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9VAe-iPhne/iPad版animation制作無料ソフト9VAe山田企画事務所はanimation制作無料ソフト9VAeの普及に協力しています。http://9vae.com/ja/ 9VAeきゅうべえアニメ研究所よりの提供資料です。ダウンロードサイト情報です。9VAe-iPhne/iPad版(9VAeDangla)ダウンロードhttps://apps.apple.com/jp/app/9vae-iphone/id1482450143 9VAeでグリーンバック動画を作成してiMovieに合成する方法https://dnjiro.hatenablog.com/entry/2020/01/20/064450 プレゼン用動画素材の作成https://dnjiro.hatenablog.com/entry/2020/02/03/144517 トレス動画は9VAeきゅうべえで作ると簡単https://dnjiro.hatenablog.com/entry/2020/02/05/152910
2020.02.15
山田企画事務所ペンネーム 飛鳥京香の小説コンテンツページ■山田企画事務所・飛鳥京香・小説集です。どうぞご覧ください!●YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようと?https://ncode.syosetu.com/n1703dc/-----------------------------------------------●BK私の中の彼へー青き騎士ー異星の生命体《アイス》と人の戦争で、少女暗殺組織ローズバットの沙織は、共生装甲機体・零号を操る独立装甲歩兵・翔と恋に落ちる。沙織には過酷な運命が待っていた。彼女は人類を新たな旅へ導く。 https://ncode.syosetu.com/n5222dc/-----------------------------------------------●TC東京地下道1949■ 1949年日本トウキョウ。 太平洋戦争の日本敗戦により、日本はアメリカ軍とソビエト軍に、分割占領。生き残った少年少女はどう生きるのか。それからの過酷なる日本の運命は? https://ncode.syosetu.com/n1603de/-----------------------------------------------●TD「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」 故郷、神立山の伝説は、僕、日待明にあらたなる人生の選択を迫る。彼女は何者であったのか?私は地球人でなく観察者として地球の長い歴史に関与したことをしる。https://ncode.syosetu.com/n9669cz/-----------------------------------------------●RSロボサムライ駆ける■「霊戦争」後、機械と自然が調和、人間とロボットが共生。日本・東京島「徳川公国」のロボット侍、早乙女主水が 日本制服をたくらむゲルマン帝国ロセンデールの野望を挫く戦いの記録。https://ncode.syosetu.com/n2492db/-----------------------------------------------●KIアイランド■暗殺者の島■ かって存在したエルドラド、サンチェス島で、地球連邦軍暗殺チーム「レインツリー」に属する暗殺者2人の対決。https://ncode.syosetu.com/n3928db/-----------------------------------------------●YK夢王たちの饗宴--ドラッグウォーの跡でー(麻薬戦争の跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高のドリームマスター,夢王は、だれなのか? なぜ、この世界はできたのか? https://ncode.syosetu.com/n7285dc/-----------------------------------------------●CP封印惑星 封印された地球で情報収集端子であるユニーコーン・新機類は、天空の光矢を見る。 それは新地球の解放者、世界樹の出現する。予兆である。 https://ncode.syosetu.com/n1512de/-----------------------------------------------●AFアリス・イン・腐敗惑星ー寂寥王の遺産ー宇宙連邦の監視機構の元で、腐敗惑星内で新生命トリニティが蘇生し、世界の秩序を変える動きが始まる。https://ncode.syosetu.com/n6825dd/-----------------------------------------------●KZガーディアンルポ03「洪水」 廃墟で、人類最後の生存者カインは地球滅亡を迎え。彼は生命形を変え自分から精強なる生物兵器に変貌、地球を再生し敵へ復讐を硬く誓う。 https://ncode.syosetu.com/n1503de-----------------------------------------------●UK宇宙から還りし王■初めて新宇宙への門「タンホイザーゲイト」から帰還した男ネイサンは、今、ゼルシア国自然保護区、ラシュモア山で王国を建設。みづから発する言葉で、人類を次の高みへと進化させようとする。https://ncode.syosetu.com/n1598de/-----------------------------------------------●RUN遙かなる絆-ランナー● 地球と月を結ぶ「ムーンウェイ」から話は始まる。連邦軍「サイボーグ公社」に属するロードランナー,ヘルム。マコトは超能力者。2人は月で人類外の野望を砕く、新世界の人類の出現が始まる。https://ncode.syosetu.com/n1867de/-----------------------------------------------●「支配者たち」(ハーモナイザー01)世界樹ハーモナイザーの支配する宇宙での、2人の宇宙飛行士の物語。これは現実か夢なのか「もちろん、あの人は私の夢の一部分よ。でも、私も、あの人の夢の一部なんだわ」https://ncode.syosetu.com/n1894de/-----------------------------------------------●「クアイアーボーイズ」地球は絶滅の縁にあり。敵ROW」は、生命体ミサイルを発射。意思を持つ「生物体機雷」が人類戦士として。敵とであった彼はいかに。https://ncode.syosetu.com/n0015da/-----------------------------------------------
2019.08.12
YouTube.com■山田企画事務所の3000種類のYouTube動画チャンネル山田企画事務所の動画整理■YouTube.com■チャンネルアドレスを短縮しました。3000種類の YouTube動画が入っております。ご覧ください。山田企画事務所のYouTube動画のチャンネルです。ーーーーーーーーーーーーーーー●https://goo.gl/Ydd16m漫画の描き方 などのYouTube動画ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー●https://goo.gl/CqyT9Q大阪・近江八幡・伝統的町並み風景などのYouTube動画ーーーーーーーーーーーーーーー●https://goo.gl/5jomdsメカムシ教室(クラフトアート)京都・大阪風景などのYouTube動画ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー●https://goo.gl/V3atM4近江八幡・兵庫県武田尾温泉・兵庫県伊丹市風景などのYouTube動画ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー●https://goo.gl/8B7dCJ金沢城・松山城風景などのYouTube動画ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー●https://goo.gl/zyNTfS滋賀県高島市。琵琶湖風景などのYouTube動画
2019.08.12

知り合いのフォボンピクチャーズ(西宮映像)の山本監督より。映画「MOVIES Mr.フキョー VS 映画たち」上映お知らせです。http://n-film.net http://n-film.net/movie.html6月16日(土)に●「OSシネマズ 神戸ハーバーランド」映画館「MOVIES Mr.フキョー VS 映画たち」が上映。●「OSシネマズ 神戸ハーバーランド」(※6月16日(土)●「スクリーン10」にて18時20分より上映)https://www.jollios.net/cgi-bin/pc/site/det.cgi?tsc=21120下記が上映の詳細。1月の宝塚上映から、再編集したバージョン。https://kobe-movie.doorkeeper.jp/events/75639●上映後にクリエイターの紹介コーナーがあり。事前チェックがありますが、映画製作をされている方は予告編を流して頂けます。若いクリエイターを応援し、クリエイターの交流の場にしたいということですので、映画製作者以外でもクリエイターさんであれば、短い時間ですがPRして頂きたいとのことです!●CG製作、パルクール、特殊メイク、イベント開催などクリエイターさんであれば大丈夫です。●今後、神戸国際映画祭を行うためのプレイベントです。●映画館の場所が神戸ポートタワーの近くにある●「umie(ウミエ)」●というショッピングモール内。「神戸ハーバーランドumie」http://umie.jp/
2018.06.10

光陽社さんのアート年賀状2016年-申年(さるどし)の一部デザイン協力をさせていただきました。山田企画事務所は、ビジネス・マンガ制作事務所です。光陽社さんのアート年賀状2016年-申年(さるどし)の一部デザイン協力をさせていただきました。http://www.koyosha-inc.co.jp/nenga_2016/作家の作品は、以下を御覧ください。mangakadata.net年賀状の協力作家の作品見本です。年賀状番号1671 1672 suzuki 鈴木純子http://suzuki-junko.com/ 鈴木純子鈴木純子mangakadata.net年賀状番号1656 1668 oishi 大石容子http://mangakadata.net/oishi/index.html# 大石容子大石容子mangakadata.net年賀状番号1639 1685 1686 kitagaki北垣 絵美 http://mangakadata.net/kitagaki/index.html# 北垣 絵美北垣 絵美mangakadata.net年賀状番号1666 1667 shougaki 正垣有紀http://mangakadata.net/shogaki/index.html# 正垣有紀正垣有紀mangakadata.net年賀状番号1654 1673 1674 morinaga 森永先生山田企画事務所は、ビジネス・マンガ制作事務所です。http://www.yamada-kikaku.com/ ▲『マンガ家になる塾』ナレッジサーブ『マンガ家になる塾』ナレッジサーブ ■ユーチューブ■youtube.com●how to draw manga● ●http://www.youtube.com/user/yamadakikaku2009 -------------------------------------------------------
2015.12.02
マンガ家になる塾http://www.knowledge.ne.jp/lec1379.html●マンガ業界がかなり厳しい業界であると認識して受講下さい。●マンガ原稿をすぐ拝見!●編集部へ持ち込みの原稿を添削指導!1か月分の会費です。ただしマンガ家先生のスケジュール調整があり。基本の課題は、かならづしも1回の授業からの課題でなくても構いません。山田企画事務所のHPにテキストは入れています。http://www.yamada-kikaku.com/lesson.html ●1回だけの受講、飛び飛びの受講も可能。参加者の紙原稿(漫画データ)への赤ペン添削●参加の方の個人に合わせ課題も。
2015.11.25

Windows!Free! Animation Editor 9VA-win http://9vae.comhttps://youtu.be/Kl7IeVhxwIIWindows!Free! Animation Editor 9VA-win http://9vae.com How to make movie and upload to YouTube ? Windows ! アニメ作成フリーソフト 動画変換! YouTube に ! Windows!Free! Animation Editor 9VA-win http://9vae.com How to make movie and upload to YouTube ? Windows ! アニメ作成フリーソフト 動画変換! YouTube に !
2015.11.02

My youtube VIDEO List, http://www.pinterest.com/yamadakikaku/My youtube VIDEO List, entrance to How to draw manga etc、my pinterest http://www.pinterest.com/yamadakikaku/山田企画事務所のyoutube 動画LIST になっています。漫画の描き方や日本の美景の 動画の入り口の 写真集です。御覧ください。
2015.07.26

!山田企画事務所ピンタレストーすべてyoutube動画にリンクしてます!http://www.pinterest.com/yamadakikaku/ 御覧くださいyamadakikaku 山田企画・山田博一の写真帳を御覧ください・http://www.pinterest.com/yamadakikaku/ 御覧ください
2015.07.10

http://www.tv-osaka.co.jp/event/eventtool/名 称イベントツールウエストジャパン2015会 期2015年5月28日(木)~29日(金) 10:00~17:00会 場 大阪南港ATCホール(大阪市住之江区南港北2-1-10 ATC O's南B2F)主 催テレビ大阪 アジア太平洋トレードセンター後援経済産業省 近畿経済産業局、大阪府、大阪市、大阪商工会議所、(公財)大阪観光局、公益財団法人関西・大阪21世紀協会、一般社団法人日本イベントプロデュース協会関西本部、 NPO法人ジャパンイベントネットワーク、日本イベント業務管理士協会、一般社団法人日本イベント産業振興協会 (順不同)ーーーーーーーー入 場 料 無料 (招待制・事前登録制)目標来場者数5,000人ーーーーーーーーテレビ大阪では今年も、アジア太平洋トレードセンターとの共同開催による「イベントツールウエストジャパン2015」を5月28日(木)~29日(金)に大阪南港のATCホールにて開催します。本展は、イベントや販促関連のツールやコンテンツを所有する企業が出展。企業の販促、関・自治体・行政機関・各種イベント主催団体など、販促やイベント関連のツールをお探しのユーザーをお招きし、出展者とのビジネスマッチングの場としてご好評頂いております。4回目の開催となる今年は、多数の関連企業が出展し、ご来場の皆さまに質の高いプレゼンテーションを展開します。開催時にはぜひ本展へお越しくださいますようお願い申し上げます。ーーーーーーーーお問い合わせイベントツールウエストジャパン運営事務局(テレビ大阪 事業局内) 担当 :酒井・仲野〒540-8519 大阪市中央区大手前1-2-18TEL : 06-6947-1912FAX : 06-6947-1941E-mail : eventtool@tv-osaka.jpーーーーーーーー山田企画事務所・山田博一は、後援団体の日本イベント業務管理士協会/広報委員として告知しています。http://www.jedis.org/member/memberlist/517-940808.html日本イベント業務管理士協会http://www.jedis.org/ーーーーーーーー
2015.04.28

大石容子の作品http://oishi-youko.com/山田企画事務所 の協力作家大石容子の作品をまとめてみました。大石容子アートギャラリーマンガイラスト依頼見本にご利用下さい。oishi-youko.com大石容子アートギャラリー
2014.11.22

山田企画事務所・山田のpinterest写真集ーyou tube動画にリンクしてます。●●pinterest●●pinterest●●http://pinterest.com/yamadakikaku/ ●
2014.08.03

涼し気なる琵琶湖の波音 you tube 映像です。●you tube event-art seminerイベント案内 ●you tube Scenery in japan01風景写真●you tube 風景写真Scenery in japan02 ●you tube 風景写真Scenery in japan03●you tube 風景写真Scenery in japan04 pinterest風景写真集 you tube 映像です。画像をクリックして御覧ください。涼し気なる琵琶湖の波音22涼し気なる琵琶湖の波音21涼し気なる琵琶湖の波音20涼し気なる琵琶湖の波音12涼し気なる琵琶湖の波音11涼し気なる琵琶湖の波音10涼し気なる琵琶湖の波音09涼し気なる琵琶湖の波音08涼し気なる琵琶湖の波音07涼し気なる琵琶湖の波音06涼し気なる琵琶湖の波音05涼し気なる琵琶湖の波音04涼し気なる琵琶湖の波音03涼し気なる琵琶湖の波音02涼し気なる琵琶湖の波音01
2014.07.27
「源義経黄金伝説」 飛鳥京香源義経黄金伝説の宣伝●http://plaza.rakuten.co.jp/rekishistory/お盆の小説サービス源義経黄金伝説■第58回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所★漫画通信教育「マンガ家になる塾」★★you tube★■ 1190年(建久元年) 河内国葛城弘川寺葛城の弘川寺に西行はいる。 背後には葛城山脈が河内から紀州に南北に広がり河内と奈良古京の道をふさいでいる。庵の文机に向かい、外の風景を見ていた西行は、いにしえの友を思い起こしていた。平泉を陰都にする企ては、昨年の源頼朝の「奥州成敗」により、ついえていた。おもむろにつぶやく。「我が目的も、源頼朝殿の手によって潰えたわ。まあ、よい。源義経殿、またその和子、源善行殿も生きておられれば、あの沙金がきっと役に立つだろう」西行は、崇徳上皇のため、平泉を陰都にしょうとした。また、奥州を仏教の平和郷であり、歌道「しきしま道」の表現の場所にしょうとした。それが、鎌倉殿、源頼朝の手で費えたのである。西行はぼんやりと裏山の方、葛城山を見つめている。季は春。ゆえに桜が満開である。「平泉の束稲山の桜も散ったか。俺の生涯という桜ものう……」桜の花びらが散り、山全体が桃色にかすみのように包まれている。「よい季節になったものだ」西行はひとりごちながら、表へ出た。何かの気配にきずいた西行は、あたりをすかしみる。「ふふつ、おいでか?」と一人ごちる。 そして、枝ぶりのよい桜の枝をボきボキと折り、はなむけのように、枝を土に指し始めた。ひとわたり枝を折り、草かげの方に向かって、話しかけた。「準備は調いましたぞ。そこにおられる方々、出てこられよ。私が、西行だ。何の用かな」音もなく、十人の聖たちが、草庵の前に立ち並んでいた。「西行殿、どうぞ、我らに、秀衡殿が黄金のありか、お教えいただきたい」「が、聖殿、残念だが俺らの道中、悪党どもに襲われ、黄金は、すべて奪い去られてしもうた」「ふつ、それは聞けませぬなあ。それに西行殿は、もう一つお宝をお持ちのはず」「もう一つの宝とな。それは」西行の顔色が青ざめた。「そうじゃな、秀衡殿が死の間際に書き残された書状。その中には奥州が隠し金山の在りかすべて記していよう」「よく、おわかりだな。が、その在りかの書状のありかを、お前様がたにお教えする訳にはいかぬよ」「だが、我らはそういう訳にもいかん」「私も、今は亡き友、奥州藤原秀衡殿との約束がござる。お身たちに、その行方を知らす訳にはいかぬでな」「西行、抜かせ」聖の一人が急に切りかかって来た。西行は、風のように避けた。唐突にその聖がどうと地面をはう。その聖の背には大きな桜の枝が1本、体を、突き抜けている。西行、修練の早業であった。「まて、西行殿を手にかけることあいならぬ」片腕の男が、前に出て来ている。「さすがは、西行殿。いや、昔の北面の武士、佐藤義清殿。お見事でござる」西行は何かにきづく。「その声は、はて、聞き覚えがある」 西行は、その聖の顔をのぞきこむ。「さよう、私のこの左腕も御坊のことを覚えてござる」「ふ、お前は太郎左か。あのおり、命を落としたと思うたが…」いささか、西行は驚いた。足利の庄御矢山の事件のおりの、伊賀黒田庄悪党の男である「危ういところを、頼朝様の手の者に助けられたのじゃ。さあ、西行殿、ここまで言えば、我々が何用できたか、わからぬはずはありますまい」「ふ、いずれにしても、頼朝殿は、東大寺へ黄金を差し出さねばのう。征夷大将軍の箔が付かぬという訳か。いずれ、大江広元殿が入れ知恵か」西行はあざ笑うように言い放った。「西行殿、そのようなことは、我らが知るところではない。はよう、黄金の場所を」「次郎左よ、黄金の書状などないわ」「何を申される。確か、我々が荷駄の後を」「ふふう、まんまと我らが手に乗ったか。黄金は義経殿とともに、いまはかの国にな」「義経殿とともに。では、あの風聞は誠であったか。さらばしかたがない。西行殿、お命ちょうだいする。これは弟、次郎左への手向けでもある」「おお、よろしかろう。この西行にとって舞台がよかろう。頃は春。桜の花びら、よう舞いおるわ。のう、太郎左殿、人の命もはかないものよ。この桜の花びらのようにな」急に春風が、葛城の山から吹きおち、荒れる。つられて桜の花片が、青い背景をうけて桃色に舞踊る。「ぬかせ」 太郎左は、満身の力を込めて、右手で薙刀を振り下ろしていた。が、目の前には、西行の姿がない。「ふふ、いかに俺が七十の齢といえど、あなどるではないぞ。昔より鍛えておる」恐るべき跳躍力である。飛び上がって剣先を避けたのだ。「皆のものかかれ、西行の息の根を止めよ」弘川寺を、恐ろしい殺戮の桜吹雪が襲った。桜の花びらには血痕が。舞い降りる。西行庵の地の上に、揺れ落ちる桜花びらは、徐々に血に染まり、朱色と桃色がいりまじり妖艶な美しさを見せている。「まてまて、やはり、お主たちには歯が立たぬのう」大男が聖たちの後ろから前へ出てくる。西行は、その荒法師の顔を見る。お互いににやりと笑う。「やはりのう、黒幕はお主、文覚殿か」「のう、西行殿。古い馴染みだ、最後の頼みだ。儂に黄金の行方、お教えくださらぬか」西行はそれに答えず、「文覚殿、お主は頼朝殿のために働いていよう。なぜだ」「まずはわしが、質問に答えてくれや。さすれば」「お前は確か後白河法皇の命を受け、頼朝様の決起を促したはず。本来ならば、後白河法皇様の闇法師のはず、それが何ゆえに」西行は不思議に思っていた。文覚は、後白河法皇の命で頼朝の決起を促したのだ。「俺はなあ、西行。頼朝様に惚れたのだ。それに東国武士の心行きにな。あの方々は新しき国を作ろうとなっておる。少なくとも京都の貴族共が、民より搾取する国ではないはずだ。逆にお主に聞く。なぜ西行よ、秀衡殿のことをそんなにまで、お主こそ、後白河法皇様のために、崇徳上皇のためにも、奥州平泉を第二の京都にするために、働いていたのではなかったのか。それに、ふん、しきしま道のためにも、、」「ワシはなあ、文覚殿。奥州、東北の人々がお主と同じように好きになったのだ。お主も知ってのとおり、平泉王国の方々は元々の日本人だ。京都王朝の支配の及ばぬところで、生きてきた方々。もし、京都と平泉という言わば二つの京都で、この国を支配すれば、もう少し国の人々が豊かに暮らせると思うたのだよ」文覚は納得した。「ふふ、貴様とおれ。いや坊主二人が、同じように惚れた男と国のために戦うのか」文覚はにやりと笑う。「それも面白いではないか、文覚殿。武士はのう、おのが信じるもののために死ぬるのだ」西行もすがすがしく笑う。「それでは、最後の試合、参るか」文覚は八角棒を構えた。西行は両手を構えている。八角棒は、かし棒のさきを鉄板で包み、表面に鉄びょうが打たれている。「西行、宋の国の秘術か」「そうよ、面白い戦いになるかのう」(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所作 「源義経黄金伝説」 飛鳥京香Manga Agency山田企画事務所★漫画通信教育「マンガ家になる塾」★★you tube★
2012.08.13
「源義経黄金伝説」 飛鳥京香源義経黄金伝説の宣伝●http://plaza.rakuten.co.jp/rekishistory/お盆の小説サービス源義経黄金伝説■第58回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所Manga Agency山田企画事務所★漫画通信教育「マンガ家になる塾」★★you tube★■ 1190年(建久元年) 河内国葛城弘川寺葛城の弘川寺に西行はいる。 背後には葛城山脈が河内から紀州に南北に広がり河内と奈良古京の道をふさいでいる。庵の文机に向かい、外の風景を見ていた西行は、いにしえの友を思い起こしていた。平泉を陰都にする企ては、昨年の源頼朝の「奥州成敗」により、ついえていた。おもむろにつぶやく。「我が目的も、源頼朝殿の手によって潰えたわ。まあ、よい。源義経殿、またその和子、源善行殿も生きておられれば、あの沙金がきっと役に立つだろう」西行は、崇徳上皇のため、平泉を陰都にしょうとした。また、奥州を仏教の平和郷であり、歌道「しきしま道」の表現の場所にしょうとした。それが、鎌倉殿、源頼朝の手で費えたのである。西行はぼんやりと裏山の方、葛城山を見つめている。季は春。ゆえに桜が満開である。「平泉の束稲山の桜も散ったか。俺の生涯という桜ものう……」桜の花びらが散り、山全体が桃色にかすみのように包まれている。「よい季節になったものだ」西行はひとりごちながら、表へ出た。何かの気配にきずいた西行は、あたりをすかしみる。「ふふつ、おいでか?」と一人ごちる。 そして、枝ぶりのよい桜の枝をボきボキと折り、はなむけのように、枝を土に指し始めた。ひとわたり枝を折り、草かげの方に向かって、話しかけた。「準備は調いましたぞ。そこにおられる方々、出てこられよ。私が、西行だ。何の用かな」音もなく、十人の聖たちが、草庵の前に立ち並んでいた。「西行殿、どうぞ、我らに、秀衡殿が黄金のありか、お教えいただきたい」「が、聖殿、残念だが俺らの道中、悪党どもに襲われ、黄金は、すべて奪い去られてしもうた」「ふつ、それは聞けませぬなあ。それに西行殿は、もう一つお宝をお持ちのはず」「もう一つの宝とな。それは」西行の顔色が青ざめた。「そうじゃな、秀衡殿が死の間際に書き残された書状。その中には奥州が隠し金山の在りかすべて記していよう」「よく、おわかりだな。が、その在りかの書状のありかを、お前様がたにお教えする訳にはいかぬよ」「だが、我らはそういう訳にもいかん」「私も、今は亡き友、奥州藤原秀衡殿との約束がござる。お身たちに、その行方を知らす訳にはいかぬでな」「西行、抜かせ」聖の一人が急に切りかかって来た。西行は、風のように避けた。唐突にその聖がどうと地面をはう。その聖の背には大きな桜の枝が1本、体を、突き抜けている。西行、修練の早業であった。「まて、西行殿を手にかけることあいならぬ」片腕の男が、前に出て来ている。「さすがは、西行殿。いや、昔の北面の武士、佐藤義清殿。お見事でござる」西行は何かにきづく。「その声は、はて、聞き覚えがある」 西行は、その聖の顔をのぞきこむ。「さよう、私のこの左腕も御坊のことを覚えてござる」「ふ、お前は太郎左か。あのおり、命を落としたと思うたが…」いささか、西行は驚いた。足利の庄御矢山の事件のおりの、伊賀黒田庄悪党の男である「危ういところを、頼朝様の手の者に助けられたのじゃ。さあ、西行殿、ここまで言えば、我々が何用できたか、わからぬはずはありますまい」「ふ、いずれにしても、頼朝殿は、東大寺へ黄金を差し出さねばのう。征夷大将軍の箔が付かぬという訳か。いずれ、大江広元殿が入れ知恵か」西行はあざ笑うように言い放った。「西行殿、そのようなことは、我らが知るところではない。はよう、黄金の場所を」「次郎左よ、黄金の書状などないわ」「何を申される。確か、我々が荷駄の後を」「ふふう、まんまと我らが手に乗ったか。黄金は義経殿とともに、いまはかの国にな」「義経殿とともに。では、あの風聞は誠であったか。さらばしかたがない。西行殿、お命ちょうだいする。これは弟、次郎左への手向けでもある」「おお、よろしかろう。この西行にとって舞台がよかろう。頃は春。桜の花びら、よう舞いおるわ。のう、太郎左殿、人の命もはかないものよ。この桜の花びらのようにな」急に春風が、葛城の山から吹きおち、荒れる。つられて桜の花片が、青い背景をうけて桃色に舞踊る。「ぬかせ」 太郎左は、満身の力を込めて、右手で薙刀を振り下ろしていた。が、目の前には、西行の姿がない。「ふふ、いかに俺が七十の齢といえど、あなどるではないぞ。昔より鍛えておる」恐るべき跳躍力である。飛び上がって剣先を避けたのだ。「皆のものかかれ、西行の息の根を止めよ」弘川寺を、恐ろしい殺戮の桜吹雪が襲った。桜の花びらには血痕が。舞い降りる。西行庵の地の上に、揺れ落ちる桜花びらは、徐々に血に染まり、朱色と桃色がいりまじり妖艶な美しさを見せている。「まてまて、やはり、お主たちには歯が立たぬのう」大男が聖たちの後ろから前へ出てくる。西行は、その荒法師の顔を見る。お互いににやりと笑う。「やはりのう、黒幕はお主、文覚殿か」「のう、西行殿。古い馴染みだ、最後の頼みだ。儂に黄金の行方、お教えくださらぬか」西行はそれに答えず、「文覚殿、お主は頼朝殿のために働いていよう。なぜだ」「まずはわしが、質問に答えてくれや。さすれば」「お前は確か後白河法皇の命を受け、頼朝様の決起を促したはず。本来ならば、後白河法皇様の闇法師のはず、それが何ゆえに」西行は不思議に思っていた。文覚は、後白河法皇の命で頼朝の決起を促したのだ。「俺はなあ、西行。頼朝様に惚れたのだ。それに東国武士の心行きにな。あの方々は新しき国を作ろうとなっておる。少なくとも京都の貴族共が、民より搾取する国ではないはずだ。逆にお主に聞く。なぜ西行よ、秀衡殿のことをそんなにまで、お主こそ、後白河法皇様のために、崇徳上皇のためにも、奥州平泉を第二の京都にするために、働いていたのではなかったのか。それに、ふん、しきしま道のためにも、、」「ワシはなあ、文覚殿。奥州、東北の人々がお主と同じように好きになったのだ。お主も知ってのとおり、平泉王国の方々は元々の日本人だ。京都王朝の支配の及ばぬところで、生きてきた方々。もし、京都と平泉という言わば二つの京都で、この国を支配すれば、もう少し国の人々が豊かに暮らせると思うたのだよ」文覚は納得した。「ふふ、貴様とおれ。いや坊主二人が、同じように惚れた男と国のために戦うのか」文覚はにやりと笑う。「それも面白いではないか、文覚殿。武士はのう、おのが信じるもののために死ぬるのだ」西行もすがすがしく笑う。「それでは、最後の試合、参るか」文覚は八角棒を構えた。西行は両手を構えている。八角棒は、かし棒のさきを鉄板で包み、表面に鉄びょうが打たれている。「西行、宋の国の秘術か」「そうよ、面白い戦いになるかのう」(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所作 「源義経黄金伝説」 飛鳥京香Manga Agency山田企画事務所★漫画通信教育「マンガ家になる塾」★★you tube★
2012.08.13

主催:伊丹市立産業・情報センター、伊丹商工会議所 共催:日本イベント業務管理者協会関西地域本部のコンテンツセミナー予定です。コンテンツセミナー告知ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー1.-クリエイターをめざす人の心得を学ぼう-クリエイター基礎セミナー(入門編)http://www.meditam.org/seminar/20110723/index.html映像・漫画・アニメなどのコンテンツ産業にかかわる、各種企業へのプレゼンテーション能力が必要な学生や若手クリエイターの方々を対象に、コンテンツ産業はじめ企業等への企画提案・PRするために必要となるアイデア発想法・新人教育の方法を、フリーの若手イラストレーターの仕事を参考事例として講義します。開催日時 ◆平成24年6月23日(土)14:00~16:30講 師◆1.「企画・アイデア発想法(映像・アニメ・小説・携帯電話コンテンツ等の企画)」 メディアクリエイター・夢人塔代表 浅尾典彦氏伊丹クリエイターセミナー講師浅尾先生、自著(青心社)を説明。 (去年2011年撮影)2012年のセミナー実施日をお間違いなく。◆2.「イラストレーターの仕事(イラストの描き方、代理店・デザイン会社へのアプローチ方法)」 北垣絵美氏イラストレーター・kitagaki_emi北垣 絵美/作品プレゼン料 金 ◆無料会 場 ◆伊丹商工プラザ4階会議・研修室A定 員 ◆先着80名対 象 ◆コンテンツクリエイターを目指す学生/就職を希望する若手クリエイター等主催:伊丹市立産業・情報センター、伊丹商工会議所 共催:日本イベント業務管理者協会関西地域本部http://www.jedis.org/concept.htmlhttp://plaza.rakuten.co.jp/jediskansai/協力:山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/《お申込み》 伊丹市立産業・情報センター〒664-0895 兵庫県伊丹市宮ノ前2-2-2TEL 072-773-5007 URL http://www.meditam.org/FAX 072-778-6262 Mail postmaster@meditam.orghttp://www.meditam.org/access/index.htmlーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2012.06.16
ウオーター・ナイツー聖なる水の僕(しもべ)■第8回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画 聖水紀第8回「本当に知らないようだな」男は静かに言った。「君はウェーゲナー・タンツ宇宙連邦軍大佐だ。聖水が地球防衛圏を突破するのに手をかした男だ。君のために地球は聖水に汚染されたのだ」ロイドの目には憎しみの炎が燃えている。 ロイドの言葉はシマの心に深々とつき刺さる。俺がウェーゲナー・タンツだと。地球最大の裏切り者。急に過去の記憶が戻ってきて、タンツの心と胸を一杯にした。犯罪者。震えがタンツの体を襲った。たっていられない。両手両ひざをついた。タンツの体は小刻みにふるえる。汗が体じゅうから吹き出る。 ロイドがひざまずき、タンツに被いかぶさるように、タンツの顔をのぞきこむ。「タンツ宇宙連邦軍大佐。君に教えて欲しい。宇宙連邦軍の秘密要塞の位置を。君しか生き残っていない。宇宙連邦軍で、君しかね」タンツの脳裏には、連邦軍の潰滅シーンが想起された。「ねえ、タンツ、お願い。教えて。覚えているはずよ。宇宙要塞ウェガの位置と要塞侵入のパスワードを」「宇宙要塞ウェガが我々の切り札なんだ」タンツは無言で震え続ける。「だめよ。ロイド、タンツは堅く自分の殻に閉じこもっている。病院でも、自分がタンツだと、結局最後まで認めなかったというわ。今でもショック状態よ。我々の機械で治療しましょう」「ベラ、時間が惜しい気がする。こんな奴に時間を与えるのがねえ」 あたりが急に騒がしくなった。ロイドは建物から飛び出る。男が走ってくる。「どうした、何があったのだ」「大変です、チーフ」息を切らせてその男は叫ぶ。雨がその男の顔といわず、頭といわず激しく降り注ぐ。「騎士団員です、騎士団員がここに」「なぜ、ここがわかったのだ」ロイドの手の中で男は崩れる。「聖水がかかっていたのか」ロイドの方へ、雨足のけぶる中、また誰かがちかずいてくる。「誰だ。ハーマンか」ロイドは仲間の名前を呼ぶ。「残念ながら、ハーマンではありません」やさしい声がかえってくる。「誰だ、きさま」ロイドはいぶかって相手をみようとした。ぬっと新手の男が登場する。大音声で名乗りをあげる。「初めて、お目にかかります。聖水騎士団員、レオン=フガンといいます。以後、お見知りおきを。歌姫ベラ、さらにこぎ人シマをいただきにまいりました。おとなしく渡していただきましょう。もし、だめとあらば、この私の聖水剣の舞いをご覧にいれましょう」「きさま。ひとりでここへ」「そうです。失礼にあたらねばよろしいのですが」「いい度胸だ。が、どうしてここが、」「職業上の秘密ですといいたいところです。、まあ、サービスしましょう。聖水が彼女にかかったのですよ。その聖水がこの場所を教えてくれたのです」「あの少量の聖水が」「そうです。ああ、それについでに申しあげておきましょう。その聖水は私が先刻、研究所からいただきました。私に所有権はありますものですからね」「聖水を返してもらおう」「わからない人だなあ。私たちに所有権はあるといったでしょう。それより、ベラとシマを渡してください。あなたがたレインツリーを滅ぼすのは時間の問題なのですよ」フガンはあたまりまえのように言う。「フガンとやら、我々が簡単にベラとシマを返すとおもったか。この基地で、きさまから聖水を奪い取ってくれる」「お手並み拝見しましょう」フガンはニヤリと笑う。聖水剣を引き抜いていた。建物からベラが飛びだしてきた。「ロイド、無謀よ。彼は聖水剣をもっているのよ」「これはレディ、またお目にかかりましたね。聖水騎士団レオン=フガン。聖水の命により、あなたを貰い受けにまいりました。すぐさま、聖水のみもとに」フガンはベラの方に手をさしだしていた。「笑わせてくれるわね。フガン」ベラはフガンの手を打ちすえる。「私のお願いを受け取っていただけない。寂しい限りです。わかりました。それでは力ずくで、あなたをさらつていきましょう」「フガン、いい度胸だ、まわりを見ろ」ロイドが叫んでいた。フガンのまわりをレインツリーのメンバーがとりかんでいた。「これは、これは怖そうなおにいさんがただ」「フガン、へらず口をたたくのもこれまでだ。我々の包囲陣、やぶれるか」「何」フガンは聖水剣をむけた。が、聖水が彼らにとどかない。「こ,これは」「フガン、我々が何故、このような多雨地帯にいるのか、わかるか」「さては」「きさまの想像どうりだ」水にたいして水を使う。地球の水がレインツリーの呪術師の念力によりバリアーとなっている。分がわるいとフガンは判断する。彼は臨機応変フガンは一瞬飛び上がり、ベラの真後ろに着地した。「さてさて、レインツリーの皆さん、今日はこれで幕にしておきましょう。変に手だしをなさると、このお嬢さんが傷つきますよ。これでも私は諦めのいいほうなのです」「皆、構わないで、このフガンをやっつけてよ」「レディ、そう騒がれてはこまります。あなたは諦めの悪い方ですね」フガンはベラに当て身をあて、気を失わせる。「フガン、きさま」ロイドの顔は激怒の色。「皆さん、お静かに、彼女が目をさまします」フガンはベラを担ぎあげ、走り去る。上空から飛翔機が降りて来る。「ちょうど、いい時間です」「では皆さん、またお目にかかりましょう。あ、それから、シマによろしく」飛翔機は飛び上がっていった。 ■聖水紀■(1990年作品)(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画
