Ash Ground

01.02




爆音が響く。砂塵が舞う。血の匂い。人々の悲鳴。
生き地獄、なんて言葉があるが、ここはまさにぴったりの場所だ。

撃たれた左腕の上を強く縛っている所為で、血がまわらず酷い事になっている。
・・・これはもう、使い物にならないな。
まぁ良い、利き腕じゃなかっただけマシだ。
右腕で剣をぶん、と振り下ろした。剣に付いていた血がぼたぼたと地に落ちる。
大丈夫。僕はまだ戦える。

正面から雄叫びをあげ向かってきた敵を真っ二つにし、そのまま横から斬り込んで来た敵の刃を剣で受ける。刃と刃が斬り合う嫌な音が響く。
力で刃を撥ね退け、相手が体勢を整える前に骨ごと首を斬った。
血飛沫で一瞬視界が遮られた。背後に気配を感じた時、もう遅い、と思った。

殺られる。

歪んだ笑みを向け、刀に体重を乗せて振り下ろしてくる男が居た。
地面に倒されたが、かろうじて刃は受け止めた。
「ふふふ・・・時間の問題だな」
悔しいが、男の言う通りだ。右腕で相手の重さを受け止めるだけで精一杯だ。

「死ね」
僕が発したのではなく、目の前の男が発したものでもなく、鋭い声が聞こえた。
同時に、男が血を吐いて、僕の上に覆い被さった。・・・絶命している。
男を蹴りで以って僕の上から退かせた声の主は、僕を見ると一変して穏やかな眼差しと声をかけた。
「大丈夫ですか?」

声の主は、まだ幼いとも表現できる少女だった。


少女に案内されるがままに沼地に着き、傷口の消毒を受けた。
「貴女は誰です?我が軍の者とは思えないのですが」
少女は持っていた鞄の中から包帯やら消毒液やらを取り出しながら、僕と目も合わさず緩やかに微笑んだ。
「少なくとも貴方の敵ではありませんよ、孝軍曹。」
「何故、僕の名前を」
お傍に居させて頂けますか? 貴方の戦闘能力は素晴らしいですが戦い方がやや危なっかしい。護衛の者を連れていても支障は無い筈」
「お断りします。貴女は敵では無いかもしれませんが味方でも無いかもしれません。そんな者を傍に置くのは自殺行為です」
少女の顔から笑みが消え、真顔のまま俯き、呟かれた声に僕の頭はクエスチョン・マークでいっぱいになった。
私の命は貴方のものです 、軍曹。信じて下さい」
・・・何だこれは。どういう展開だ?

少女は真摯な表情でこちらを見ているだけだった。





© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: