アサハカな論考もしくは非生産的妄想

アサハカな論考もしくは非生産的妄想

September 22, 2004
XML
テーマ: 新撰組!(307)
カテゴリ: カテゴリ未分類
新選組の限界、ということをこのところ痛感する。既成の枠組みの中で物事にあたろうとする者と、その外側で新たな枠組みを生み出そうとする者の勢いの差は明らかだ。守る者と攻める者の構造的な宿命か。

自分が斬った浪士の妻のために、松原忠司は愚直にも心を尽くし、刺されてもなお女を庇った。松原と隊の名誉のために、斎藤は松原の介錯をし、未亡人を斬り捨て、その責は歳三が一身に引き受けた。「最後まで女を救おうとした松原の想い。その松原の仇を討った斉藤の想い。そして、すべてを自分のせいにして収めたお前の想い。それぞれの想い、しかと受け止めた」。新選組は自己犠牲による「鉄の結束」をもってこの難局を乗り切ろうとする。

処分を受けるいわれはないという長州の誇りを、竜馬は薩摩に認めさせた。長州と組んで幕府に歯向かうための逃げ道が欲しい薩摩に対しては、帝のためにという大義を与えた。「自分のところが一番大事じゃき。それでええがじゃ」。竜馬は薩長両藩がともに藩益を主張するのは当然だといわんばかりに平然とこれを受け容れ、両藩が互いに利益を享受できる「大人の付き合い」を提案する。

新選組は相変わらず隊内統制に手を焼いている。「俺たちは今まで以上に一つにならなければならない」。勇は悲痛な覚悟を口にする。その一方で、坂本竜馬は薩摩と長州の同盟を鮮やかに成立させ、その瞬間、形勢は一挙に逆転した。「難しい話をまとめるがは、面白いのう!」竜馬は爽快に笑い飛ばす。新選組はますます硬直化し、竜馬はますます軽やかだ。

だが、だからといって、薩長が正で新選組が邪だとか、竜馬は優れているが勇は愚鈍だなどと決め付けることには躊躇する。勇たちはみなそれぞれ自らの使命に忠実であった。彼らは彼らなりに懸命に想いを巡らせ、真摯に自らの信念に取り組んでいた。河合耆三郎は、自分の裁量で左之助のために五十両を融通する。あくまでも自らの職務と仲間のために誠実に。歳三は悪者になることを厭わず、総司はそんな歳三が心配でならない。勇は松本良順に長州攻めの参加を咎められ、「よからぬ企みがありそうだというだけで、何の証しもないまま一国を攻め滅ぼそうとしている」との指摘に一瞬考え込むが、もはやどうにもならない。

彼らの信念は時勢に合致しておらず、防戦一方の中で無理が無理を呼び、結果的に非道な結果を招く。哀れといえば、哀れであるが、崩れゆく秩序の中で自らの立場を全うせんと奮闘する姿は尊くもあり、彼らを一概に非難する気にはなれないのである。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  September 22, 2004 05:51:39 PM
コメント(4) | コメントを書く


■コメント

お名前
タイトル
メッセージ
画像認証
上の画像で表示されている数字を入力して下さい。


利用規約 に同意してコメントを
※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


Re:守る者と攻める者~新選組!#37「薩長同盟締結!」(09/22)  
歴史が致命的に不得意ですが、
>新選組はますます硬直化し、竜馬はますます軽やかだ
のフィーリングは『おーい竜馬!』で勉強しました。 (September 22, 2004 10:23:05 PM)

Re[1]:守る者と攻める者~新選組!#37「薩長同盟締結!」(09/22)  
かき@  さん
誰やねんっ20号さん こんにちわ

>歴史が致命的に不得意ですが、

たしかに幕末はややこしいですね。でも、この「新選組!」の希有なところは、登場人物のひとつひとつの行動に至る心の動きが実に丁寧に描かれていることです。最近の大河ドラマはこの点が不満でしたが、「新選組!」は実によくできていて、おおいに感心しているのです。物語としてのプロットにも破綻がほとんど見当たらず、視聴者に展開上の疑問を抱かせません。史実との齟齬を指摘する人もいますが、僕自身そこには重きを置きません。


>『おーい竜馬!』

ってマンガでしたっけ? おぼろげながら記憶がある・・・
(September 23, 2004 02:43:42 AM)

謎の斎藤さん。  
私の中では扱いかねています。
苦労をしてきたので、悟りを開いてるんだけど、スグ落ち込む、三谷さんにダメ出しされるほどに。

横レス失礼、心の動き。
勇のことを考えると、奴は人と人の間で、バウンドしてるボールみたいやな~と、ふと思ってます。主義主著よりも。。 (September 23, 2004 04:11:12 AM)

Re:謎の斎藤さん。(09/22)  
かき@  さん
トーベのミーさん
>私の中では扱いかねています。
>苦労をしてきたので、悟りを開いてるんだけど、スグ落ち込む、三谷さんにダメ出しされるほどに。

斎藤は、仕事を的確にこなし、悩める者にはボソッと助言し、時には人の心の機微を解説したりします。逆上しがちな新選組メンバーの中にあって、おっしゃる通り「悟り」を開き何事にも達観している冷静なキャラとして、物語の展開を粛々と処理する役割を担わせているのだと思います。
すぐ落ち込むのは、これではあまりにパーフェクトすぎるため、実はマヌケな部分もあるけどねという留保だと思います。捨助を見て「できる!」と誤解してしまうところもそのひとつかと。

>横レス失礼、心の動き。
>勇のことを考えると、奴は人と人の間で、バウンドしてるボールみたいやな~と、ふと思ってます。主義主著よりも。。

当作の勇はまさしくそういう人物設定なのでしょう。人が好く、人の話を聞き過ぎて、いちいち相手の身になって考え込む(伊東も指摘しているように)。 (September 25, 2004 02:06:03 AM)

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Calendar

Comments

乗らない騎手@ ちょっとは木馬隠せw あのー、三 角 木 馬が家にあるってどん…
リナ@ 今日は苺ぱんちゅ http://kuri.backblack.net/i9q5fg2/ 今…
通な俺@ 愛 液ごちそうたまでしたw http://hiru.kamerock.net/l83orqf/ フ○…
しおん@ ヤホヤホぉ★ こっちゎ今2人なんだけどぉ アッチの話…
バーサーカー@ ヌォォオオ!!!!!! http://bite.bnpnstore.com/nexnc09/ お…

Favorite Blog

かくの如き語りき トーベのミーさん
第1の扉@佐藤研 報告者@佐藤研さん
蘇芳色(SUOUIRO)~… 蘇芳色さん

Profile

quackey

quackey


© Rakuten Group, Inc.
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: