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2005年12月19日
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 何も無い真っ白な四角い部屋.2つのベッドだけが置かれていた。1本の蛍光灯の傍で音を立てて回るシーリングファン。まるで映画「ビーチ」に出てきそうな風景だ。今まで何度も海外旅行に出かけたが、今回のような安宿に泊まったことはほとんど無かった。最近塗られたらしい白い壁のペンキはよく見るとむらが有りうっすらと何か書かれていた痕が見える。それは日本語で書かれていて、「今日バナラシ来る途中、電車の中で現金とパスポートを盗まれました。今後電車を使う人は気をつけてください.」と書かれてあった。
 耳を澄ますとどこからかインドミュージックがかすかに聞こえる。隣の部屋あたりで誰かが咳き込んだ。ベッドには白いシーツと硬い枕しかない。フィリピンと違って暑くは無いが涼しく感じられる。ブランケットも用意されていないので日本から着てきた薄手のジャンパーを羽織って眠ることにした。

 翌朝いつものごとく暗いうちから目が覚めてしまう。まだ朝の4時だ。部屋から出てみたがまだ星が見えるほど真っ暗で人の気配も感じられない。一旦部屋の中に戻り荷物の整理をしてみた。インドに来てまだ半日も経たないうちからあまりにも色々のことがありすぎる。タクシーや旅行代理店ともめたり、カレーを手で食べ生水も飲んでしまった。
 殺風景で寂しげな安宿。今回は年内残った有給休暇を全部使っての1週間の旅だ。まして今回のインドと言う場所は、かなりの思い入れがあった場所。はっきり言って旅の最終地点とまで思っていたわけで、素晴らしい思い出を作らない訳にはいかない意気込みもあった。
 朝5時半をまわると紺碧だった空が薄明るくなりだした。今日の予定は本日中に出発するガヤー行きの電車に乗ることだ。もちろんチケットもまだ無い。

 白けた空を確認し、外へ出ることにした。階段を下りていくと入り口付近の暗闇にボーイが2人ほど毛布に包まって眠っていた。扉には鍵が掛かっていて外に出られない。悪いとは思ったが寝ているボーイを起こし扉を開けてもらった。
 パハール・ガンジ通り。通称メインバザール。ここは世界中のバックパッカー達が集まる場所で安宿街でもある。治安に関しては詳しい情報を得ていない為よく分からないが、どこの国へ行っても泥棒くらいはいるだろう。まだ通りを歩く人の姿もまばらだ。ほこりにまみれた道路には何頭かの牛の姿も見える。 とりあえず駅の方向に向かおうと左側に歩いた。
 宿を出て直ぐの場所に屋台のチャイ屋が店を出していた。2人の労働者風の男がチャイを啜っている。私も迷わずチャイを注文した。多少涼しいインドの朝にチャイが身にしみた。屋台の後ろ側に在る道端に腰を下ろしてしばらくの間通りを観察した。時間が早い為、全ての店は閉まっている。女性や子供の姿は見えず薄汚い格好をした男たちばかりだ。チャイを飲み終えた頃にチャイ屋のオヤジが「もう1杯か?」と勧めてきたので御代わりのチャイを頼んだ。
 今度はオヤジの後ろに立ちチャイの入れ方を初めから見せてもらった。鍋に水と紅茶の葉をいれ火に掛けその後同じ分量のミルクと多目の砂糖を加える。生姜の切れ端を入れて沸騰したら火から降ろし、茶漉しを使って小さなカップに注ぎ込まれる。チャイを入れるガス台の脇にはもう1つコンロが用意されていてフライパンが置かれている。オヤジが「オムレツを食うか?」と聞くので断る理由も無かった。フライパンに溶いた卵に玉ねぎのみじん切りとガラムマサラのようなスパイスを入れて焼いただけの物なのだがパンにはさんでサンドウィッチにするとチャイに合って非常に美味かった。オムレツもお変わりをして2皿食べた私は駅方面へと散歩に出かけた。


 駅前の一角に食堂街が見えた。食事を済ませたばかりだが、好奇心で足を運んでみた。たぶん出勤前かと思われる大勢の男たちが群がっている。しかし今日は日曜日だ。カレー屋、チャイ屋、ラッシー屋。多分インドの庶民的な食べ物は全て揃っているのだろう。
 とりあえず1軒のカレー屋に入ってみた。どんなカレーがあるのか分からないのでテーブルに乗せられた大きな鍋を覗き込んでみた。「チキンカレーは無いのか?」と聞くと「無い」と言う。しかたなく肉の入っていないカレーセットのような物を注文してテーブルに着いた。いすに座りやることも無くあたりを見回してみた。店の看板にベジタリアンと書かれてあった。どうりでチキンカレーが無いわけだ。しばらく待つと味気ない金属の食器に乗せられたカレーと薄いチャパティーが運ばれてきた。茶色の薄いチャパティーを手でちぎりカレーを付けて食べてみたが大して美味いとは思わなかった。

 カレーを食べ終えた私は隣の店のラッシー屋へと向かった。ラッシーを注文したが日本のインドレストランで飲んだことがあるラッシーとは少し違っていて上にヨーグルトのような塊が浮かべられていた。しかし味は美味しかった。
 時間をかけて目の前を通り過ぎていくインド人を観察した。肌の色が黒くフィリピン人のそれ以上だった。アラビア系の顔立ちでホリが深く鼻が高い。目つきが悪く見える人がほとんどのような気がした。
 時計を見ると朝8時を回った。駅前や通りに活気が出始めてきた。丁度ニューデリーの駅前にいるのでガヤー行きの切符を買いに行くことにし駅へ向かった。駅前の通りを車に気をつけながら渡りきった所で1人の男が近づいてきた。
「切符を買うのか?今日は日曜日で休みだ。あっちにツーリストセンターがあるから案内するよ。」
 本日1人目のペテン師の登場である。この手の話は「地球の歩き方」に書かれていた。
 そんな古い手に引っかかる私ではない。「いまさら日本人でそのような話を信用するやつは誰もいないよ。おとといきやがれ。」と言ってやろうと思ったがどうせ英語で話しても理解できないだろうし、丁度いい英語も思い浮かばなかったので睨みつけながら無視して駅の中へと向かった。
 するとその男が叫んだ。「そっちじゃなくて右側から2階に上がるんだ。」
そんな話は一切信用せず、ど真ん中の階段から上に上がったら男の言うとおり右側から上がるのが正解だったらしい。途中から急にいい奴になって紛らわしいぞ。

 2階に上がって多少薄暗い通路を進んでいくと左手にチケットセンターがあった。ガラス張りのドアを開けて中に入ると韓国人のグループとインド人の客しか見当たらない。壁際に合った用紙に行き先を書き込み、ソファーに座って順番を待った。私の順番が来て紙を渡した。日本にいるときからインド国内の鉄道時刻表をネットで購入してあり今回持参していた。インターネットで前もってチケットを購入できるのは知っていたのだが上手くログインできなかった為に今回のような状況になってしまったわけだ。

 カウンターに座ってコンピューターを操るインド人が「支払いはドルかルピーのみでカードは使えない。」と言ってきた。私は「ルピーで払う。」と言って現金を渡すと「両替した際の領収書が必要だ。」と言ってきた。  たしかにそのような事は本で読んでいたのを思い出したが、空港の銀行で両替した時名にはすっかり忘れていた。
「銀行で貰わなかった為に持っていない。どうしたらいいのか?」と聞いたら「入り口の脇にヘルパーデスクがあるから相談に行け。」と言われた。仕方なくヘルパーデスクに行きそこにいた体の大きなインド人に事情を説明すると「マイフレンドよ、ノープロブレムだ。私が書類にサインをして差し上げよう。」みたいなことを言いながら名前らしき物を書いてくれた。
 その書類を持ってまた列に並ぶことになった。チケット1枚買うのにも勝手が分からないと時間が掛かってしまう。何とか無事に夕方5時のガヤー行き寝台車のチケットを3千円くらいの料金を払って買った。正確な料金は覚えていないがこの場所でぼられる事は無いだろう。

 チケットを手に入れた私には夕方まで十分な時間が有った。せっかくだからバハール・ガンジの町でも散歩することにした。天気はよい。時間的に商店もみな開いている。たくさんの人ごみと車の流れ。昨夜の静けさとは全く違う風景だ。夕べ結婚式があった場所まで戻ってみた。そこは野菜市場になっていた。通りのほぼ中央あたりだった。
 リクシャーと呼ばれる人力タクシーやバイクを改造して作ったオートリクシャーが狭い通りを行きかう。のら牛もあちらこちらにいて邪魔くさい。ガイドブック片手に洋服屋や土産物屋を横目に見ながら映画館がある場所まで歩いてみた。リヤカーの花屋、道路に椅子を出しただけの床屋。道端で焼き物の壷を売る人。屋台の食べ物やから道端に座り込んで商売するチャイ屋。町は活気に溢れていた。


「ハローどこへ行くんだ?」極力うさんくさい連中には近づかないと決めていたのだが、時間もたっぷり有ることだし暇つぶしに利用してやろうと思いついた私は「洋服を買いたい、しかもインドスタイルのをね。」と言ってやった。すると「いい店があるから案内するよ。」と言うことになった。予定通りの行動だ。もし嫌になったら適当に巻いて逃げればいいと思っていた。
 「この近辺で1番大きくて有名なデパートがあるからそこへ行こう。」と言う。実際に行ってみたい気になった私は2人の若者と一緒に歩き出した。途中いくつもの小さな寺院が目に入った。中には派手な色に塗られたインドの神様が祭られている。黄色い菊のような花が供えられているのだが、派手な色が神聖さを感じられない。
 大きな通りの脇でチャイ屋を見つけ休憩することにした。チャイの味が気に入り、ここでも2杯飲み干した。しばらく行くと結構立派なビルの前まで行き「ここが政府が経営している洋服屋だ。」と言う。
 ガラス張りにタイル造りの建物の階段を上がり中へ入ってみた。」同行した2人の青年は外で待つと言う。1階は貴金属やアクセサリーを扱った高級な造り。絨毯が引かれ、ガラスのショーウインドーの中にはシルバー製品や宝石関係の物が綺麗に飾られていた。
 洋服は地下にあるというので階段を下りてみた。そこは高級生地屋といった感じで、スーツ姿の男性やサリーを着た上品そうな女性が客の接待をしていた。どうやらオーダーメイドの店らしいが、そんな高級な物は私には必要ないし、時間も無い。店員が既製品もあるというので見せてもらった。たしかに生地も仕立ても良いが値段も高かった。
 せっかく来たのだから1枚上下で買っていこうかと思ったら口車に乗せられ2セットとショールまで買ってしまった。1度着ただけで色が落ちたり縮んだりする安物よりいいか、と自分を納得させて店を出た。結構長い時間店内にいたにもかかわらず外では若者2人が私を待っていた。これは完全にチップ目当てだと言うことは想像できる。
 結局買い物を済ませた私は、もうデパートへ行く予定があったことなどすっかり忘れてパハ-ル・ガンジ通りへと2人を引連れ歩き出した。途中脇道にある旅行代理店に連れて行こうとする。もうその手には引っかからない自信は十分あったのだが、今朝のニューデリー駅でも出来事が頭に浮かび、かえって金を払ってでも全て手配してもらった方が事がスムーズに運ぶのではないだろうかと考えてしまった。
 とりあえず小さな代理店の事務所に入ってみることにした。中は小さく3つの部屋に分かれていて、その1つの部屋から日本語が達者な男性が出てきた。テーブルに着くように薦められチャイをご馳走になった。どこに行ってもチャイが出てくる。





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最終更新日  2005年12月19日 14時29分52秒
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Re:インド人に物申す(5)(12/19)  
はじめまして。
リンクして頂き、どうもありがとうございます。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

インドは私も大好きです。
日記を読んでいたら、マサラの匂いがありありと甦ってきました。

(2005年12月19日 18時01分25秒)

Re[1]:インド人に物申す(5)(12/19)  
asia-master  さん
ジャアク商会のゴールドメンバーです。藤井さんにも東京での講演会でお会いしました。黄色のTシャツを着ていた男と言えば覚えていてくれてるかも、、、?よろしくお伝えください! (2005年12月19日 19時12分45秒)

Re:インド人に物申す(5)(12/19)  
asia-master  さん
長い文章を書いてみて、ろくに確認もせず後から誤字、脱字が多いことに気がつきましたがお許しください。所詮私の文章なんてこんなもんです。 (2005年12月19日 19時39分37秒)

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