2011.11.08
ウオーター・ナイツー聖なる水の僕(しもべ)■第7回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画 シマはようやく目ざめた。鳥はシマと、意識を失っていたベラの体をどこかに運んだようだ。シマは飛行中に疲労で寝てしまったようだ。しかし、いまだに信じられなかった。自分はあのフガンとかいう聖水騎士団の男に聖水をかけられた、が消滅しなかった。おまけに単なる歌姫だと思っていたベラが、海水を鳥に変化させた。自分はその鳥に乗ったのだ。脅えが今ごろ、シマの体を震わせていた。それにしてもここは。雨音が急にシマの耳に飛び込んで来る。シマは何かの建物の一階にいた。バラック状の簡素な建物で、シマの目前にドアがあった。窓からは激しい雨足が見えている。ドアを開けてズブヌレの男が入ってきた。男の顔はレインパーカのフードのせいではっきり見えない。不安がシマの体を震えさせた。不安は人を多弁にする。「あなたはどなたですか。それにここは」「我々はレインツリーだ」その男はフードをあげながら、言った。シマが思ったより若い男だった。 レインツリー、対『聖水』組織。聖水紀以前の地球社会に復帰さることを目的とする組織だった。おまけに、呪術者集団。「安心しろ、シマ、我々は味方だ」「ここは、どこなんですか。それにベラは大丈夫なのでしょうか」「レインツリーの基地のひとつだ。ここは多雨地域。聖水騎士団もなかなかちかずけまい。ベラのことは、直接本人から聞け」 建物に今度は小さな人間が入ってくる。フードをはずす。元気なおなじみの顔があった。「シマ、大丈夫だった」ベラの第1声だった。「君こそ、大丈夫なのか。たしか聖水を体に浴びたはずだ」わずかに、安堵感がシマの体に広がっていく。「わずかよ。それにこのレインツリーの基地で手当してもらったの。私の体は特別製なの」傍らの男を見てベラはしゃべった。最後の言葉に意味があるかのように。「シマにはもうしゃべったの、ロイド」 ロイドと呼ばれた男は首を振る。「いや、まだだ。君の口からいってもらったほうがいいと思ってね」 ベラはすこしの間、考えていたようだが、やがて決心したようにシマの目をみつめながらしゃべった。「シマ、あなたはシマではない」 シマはとまどう。悪い冗談かとも思った。が、ベラの表情は、船の上の歌姫の冗長なベラのそれとは別物だった。「どういう事なのかな。君は私を探っていたのか。疑っていたのか。だから、船の上の君は演技だったのか」シマはわけののわからない怒りで、自分がつき動かされているのを感じた。ベラは顔を赤らめて絶句する。ロイドがその場を救おうとした。「それはベラから答えにくいだろう。私が船にいる君を発見し、確認のためにベラを歌姫として潜入させたのだ」 シマは考える。この私がシマでないとすれば、一体私はだれなのだ。ベラは私が誰だかわかっていて私に質問をしていたという。このレインツリーの人間は、本来の私が何者なのか知っているわけか。シマは怖かった。自分が誰か聞くことが。シマの心はちじに乱れ、叫んでいた。「頼む。教えてくれ。私は誰なのだ」(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画
2011.11.07
ウオーター・ナイツー聖なる水の僕(しもべ)■第6回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画内容は以下のようだった。 しがない奴隷船のこぎ人にすぎないシマ。彼は聖水以前の出来事の記憶がないのだ。その時、歌姫ベラが尋ねていたらしい。「シマ、全然、記憶がないの。本当なの。おかしいわよ。私だって私のお母さんがデパートの売り子だってこと覚えているわ。あなたはどんな職業だったかも覚えていないの」「残念だが、ベラ。私はある船にひろわれたらしい」「海から生まれたとでもいうの」「海からひろわれた後も、長い間、収容施設の病院にいたようだ。聖水によって地球の社会機構が変わった時に、その病院からほうり出された」「それで、奴隷市場に出て、奴隷船の流体となったわけ」「そうだ。ところで、ベラ。君はなぜ、歌姫なんかに」「一言でいえば、才能ね」ベラは鼻をピクピクさせて言う。「才能。ベラ、それは大きくでたものだね」「だって、私には、その人を歌に出来るもの」「どういう意味だね」「どんな人でも旋律をもっているのよ、生まれながらの旋律が体に組み込まれているの。それが、私には分かるの」「だからこそ、マハンにある歌姫養成アカデミーに入ったわけだね」「おまけに優等生でね」 フガンが船長から聞き出したのは、このような内容だった。フガンはアマノに連絡した。「わかった。それでは、フガンくん、彼らを追ってくれるかね」「わかりました」フガンは、船長から話しを聞く間に、奴隷船の上空に自分の飛翔機を呼び寄せていた。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画
2011.11.06
ウオーター・ナイツー聖なる水の僕(しもべ)■第5回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画「おやめ。みっとないよ。聖水騎士ともあろうものがうろたえるのじゃないよ」ベラはフガンにむかって罵声を浴びせる。「あなた、いったいどちらの味方なの、はっきりしてください」 シマもベラの発言にいささか驚いている。「私は誰の味方でもないよ。私は私の味方さ。私の思うとおりに生きているわけさ」「あなたも、この人と一緒に捕まえて調べなければなりませんねぇ」「いやだよ。なぜ、あんたのいう事など、聞く耳をもたないさ。あんたの相手をする。私はそれほど、ひまじゃないよ」「レディ、いわせておけば、私にも我慢の限界があることをおわすれなく」フガンはベラを捕まえようとした。突然ベラは歌を歌い始める。どうしたのだ。シマは思った。フガンの手をのがれながら、船の上を走り、歌を歌う。その歌詞をフガンは理解できない。異国の言葉、あるいは何かの記号のように思える。ベラは船の外、つまり海にむかって受かっている感じなのだ。船の動きがおかしい。海水が急に、甲板に撥ねあがってきた。その海水が徐々に、形になっていく。やがて、姿が決まる。出現したのは水鳥である。この鳥のむこう側は不完全だが、透いて見える。「面妖な事。レディもこの男の仲間と見えますね」フガンが叫んでいた。「ほほっ、聖水騎士ならそんな事くらい自分で考えなよ」ベラはフガンにあかんべーをする。かえす顔でシマにどなる。「ほら、シマ、ばやぼやするんじゃないよ。はやく、この鳥にのるんだよ」「し、しかし、ベラ、私は」「早く、あーたら、こーうたら言ってるひまはないよ」ベラにせかされ、シマは、不承不承、鳥の背に乗る。シマは今にもこの鳥の水で溺れるのではないかとヒヤヒヤする。フガンは再び聖水剣を手ににじりよっていた。「ほら、飛び立つよ」一瞬、フガンの聖水剣から、聖水がベラに向けられて発射される。「レディ、おかえしですよ」聖なる水がベラの肩を撫でる。「やられた。シマ、後を頼むよ」「そんなこと、いったってベラ、どうすれば」シマはおろおろする。がベラはすでに気を失っていた。「おーい、ベラ、起きてくれ」が、水鳥は、シマの都合など無視して、晴れ上がった蒼弓の空へと舞い上がっていく。 船には、空を見上げるフガンがつぶやいていた。「あのレディは海水を動かしましたねぇ。ひょっとして伝説の『みしるし』かもしれません」 フガンは自分の装甲服についている連絡機器のスイッチをいれる。聖水騎士団長アマノに今の一部始終を告げ、言葉をついだ。「少しばかり、私は今のシマ老人と歌姫ベラを調べたいのですが」 しばらくの沈黙のあと、アマノは答えた。「よし、フガン、その奴隷船の船長を締め上げてみろ。何か、手掛かりがあるかもしれん」「わかりました」「『みしるし』であることがわかれば、まあ、よい、気をつけろ。君は、おもわぬくじをひいたのかもしれん」 フガンは早速、奴隷船船長にあっていた。事情を説明し、船長の協力を得ようとした。「流体のひとりのシマでしょう。あいつについては奴隷市場では、まったくデータがついていなかったのです」船長はこういう。「彼はロボットだったのでは」「いや、それはないでしょう。生体チェックをクリアーしていますから」「聖水以前は何をどこで何をやっていたのか、わからないのですか」「いや、はっきりとはわかりません。ただ」「ただ、何ですか。言ってください」「ある流体がシマと歌姫ベラとがしゃべっているのを聞いていたらしいのです」「ほほっ、それは興味深いですね」「この流体はベラにほれていましたから、あまり、ベラがシマと仲がよいので,じゃまをしょうとしたらしいのですが」フガンは話しを遮る。「前おきはいいのです。どんな事をしゃべっていたのですか」「シマは自分の出自をベラにしゃべっていたのです」「どんな内容ですか。話してみてください」(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画
2011.11.05
ウオーター・ナイツー聖なる水の僕(しもべ)■第4回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画 聖水プールの中、水人はタンツについて検討していた。『タンツをどう処分する』『我々を地球に導いた功績はありますが』『が、我々聖水に対する認識は極めて薄いと言わざるをえん』『嫌悪感がぬぐいきれないようだ』『それに、今はアマノと聖水騎士団がいるからね』『では、処理するかね』『残念ながらしかたがないでしょう』 タンツの体は聖水の中、水泡に包まれてたゆとうていた。自分が誰なのか。またどこにいるのか、まったく記憶がない。 タンツの利用価値はなくなったと、聖水は判断した。タンツの入った水泡が、聖水の中から弾きだされた。タンツを包んでいた水泡は消える。どこかの海だろう。裸体のタンツはたゆとう波に翻弄され、やがて海に飲み込まれていく。(3) 静かな海の上を、人の力で走っている奴隷船が進んでいた。一人のこぎ人、通常、こぎ人は「流体(りゅうたい)」と呼ばれているのだが、船倉からあがってくる。彼の自由時間である。その男はきょろきょろしていた。誰かを探しているようだ。年令はそれほど若くはない。いや、むしろ、老人の部類にはいる。が、さすがに奴隷船の流体だけある。彼の筋肉は、とぎすまされて、太陽の光りを照り返していた。 若い女が、いままさに、船橋から降りてくるところだった。その男シマにきずく。女もその男を探していた。「ねえ、シマ。あなたはいるなぜ、そんなにいつも悲しいそうな顔をしているぉ」女ベラは、高いブレッジから男に呼び掛ける。 シマは考え深げな目で、上にいるベラに答えた。「私にも分かりはしない。ただ」「ただ、何なの」ベラは14、15才だろう。この船の歌姫であり、皆のアイドルであった。奴隷船には必ず歌姫が乗っている。そして、流体には歌姫が必要なのだった。歌姫は、歌がうたえる。が歌姫のソングは特別だった。彼ら流体の体の細胞に訴えかける歌なのだ。その歌のおかげで、流体たちは船を漕ぐ筋肉が効率よく動かすことができる。歌姫の声は、筋肉に対するある種の栄養剤であった。歌姫はこの地球には、数すくない。が通常の交通機関が消え去ったこの時代、奴隷船は有用な交通機関だった。「私はいつも思うのだ。私は、この地球に対して、とてつもなく大きな責任をもっているってね」こう深刻そうに答えたシマに、ベラは大笑いを返す。「シマったら、そんな大ボラがふけるわねえ。じゃなに、この地球はあなたが作ったとでもいうの。今は奴隷船のこぎ人、流体にすぎないあなたがね」「ベラ、笑うのももっともだ。今の私は、この船の流体にすぎない。でも、昔はそうだったような気がするのだ」「シマ、シマ。そんな深刻な顔をするあなたが大好きよ。あなたといると逆に楽しくなるわ」「私も同じだ。君がいればこそだ。この奴隷船くらしも気にならない」 この時、二人の側をきらびやかな装甲服に身を包んだ男がとうりかかる。 ベラが大きな声で叫び、シマの注意をうながす。「あっ見て、見て、シマ。聖水騎士団よ」「わかるよ、ベラ。私にも目というものがある。でも、彼らは権力の犬にすぎないのだよ。か弱いものだよ」 突然、その騎士が、ベラのま後ろに立っていた。彼は二人の話を聞いていた。「これはお美しいレディ」その騎士は、ベラの右手をとり、キスをする。「何か、こぎ人が、レディに対して失礼なことでも」 ベラはあまのじゃくである。つい、口をすべらす。満身、笑みをたたえて騎士にいう。「ええ、いいましたとも。あなたがた、聖水騎士団が権力の犬にすぎないって」 男としては、もったいないほどの美貌をもつ彼の顔色が急変する。「なにですと。権力の犬。すばらしい言葉ですね。で、その言葉をこぎ人がいってくれたわけですね。聖水騎士団も甘くみられたものですね」「お若いお方。お許しください。年寄りのたわごと。どうぞ、お許しください。おみのがしください」シマはこの騎士に深々と頭を下げる。「そんなこと、する必要があるの。シマ、あなたいつも、聖水騎士団の悪口を言っているのじゃない」おしゃべりのベラが口をはさむ。騎士の顔色がもっと赤くなる。「私の名は聖水騎士団のレオン=フガン。私に対する侮辱なら、許してさしあげたかもしれない。が、我々聖水騎士団の侮辱、ひいては、聖水にたいする侮辱は見過ごすわけにはいきません。こぎ人。そこにひざまずきなさい。私達、聖水騎士団がゆるされている聖水剣の威力をお目にかけましょう。そうすれば、あなたのその曲がった根性もよくなるかもしれませんねえ」 フガンは背中に装着されている聖水剣を、目にもとまらぬ早業で引き抜き、手にしていた。「お願いだ。フガンさま。この年寄りに無体なことをなされますな」「こぎ人シマ、許すわけにはいきません。私は聖なる水から、役目を与えられているわけですから。私の役目なのですよ。悪く思わないでください」「そうよ。やってしまって」どういう意味からなのか、ベラが、フガンをけしかけている。シマはベラの方をみる。いったいどういうことなのだ。この歌姫はどちらの味方なのだ。 ベラは一瞬思う。これではっきりするだろう。シマの正体が。ようやくわかる。さぐりをいれてもう3カ月。もうそろそろ。 フガンの手にする聖水剣がひと振りされる。その先から、わずかな液体がシマにむけ放たれる。人々を溶かす聖水が。「シマ。あきらめなさい。聖水の元に身を捧げなさい。そして人類のおろかさをしりなさい」 発射された聖水は、広がり、薄い粘膜の膜となり、シマの体を包む。 当然、シマの体は消えてしまうはずだった。聖水が、この男には反応しない。「あなた、まさか、ロボットではないでしょうね」フガンは叫ぶ。機械文明の象徴であるロボット、コンピューターは、この時期作ることが許されていない。「お若いおかた。どうぞ、もう、おやめください。このこぎ人のじじいでございます。これ以上。もういじめないでください」「そうはいきません。聖水に反応しない人間など見たことがない。あなた、まさかご禁制のヒューマノイドではないでしょう」「おやめください」シマは、フガンののばさせた手をふりはらう。「あなた、さからっちゃいけません。やはりヒューマノイドなのですか」 ベラは様子を見ている。やはり、シマは普通の人間ではなかった。私のにらんだとうりだ。じゃ、このシマを組織につれていこう。可能性はある。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画
2011.10.04
ウオーター・ナイツー聖なる水の僕(しもべ)■第3回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画 アマノ博士は苦い思いをかみ締めながら、自分の研究所に戻った。昨日まで、イタリア・トリノ市で開催されていた宗教科学学会の国際会議では、罵声はアマノに集中していた。 アマノは自分のデスクに座り、頭を抱える。もう、誰も彼を弁護しょうとはしないだろう。永久に学会へ復活の見通しはない。アマノは引き出しにある銃をつかんだ。 その時、アマノは壁から侵入してくる何かを発見した。そいつは、アマノに何かをいう。『アマノくん、我々が君を選んだのだ。光栄に思いたまえ。我々は聖なる水。この地球をカイホウしに来たのだ』「解放だと、一体、お前は何だ」『宇宙の存在だ。地球人類に本当の自由を与えにきたのだ』「宇宙生物がなぜ私のところへ」『君が最高の科学者だと信じたのだ。我々は君が学会で何と呼ばれているか、知っている』『めぐまれない科学者』水人たちが続ける。『現代の錬金術師』「や、やめてくれ。君立ちは私に引導をわたしに来たのか。いわれなくとも、私は自分の意志で命を絶つ」アマノは頭に銃をあてる。『おまけに、我々は君が古代の宗派ドルイド派の狂信者だと知っている』「そんな情報をどこから入手したのだ」アマノは驚く。なぜ、かれらが、そのことを、闇の宗教であり2005年、地球政府によって弾圧撲滅、根絶されたはずのドルイド教の信者であることを。 『君を知るある男からだ』『君の好きなイメージで、地球を真実に目覚めさせる聖なる騎士団を、組織してよい』「騎士団だと」アマノにとって興味がある内容だった。『君が学会で発表したとうり、地球には浄化が必要なのだ』アマノは、銃を引き出しにしまった。奇跡がおこったのかもしれん。私に運命の神がほほ笑んだのかもしれん。「話しを聞こうか」アマノは、侵入者たちの方に顔と心を向けた。■ インドネシアのアンダマン諸島。このエリアは驚異的な豪雨地域だ。その中にあるスキャン島。その山岳地域に人々が集まっていた。その木は覚醒していた。地球の地霊と呼ぶべきだろうか。ともかく、その木は地球の危機を感じていた。それゆえ、この木がたばねている世界中の呪術者が集められていた。奇妙な形をした樹木のそばに、人々は集まっている。その中の二人が話しあっていた。「ロイド、いよいよ我々の出番がきたようだな」「そうだ、我々が単なる呪術師でない事がわかるだろう」「地球を救う大地の使者だからな」「レインツリーよ、我々は感謝します」 彼らは樹木の前にひざまずいていた。 その木レインツリーは樹液を流した。ひざまずく人々の元まで、その液体は流れていく。真っ赤な血の色だった。「吉兆だぞ」先刻の男が叫んでいた。 聖水を含んだ雨が地球全体を覆っていた。いかなる機械的防御も聖水の前では無力だった。例えば、聖水は電気回線に侵入するのもたやすい。どんな地球上の物質も聖水を遮ることはできない。聖水は物質の組織のすきまを通過した。聖水の前では無力化された。宇宙連邦軍は滅亡し、地球の機械文明も滅ぶ。地球は聖水紀にはいったのである。「これが、私が全世界から、選んだメンバーです」アマノは聖水がたまる聖水プールの前でしゃべっていた。聖水は雨になって侵入後、再び結合していた。人格化された存在である水人が出現していた。『よろしい、この地に神殿を建築しなさい。さらに車を作るのです』「車ですと」『そうです。それをもって我々の事をもっと人類にしらせるのです』その時、彼ら全員の前に聖水が流れてきた。やがて彼らの驚きを残して、また聖水プールに戻っていく。彼ら一人一人の前に剣と装甲が並べられていた。「これは、いったい」アマノは言葉を発するのに時間がかかった。『あなたがたへの我々のささやかなプレゼントです。この剣は先から発射できます。その液体は我々の主成分から摘出されたものです。まだ、連邦軍の残党がいるでしょう。火力の機器は残っていないと思いますが、あなた方にも武器が必要でしょう。それぞれの名前が刻みこんであります。引き抜きなさい』「でも、なぜ、我々の名前がわかったのですか」一人の男が聞いた。『それは我々が聖なる水だからです』(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画
2011.10.03
ウオーター・ナイツー聖なる水の僕(しもべ)第2回■聖なる水の僕■(1990年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画第2回『聖なる水』 彼らは遠くに存在する宇宙溝から飛来してきた。ここへ到着するまで、かなりの距離だった。時間の概念は彼らにはあまり重要ではない。その間、星の生物への接触方法については、彼らの間で、議論されていた。宇宙の闇は深く、彼らの心の中にもまた深い悩みがあった。今回の任務は特殊だった。使命感だけが彼らをつき動かしているのかもしれない。 彼らの体はまた飛行体そのものであった。金属、非金属でもない特殊な物体。それゆえ、いかなる星の探知装置にも発見されなかった。 この生物の取り扱いについては注意を要する。彼らのとりあえずの結論だった。太陽系近辺で停止して、まわりを観察する。 飛行物体中に含まれる、意識体同士が会話をしていた。彼らは多くの意識体の結合体である。『このあたりかね』『指令書によると、そのようです』 目の前を、極めて幼稚な飛行体が動いていた。『何か、飛行体が通過します』『かなり、原始的なものだねえ』『ひょっとして、あの飛行体は、目的星の所属物かもしれませんね』『一度、調査してみよう。生物体が存在するかもしれん』 彼らはその飛行体に乗り移った。 タンツが緩やかな眠りから目覚める。もう、到着したのか、いつもながら、冬眠からの目覚めはけだるかった。あたりがはっきりと見えない。変にゆがんで見える。長い宇宙航行で、私の視覚がおかしくなったのか。 タンツは、おかしなことにきずく。私は、ここはカプセルの中ではない。おまけに、ここはどうなっているんだ。 たしかにウェーゲナー・タンツ、宇宙連邦軍大佐は、ウァルハラ号の中にいた。この船は恒星間飛行中のはずだ。 が、タンツの体のまわりは水だった。おまけに、水の上にいるのではない。水の中にいるのだ。なぜ、私は呼吸ができるのだ。タンツは不思議に思った。とりあえず、その事実を受け入れざるを得ない。ともかく、息をしている。 それに、このウァルハラ号はどうなっているのだ。タンツは航行装置のチェックをしょうと思い、コックピットに向かう。 ウァルハラ号の中は、どこもかしこも水で満杯のようだった。空気がまったくない。タンツはようやくのことであ、コックピットへたどり着く。行く先の方位座標は地球となっている。「地球だと」タンツはうめく。さらに地球暦の日付をチェックする。2020年8月15日。 タンツがニュー・シャンハイの宇宙空港から飛び立った日が2020年3月10日。冬眠状態のまま、恒星タンホイザー・ゲイトにむかうはずだった。タンホイザー・ゲイトにつく時期まで、タンツは目覚めることはないはずだった。が、今タンツは目覚めていて、ウァルハラ号は再び、地球へ向かっている。ロケット一杯の水をつめこんで。「くそっ、一体どうなっているんだ」 タンツは毒づいて、地球司令室へ連絡しょうとした。タンツの肩をその時、誰かがつかむ。ギョッとしてタンツは後ろを振り向く。誰もいない。当たり前だ。この船の生命体はタンツだけなのだから。 しかし、何かがいる。タンツは心の中でだれだ、と叫んでいた。『タンツ、我々の存在にようやく気がついたようだね』タンツの耳に、声が響いてきた。「誰だ。何者だ」『姿をあらわしてほしいかね、タンツ』 タンツはトラブルを望んでいなかった。彼はこの恒星間飛行を人類初めての飛行を、ともかく、成功させたかった。名誉を得たかったのだ。が、タンツの前の水中に、不透明な何者かが、複数、姿を取り始めた。「おまえ達は、いったい」『聖なる水』彼らはそういう意味の言葉をタンツの頭にイメージとしてほおりこむ。その瞬間コックピットにある通信機器がつぶれるのが、タンツの目にはいった。地球本部との連絡は不可能になった。自分で解決せざるを得ない。『マザー、どうすれば』タンツは心の奥でさけんでいた。マザーコンピュータのことである。「聖なる水、聞いたことがない」タンツはひとりごちる。『タンツ、今、君に説明してもわかりはしまい。時間がかかるだろう。ただ、言えることは、君たち地球人類をカイホウしに来たのだ』「我々をカイホウする。何からカイホウするというのだ」『タンツ、怒るな。我々に協力してもらえないかね』「協力しろだと。笑わせるな。俺は宇宙連邦軍大佐ウェーゲナー・タンツだ。君達、侵略生物になぜ、協力しなければならんのだ」『我々は、いわば宇宙意識なのだ。その宇宙意識で、ひとつになろうという提案だ』「それゆえ、私のロケットを占領したのか」『ちょうどいいところに、君の船がとうりかかったのだ。中を透視すると、地球人の君がカプセル内で冬眠していたのだ。我々は、君さらにこの船のコンピューターから、地球の知識を読み取った』「私は宇宙連邦軍のウェーゲナー・タンツだ。侵略者である君たちのいうことを聞くわけにはいかん」『我々は侵略者ではない』「使節というつもりか。それなら、正式の手続きを踏め」『どうやら、聞き分けのない個体をえらんだようですね』水人のひとりが言った。 タンツは壁のボックスに装着してある銃をとりあげ、水人をめがけ撃った。が、熱線はむなしく水中に消える。『我々にはそんなものは通じない』『しかたがない』『我々の命令を、しばらく黙って聞いてもらおうか』 「何だと、お前たちのいうとうりにはならん」タンツは自殺しょうとした。このままでは、自分の知識が悪用されると思ったからだ。が、この生命体の反応の方が早かった。タンツは気を失った。(続く)20090501改定作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画
2011.10.02
ウオーター・ナイツー聖なる水の僕(しもべ) 第1回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画ウオーター・ナイツー聖なる水の僕 第1回 クルツはおびえていた、自分自身でもそれがよくわかった。誰でも、いつかは通過しなければならない同化儀式だと、自分自身にいいきかしていた。自分自身を破壊しかねない恐れだった。クルツは町中へ来て、ウォターステーションへむかっている。今日の朝、彼は決心したのだ。地球人類にとっての決断の時、通過儀式。地球人類の一人一人が、自分で決心しなければならない儀式だった。聖水が飛来した時から、地球の歴史が変わったといっていいだろう。新しい歴史の幕開けだった。「聖水に受け入れられるかどうか」混乱と騒擾。新しき者への生まれいずる悩み。そんなものを地球人類が体験したといっていいだろう。クルツは、わきがじっとりとぬれているのにきずく。怖い。想像を絶するモノとのコンタクトなのだ。恐怖を感じない人間などいるだろうか。聖水が彼Kを受け入れてくれうかどうか。もし受けいれてくれなければ。 ああ、そんな事はありえまい。考えたくもない。消極的な考えは捨てなければ。クルツは思った。 冷や汗がひどい。手のひらがじっとりとしていた。季節はもう冬が近いというのに、クルツの体は、真夏の太陽に焼き付けられたかのようにじっとり汗ばんでいる。おまけににおう。恐怖ゆえのアドレナリンの分泌。自分の歩みが、いつもより、ゆっくりとしているのにきずく。 もしだめだったら、自分はこの地球にむすびつけられたままだ。この地球から逃げ出すこともできない。宇宙に飛び立つこともできない。この地面にむすびつけられたままなのだ。自由に移動することもできない。 ウォーター・ステーションの前に来ていた。いよいよだった。ウォーター・ステーションの略WSのデザイン化された文字が芽に飛び込んでくる。いよいよだ。運命の一瞬だ。生死を決めるのに等しい。アールヌボー風に飾られたウォーター・ステーションの、地下に向かう階段の手すりを持つ。冷たい。その冷たさが、クルツののぼせ上がった頭のシンに変に響く。廊下が奥の方につずいていた。壁に昔の広告のビラがまだ残っていた。すばらしき時代、資本主義のなごりだ。大きなビルボード(広告看板)の美少女の顔がほこりだらけだった。たしかTVタレント。今はどうしているのだろう。彼女たちも、今のクルツと同じ様に、この通過儀式を受けたのだろうか。そう、TV。クルツがTVをみていたのは14、5年前だが、もう大昔のような気がした。 ゆっくりと、ビルボードが続くWSの奥へとクルツは進んでいく。 突然、クルツは記憶が蘇ってくる。このWSは昔、地下鉄の駅として使われていたのだ。クルツは両親に連れられて、ここに来たことがある。 地下鉄。聖水記以前の交通機関。今はもう使われていない。現在はこの張り巡らされた聖水ルートが、いわば交通機関なのだ。 聖水に受け入れられるかどうか。 それが、今の人類個々人の最大の問題だった。クルツは昔のチケットゲートの跡を通過する。ロッカールームにたどり着く。が他の人間がロッカールームにいた。クルツは、名前を知らないが、エーアイだった。 驚きがクルツの心を襲う。きまずい雰囲気だ。お互いに眼を合わせないように、部屋の隅にあるロッカーに陣取る。 クルツは一人でいたかった。だから、他の人にはいて欲しくなかった。失敗した時のことを考えると。ウォーター・ステーションのゲートをくぐったものはあともどりができない。自らの待つ運命を静かに受け入れざるを得ないのだ。 クルツは服を脱ぎ、ロッカーにほうり込む。このロッカーは処理機になっている。服は自動的に処理された。 クルツが、人間として生きていたという証拠はロッカーの中に服をほうり込んだ瞬間に消えていた。クルツの服には、彼のパーソナルヒストリーが読み込まれていた。服は個人のデータファイルなのだ。コードが自動的に消滅した。 聖水プールが広がっている。このプールは地中深くの聖水ルートとつながっている。20m平方の部分だけが、夜行灯でライテイングされていた。 遠くの方は、聖水の流れる音と暗渠が待っているだけだった。 クルツはプールの端にあるステックバーをつかみ、右足から聖水にはいっていった。 生命波を感じた。そうとしか言いようがない。自分の体が、少しずつ生命の中で溶けていくのが、クルツにもわかった。 個人の記憶。クルツの記憶がまるで大きなボウルの中にほうりこまれたような感じだった。人類数千年の記憶、そんなものかもしれない。自分が地球人類の一人であり、また全体であるような感じもする。 聖水プールはDNA情報プールだ。 人間の記憶、また細胞の記憶。DNAのひとつひとつが分解されていく。それが収斂し、別の生命体となる。クルツの意識は、その儀式で自分以上の上位の概念と結び付いていた。 クルツと同じウォーター・ステーションで、成長の儀式をうけていたエーアイの反応は異なっていた。エーアイは聖水に対する刺客である。体の成分が聖水に対する毒素であると創造者から言われていた。自分の氏素性が聖水に読み取られるのではないか。その恐れの方が大きかった。エーアイの体も、クルツと同じように少しずつ溶けていった。『彼を受け入れるかね』『彼を受け入れて、創造者・タンツとマザーの現在の居場所を探るという手があるね』『創造者が、彼も大仰な名前をつけたものだ』『彼もはやく、我々のことを理解してほしいね』『いやはや、彼には、理解するのは無理かもしれないがね』 水人の意識レベルの会話だった。(続く)■聖水紀■改題・聖なる水の僕(1990年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 漫画の描き方manga_training動画
2011.10.01
自分の作品をつくり売り込むためのセミナークリエイター 育成基礎セミナーよろしくお願いいたします。http://youtu.be/PjKcKyfRb64http://www.meditam.org/seminar/20101127/index.htmlクリエイターをめざす人の心得を学ぼう クリエイター育成基礎セミナー ■ ■ 映像・音楽・漫画・アニメなどのコンテンツ産業の関係者をはじめ各種企業のプレゼンテーション能力が必要な広報・広告・企画部署の方々を対象とした、コンテンツ産業をはじめとする企業等に、企画提案・PRするために必要となるプレゼンテーションのノウハウを、実例を交えて講義します。●マンガ家志望の方は、現場で、青心社・青木社長の講評を受けられます。(あらかじめ連絡をして下さい)●日 時2010年11月27日(土) 14:00~17:00会 場伊丹市立産業・情報センター 6階 マルチメディアホール受講料500円対 象・映像・音楽・漫画・アニメなどのコンテンツ産業を目指す学生など・プレゼンテーションのノウハウを学びたい方定 員先着100名内 容1.シナリオ・企画のプレゼンテーション(面接/企画書の書き方) 講師:メディアクリエイター・夢人塔 代表 浅尾典彦氏2.漫画作品をアニメコンテンツ等で世界へ配信 出版社社長からみた企画提案のポイント 講師:株式会社青心社 代表取締役 青木治道氏3.変わりつつあるコンテンツビジネスの現場と未来 講師:エム・アイ・プランニング株式会社 代表取締役 三原淑治氏お申込みTEL/FAX/インターネット/来館 のいずれかでお申込みください。主 催伊丹市立産業・情報センター、伊丹商工会議所共催等主催:伊丹市立産業・情報センター、伊丹商工会議所共催:日本イベント業務管理者協会 関西地区本部後援:近畿経済産業局協力:伊丹産業振興シニアアドバイザー、山田企画事務所
2010.11.23
アニメーション教室めざせ未来のCGクリエイター!! ●受講料 無料●定員 12名(先着)==================================================CGアニメーション教室めざせ未来のCGクリエイター!!●受講料 無料●定員 12名(先着)伊丹市立産業・情報センター(兵庫県)のセミナーhttp://www.meditam.org/seminar/20100814/index.html--------------------------------------------------CGアニメーション教室めざせ未来のCGクリエイター!!●受講料 無料●定員 12名(先着)伊丹市立産業・情報センター(兵庫県)のセミナー小学校高学年のみなさん。パソコンをつかってアニメーションをつくりませんか。EVAアニメータスクールというソフトウェアをつかってアニメーションが簡単につくれます。めざせ未来のCGクリエイター!!-------------------------------------------■2010年8月14日土曜日■13:00~14:30●会 場 伊丹市立産業・情報センター(伊丹商エプラザ内) 5階 情報セミナー室●受講料 無料●定 員 12名(先着)●対 象 中学生・小学校4~6年生 ※保護者の方1名同伴可能です。●講 師 高倉正樹氏(アニメーションソフトウェア開発者)-------------------------------------------<お申込み方法>FAX/電話/来館にてお申込みください。受講票はお渡ししませんので、当日直接会場へおこしください。主催者の都合により内容を変更、または開催を中止する場合がございます。※ご記入いただいた個人情報は、主催者からの各種連絡・情報提供のために使用し、 それ以外の目的では使用いたしません。氏名(必須)ふりがな学年小学校 年生電話番号(必須)( )FAX( )-------------------------------------------●問い合わせ先 伊丹市立産業・情報センター 電話○72-773-5007 FAXO72-778-6262 伊丹市宮ノ前2-2-2 イ尹丹商エプラザ内【主催】伊丹市立産業・情報センター【共催】日本イベント業務管理者協会 関西地域本部 NPO法人アクト情報交流【企画】山田企画事務所--------------------------------------------------山
2010.08.08
ウオーター・ナイツー聖なる水の僕(しもべ)第2回■聖なる水の僕■(1990年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」第2回 彼らは遠くに存在する宇宙溝から飛来してきた。ここへ到着するまで、かなりの距離だった。時間の概念は彼らにはあまり重要ではない。その間、星の生物への接触方法については、彼らの間で、議論されていた。宇宙の闇は深く、彼らの心の中にもまた深い悩みがあった。今回の任務は特殊だった。使命感だけが彼らをつき動かしているのかもしれない。 彼らの体はまた飛行体そのものであった。金属、非金属でもない特殊な物体。それゆえ、いかなる星の探知装置にも発見されなかった。 この生物の取り扱いについては注意を要する。彼らのとりあえずの結論だった。太陽系近辺で停止して、まわりを観察する。 飛行物体中に含まれる、意識体同士が会話をしていた。彼らは多くの意識体の結合体である。『このあたりかね』『指令書によると、そのようです』 目の前を、極めて幼稚な飛行体が動いていた。『何か、飛行体が通過します』『かなり、原始的なものだねえ』『ひょっとして、あの飛行体は、目的星の所属物かもしれませんね』『一度、調査してみよう。生物体が存在するかもしれん』 彼らはその飛行体に乗り移った。 タンツが緩やかな眠りから目覚める。もう、到着したのか、いつもながら、冬眠からの目覚めはけだるかった。あたりがはっきりと見えない。変にゆがんで見える。長い宇宙航行で、私の視覚がおかしくなったのか。 タンツは、おかしなことにきずく。私は、ここはカプセルの中ではない。おまけに、ここはどうなっているんだ。 たしかにウェーゲナー・タンツ、宇宙連邦軍大佐は、ウァルハラ号の中にいた。この船は恒星間飛行中のはずだ。 が、タンツの体のまわりは水だった。おまけに、水の上にいるのではない。水の中にいるのだ。なぜ、私は呼吸ができるのだ。タンツは不思議に思った。とりあえず、その事実を受け入れざるを得ない。ともかく、息をしている。 それに、このウァルハラ号はどうなっているのだ。タンツは航行装置のチェックをしょうと思い、コックピットに向かう。 ウァルハラ号の中は、どこもかしこも水で満杯のようだった。空気がまったくない。タンツはようやくのことであ、コックピットへたどり着く。行く先の方位座標は地球となっている。「地球だと」タンツはうめく。さらに地球暦の日付をチェックする。2020年8月15日。 タンツがニュー・シャンハイの宇宙空港から飛び立った日が2020年3月10日。冬眠状態のまま、恒星タンホイザー・ゲイトにむかうはずだった。タンホイザー・ゲイトにつく時期まで、タンツは目覚めることはないはずだった。が、今タンツは目覚めていて、ウァルハラ号は再び、地球へ向かっている。ロケット一杯の水をつめこんで。「くそっ、一体どうなっているんだ」 タンツは毒づいて、地球司令室へ連絡しょうとした。タンツの肩をその時、誰かがつかむ。ギョッとしてタンツは後ろを振り向く。誰もいない。当たり前だ。この船の生命体はタンツだけなのだから。 しかし、何かがいる。タンツは心の中でだれだ、と叫んでいた。『タンツ、我々の存在にようやく気がついたようだね』タンツの耳に、声が響いてきた。「誰だ。何者だ」『姿をあらわしてほしいかね、タンツ』 タンツはトラブルを望んでいなかった。彼はこの恒星間飛行を人類初めての飛行を、ともかく、成功させたかった。名誉を得たかったのだ。が、タンツの前の水中に、不透明な何者かが、複数、姿を取り始めた。「おまえ達は、いったい」『聖なる水』彼らはそういう意味の言葉をタンツの頭にイメージとしてほおりこむ。その瞬間コックピットにある通信機器がつぶれるのが、タンツの目にはいった。地球本部との連絡は不可能になった。自分で解決せざるを得ない。『マザー、どうすれば』タンツは心の奥でさけんでいた。マザーコンピュータのことである。「聖なる水、聞いたことがない」タンツはひとりごちる。『タンツ、今、君に説明してもわかりはしまい。時間がかかるだろう。ただ、言えることは、君たち地球人類をカイホウしに来たのだ』「我々をカイホウする。何からカイホウするというのだ」『タンツ、怒るな。我々に協力してもらえないかね』「協力しろだと。笑わせるな。俺は宇宙連邦軍大佐ウェーゲナー・タンツだ。君達、侵略生物になぜ、協力しなければならんのだ」『我々は、いわば宇宙意識なのだ。その宇宙意識で、ひとつになろうという提案だ』「それゆえ、私のロケットを占領したのか」『ちょうどいいところに、君の船がとうりかかったのだ。中を透視すると、地球人の君がカプセル内で冬眠していたのだ。我々は、君さらにこの船のコンピューターから、地球の知識を読み取った』「私は宇宙連邦軍のウェーゲナー・タンツだ。侵略者である君たちのいうことを聞くわけにはいかん」『我々は侵略者ではない』「使節というつもりか。それなら、正式の手続きを踏め」『どうやら、聞き分けのない個体をえらんだようですね』水人のひとりが言った。 タンツは壁のボックスに装着してある銃をとりあげ、水人をめがけ撃った。が、熱線はむなしく水中に消える。『我々にはそんなものは通じない』『しかたがない』『我々の命令を、しばらく黙って聞いてもらおうか』 「何だと、お前たちのいうとうりにはならん」タンツは自殺しょうとした。このままでは、自分の知識が悪用されると思ったからだ。が、この生命体の反応の方が早かった。タンツは気を失った。(続く)20090501改定作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2009.04.02
ウオーター・ナイツー聖なる水の僕 第1回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」ウオーター・ナイツー聖なる水の僕 第1回 クルツはおびえていた、自分自身でもそれがよくわかった。誰でも、いつかは通過しなければならない同化儀式だと、自分自身にいいきかしていた。自分自身を破壊しかねない恐れだった。クルツは町中へ来て、ウォターステーションへむかっている。今日の朝、彼は決心したのだ。地球人類にとっての決断の時、通過儀式。地球人類の一人一人が、自分で決心しなければならない儀式だった。 聖水が飛来した時から、地球の歴史が変わったといっていいだろう。新しい歴史の幕開けだった。「聖水に受け入れられるかどうか」混乱と騒擾。新しき者への生まれいずる悩み。そんなものを地球人類が体験したといっていいだろう。クルツは、わきがじっとりとぬれているのにきずく。怖い。想像を絶するモノとのコンタクトなのだ。恐怖を感じない人間などいるだろうか。聖水が彼Kを受け入れてくれうかどうか。もし受けいれてくれなければ。 ああ、そんな事はありえまい。考えたくもない。消極的な考えは捨てなければ。クルツは思った。 冷や汗がひどい。手のひらがじっとりとしていた。季節はもう冬が近いというのに、クルツの体は、真夏の太陽に焼き付けられたかのようにじっとり汗ばんでいる。おまけににおう。恐怖ゆえのアドレナリンの分泌。自分の歩みが、いつもより、ゆっくりとしているのにきずく。 もしだめだったら、自分はこの地球にむすびつけられたままだ。この地球から逃げ出すこともできない。宇宙に飛び立つこともできない。この地面にむすびつけられたままなのだ。自由に移動することもできない。 ウォーター・ステーションの前に来ていた。いよいよだった。ウォーター・ステーションの略WSのデザイン化された文字が芽に飛び込んでくる。いよいよだ。運命の一瞬だ。生死を決めるのに等しい。アールヌボー風に飾られたウォーター・ステーションの、地下に向かう階段の手すりを持つ。冷たい。その冷たさが、クルツののぼせ上がった頭のシンに変に響く。廊下が奥の方につずいていた。壁に昔の広告のビラがまだ残っていた。すばらしき時代、資本主義のなごりだ。大きなビルボード(広告看板)の美少女の顔がほこりだらけだった。たしかTVタレント。今はどうしているのだろう。彼女たちも、今のクルツと同じ様に、この通過儀式を受けたのだろうか。そう、TV。クルツがTVをみていたのは14、5年前だが、もう大昔のような気がした。 ゆっくりと、ビルボードが続くWSの奥へとクルツは進んでいく。 突然、クルツは記憶が蘇ってくる。このWSは昔、地下鉄の駅として使われていたのだ。クルツは両親に連れられて、ここに来たことがある。 地下鉄。聖水記以前の交通機関。今はもう使われていない。現在はこの張り巡らされた聖水ルートが、いわば交通機関なのだ。 聖水に受け入れられるかどうか。 それが、今の人類個々人の最大の問題だった。クルツは昔のチケットゲートの跡を通過する。ロッカールームにたどり着く。が他の人間がロッカールームにいた。クルツは、名前を知らないが、エーアイだった。 驚きがクルツの心を襲う。きまずい雰囲気だ。お互いに眼を合わせないように、部屋の隅にあるロッカーに陣取る。 クルツは一人でいたかった。だから、他の人にはいて欲しくなかった。失敗した時のことを考えると。 がウォーター・ステーションのゲートをくぐったものはあともどりができない。自らの待つ運命を静かに受け入れざるを得ないのだ。 クルツは服を脱ぎ、ロッカーにほうり込む。このロッカーは処理機になっている。服は自動的に処理された。 クルツが、人間として生きていたという証拠はロッカーの中に服をほうり込んだ瞬間に消えていた。クルツの服には、彼のパーソナルヒストリーが読み込まれていた。服は個人のデータファイルなのだ。コードが自動的に消滅した。 聖水プールが広がっている。このプールは地中深くの聖水ルートとつながっている。20m平方の部分だけが、夜行灯でライテイングされていた。 遠くの方は、聖水の流れる音と暗渠が待っているだけだった。 クルツはプールの端にあるステックバーをつかみ、右足から聖水にはいっていった。 生命波を感じた。そうとしか言いようがない。自分の体が、少しずつ生命の中で溶けていくのが、クルツにもわかった。 個人の記憶。クルツの記憶がまるで大きなボウルの中にほうりこまれたような感じだった。人類数千年の記憶、そんなものかもしれない。自分が地球人類の一人であり、また全体であるような感じもする。 聖水プールはDNA情報プールだ。 人間の記憶、また細胞の記憶。DNAのひとつひとつが分解されていく。それが収斂し、別の生命体となる。クルツの意識は、その儀式で自分以上の上位の概念と結び付いていた。 クルツと同じウォーター・ステーションで、成長の儀式をうけていたエーアイの反応は異なっていた。エーアイは聖水に対する刺客である。体の成分が聖水に対する毒素であると創造者から言われていた。自分の氏素性が聖水に読み取られるのではないか。その恐れの方が大きかった。 が、エーアイの体も、クルツと同じように少しずつ溶けていった。『彼を受け入れるかね』『彼を受け入れて、創造者・タンツとマザーの現在の居場所を探るという手があるね』『創造者が、彼も大仰な名前をつけたものだ』『彼もはやく、我々のことを理解してほしいね』『いやはや、彼には、理解するのは無理かもしれないがね』 水人の意識レベルの会話だった。(続く)■聖水紀■改題・聖なる水の僕(1990年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
2009.04.01
ウオーター・ナイツー聖なる水の僕■最終回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/「いい、タンツ大佐。人類は宇宙最高の生命体ではないのよ。地球人類は、聖氷がかって人類誕生以前、始源の海にはなったDNA情報キャリアーが進化したものなの。間違って進化した生物なのよ。人間という形態をとるべきではなかった」 水入の声が、タンツの意識にはいってきた。『タンツ大佐、君はなぜ、我々にしたがわなか、たのが。この地球に聖氷の再来をもたらした君こそが、聖水の理解者で屡好かったか』 「むだだろう、私に何をいっても。いずれにしろ、私は死ぬのだから。何もかも無駄にすぎないのだ。氷人よ、私の静かな死を与えてくれるのだろうね。長いつきあいではないか」 『タンツ大佐、君に選択させてあげよう。君の死に方をね。我々聖水に同化するか、それとも、君の意志を、そのまま固定して、意識だけは永遠に生き続けるかだ』「私に地球を与えるのか、終わりなき地球を」ともかく、タンツ大佐、君が最後の地球人だ』「この苛酷容赦ない世界に何か救いがあるというのかね」『愛だよ』 「ふふつ、君だちから、その言葉を聞くとはね。愛という概念が君たちに存在したのか。我々、人類は君だちから見ると下等かもしれない。が個体として、それぞれがいろんな形の愛をもっていたのだ」『タンツ大佐、こう考えてくれ、我々が君たち人類を飲み込むのもひとつの愛の形だと思ってくれ』『ひとつの大きな愛に君たちは包まれるのだ』「ふふん、信じられないね」タンツ大佐は最後まで逆らった。■あらたる始原■ーーーークルツKの意識は、星のすべてを覆いつくしていた。この星の名はまだない。クルツがなずけるべきなのだろう。「クルツ」の星。星は聖水でみちみちている。聖水の意識イコールクルツの意識だった。 分派という、意識の分割だった。聖水の意識が分派され、宗教の布教のように、クルツの意識は、地球から遠く離れた星へ送り込まれた。クルツは創造主であり、その荒れ果てた星を自分の体、聖水でもっておおった。 クルツは思う。 聖なる水は、自分も含まれるのだが、宇宙意識のひとつの形態にすぎないのではないか。 私の様に、聖水は、他の星に送り込まれ、徐々に聖水の意識で覆っていく。私達は聖水という大きな意識の血であり、肉なのだ。地球に最初に飛来した聖なる水も、クルツと同じ様に他の星から飛来したものなのだろう。クルツKはそう考え始めた。(完)■聖水紀■改題・聖なる水の僕(1990年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007.08.19
ウオーター・ナイツー聖なる水の僕■第20回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/熱がその海域から広がっていく。気温もそれにつれて急上昇する。やがて、その熱波は地球を覆い、聖水神殿までたっしていたは熱気で倒れていった。『この熱は』『どうやら原因は宇宙要塞ですね。きっとマザーがしかけたのでしょう』水人たちは考えていた。宇宙要塞ウェガは地球中のマグマを刺激していた。ポイズンが失敗 した今となっては、最後の手段だった。地球全体を熱球化する。地球が聖水に支配されるよりも、自らの手で人類を抹消しょうというわけだ。が、自分の脳球は生き残る。宇宙要塞ウェガはいねば宇宙船なのだ。 『熱波をこの地に呼び寄せているものがいますね』 『まさか、あのポイズンでは』 『いや違うね』 ■「聖水騎士レオン・フガンは審問官の前に立されていた。「生き残った堅氷騎士団の一人として、地球にひとつくらいいいことをして死にたかったものですからね。怒りは人を不屈の男にします」 『フガン、君ですら、この我々を裏切るのか』 「裏切りですって、私は最初の時からあなたがたを信用なぞしておりませんよ」 『しかたがない、この熱波を防ぐため、全人類を聖水に飲み込もう』「あなたがたにそれはどの意義があるのですか」『ひとつの愛情の表現なのですよ』「何ですってに『できの悪い子供ほどかわい[どういうことです]いというだろう』『フガンくん、君も我々を誤解している。我々は君たち人類の祖先なのだ』「はは、おわらいぐさだ。あなたがたが先祖ですか。それじゃあ、出来の悪い子供は殺していいということですね。どんな権利があなたがたにあるというのです」フガンは笑いながら泣いていた。 大きな音がして、聖水プールが自壊した。聖水がフガンの方に流れてくる。 「ははっ、どうぞ、このあわれで、まぬけな人類を同化なさい。おやじどの。いやおふくろどのか」 フガンは聖水の波に飲まれる。聖水は自らの体積を急激に膨張させていた。この大陸を披い、やがて海岸に達していた。地球の海水との対決であった。 海に達した聖水は、海水と激しい争いを繰り返していた。水H20を分解し、自分たちの組成に組み替えていた。それに対して海、地球の海なるものも戦いを挑んでいた。聖水と海水との境界線は熱をもっていた。蒸発する水が湯気を上らせていた。 が、聖水の方が勢いがあった。彼らはいわば、狂信者であり、ある一定の意志の元に進化しているものだった。 地球のあらゆるところで、地球の水は変化を遂げていた。地球の水は聖水に飲み込まれていた。そして、聖水へと変化していった。 やがて、聖水は勢いに乗り、レインツリー、マザーが支配する宇宙要塞ウェガのあるアンダマン諸島。スキャン諸島に達していた。 大きく盛り上がった聖水の波はまるで山並みの様に見えた。その大きな山塊が、レインツリーの要塞に押し寄せていた。 宇宙要塞ウェガは聖水の中にさらわれ、やがて水没する。要塞ウェガの防御機構は、この聖水山脈の前では、何の役にも立たなかわI 宇宙要塞ウェガは、地球の上に立てられている建物である。地球人の思考で作られ、地球の材料で作られている。たいして聖水は、いわば、宇宙であった。宇宙意識である。地球、そのものである宇宙要塞ウェガ中に入り込み、総てをばらばらにした。この聖水の意識の中に、かつての「エーアイ」の意識、「ポイズン」の意識が含まれていた。彼「エーアイ」が、自分の生まれ故郷である宇宙要塞ウェガを教え、聖水全体をウェガに向かわせたのだ。 レインツリーは聖水の洪水の中で涙を流していた。赤い樹液だった。体全体の細胞から、赤い樹液は宇宙要塞ウェガの内部でも渦巻いていた。やがて、聖水がレインツリーの組織をバラバラに分断した。破砕されたレインツリーのまわりはまるで、血がいっぱいの海だった マザーの機械組織にも、聖水が侵入していた。防水組織も何のあるやくにもたたない。マザーの機械意識も寸断される。その一瞬。マザーの意識にひらめいた。『我が子、タンツを助けて』 ウェガにいるレインツリーの指導者、そして「エーアイ」にとっては創造者である者。「マザー」タンツ大佐も叫ぶ。 その指導者もいまやウェガに流れ込む聖水の前にはなすべき手段をもたなかった。 聖水に沈み込む指導者だった。 彼はこのような経験をしたことがあった。その記憶が蘇ってきた。 シマ、あなたなのね」彼は彼に話しかける存在にきずく。そう、私はシマとも呼ばれていた。レインツリーの指導者は思った。「そうだ。ろくでなしの老いぼれシマだ。君こそ歌姫ベラ、そして『みしるし』イコール伝説のDNA情報、聖水のミッシングリンクだったのか」 「そう、シマ。白状するとね。私自身が『みしるし』だとはきずいていなかったわ。私の先祖から受け継いでいたDNA情報がどんなものだったのか」 「聖水が人々を溶かし、探していたものとは人間のDNA惰報だったのか]■聖水紀■改題・聖なる水の僕(1990年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007.08.19

ーーーーーーーーーー●限定200!「士郎正宗」クリアファイル8枚セットを独占販売します! ●AU公式有料携帯サイトオープンを記念し「士郎正宗」クリアファイル8枚セット(A4サイズ)を●限定200発売●します。携帯サイトに企画協力している山田企画事務所が●独占販売●。(8枚セット3000円プラスメール便80円合計3080年をお送り下さい)申し込みは、山田企画事務所まで。(商品は事務所内には置いておりません青心社にあります。注文入金確認後、メール便にて平日(月曜日から土曜日に)お送りします。まず、最初にyamada@yamada-kikaku.comにお問い合わせ下さい。申し訳ありませんが、メールでの発注及び、フアックスの注文FAX020-4665-6859のみ受け付けます)■関西発・漫画アニメ情報携帯携帯サイト開設予定!■関西・唯一の漫画出版社・青心社ではAU公式有料携帯サイトを開設予定!『士郎正宗と青心社』7月頃、オープン予定。(遅れてます。ごめんなさい)世界中に士郎正宗フアンがいる士郎正宗は、関西在住のカリスマ漫画家。有名作品は「アップルシード」「攻殻機動隊」など。アニメーション映画化された作品は、世界中で大人気!-----------------------------------------------------------------■企画協力・山田企画事務所(FAX020-4665-6859)■●広告・ネット・イベントにマンガ・アニメを!をテーマに●マンガエージェンシーとして企画営業活動を。山田企画事務所(伊丹商工会議所会員・伊丹産業振興シニアアドバイザー・日本漫画家協会会員・日本アニメーション協会会員・経済産業省認定イベント業務管理者)●http://www.yamada-kikaku.com/●大阪市野崎町1-22日宝扇町ビル305
2007.06.19
ウオーター・ナイツー聖なる水の僕■第19回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 聖水紀第19回[10] クルツはおびえていた、自分自身でもそれがよくわかった。誰でも、いつかは通過しなければならない同化儀式だと、自分自身にいいきかしていた。自分自身を破壊しかねない恐れだった。クルツは町中へ来て、ウォターステーションへむかっている。今日の朝、彼は決心したのだ。地球人類にとっての決断の時、通過儀式。地球人類の一人一人が、自分で決心しなければならない儀式だった。 聖水が飛来した時から、地球の歴史が変わったといっていいだろう。新しい歴史の幕開けだった。混乱と騒擾。新しき者への生まれいずる悩み。そんなものを地球人類が体験したといっていいだろう。クルツは、わきがじっとりとぬれているのにきずく。怖い。想像を絶するモノとのコンタクトなのだ。恐怖を感じない人間などいるだろうか。聖水が彼Kを受け入れてくれうかどうか。もし受けいれてくれなければ。 ああ、そんな事はありえまい。考えたくもない。消極的な考えは捨てなければ。クルツは思った。 冷や汗がひどい。手のひらがじっとりとしていた。季節はもう冬が近いというのに、クルツの体は、真夏の太陽に焼き付けられたかのようにじっとり汗ばんでいる。おまけににおう。恐怖ゆえのアドレナリンの分泌。自分の歩みが、いつもより、ゆっくりとしているのにきずく。 もしだめだったら、自分はこの地球にむすびつけられたままだ。この地球から逃げ出すこともできない。宇宙に飛び立つこともできない。この地面にむすびつけられたままなのだ。自由に移動することもできない。 ウォーター・ステーションの前に来ていた。いよいよだった。WSのデザイン化された文字が芽に飛び込んでくる。いよいよだ。運命の一瞬だ。生死を決めるのに等しい。アールヌボー風に飾られたウォーター・ステーションの、地下に向かう階段の手すりを持つ。冷たい。その冷たさが、クルツののぼせ上がった頭のシンに変に響く。廊下が奥の方につずいていた。壁に昔の広告のビラがまだ残っていた。すばらしき時代、資本主義のなごりだ。大きなビルボード(広告看板)の美少女の顔がほこりだらけだった。たしかTVタレント。今はどうしているのだろう。彼女たちも、今のクルツと同じ様に、この通過儀式を受けたのだろうか。そう、TV。クルツがTVをみていたのは14、5年前だが、もう大昔のような気がした。 ゆっくりと、ビルボードが続くWSの奥へとクルツは進んでいく。 突然、クルツは記憶が蘇ってくる。このWSは昔、地下鉄の駅として使われていたのだ。クルツは両親に連れられて、ここに来たことがある。 地下鉄。聖水記以前の交通機関。今はもう使われていない。現在はこの張り巡らされた聖水ルートが、いわば交通機関なのだ。 聖水に受け入れられるかどうか。 それが、今の人類個々人の最大の問題だった。クルツは昔のチケットゲートの跡を通過する。ロッカールームにたどり着く。が他の人間がロッカールームにいた。クルツは、名前を知らないが、エーアイだった。 驚きがクルツの心を襲う。きまずい雰囲気だ。お互いに眼を合わせないように、部屋の隅にあるロッカーに陣取る。 クルツは一人でいたかった。だから、他の人にはいて欲しくなかった。失敗した時のことを考えると。 がウォーター・ステーションのゲートをくぐったものはあともどりができない。自らの待つ運命を静かに受け入れざるを得ないのだ。 クルツは服を脱ぎ、ロッカーにほうり込む。このロッカーは処理機になっている。服は自動的に処理された。 クルツが、人間として生きていたという証拠はロッカーの中に服をほうり込んだ瞬間に消えていた。クルツの服には、彼のパーソナルヒストリーが読み込まれていた。服は個人のデータファイルなのだ。コードが自動的に消滅した。 聖水プールが広がっている。このプールは地中深くの聖水ルートとつながっている。20m平方の部分だけが、夜行灯でライテイングされていた。 遠くの方は、聖水の流れる音と暗渠が待っているだけだった。 クルツはプールの端にあるステックバーをつかみ、右足から聖水にはいっていった。 生命波を感じた。そうとしか言いようがない。自分の体が、少しずつ生命の中で溶けていくのが、クルツにもわかった。 個人の記憶。クルツの記憶がまるで大きなボウルの中にほうりこまれたような感じだった。人類数千年の記憶、そんなものかもしれない。自分が地球人類の一人であり、また全体であるような感じもする。 聖水プールはDNA情報プールだ。 人間の記憶、また細胞の記憶。DNAのひとつひとつが分解されていく。それが収斂し、別の生命体となる。クルツの意識は、その儀式で自分以上の上位の概念と結び付いていた。 クルツと同じウォーター・ステーションで、成長の儀式をうけていたエーアイの反応は異なっていた。エーアイは聖水に対する刺客である。体の成分が聖水に対する毒素であると創造者から言われていた。自分の氏素性が聖水に読み取られるのではないか。その恐れの方が大きかった。 が、エーアイの体も、クルツと同じように少しずつ溶けていった。『彼を受け入れるかね』『彼を受け入れて、創造者・タンツとマザーの現在の居場所を探るという手があるね』『創造者が、彼も大仰な名前をつけたものだ』『彼もはやく、我々のことを理解してほしいね』『いやはや、彼には、理解するのは無理かもしれないがね』 水人の意識レベルの会話だった。(続く)■聖水紀■改題・聖なる水の僕(1990年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007.04.19
ウオーター・ナイツー聖なる水の僕■第18回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 聖水紀第18回聖水紀[9]『地球人諸君、我々人類は新しい時代に入った………』で始まる言葉が地球じゅうを巡った。人類が聖水に同化することが、人類の生存方法であるといわれた。このコメンテーターは聖水騎士団の生き残りレオン・フガンであった。人類に対して、話しかける人類がいるのだった。水人では、人間が納得しない。そう考えていた。 同化した、人類は好きな所に移動できた。地球上でも、地球外の宇宙でも。しかし、そのためには生命形態を変えなければならない。つまり、聖水への同化を意味していた。聖水、流動生命体への変貌である。人類に対するこの処置にたいしては、反対することは許されなかった。■ 個体名「エーアイ」は他の種族と共に、海水プールの中でたゆとうていた。この場所は「水迷宮」と呼ばれた。このプールの内容物は、人類の羊水と一緒だった。過去の人間工学が生み出した人工養殖の人間たち。それがエーアイの種族だった。エーアイの両親や、エーアイの仲間たちが、同じ水中にある巨大な樹木の着床でゆらゆら揺れていた。半覚醒状態の彼らには、知識が知識端子によって送り込まれている。また、時折、彼らを観察にくる人間たちがいた。エーアイたちは、不思議な感じで彼らを見ていた。彼らは小型の潜水挺でここへ来て、彼らの成育状態をチェックしているらしい。が、今日は少し違った。潜水挺からロボット・ハンドがのびてきて、巨大な生命樹ベースの着床を切り放した。エーアイの体はこの潜水挺の収納庫に格納された。取り込まれたのは、エーアイだけだった。エーアイは意味不明の出来事にとまどっていたが、何か新しいページが開かれた気がした。 エーアイは、創造者の前に連れてこられた。創造者の姿は、光りが後ろから照らしているのではっきりとは見えない。エーアイはちじこまっている自分を感じている。「エーアイよ、お前の生きている意味はわかるか」 創造者が急にエーアイに、唐突に質問を行った。よけいにドキドキする。質問の意味は何だろう。何か正しい答えはあるのだろうか。 実際の所、実験ベースの着床から眠りを奪われ、息つくひまなく、創造者の前に連れて来られたエーアイは迷惑顔だった。自分の氏素性など覚えてはいなかった。「わからないようだな、エーアイ。では,創造者の私がその質問の答えをいおう。お前はこの地球の防御のために作られた生体だ。恐らく地球を救った勇者として、名前がこの地球史に残るだろう。栄光に思え。お前の体の構造には有毒物質が含まれている。おっと気にする必要はない。その有毒物質はお前の体を滅ぼしはしない。ある一定の物質と出会うことにより、有毒物質となるのだ」「一体、私が出会う物質とは何なのですか」「わからんかね。聖水だよ」エーアイは二の句が告げなかった。聖なる水、その水を滅ぼすための物質が、おのが体に含まれているだと。エーアイは創造者にたいして、いきばのない激しい怒りを感じた。 創造者はエーアイの気持ちをわかったかどうか、彼は言葉をついでいた。「我々は聖水を入手し、分析し、それに対する対抗策を長い時間をかけて作り上げてきた。君は水迷宮でできた完璧な作品、いや完全なる芸術品なのだ」「その作品を投げ与えるわけですね」「その作品の意味は、彼ら聖水にしかわからないのだ。君は、儀式を受ける人の中に入り込み、聖水と同化するのだ。聖水と交流し、分解されれば、お前の体の毒素が秘そかに、聖水の中に流れ込む。そして聖水が汚染される」「つまり、私は聖水に対する刺客というわけですね」「理解がはやいね。エーアイ、そういうことだ」 創造者は、エーアイの内なる怒りを知ってか知らずか、そう言ってのけた。 宇宙要塞ウェガの一室だった。「水迷宮」にある生命樹を、レインツリーという。管理は、マザーが行っている。 創造者は最初のマザーが造った電子の子供である、タンツ大佐だった。(続く)■聖水紀■改題・聖なる水の僕(1990年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007.04.18
ウオーター・ナイツー聖なる水の僕■第17回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 聖水紀第17回聖水紀[8]『聖水騎士団の諸君、本日をもって聖水騎士団は解散する』水人のひとりが発表した。聖水神殿の中央大広間に,聖水騎士団が結集していた。「何ですって」「どういうことです」聖水騎士団の中から、驚きの声があちこちからあがっていた。「まさか、『みしるし』を手にいれたからではないでしょうね」発言したのは聖水騎士団隊員の一人、レオンーフガンだった。『そのとうり。我々が『みしるし』を手にいれたからだ』「じゃ、やはり、あの『みしるし』は歌姫ベラだったのか」「そう、そのとうりだ。我々が探していた『みしるし』は、ベラの体の中にあった」「それで、あなたがたが地球での役割を果たしたので、我々聖水騎士団はご用済みという訳ですか」隊長のアマノが冷たく言う。「そうだ。我々は『みしるし』を手にいれたことで、地球にきた目的の一つは果たした」「一つですと、まだ、何か」アマノがつづける。「アマノくん、まだ、わからんのか。君ですら」「我々、地球人が宇宙意識をもつというという、、事ですか、、」「そういうことだ。それには一番必要なことが残っている」「まだ、何か、望んでいるのですか」「そう、肝心なことがまだなのだ」「一体、それは」「地球人全体を我々、聖水の仲間にすることだ」「あなたがたは、いったいまさか」「アマノくん、君の思うとうりだ」「隊長、いったい聖水は」隊員から罵声が起る。隊長アマノ,アマノ博士の顔は、気色ばみ、聖水騎士団の隊員たち皆の方をふりかえった「聖水と水人を滅ぼせ。こいつらは人類を完全に溶かし、飲み込もうとしている」「何ですって」「そんなことが」聖水騎士団より、驚きの声があがる。『今頃、きずいたようだね。そのとうりだよ。皆、君たち運命というものに従いたまえ。我々は宇宙を代表している。ありがたく思い賜え。君たちは最初に聖なる水になれる選ばれしものだ』騎士たちは目の前にひろがる聖水プールにたいして攻撃をしょうとする。が、いかんせん聖水と水人の敵ではない。 集合していた広間の四方の壁が崩れる。聖水があふれる。聖水の波は、聖水騎士団の全員の体を持て遊び、波間に飲み込んだ。『これが、宇宙の意志というものだよ』水人はそう告げた。「わたしは」聖水騎士団の一人レオン・フガンの意識がもどる。「なぜ、私はここに」『ふ、聖水騎士レオン・フガン。君には、使命がまだある』水人がいった。「私があなたがたにしたがうとでも」『そうせざるをえんだろうね』水人はいいはなった。「聖水騎士レオン・フガン。生きるも地獄、死ぬのも地獄。それならば、すこしばかり人間として生きながらえてみますか。この人体としてわづかな生命を、楽しんでみましょうか」(続く)■聖水紀■改題・聖なる水の僕(1990年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007.04.17
ウオーター・ナイツー聖なる水の僕■第16回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 聖水紀16回[8]「まさか、本当ではないだろうな、ベラ」元歌姫ベラは、ロイドに冷たく言う。「残念、本当よ、ロイド。私は聖水のみもとにいる」「何があった、ベラ、どうしたんだ」ロイドは、ベラの人がわりに驚いている。「私は人類の記憶を取り戻した。あなた方、人類は聖水に同化します」死刑宣告を受けたかのように、ロイドの体はふるえた。顔は真っ青になる。『我々はこの地球のすべてを手にいれる』「何だって、そんなことさせるか、それに、我々だって」『むだだよ、ロイドくん、君も人類創成の秘密をしれば、我々に従わざるをえんよ』「まさか、きさまたち」ある考えがロイドの頭に巡った。『君の考えたとうりだよ』「まさか、そんなことが」顔が強張る。ロイドの頭の中に、ベラの記憶が想起される。「やめろ、やめてくれ。こんなことがあつてたまるか、こんなことが、くそ、こんなことなら、俺を殺せ。ベラ、君の手で、お願いだ」ロイドは喚きながら、涙を流していた。ロイドの方へ、「聖水プール」から、ゆっくりと、ベラの手が伸びていた。それは、何Mの長さに伸びた手が。やばて、やさしく、手はロイドの体をなままわしやがて、彼ロイドの体は、ゆっくりと、ベラの手が触れている部分から溶けていく。水人は、挑戦的に言う。『レインツリーの諸君、憑依術でみているだろう。現状がお分かりだろうさ』 ■海に達した聖水は、海水と激しい争いを繰り返していた。水H2Oを分解し、自分たちの組成に組み替えていた。それに対して、海、地球の海なるものも戦いを挑んでいた。宇宙からやってきた「聖水」と海水との境界線は熱をもっていた。蒸発する水が湯気を上らせていた。 が、「聖水」の方が勢いがあった。彼らはいわば、狂信者であり、ある一定の意志の元に、進化している水だった。地球のあらゆるところで、地球の水は変化を遂げていた。地球の水は聖水に飲み込まれていた。そして、聖水へと変化していった。(続く)■聖水紀■改題・聖なる水の僕(1990年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007.04.16
ウオーター・ナイツー聖なる水の僕■第15回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 聖水紀15回[8]聖水記7 レインツリーのロイドは、歌姫ベラを、深く愛していたことに、急にきずいたのだ。なぜ、俺は清水騎士団のフガンが、彼女を連れて逃げた時に反応しなかったのだ。自責の念が常にロイドの心を占めていた。過去にさいなまれているロイドは周りが見えていない。「何者だね」急に聖水騎士団の男がいた。「聖水への帰依を希望するものです。遠くから参りました」ロイドは言う。「それは殊勝な心がけだ。どうぞ、この門をとうりなさい」今、ロイドは、聖水神殿への道上だった。この門では怪しい者がいないか、常に聖水騎士団が見張っていた。聖水神殿の前はごったがえしていた。ロイドは巡礼の一人にたずねる。「何かあったのですか、この騒ぎは」「お前さん、何もしらないのか」男は不思議そうな顔をする。「いえ、私は遠くからここへ着いたところで」「それなら、しかたがないな。『みしるし』が発見されたのだ。これで新しい時代がくるって、大騒ぎなんだ」「『みしるし』が」「そうなんだ。おまけに、今日、我々がその『みしるし』を神殿で拝見できるって訳だ」聖水神殿に潜入し、聖水プールにたどりついた。ベラがプールの中で寝ていた。ベラはとても美しく見えた。がここは聖水神殿。信仰の中心地。敵の本拠。人が多くとてもちかずけそうにない。また、この時期では警備も厳重だろう。歌姫ベラを目の前にして、ロイドは無念の涙を流す。聖水神殿から退去し、近くにある建物の壁に変化した。誰もロイドにはきずかない。彼は周りに同化する能力をもっていた。 夜になり、人影がなくなった。ロイドは生身にもどった。ロイドはベラを見付けようと思った。が急に後ろから、声をかけられた。「これは、これはロイドくんではないですか、それが君の呪術でしたか」清水だ何フガンだった。「フガン、俺をどうする気だ」「そうですね。どうしましょうか」フガンは少し考えていた。「ベラにあいに来たのでしょう。じゃ、ベラの所まで案内してさしあげましょう」「なぜ、俺を助ける」「なぜ、私はこう見えても、血も肉もある人間です。さあ、ついてきなさい」フガンはロイドを神殿の中央祭壇まで連れていく。「さあ、早く。ベラを連れておにげなさい。私は消えます」ロイドは後ろを何度も振り返る。罠ではないかと。が、他には誰もいない。中央祭壇の聖水プールにベラが沈んでいた。かわいそうなベラ。そして愛しきベラ。ロイドは思った。「助けにきたぞ、ベラ」『が、私はもう、昔の基準では生きてはいない』ベラの目が開き、顔をこちらロイドに向けている。どうしたのだ。が恐れずロイドはつずける。「ベラ、君を愛している。私の手元に戻ってきてほしい。何よりも君が必要なのだ。そう、私はきずいたのだ」『もし、あなたが私を愛しているのなら』聖水プールの中、揺らめきながら、ベラはしゃべつている、水の中で。「君を愛しているのなら、どうするのだね」『あなたも私と同じように、聖水に同化してほしい』「君はどうしたのだ」恐れがロイドの心に走った。本当にベラなのか。別の生き物ではないか。『ロイドようこそ』何かが。ベラの側に形作られていた。「貴様は」『水人だよ』「きさまが水人なのか。ベラを返してもらうぞ」『ベラがのぞむまい』「何をいう」『彼女は、我々にとって、偉大なる祖先の記憶をもっているのだ』フガンが、言った。(続く)■聖水紀■改題・聖なる水の僕(1990年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007.04.15
■聖なる水の僕■第14回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 聖水紀14回[8]「マザー」と呼ばれる、巨大な人工頭脳が言う。『まあ、聞きなさい。我が子タンツ大佐。彼は私の命の恩人なのよ。私は、地球連邦軍ハノ将軍によって活動が停止された。それを助けてくれたのがレインツリーなのよ』 タンツ大佐は、この電子要塞とリンクされた電子の子であった。タンツはこの最終宇宙要塞ウェガの人工受精室で作り出された人類最初の人間だった。 飛行船の中で、レインツリー組織のトップ、ロイドがレインツリー組織のメンバー、ツランに尋ねる。「ツラン、どうだ、内視できるか」「ロイド、大変だ。あやつは我々を裏切ろうとしている」「何だって」「奴は最終宇宙要塞ウェガの防御システムを一人で作動させた」「今までこの最終宇宙要塞ウェガ要塞にはプロテクトがかかっていなかったのか」 その時、タンツ大佐の声がどこからか、ロイドの飛行船まで響いてきた。「組織レインツリーの諸君、我々の命令にしたがってもらおうか」「我々だと」『我々とは、私タンツ大佐と最終宇宙要塞ウェガ要塞マザーコンピューターだ』『そうよ、レインツリー組織の皆さん、私がこれから地球を支配します』「我々組織レインツリーが安々、君たちの事を聞くと思うのか」『そういうと思った、でもこの声を聞きなさい』『私はレインツリーだ。本体だ。君たち、組織レインツリーには感謝している。ありがとう。だが、私レインツリー本体は、この最終宇宙要塞ウェガ「マザー」人工頭脳と合体し、地球の利益を守る事にした』機械的な男の声だった。「つくりごとは止めろ、タンツ大佐」「そうだ、我々はレインツリー本人の肉声など聞いたことはない」ツランが続けた。『私レインツリーの根が、ある時、マザーの動源ケーブルを見付けだしたのだ。マザーはそれまで、活動できないでいた』『そう、私マザーは宇宙連邦軍ハノの将軍によって、作動中止を受けていた』今度は人工頭脳マザーの声だった。『だから、彼女マザーは、この時期に生き残ることができたのだ』レインツリー本体となのる声が続けた。「証拠を見せて欲しい」組織レインツリー。ロイドが疑わしげに言う。『それまで、私を信用できないか』レインツリーの声は怒りを帯びている。 島の砂浜全体が、大きな音を、立ててはじき上がる。激震だ。砂が持ち上がったのだ。そこには、地中から何本もの巨大な根が出現していた。上空の組織レインツリー飛行船まで一本の根が届く。見る間にレインツリーの組織のメンバーの一人をつかみあげていた。その男の体はにぎり潰された。「犠牲になってもらおう」「なぜですか、レインツリー。私はあなたに従おうとして、、」「命乞いは、無駄だ。私とマザーがすべてを統括する」その瞬間、すべての根毛から赤い樹液が吹き上がった。この島の樹木、空気など近辺空間は、赤く染まって見える。『まだ、わからぬか、私がレインツリーだ』男の声は怒りに震えている。 呆然とする飛行船の男たちだった。やがて、ツランはロイドに言う。「どうする。ロイド、どうやら本当にレインツリー本体らしい」「しかたあるまい、レインツリーが言っているのだ、我々組織レインツリーは彼らマザーにしたがおう」「あの、タンツ大佐に従うのか」くやしそうにツランは言う。「そうだ。私も気分は君と同じだ、ツラン」『まだ、不満があるのか、諸君』レインツリーが、飛行船の船尾をつかみ、揺さぶる。『君達の代わりの人間など、、この地球にいくらでもいるのだ』「レインツリーはどうしたのだ」誰もが叫んでいた。マザーに篭絡されたか、ロイドはつぶやいていた。 レインツリーの赤い樹液を皆がかぶり、壮絶な顔つきだった。「レインツリー本体に従おう。我々の目的は地球を取り戻すことだ」この時、ロイドの頭に去来するものがあった。「我々は君に従う。が、タンツ大佐、ひとつ願いがある」「なんだ」タンツ大佐の声が返ってきた。「私が聖水神殿に行くことを許してくれ」「何を言ってるんですか、こんな時に」仲間の一人が叫ぶ。『さてはロイド、君はベラを連れもどすつもりだな』「むちゃだ」仲間が非難するようにロイドに言う。『そうだな。君はベラを愛しているはずだ。私が彼女を思う以上に』しばらくの沈黙の後、タンツ大佐が言った。『彼女は聖水の一部らしいの』マザーコンピュターが言う。「それが『みしるし』という意味か」ロイドがつぶやく。『そうだ。彼女を分析すれば、さらに聖水の弱点もわかるかもしれん』タンツ大佐の声だった。「私をやっかいばらいできるだろう」『それは君の自由意志だからな』「死ににいくようなものですよ」「おやめください。我々にはまだ、指導者が必要です」「一時の心の迷いです」仲間が引き留めようとした。「いるじゃあないか、タンツ大佐というりっぱな指導者が」『厭味かね、ロイド』タンツ大佐がいった。(続く)■聖水紀■改題・聖なる水の僕(1990年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007.04.14
■聖なる水の僕■第13回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 聖水紀13回[8] タンツ大佐をつれたレインツリー・ロイドの一行は、レインツリーの飛行船で南太平洋にある小島にたどりついていた。この飛行船は宇宙連邦軍の所有物であったが、巧妙に隠されていた。タンツ大佐がその場所へ案内したのだ。この聖水紀の時代に、こういった小島には、人影はない。「ここが要塞か」ロイドが言った。「そうは見えない。風光明媚な島だ」「タンツ、本当にここなのか」「きみたちは、いかにも要塞然とした要塞を考えていたのか。よしここだ、ここで私を降ろしてくれ」タンツは命令口調で言う。「我々も降りるぞ」ロイドが言う。「いかん、この島の砂は感知機とつながっている。連邦軍以外の人間を受け付けない、攻撃されるのがおちだ」「本当か」「本当かどうか、試してみるかね。君にそれほどの勇気があるとはおもえんが」「ロイド、どうする」ツランが不安気に言った。「タンツ大佐、うそなら、ゆるさんぞ」「君らに許しを受ける必要もあるまい」「タンツ大佐、のぼせるなよ。君が「地球人類最大の裏切り者」であることを忘れるなよ」「私しか、この最終要塞に入れる、パスワードを知らんのだぞ」「無理にきさまから聞く必要はない。我々レインツリーが呪術者集団であることを忘れたか」「無駄だ。この島の防御システムを無効にするには、パスワードに加えて、連邦軍軍人の生体反応コードが必要なのだ」ロイドは憎々しげにタンツを睨む。が妥協した。「よし、タンツ大佐、降下しろ。しかし、変なまねはするなよ。君は我々の組織レインツリーにたよるしか、この地球で生きる方法はないぞ」「そうか、どうか、は、わかるまい、、」「何をいう。貴様、この裏切り者が、、」ツランがタンツ大佐に殴りかかろうとした。ロイドがそれを制する。「まて、ツラン、いずれにしてもタンツ大佐は我々レインツリーの手の内にいる。どう料理するかは我々レインツリーが決める」 タンツは降下し、島にある洞窟のひとつにはいっていった。密林で巧妙に隠されたドアをみつけだし、パスワードをつぶやく。タンツ大佐は、最終宇宙要塞ウェガに入った。回廊を通過し、エレベーターホールの前にたっていた。要塞ウェガに人影はまったくない。エレベーターで地下21階まで降下する。再び、回廊が奥まで続いていた。ひとつのドアの前で、タンツ大佐は立ち止まる。涙ぐんでいる。 やがて、意を決して、タンツ大佐はドアをくぐる。暗い空間だ。『おかえり、タンツ大佐』突如、声が響いてきた。『帰ってきたよ、マザー』光りが壁面から次々と点灯し、タンツ大佐の周りを光が巡り、やがて総てを、くっきりと浮かびあがらせた。タンツ大佐は「マザー」と呼ばれる、巨大な人工頭脳の前にたっていた。「ママ、ようやくかえってこれました」そういった、非ざまづくタンツ大佐だったが、「マザー」の姿が少しばかり変わっているのにきずく。「マザー、どうしたのですか」『それは私から、答えよう』別の声がした。それはどうやら、マザーの体に絡み付いている木の「つた」から発せられたようだ。植物がしゃべっているのだ。「きさまは」『レインツリーだ』「何だって」タンツは身構えた。レインツリーが、何故マザーの元に。何かの罠なのか。(続く)■聖水紀■改題・聖なる水の僕(1990年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007.04.13
■聖なる水の僕■第12回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 聖水紀第12回[7]「さて、レディ、君が『みしるし』かどうか、これから試されるわけです」フガンがべらに説明する。「さっきから、言ってるけれど、『みしるし』ってどう意味なの」ベラgaがたづねる「聖水にとって意味のある記号が、地球にすでに存在するということなのです。彼らがこの地球へ飛来した意味はそれを探すことなのです。だから詳しいことは私からではなく、水人(みずびと)から聞いてください」「水人って」「水人とは、私達聖水騎士団の前にあらわれる人格体なのです。ほら、彼らです」フガン、ベラの前に聖水プールがひろがり、その中から3人の人型がかたちずくられ、出現していた。「ねえ、同じ顔、同じ体をしているけれど、個人の性格はあるの」ベラはフガンにたずねていた。「残念ながら、私にもわからないのです」フガンは答える。水人の一人が言った。『フガン、君ですら、まだそんな認識かね。我々は聖水というひとつの意識だ。その分派なら、同じ顔、同じ体となるだろう。さて、君がベラか、君が『みしるし』かどうか調べせてもらおう』「いやよ」彼らの意識がベラの体にはいってくる。聖水が生物細胞にしみわたっていく感じがした。あらがいようがなかった。「何でも、しゃべるからやめてよ」『我々が知りたいのは君の過去だ』「私は歌姫アカデミーをでて、奴隷船の歌姫になったのよ。私のお母さんはデパートの売り子よ」ベラは必死でしゃべっていた。『歌姫は、皆、君のような能力をもっているのかね』「歌姫なら、流体の生体状態を把握できるわ。彼らの体細胞の声を聞けるわ」『歌姫は君のように海水を操れるのかね』「あれは、違う、私がレインツリーの人間だから」『君は、海水の有機体の細胞をあやつることができるのかね。さあ、我々が知りたいのは、もっと過去だ』「そんな昔のことしらない」『君なら、思いだせる』『彼女の細胞プロテクトはかなり、固いね』 ベラは意識を失っている。ベラの体は、聖水プールに横たえられているた。ベラの心の深い座位へと聖水は潜っていく。総ての人類の過去に、聖水は探りをいれていた。■ 泥寧地に雨がふり続いている。集中豪雨だ。が、あたりにはまったく生物の姿が見えない。遠くの山並みは火山活動が盛んで常時噴火が起こっている。 これは、ベラの心象風景だった。『どうやら、我々はたどり着いたようだね』水人の一人がいった。 ベラの心は人類発生以前の地球に戻っていた。細胞のDNAレベルの記憶である。聖水は彼女の記憶巣の最深部にたどりついていた。地面には熔岩流がうごめいている。地球の始源紀である。『ここまで記憶していた人類の個体はいなかったな』再び、水人が言った。 ベラの心象風景に、光る球体が上空から降りて来るシーンがあった。『おお、あれが、我の水人の先祖の姿なのか』彼らはそのイメージ映像を集中する。(続く)■聖水紀■改題・聖なる水の僕(1990年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007.04.12
■聖なる水の僕■第11回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 聖水紀第11回[6]-2「内藤を殺せ」大きな声が響いた。聖水騎士団長アマノが、塔のてっぺんから、大声で叫び、歓談を急ぎ駆け降りてくる。「早くしろ、たじろぐな」が、コンノとクルス、二人の聖水騎士団員は、同僚の体に手をかけることなどできない。 アマノは、三階の回廊から飛び下り、落下中に剣を引き抜き、内藤の首を払っていた。内藤の首なし死体がころがる。「危ないところだ」アマノは剣の血のりをひきとりながら言った。「いったい、内藤はどうしたでしょう」騎士のひとりが言った。「レインツリーのしわざだ」「レインツリーがなぜ」「恐らく、聖水を手にいれたいにちがいない」「あっ、隊長」コンノが叫ぶ。内藤の首なし死体が、自分の首を拾いあげ、駆け出そうとした。「くそっ」クルスが自分の剣を引き抜き、内藤の背中をめがけ、投げ付けた。剣は内藤の体を貫く。が体は歩みをやめない。「いかん、レインツリーが瓢衣している。走れ、つかまえろ」隊長アマノが命令する。三人は内藤の体を追う。この時、急に空が暗くなった。三人は走りながら、空を見上げる。巨大な鳥だ。鳥は、急に方向を変え、アマノたち聖水騎士団員の方へ急降下してくる。「あやつは」「レインツリーの手先だ。気をつけろ」 三人は地に身をふせる。空圧が体を襲う。まわりに生えていた植物が、軒並みはねたおされる。「やってくるぞ。剣を抜け」 アマノたちは立ち上がり、三人の剣を水鳥の方に向ける。 が、鳥はアマノたちの上を飛び過ぎる。鳥の背中には内藤の体がのっていた。「逃すな。フォーメーションだ」アマノが叫ぶが早いか、クルスとコンノは二人の体で台座を作り、アマノの体をほうりあげた。 アマノは空中で剣を抜きはなち、飛翔する鳥の背中に乗ろうとする。 が、アマノの体は、鳥の体を突き抜ける。鳥は海水から構成されていた。アマノの体を受け止めない。が、かろうじてアマノは、内藤の足をきりはなしていた。内藤の体とアマノの体がからまって落ちてくる。かけつけた騎士がアマノの体をうけとめる。内藤の体は地面に激突する。いやな音がした。鳥は飛び去る。「やったぞ」コンノが叫ぶ。「くそつ」アマノが言う。「どうしました。隊長」「内藤の首がない」「聖水でとけたのでは」「違うな。レインツリーが、内藤の首に飲み込んでいる聖水を手にいれたのだ」アマノは独りごちた。(続く)■聖水紀■改題・聖なる水の僕(1990年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007.04.11
■聖なる水の僕■第10回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 聖水紀第10回[6]『聖水をお飲み』 聖水だと聖水など飲めるわけがないではないか。聖水騎士団の一人である内藤は、心の中から聞こえてくる声に逆らおうとしていた。 聖水騎士団。聖水を守るべきために作り出された組織。聖なる水との契約によって騎士になる事はできる。 聖水以前はしがないキーパンチャーだった内藤広志は、この聖水騎士団のコスチュームがきにいっていた。以前にモニターを通じて遊んでいた、ある種のコンピューターゲーム。そのゲームに登場するキャラクターの一人に自分を投影していた。 くずれさった既存社会よりも、この一種変容した社会にパソンコンゲーマーらしく親しさを感じている。 聖水を守るべき役割をもつ騎士が、聖なる水を口にするなど、とうてい考えられないことだった。 よりにもよって、「聖水車」を守っている俺が。聖水車とは、すべて聖水の奇跡を信じない人にデモンストレーションをみせる車なのだ。人々に聖水騎士団の施しを与える役目がある。それを守るのが内藤たち、選ばれし騎士団なのだ。 水人が、アマノを選び、アマノが内藤を選んだのだ。「飲みなさい。内藤」さらに強い声が内藤の心を包みこむ。内藤の体がこわばる。何という大きな力か。あらがいようがなかった。内藤の理性とは異なり、内藤の体は圧し曲げられていった。内藤は助けを求めようとした。他の連中はどこだ。内藤は汗を流しながら、声の力にさからい、まわりを見ようとする。この「ハドルンの塔」にもハドルンの街道にも人影が消えていた。「聖水をお飲み。そうすれば、お前は生まれ変わる」くそっ、レインツリーだな、この声は、呪術師どもめ。生まれ変わるだと、どんな風にだ。俺はプログラマーから、聖水騎士団になつた。これ以上何が必要だというんだ。「聖水騎士団の地位にとどまる必要なぞありはしない。お前は新しき人になれるのだから。恐れることはない」 内藤の騎士装甲服が、じゅるりと、自然にぬげおちていた。ハイチタンの装甲が太陽の光りを受けてキラリと光る。内藤は思わず、聖水車の注水口の所にしゃがみこんでいた。注水口蛇口をひねる。 その時、二人の騎士が内藤の方へ駆け寄った。「内藤、何をしている」「お前、狂ったか」が、時すでに遅く、聖水の一滴が内藤の口に。(続く)■聖水紀■改題・聖なる水の僕(1990年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007.04.10
■聖なる水の僕■第9回■作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 聖水紀第9回[5]「水鳥をとばせろ」ロイドは一言つぶやく。「聖水をあらためて手にいれるのだ。ツラン、君の出番だ」レインツリーのメンバーのひとりツランにロイドは言う。「ということは瓢衣の方法を使うのだな」ツランが答えた。「そうだ。水鳥もまだベラの残留思念があるうちに、君が操ってくれ。そして、君の力で聖水騎士団をたぶらかし、聖水を手にいれろ。それを分析しょう。素早く彼ら聖水に対する対抗手段を打ち立てよう。そしてベラの手ががりも手にいれるのだ」ロイドは自分自身に言い聞かせるようにつぶやく。ベラを失った怒りが潮のようにロイドの心に押し寄せていた。ロイドはすさんでいた。建物にもどったロイドは床にうずくまったままのタンツを目にする。タンツの胸倉をつかんで、抱き起こす。せきたてる様に言う。手荒く扱う。「タンツ、早く思い出せ。宇宙要塞ウェガの位置を思い出すんだ」 が思わず、ロイドはのけ反った。「こ、こいつは」起き上がったロイドを見るタンツの目は先刻の男の目ではなかった。生気が戻ってきている。かっての宇宙連邦軍大佐ウェーゲナー・タンツの目だった。不思議に、昔の威厳も取り戻したとうなのだ。「乱暴なまねはやめろ。ロイドとやら、私は今、宇宙要塞ウェガの位置を思い出した」タンツの心の中で何かが弾けたようだった。別のいきものに変化した。そんな気持ちがした。この青二才め、目にもの見せてくれるわ、ウェーゲナー・タンツの怖さをな。タンツは心でロイドをののしっていた。「残念ながら、君たちの仲間は、私に追いつけなかったようですね」 フガンの問い掛けにベラは無言でいた。「まあ、気にしなくてもよろしい。悪い扱いはしませんよ。レディ、君は賓客ですからね。さて、もうすぐ、我々の神殿につきますよ」 上空からは聖水神殿を中心に発展しているハドルン市の市街地がベラの目に飛び込んでくる。敵の本拠地ながら、ベラはその広さに圧倒された。飛翔機はズンという音と共に着地した。「さあ、我々聖水騎士団の本部へようこそ、レディベラ」フガンは先に飛翔機から降り、ベラにたいして最敬礼のお辞儀をする。 フガンの飛翔機のそばに、聖水車がとうりかかる。「フガン、帰ったのか、首尾はどうだった」聖水騎士団長アマノの声だった。「隊長、上々です。レディベラをお連れしました」聖水車に向かい、フガンは叫ぶ。「我々は布教活動だ。あとで説明を聞こう」「楽しみは残しておいてくれ」聖水騎士団仲間の一人、内藤が叫んだ。「自分だけ手柄をたてるなよ」コンノも声をかけた。聖水車はゆっくりと町並みのほうへ降りて行った。それを眺めていたフガンがベラの方をふりむく。「さて、レディ、聖水にあっていただきましょう」フガンはいやがるベラをつれ聖水神殿へと入っていく。■聖水紀■(1990年作品)(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007.04.09
■聖なる水の僕■第8回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 聖水紀第8回「本当に知らないようだな」男は静かに言った。「君はウェーゲナー・タンツ宇宙連邦軍大佐だ。聖水が地球防衛圏を突破するのに手をかした男だ。君のために地球は聖水に汚染されたのだ」ロイドの目には憎しみの炎が燃えている。 ロイドの言葉はシマの心に深々とつき刺さる。俺がウェーゲナー・タンツだと。地球最大の裏切り者。急に過去の記憶が戻ってきて、タンツの心と胸を一杯にした。犯罪者。震えがタンツの体を襲った。たっていられない。両手両ひざをついた。タンツの体は小刻みにふるえる。汗が体じゅうから吹き出る。 ロイドがひざまずき、タンツに被いかぶさるように、タンツの顔をのぞきこむ。「タンツ宇宙連邦軍大佐。君に教えて欲しい。宇宙連邦軍の秘密要塞の位置を。君しか生き残っていない。宇宙連邦軍で、君しかね」タンツの脳裏には、連邦軍の潰滅シーンが想起された。「ねえ、タンツ、お願い。教えて。覚えているはずよ。宇宙要塞ウェガの位置と要塞侵入のパスワードを」「宇宙要塞ウェガが我々の切り札なんだ」タンツは無言で震え続ける。「だめよ。ロイド、タンツは堅く自分の殻に閉じこもっている。病院でも、自分がタンツだと、結局最後まで認めなかったというわ。今でもショック状態よ。我々の機械で治療しましょう」「ベラ、時間が惜しい気がする。こんな奴に時間を与えるのがねえ」 あたりが急に騒がしくなった。ロイドは建物から飛び出る。男が走ってくる。「どうした、何があったのだ」「大変です、チーフ」息を切らせてその男は叫ぶ。雨がその男の顔といわず、頭といわず激しく降り注ぐ。「騎士団員です、騎士団員がここに」「なぜ、ここがわかったのだ」ロイドの手の中で男は崩れる。「聖水がかかっていたのか」ロイドの方へ、雨足のけぶる中、また誰かがちかずいてくる。「誰だ。ハーマンか」ロイドは仲間の名前を呼ぶ。「残念ながら、ハーマンではありません」やさしい声がかえってくる。「誰だ、きさま」ロイドはいぶかって相手をみようとした。ぬっと新手の男が登場する。大音声で名乗りをあげる。「初めて、お目にかかります。聖水騎士団員、レオン=フガンといいます。以後、お見知りおきを。歌姫ベラ、さらにこぎ人シマをいただきにまいりました。おとなしく渡していただきましょう。もし、だめとあらば、この私の聖水剣の舞いをご覧にいれましょう」「きさま。ひとりでここへ」「そうです。失礼にあたらねばよろしいのですが」「いい度胸だ。が、どうしてここが、」「職業上の秘密ですといいたいところです。、まあ、サービスしましょう。聖水が彼女にかかったのですよ。その聖水がこの場所を教えてくれたのです」「あの少量の聖水が」「そうです。ああ、それについでに申しあげておきましょう。その聖水は私が先刻、研究所からいただきました。私に所有権はありますものですからね」「聖水を返してもらおう」「わからない人だなあ。私たちに所有権はあるといったでしょう。それより、ベラとシマを渡してください。あなたがたレインツリーを滅ぼすのは時間の問題なのですよ」フガンはあたまりまえのように言う。「フガンとやら、我々が簡単にベラとシマを返すとおもったか。この基地で、きさまから聖水を奪い取ってくれる」「お手並み拝見しましょう」フガンはニヤリと笑う。聖水剣を引き抜いていた。建物からベラが飛びだしてきた。「ロイド、無謀よ。彼は聖水剣をもっているのよ」「これはレディ、またお目にかかりましたね。聖水騎士団レオン=フガン。聖水の命により、あなたを貰い受けにまいりました。すぐさま、聖水のみもとに」フガンはベラの方に手をさしだしていた。「笑わせてくれるわね。フガン」ベラはフガンの手を打ちすえる。「私のお願いを受け取っていただけない。寂しい限りです。わかりました。それでは力ずくで、あなたをさらつていきましょう」「フガン、いい度胸だ、まわりを見ろ」ロイドが叫んでいた。フガンのまわりをレインツリーのメンバーがとりかんでいた。「これは、これは怖そうなおにいさんがただ」「フガン、へらず口をたたくのもこれまでだ。我々の包囲陣、やぶれるか」「何」フガンは聖水剣をむけた。が、聖水が彼らにとどかない。「こ,これは」「フガン、我々が何故、このような多雨地帯にいるのか、わかるか」「さては」「きさまの想像どうりだ」水にたいして水を使う。地球の水がレインツリーの呪術師の念力によりバリアーとなっている。分がわるいとフガンは判断する。彼は臨機応変フガンは一瞬飛び上がり、ベラの真後ろに着地した。「さてさて、レインツリーの皆さん、今日はこれで幕にしておきましょう。変に手だしをなさると、このお嬢さんが傷つきますよ。これでも私は諦めのいいほうなのです」「皆、構わないで、このフガンをやっつけてよ」「レディ、そう騒がれてはこまります。あなたは諦めの悪い方ですね」フガンはベラに当て身をあて、気を失わせる。「フガン、きさま」ロイドの顔は激怒の色。「皆さん、お静かに、彼女が目をさまします」フガンはベラを担ぎあげ、走り去る。上空から飛翔機が降りて来る。「ちょうど、いい時間です」「では皆さん、またお目にかかりましょう。あ、それから、シマによろしく」飛翔機は飛び上がっていった。 ■聖水紀■(1990年作品)(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007.04.08
