さて、ホテルから30分もかからず到着したのは、1996年に世界遺産に登録された『ラ・ロンハ』。厳密にはその傍、である……。まだ開館時間には早いため見学できないらしく、その向かいにある『メルカド市場(中央市場)』を訪れた。11世紀から市場が開かれていたという場所にあり、8000平方メートルもの広大な市場内には300軒が出店していて、バレンシアでとれる豊富な野菜や果物の山、魚、肉類にパンやお菓子、キッチン用品など膨大な品物が揃っている。
店内に入り裏口へと直進するツアーの人たちの最後尾からついて歩き、各種お店の前で写真を撮りながら進む。本当にただ通り抜けただけで、裏口から出た。その出入口のところにテレビが設置されていて、ちょうどドラえもんが放送されていた。ただしスペインのドラえもんは“ドラいもん”と呼ばれ、のび太は“ノビータ”と呼ばれているとか。スペイン人には「えもん」と発音しづらいのだろうか。
そこでも添乗員さんからの説明があるわけでもなく、ただ各々が信者さんの邪魔にならないよう思い思いに見学するだけである。
改めて市場内に入り、左回りにお店を見てみる。ワインなどのドリンク、穀物、魚介類、果物、野菜、ハムやサラミ、チーズ、肉屋さんと、特に同じ品物のお店が集まって売られている様子もなくバラバラで、確かにたくさん揃ってはいてもお店の場所を覚えるのも値段を比較するのも大変そうだな、と思った。
その願いが届いたのか単なる通り雨だったのか雨は止み、そればかりか遠くに小さく風車が見え始めた頃から徐々に綺麗な青空が覗き始める。
風車の前でバスを降り、さっそくその風車へ向かう。ちなみに風車にはそれぞれ名前がつけられているそうで、内部を見学できる風車はインファント(INFANTE)という名を持っている。
一通り写真を撮り終えて、階段の中ほどにある部屋へと移動する。
それから白壁の小さな村も写真に収め、まもなく出発時間となった。
白い壁と青く塗られた木戸や窓枠が印象的なレストランで、中庭にはブリキかアルミで作ったようなへなちょこドン・キホーテが槍を持って天を仰いでいた。(笑)
沿道にエニシダが黄色い花を満開に咲かせている高速道路をひた走り、グラナダを目指す。山沿いの道をくねくねと登る頃には、Nさんもみきちゃんもすっかり夢の中だった。私はひとり陽射しの強い窓の外を眺め、始終デジカメを構えどこまでも続くオリーブ畑を写したり、広大やなぁ~、感心したりしていた。
そのうち添乗員のKさんがおもむろにマイクを手にし、みなさんに自己紹介をしてもらおうと思う、と言った。夫婦やグループ参加の人は1人が代表して自己紹介をすることに。
エニシダと同じくこの花も至る所で咲き誇っていて道中の私たちの目を楽しませてくれていたが、遠目だったため「なんていう花やろうなぁ」とずっと言っていたのだ。それが傍に咲いていたからさっそく撮ってみた、というわけ。花の名はヒナゲシ。またはポピー。
それから1時間ほどでグラナダに入り、闘牛士たちが馬に乗って闘牛場へ向かうところを偶然すれ違って、3ツ星ホテル『アベン・ウメーヤ(ABEN-HUMEYA)』に到着した。
中には大勢の人が集まってミサらしきものが行われていて立派な祭壇もあり、やはり教会のようである。
そして部屋に着いたはいいが、まだ誰がどこで寝るのかを決めていなかったためベッドにダイブすることもできず、とにかくどこで寝るかを決めることになった。