Basic Knowledge

<古代エジプトの基本知識>


まず…古代エジプト人とは誰だったのでしょう?

現代エジプト人とは違うのだ! というのは、この日記で解っていただけるでしょうが…。
彼らの「エジプト人の基本的な定義」という思考では、
「エジプト語を話し、同じ宗教を持ち、ナイルの水を飲んで暮らすもののこと」
とされていました。アメン神話を綴ったパピルスにそう記されています。



古代エジプトの気候・地理・地形

 古代エジプトは、現代よりも、遥かに湿度があり、湖も点在していました。
雨の降る数も多く、緑のある地域も、かなり多かったと言われています。
また、年に一度、ナイルが氾濫するおかげで、その土壌は、肥沃な大地でした。
 ナイルは、南から北へと流れているので、上流(つまり南)を上エジプトと呼び、
下流(つまり北)を下エジプトと呼んでいました。下エジプトは、デルタ地方にあたります。
ナイルの源流は、アビシニア高原から流れてくる青ナイルと、
アフリカ中央部に位置するビクトリア湖から流れてくる白ナイルです。
その二つが合わさるエジプトの上流で、水中の成分が結合し、栄養分のある水になります。
それが、氾濫することで、土に栄養を与えることが出来た…というわけです。
 エジプトの西はリビア砂漠。東は紅海。その向こうに、モーセの十戒で知られる、シナイ半島があります。
砂漠には化け物が住むと信じられており、足を踏み入れる者は、殆ど居ませんでした。
 こういった地理地形によって、黄金の古代文明は幕を開けたのです。



ナイルの氾濫

 青ナイルでは、5月ごろから始まる雨季に、アビシニア高原に降った雨が、
その下のタナ湖に流れ、そこからあふれ出た水が、ナイルとなって水量を増します。
一方、白ナイルでは、ケニア山、キリマンジャロやウェンゾリなどの雪解け水がビクトリア湖に流れ、
それがあふれ出て、ナイルの水量を増やします。
その両方が、同時期に起きる為、エジプトでは、水量が約3倍になり、氾濫するのです。
この氾濫の時期を、古代エジプト人たちは「アケト」と呼んでいました。
 9月ごろに、水量が最大となり、その直後に水位は下がり始めます。
そして、約4ヶ月の氾濫が終わり、大地が見事なほどの肥沃な土壌に生まれ変わるのです。
11月に、種まきが行われ、この時期を「ペレト」と呼びます。
植えられた作物は、やがて収穫されるのですが、それが「シェムウ」と呼ばれるのです。
古代エジプト人たちは、このエジプトの黒い土壌を「ケメト」と呼び、
砂漠の赤い土(砂)のことを「デシュレト」と呼んでいました。
この黒い土壌の呼び名が、エジプトそのものを表す言葉となり、
エジプトは「ケメト」と言われるようになりました。



エジプトに生まれた神話『ホルスとセトの戦い』

第1王朝から第2王朝にかけての時代に、エジプト神話のベースが出来上がりました。
中でも、有名かつ大切な神話が、隼のホルス神と、羊のセト神の戦いの物語です。
この物語が、全てのエジプトの壁画や思想に現れることになります。
オシリス神が、黒や緑の身体で描かれる理由も、ここから始まったとされています。
また、初期王朝時代(ペリブセン王、カセケムイ王の時代)に、この神話と同じようなことが起こったとも考えられています。
というのも、残されている王の名前の上に、王の権力の象徴である神として、
ホルスやセトの絵が描かれたものがみつかっているからです。

<<ホルスとセトの戦い>>
大地の神ゲブと、天空の女神ヌトの間に、ある日、4人の子供が生まれました。
この子供達は、成長すると、それぞれの間で婚姻関係を結びます。
兄のオシリスと姉のイシスが結婚し、弟のセトと妹のネフティスが結婚しました。
オシリスは、エジプトの王となって、公正な政治を行い、民の信頼を一身に集めていました。
妻であるイシスは、オシリスを支え、また、マジシャンとしても有能な女性でした。
弟のセトは、そんなオシリスを妬み、仲間達と共謀して反乱を起こし、オシリスを殺害します。
セトは、オシリスの遺骸を、ナイル川に捨てました。
遺骸は、地中海へと流されて、ビュブロス島に打ち上げられ、木の女神に発見されました。
木の女神は、オシリスを、自分の木の下に埋葬します。
夫の死を嘆き悲しんだイシスは、木の女神に願い、オシリスをエジプトに連れ帰り、
自らの魔法を用いて、オシリスを生き返らせることに成功しました。
セトは、それが許せません。
再び、オシリスを手にかけ、今度は肉体をバラバラに切り刻んで、エジプト全土にばら撒きました。
イシスは今回も、その断片を根気良く拾い集め、夫の身体を復元しようとします。
断片をつなげ、生命を吹き込む為に、黒いエジプトの土を使用しました。
再生することが出来たオシリスですが、その身体には、欠陥がありました。
というのも、セトがエジプト全土に肉体をばら撒いた時、
ペニスの部分がナイル川に落ち、オキシュリンコスという魚に食べられてしまったのです。
というわけで、再生したオシリスには、ペニスがありませんでした。
それから暫くして、イシスがオシリスの子供を身ごもりました。
生まれたその男の子は、ホルスと名づけられました。
神々は、オシリスの子であるホルスこそが、エジプトの王になるべきだと考えますが、
問題になったのは、オシリスにペニスが無いという事実でした。
ペニスが無いのに、妻のイシスが妊娠する訳がないのですから…。
神々は、イシスの魔法によって宿ることが出来たのだろうと考えますが、セトは納得しません。
イシスは、ホルスがセトに見つかって殺されることを懸念し、ネフティスに相談します。
ネフティスは、夫であるセトの酷い遣り方に反対していましたから、
オシリスとイシスへの罪滅ぼしの意味もあって、ホルスの乳母となることを了承します。
ネフティスのもとで成長したホルスは、復讐に立ち上がり、セトに戦いを挑みます。
ついに、セトを打ち負かしたホルスは、エジプトの王となりました。
オシリスは、冥界の王となり、セトは、砂漠の王となったのでした…。
おしまい。



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