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2026.08.30
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カテゴリ: 生き方

以前に映画を観てよかったので、​ 「急に具合が悪くなる」の原作 ​を読みました。がんで闘病する哲学者「宮野真生子」と人類学者「磯野真穂」の書簡を1冊にまとめた本です。もう20年近く前になりますが、私は友人をがんで亡くしました。彼は非常にまじめな人間で、幼い子と過ごす時間をとにかく長くもちたいと、自身のがんの種類や治療法をさまざまな文献から調べました。そして、効果の不確実な抗がん剤治療(※注)をやめて、自身の信じた治療法を実践してゆきました。結果的にはがんの判明から約2年で亡くなってしまいましたが、彼と交わした言葉や表情を思い出しながら読みました。宮野も磯野も学者であり、それぞれの専門分野の豊富な知識をもとに、相手とのやりとりを深めてゆきます。宮野の「死」に向かう時間やプロセスをバックグラウンドとしながら、しかしそのやりとりには悲壮感よりも、生きることの本質を互いに突き詰めようという刺激に満ちていました。宮野は「偶然性」の本質を突き詰めた九鬼周三を研究してきたことから、自身の病や磯野との出会いを偶然性の観点から分析し、それがこの世の中で生きることにつながる深淵なテーマであることを見出します。私には学問的に厳密な表現ができませんが、数多くの人と人との偶然の出会いがたくさんある中で、互いに呼応しあい影響しあうことからただの偶然でない関係になってゆくということです。今は関わりをなるべく避けて生きることが好まれる世の中になっている気がしますが、宮野はむしろ無数の偶然の先にある新たな関わりの可能性があふれているからこそ生きる喜びがあると述べています。死はその可能性を終わらせてしまう恐怖の対象でありつつ、宮野と磯野の出会いのように、どちらかが死に近づくこともまた新たな関係を生み出す場にもなりうるのでしょう。亡くなった友人と死ぬまでに交わした会話や、過ごした時間は、やはりそんな関係の一つだったのだと今は思います。本書は「生きることの意味」を突き詰める哲学の底力を感じる一冊でした。

※注:「効果の不確実な抗がん剤治療」とは、彼の罹患した「腎細胞がん」が少なくとも当時は珍しい種類のがんで、抗がん剤が効くかはわからないと医者に言われていたためです。抗がん剤の効果が顕著な種類のがんもありますし、すでに20年近く経っていますので、状況は変わっている可能性があります。





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最終更新日  2026.08.30 20:14:45
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