、などとガイドさんが言っていたが散策などできる時間ではない。
まずはエントランスの向かって右側の、馬車を方向転換するための空間らしき洞の中に入ってみる。幼稚園児が遠足に来ていて、先生がその場所をくるくる走るように指示するとその通りにぐるぐるとダッシュし始め、素直やなぁ~、可愛いなぁ~、と思わず写真を撮る。
ハタとこんなところで時間を取っている場合ではないと、改めてエントランスの階段を上る。先刻よりは空いた状況を見て改めてカメレオンと写真を撮り、百本柱を駆け抜けてプロムナードへと出た。
百本柱のプロムナードせっかくだからチラッとでもぐるりと回りたいと思い、プロムナードに足を踏み入れる。そこを進むと柱の様子が変わり、二重になっている列があったりねじった柱になっていたり、とにかく飽きない。ちょっと違う世界に迷い込んだかのようである。
ちなみにプロムナードの上には草木が植えられていて、本当に緑の豊な公園になっている。
それにしても時間の経つのが早い。もう走らないと間に合わない感じで、あわてて走り出し集合場所の正面へと向かった。本当にサグラダファミリアといいグエル公園といい、足に鞭打って走っている感じで、もうヘロヘロである。初日なのに。( ̄▽ ̄;) どっちももっとゆっくりじっくり見たかった~。
いつか絶対にもう一度バルセロナを訪ねるぞっ。待っててガウディ!p(*^-^*)q


グエル公園から20分ちょっとで、グラシア通りにある『カサ・ミラ』の前を“通過”した。そう、まさに通過だった。サグラダファミリアの場所さえ知らなかったドライバーのSさん、どうやらカサ・ミラもわかっていなかった様子。スピードを緩めることもなく「あっ!!Σ( ̄□ ̄;)」という間に過ぎ去ってしまったのだ。
「撮れた!?」とお互いのデジカメをチェックし合う。通過後に振り返って撮った私の写真がまだマシ、という程度の結果に終わった……。~(>_<。)~
中に入るどころか降りて見ることもできないなら、せめてゆっくり通って~っと思ったがすでに遅し。(T_T)ああ…

なんとか撮れたカサ・ミラ『カサ・ミラ』もガウディの作品でありグエル公園と共に1984年に世界遺産に登録され、『ラ・ペドレラ(石切り場)』という別名を持つ集合住宅である。切り出した石を磨かずに使用したことからついた名だとも、積み上げた石から壁や天井を刻んで切り出していく様が石切り場に見えたから、とも言われている。石でできた山をテーマにしたといわれているが、バルコニーが海草を絡めたように見えることから波打つ海の岩場をテーマにしたと説明しているガイドブックもあるそうだ。確かに海草に見える。ワカメのようだ。
自宅兼アパートとしてグエル氏同様に繊維会社を経営し国会議員でもあったミラ家に依頼を受けて高級集合住宅として設計したガウディは、建築中はグエル公園の自宅から通っていたという。建築時期は1906年~1910年。手間隙かけまくりのガウディの建築は、日本の建物のように数ヶ月で完成など不可能なのに違いない。
曲線で構成されたカサ・ミラにはなんと1つとして同じ部屋がなく複雑な形をしているため、ガウディは図面に描くのではなく10分の1の模型を作って建設を進めたとか。2ヵ所造られているパティオ(中庭)も広く取られ、下の階へも光が多く降り注ぐようになっている。当時としては画期的だった馬車のための地下駐車場もあり、屋上には複雑な起伏と大小様々な煙突がある。屋上は山の峰を表現しているらしく、となるとやはり石でできた山をテーマとして建築されたのだろうか。
現在は地元銀行のカイシャ・ダ・カタルーニャの所有となっており、1階が受付とお店になっていて各部屋は貸しオフィス等として利用されている。4階は内部を見学できるようになっていて、曲線でできた室内には家具も置かれ、メイドさんの部屋には小道具として制服もかけられているらしい。最上階はガウディ博物館として一般公開され、ガウディ建築の模型や設計図が展示されている。
きっとまた違う世界に紛れ込んだかのような錯覚に陥るんだろう。メイドさんでいいから住まわせてほしいなぁ。( ̄- ̄*)←また言うかっ(笑)
2階と3階にはまだ実際に4家族が暮らしているらしく、と……っても羨ましい!!(>_<*)


唯一写せたカサ・バトリョカサ・ミラを通過し「あ~あ……」と落胆していると、その2分後に『カサ・バトリョ』を“通過”した。Σ( ̄□ ̄∥)あ゛
添乗員のKさんが「もうすぐ見えますよ」と言ってくれなかったら、1枚も撮れずに終わっていたに違いない。撮れた、というか運良く写ったのもご覧の写真が唯一のまともな写真で、あとは並木に邪魔されたり流れたりと散々な結果に終わった……。...(;_ _)/|

『カサ・バトリョ』はこれまた繊維業界の資産家だったバトリョ家が、1877年に建築された建物の増改築をカサ・ミラの建築を依頼しガウディ建築のファンだったというペドラ・ミラの薦めによりガウディに依頼したもので、1904年~1906年に地中海をテーマにして設計・建築された。カサ・ミラと違い世界遺産への登録はされていない。が、登録がされていないカサ・バトリョのほうが内部見学が不可となっている。アジア人観光客が無法なことをしたために見学ができなくなってしまったらしい。|||/( ̄ロ ̄;)\||| NO~!!
やっぱりガウディ生誕150年祭時の公開は貴重だったわけだ……。160年祭もやってくれないかなぁ。←本気
カサ・バトリョは都市型住宅の傑作といわれ、外壁を飾る色ガラスやタイルは光の反射する海面を表し、屋上の煙突は風に揺らぎながら昇る煙の様子を表している。
このカサ・バトリョも違う説があり、テーマは地中海ではなくサン・ジョルディだともいわれている。サン・ジョルディはカタルーニャ地方の伝説上の英雄である。
レコンキスタ(国土回復運動)で侵略者であるイスラム教徒と戦っていたときに、逃げたイスラム教徒がアフリカで捕まえたドラゴンをカタルーニャで放ち、キリスト教徒の乙女たちを餌にしたため何人もの勇敢な騎士たちが退治に行ったが敵わず餌食となり、ならば自分がとサン・ジョルディがドラゴン退治に向かい、見事槍のひと突きで討ち取って捕らわれていた乙女を救い出した、という話である。
聖人に失礼かもしれないけど、そんなに強いなら最初から行けば良かったんじゃ……。( ̄▽ ̄;)
このサン・ジョルディをテーマにしていると考えてカサ・バトリョを見ると、ベランダはドラゴンに餌食にされた騎士たちの兜で、柱はその骨となり、煙突はドラゴンを刺し貫いた槍で、屋根はドラゴンの鱗を表していることになる。
ガイドブックなどで見ると、確かにそうも見えてくるからおもしろい。実際、増築された屋根裏の部分は『ドラゴンの背』と呼ばれているという。
内部は海底や水中をテーマにして、泡が水面に向かって昇っていくようなステンドグラスや、波紋の広がりを表現したような天井があったりするらしい。
く~っ、この目で見てみた~いっ!!o(>_<*)o
現在はバルセロナに本社があるスティック付きの飴で有名なチュッパチャップス社が所有し、2階はパーティー会場のあるコンベンション・ホールとして使用されている。
てことは、パーティーに招待されれば堂々と中に入れるわけね!
って、誰が招待してくれるっていうの。(笑) …………。(/_;)


こうして、『建築の詩人』といわれたガウディ建築の見学を終えた。
名残惜しいぞっ。
いつかまた特別公開してくれることを願おう。
そのときは今度こそ逃さずバルセロナを訪れなければっ。待っててガウディ!p(*^0^*)q ←再び(笑)



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