■聖なる水の僕■第7回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 聖水紀第7回(4) シマはようやく目ざめた。鳥はシマと、意識を失っていたベラの体をどこかに運んだようだ。シマは飛行中に疲労で寝てしまったようだ。しかし、いまだに信じられなかった。自分はあのフガンとかいう聖水騎士団の男に聖水をかけられた、が消滅しなかった。おまけに単なる歌姫だと思っていたベラが、海水を鳥に変化させた。自分はその鳥に乗ったのだ。脅えが今ごろ、シマの体を震わせていた。それにしてもここは。雨音が急にシマの耳に飛び込んで来る。シマは何かの建物の一階にいた。バラック状の簡素な建物で、シマの目前にドアがあった。窓からは激しい雨足が見えている。ドアを開けてズブヌレの男が入ってきた。男の顔はレインパーカのフードのせいではっきり見えない。不安がシマの体を震えさせた。不安は人を多弁にする。「あなたはどなたですか。それにここは」「我々はレインツリーだ」その男はフードをあげながら、言った。シマが思ったより若い男だった。 レインツリー、対『聖水』組織。聖水紀以前の地球社会に復帰さることを目的とする組織だった。おまけに、呪術者集団。「安心しろ、シマ、我々は味方だ」「ここは、どこなんですか。それにベラは大丈夫なのでしょうか」「レインツリーの基地のひとつだ。ここは多雨地域。聖水騎士団もなかなかちかずけまい。ベラのことは、直接本人から聞け」 建物に今度は小さな人間が入ってくる。フードをはずす。元気なおなじみの顔があった。「シマ、大丈夫だった」ベラの第1声だった。「君こそ、大丈夫なのか。たしか聖水を体に浴びたはずだ」わずかに、安堵感がシマの体に広がっていく。「わずかよ。それにこのレインツリーの基地で手当してもらったの。私の体は特別製なの」傍らの男を見てベラはしゃべった。最後の言葉に意味があるかのように。「シマにはもうしゃべったの、ロイド」 ロイドと呼ばれた男は首を振る。「いや、まだだ。君の口からいってもらったほうがいいと思ってね」 ベラはすこしの間、考えていたようだが、やがて決心したようにシマの目をみつめながらしゃべった。「シマ、あなたはシマではない」 シマはとまどう。悪い冗談かとも思った。が、ベラの表情は、船の上の歌姫の冗長なベラのそれとは別物だった。「どういう事なのかな。君は私を探っていたのか。疑っていたのか。だから、船の上の君は演技だったのか」シマはわけののわからない怒りで、自分がつき動かされているのを感じた。ベラは顔を赤らめて絶句する。ロイドがその場を救おうとした。「それはベラから答えにくいだろう。私が船にいる君を発見し、確認のためにベラを歌姫として潜入させたのだ」 シマは考える。この私がシマでないとすれば、一体私はだれなのだ。ベラは私が誰だかわかっていて私に質問をしていたという。このレインツリーの人間は、本来の私が何者なのか知っているわけか。シマは怖かった。自分が誰か聞くことが。シマの心はちじに乱れ、叫んでいた。「頼む。教えてくれ。私は誰なのだ」(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007.04.07
■聖なる水の僕■第6回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 聖水紀第6回内容は以下のようだった。 しがない奴隷船のこぎ人にすぎないシマ。彼は聖水以前の出来事の記憶がないのだ。その時、歌姫ベラが尋ねていたらしい。「シマ、全然、記憶がないの。本当なの。おかしいわよ。私だって私のお母さんがデパートの売り子だってこと覚えているわ。あなたはどんな職業だったかも覚えていないの」「残念だが、ベラ。私はある船にひろわれたらしい」「海から生まれたとでもいうの」「海からひろわれた後も、長い間、収容施設の病院にいたようだ。聖水によって地球の社会機構が変わった時に、その病院からほうり出された」「それで、奴隷市場に出て、奴隷船の流体となったわけ」「そうだ。ところで、ベラ。君はなぜ、歌姫なんかに」「一言でいえば、才能ね」ベラは鼻をピクピクさせて言う。「才能。ベラ、それは大きくでたものだね」「だって、私には、その人を歌に出来るもの」「どういう意味だね」「どんな人でも旋律をもっているのよ、生まれながらの旋律が体に組み込まれているの。それが、私には分かるの」「だからこそ、マハンにある歌姫養成アカデミーに入ったわけだね」「おまけに優等生でね」 フガンが船長から聞き出したのは、このような内容だった。フガンはアマノに連絡した。「わかった。それでは、フガンくん、彼らを追ってくれるかね」「わかりました」フガンは、船長から話しを聞く間に、奴隷船の上空に自分の飛翔機を呼び寄せていた。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007.04.06
■聖なる水の僕■第5回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 聖水紀第5回「おやめ。みっとないよ。聖水騎士ともあろうものがうろたえるのじゃないよ」ベラはフガンにむかって罵声を浴びせる。「あなた、いったいどちらの味方なの、はっきりしてください」 シマもベラの発言にいささか驚いている。「私は誰の味方でもないよ。私は私の味方さ。私の思うとおりに生きているわけさ」「あなたも、この人と一緒に捕まえて調べなければなりませんねぇ」「いやだよ。なぜ、あんたのいう事など、聞く耳をもたないさ。あんたの相手をする。私はそれほど、ひまじゃないよ」「レディ、いわせておけば、私にも我慢の限界があることをおわすれなく」フガンはベラを捕まえようとした。 が、突然ベラは歌を歌い始める。どうしたのだ。シマは思った。フガンの手をのがれながら、船の上を走り、歌を歌う。その歌詞をフガンは理解できない。異国の言葉、あるいは何かの記号のように思える。ベラは船の外、つまり海にむかって受かっている感じなのだ。船の動きがおかしい。海水が急に、甲板に撥ねあがってきた。その海水が徐々に、形になっていく。やがて、姿が決まる。出現したのは水鳥である。この鳥のむこう側は不完全だが、透いて見える。「面妖な事。レディもこの男の仲間と見えますね」フガンが叫んでいた。「ほほっ、聖水騎士ならそんな事くらい自分で考えなよ」ベラはフガンにあかんべーをする。かえす顔でシマにどなる。「ほら、シマ、ばやぼやするんじゃないよ。はやく、この鳥にのるんだよ」「し、しかし、ベラ、私は」「早く、あーたら、こーうたら言ってるひまはないよ」ベラにせかされ、シマは、不承不承、鳥の背に乗る。シマは今にもこの鳥の水で溺れるのではないかとヒヤヒヤする。フガンは再び聖水剣を手ににじりよっていた。「ほら、飛び立つよ」一瞬、フガンの聖水剣から、聖水がベラに向けられて発射される。「レディ、おかえしですよ」聖なる水がベラの肩を撫でる。「やられた。シマ、後を頼むよ」「そんなこと、いったってベラ、どうすれば」シマはおろおろする。がベラはすでに気を失っていた。「おーい、ベラ、起きてくれ」が、水鳥は、シマの都合など無視して、晴れ上がった蒼弓の空へと舞い上がっていく。 船には、空を見上げるフガンがつぶやいていた。「あのレディは海水を動かしましたねぇ。ひょっとして伝説の『みしるし』かもしれません」 フガンは自分の装甲服についている連絡機器のスイッチをいれる。聖水騎士団長アマノに今の一部始終を告げ、言葉をついだ。「少しばかり、私は今のシマ老人と歌姫ベラを調べたいのですが」 しばらくの沈黙のあと、アマノは答えた。「よし、フガン、その奴隷船の船長を締め上げてみろ。何か、手掛かりがあるかもしれん」「わかりました」「『みしるし』であることがわかれば、まあ、よい、気をつけろ。君は、おもわぬくじをひいたのかもしれん」 フガンは早速、奴隷船船長にあっていた。事情を説明し、船長の協力を得ようとした。「流体のひとりのシマでしょう。あいつについては奴隷市場では、まったくデータがついていなかったのです」船長はこういう。「彼はロボットだったのでは」「いや、それはないでしょう。生体チェックをクリアーしていますから」「聖水以前は何をどこで何をやっていたのか、わからないのですか」「いや、はっきりとはわかりません。ただ」「ただ、何ですか。言ってください」「ある流体がシマと歌姫ベラとがしゃべっているのを聞いていたらしいのです」「ほほっ、それは興味深いですね」「この流体はベラにほれていましたから、あまり、ベラがシマと仲がよいので,じゃまをしょうとしたらしいのですが」フガンは話しを遮る。「前おきはいいのです。どんな事をしゃべっていたのですか」「シマは自分の出自をベラにしゃべっていたのです」「どんな内容ですか。話してみてください」(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007.04.05
■聖なる水の僕■第4回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 聖水紀(4)(2) 聖水プールの中、水人はタンツについて検討していた。『タンツをどう処分する』『我々を地球に導いた功績はありますが』『が、我々聖水に対する認識は極めて薄いと言わざるをえん』『嫌悪感がぬぐいきれないようだ』『それに、今はアマノと聖水騎士団がいるからね』『では、処理するかね』『残念ながらしかたがないでしょう』 タンツの体は聖水の中、水泡に包まれてたゆとうていた。自分が誰なのか。またどこにいるのか、まったく記憶がない。 タンツの利用価値はなくなったと、聖水は判断した。タンツの入った水泡が、聖水の中から弾きだされた。タンツを包んでいた水泡は消える。どこかの海だろう。裸体のタンツはたゆとう波に翻弄され、やがて海に飲み込まれていく。(3) 静かな海の上を、人の力で走っている奴隷船が進んでいた。一人のこぎ人、通常、こぎ人は「流体(りゅうたい)」と呼ばれているのだが、船倉からあがってくる。彼の自由時間である。その男はきょろきょろしていた。誰かを探しているようだ。年令はそれほど若くはない。いや、むしろ、老人の部類にはいる。が、さすがに奴隷船の流体だけある。彼の筋肉は、とぎすまされて、太陽の光りを照り返していた。 若い女が、いままさに、船橋から降りてくるところだった。その男シマにきずく。女もその男を探していた。「ねえ、シマ。あなたはいるなぜ、そんなにいつも悲しいそうな顔をしているぉ」女ベラは、高いブレッジから男に呼び掛ける。 シマは考え深げな目で、上にいるベラに答えた。「私にも分かりはしない。ただ」「ただ、何なの」ベラは14、15才だろう。この船の歌姫であり、皆のアイドルであった。奴隷船には必ず歌姫が乗っている。そして、流体には歌姫が必要なのだった。歌姫は、歌がうたえる。が歌姫のソングは特別だった。彼ら流体の体の細胞に訴えかける歌なのだ。その歌のおかげで、流体たちは船を漕ぐ筋肉が効率よく動かすことができる。歌姫の声は、筋肉に対するある種の栄養剤であった。歌姫はこの地球には、数すくない。が通常の交通機関が消え去ったこの時代、奴隷船は有用な交通機関だった。「私はいつも思うのだ。私は、この地球に対して、とてつもなく大きな責任をもっているってね」こう深刻そうに答えたシマに、ベラは大笑いを返す。「シマったら、そんな大ボラがふけるわねえ。じゃなに、この地球はあなたが作ったとでもいうの。今は奴隷船のこぎ人、流体にすぎないあなたがね」「ベラ、笑うのももっともだ。今の私は、この船の流体にすぎない。でも、昔はそうだったような気がするのだ」「シマ、シマ。そんな深刻な顔をするあなたが大好きよ。あなたといると逆に楽しくなるわ」「私も同じだ。君がいればこそだ。この奴隷船くらしも気にならない」 この時、二人の側をきらびやかな装甲服に身を包んだ男がとうりかかる。 ベラが大きな声で叫び、シマの注意をうながす。「あっ見て、見て、シマ。聖水騎士団よ」「わかるよ、ベラ。私にも目というものがある。でも、彼らは権力の犬にすぎないのだよ。か弱いものだよ」 突然、その騎士が、ベラのま後ろに立っていた。彼は二人の話を聞いていた。「これはお美しいレディ」その騎士は、ベラの右手をとり、キスをする。「何か、こぎ人が、レディに対して失礼なことでも」 ベラはあまのじゃくである。つい、口をすべらす。満身、笑みをたたえて騎士にいう。「ええ、いいましたとも。あなたがた、聖水騎士団が権力の犬にすぎないって」 男としては、もったいないほどの美貌をもつ彼の顔色が急変する。「なにですと。権力の犬。すばらしい言葉ですね。で、その言葉をこぎ人がいってくれたわけですね。聖水騎士団も甘くみられたものですね」「お若いお方。お許しください。年寄りのたわごと。どうぞ、お許しください。おみのがしください」シマはこの騎士に深々と頭を下げる。「そんなこと、する必要があるの。シマ、あなたいつも、聖水騎士団の悪口を言っているのじゃない」おしゃべりのベラが口をはさむ。騎士の顔色がもっと赤くなる。「私の名は聖水騎士団のレオン=フガン。私に対する侮辱なら、許してさしあげたかもしれない。が、我々聖水騎士団の侮辱、ひいては、聖水にたいする侮辱は見過ごすわけにはいきません。こぎ人。そこにひざまずきなさい。私達、聖水騎士団がゆるされている聖水剣の威力をお目にかけましょう。そうすれば、あなたのその曲がった根性もよくなるかもしれませんねえ」 フガンは背中に装着されている聖水剣を、目にもとまらぬ早業で引き抜き、手にしていた。「お願いだ。フガンさま。この年寄りに無体なことをなされますな」「こぎ人シマ、許すわけにはいきません。私は聖なる水から、役目を与えられているわけですから。私の役目なのですよ。悪く思わないでください」「そうよ。やってしまって」どういう意味からなのか、ベラが、フガンをけしかけている。シマはベラの方をみる。いったいどういうことなのだ。この歌姫はどちらの味方なのだ。 ベラは一瞬思う。これではっきりするだろう。シマの正体が。ようやくわかる。さぐりをいれてもう3カ月。もうそろそろ。 フガンの手にする聖水剣がひと振りされる。その先から、わずかな液体がシマにむけ放たれる。人々を溶かす聖水が。「シマ。あきらめなさい。聖水の元に身を捧げなさい。そして人類のおろかさをしりなさい」 発射された聖水は、広がり、薄い粘膜の膜となり、シマの体を包む。 当然、シマの体は消えてしまうはずだった。聖水が、この男には反応しない。「あなた、まさか、ロボットではないでしょうね」フガンは叫ぶ。機械文明の象徴であるロボット、コンピューターは、この時期作ることが許されていない。「お若いおかた。どうぞ、もう、おやめください。このこぎ人のじじいでございます。これ以上。もういじめないでください」「そうはいきません。聖水に反応しない人間など見たことがない。あなた、まさかご禁制のヒューマノイドではないでしょう」「おやめください」シマは、フガンののばさせた手をふりはらう。「あなた、さからっちゃいけません。やはりヒューマノイドなのですか」 ベラは様子を見ている。やはり、シマは普通の人間ではなかった。私のにらんだとうりだ。じゃ、このシマを組織につれていこう。可能性はある。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007.04.04
■聖なる水の僕■第3回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 聖水紀(3) アマノ博士は苦い思いをかみ締めながら、自分の研究所に戻った。昨日まで、イタリア・トリノ市で開催されていた宗教科学学会の国際会議では、罵声はアマノに集中していた。 アマノは自分のデスクに座り、頭を抱える。もう、誰も彼を弁護しょうとはしないだろう。永久に学会へ復活の見通しはない。アマノは引き出しにある銃をつかんだ。 その時、アマノは壁から侵入してくる何かを発見した。そいつは、アマノに何かをいう。『アマノくん、我々が君を選んだのだ。光栄に思いたまえ。我々は聖なる水。この地球をカイホウしに来たのだ』「解放だと、一体、お前は何だ」『宇宙の存在だ。地球人類に本当の自由を与えにきたのだ』「宇宙生物がなぜ私のところへ」『君が最高の科学者だと信じたのだ。我々は君が学会で何と呼ばれているか、知っている』『めぐまれない科学者』水人たちが続ける。『現代の錬金術師』「や、やめてくれ。君立ちは私に引導をわたしに来たのか。いわれなくとも、私は自分の意志で命を絶つ」アマノは頭に銃をあてる。『おまけに、我々は君が古代の宗派ドルイド派の狂信者だと知っている』「そんな情報をどこから入手したのだ」アマノは驚く。なぜ、かれらが、そのことを、闇の宗教であり2005年、地球政府によって弾圧撲滅、根絶されたはずのドルイド教の信者であることを。 『君を知るある男からだ』『君の好きなイメージで、地球を真実に目覚めさせる聖なる騎士団を、組織してよい』「騎士団だと」アマノにとって興味がある内容だった。『君が学会で発表したとうり、地球には浄化が必要なのだ』アマノは、銃を引き出しにしまった。奇跡がおこったのかもしれん。私に運命の神がほほ笑んだのかもしれん。「話しを聞こうか」アマノは、侵入者たちの方に顔と心を向けた。■ インドネシアのアンダマン諸島。このエリアは驚異的な豪雨地域だ。その中にあるスキャン島。その山岳地域に人々が集まっていた。その木は覚醒していた。地球の地霊と呼ぶべきだろうか。ともかく、その木は地球の危機を感じていた。それゆえ、この木がたばねている世界中の呪術者が集められていた。奇妙な形をした樹木のそばに、人々は集まっている。その中の二人が話しあっていた。「ロイド、いよいよ我々の出番がきたようだな」「そうだ、我々が単なる呪術師でない事がわかるだろう」「地球を救う大地の使者だからな」「レインツリーよ、我々は感謝します」 彼らは樹木の前にひざまずいていた。 その木レインツリーは樹液を流した。ひざまずく人々の元まで、その液体は流れていく。真っ赤な血の色だった。「吉兆だぞ」先刻の男が叫んでいた。 聖水を含んだ雨が地球全体を覆っていた。いかなる機械的防御も聖水の前では無力だった。例えば、聖水は電気回線に侵入するのもたやすい。どんな地球上の物質も聖水を遮ることはできない。聖水は物質の組織のすきまを通過した。聖水の前では無力化された。宇宙連邦軍は滅亡し、地球の機械文明も滅ぶ。地球は聖水紀にはいったのである。「これが、私が全世界から、選んだメンバーです」アマノは聖水がたまる聖水プールの前でしゃべっていた。聖水は雨になって侵入後、再び結合していた。人格化された存在である水人が出現していた。『よろしい、この地に神殿を建築しなさい。さらに車を作るのです』「車ですと」『そうです。それをもって我々の事をもっと人類にしらせるのです』その時、彼ら全員の前に聖水が流れてきた。やがて彼らの驚きを残して、また聖水プールに戻っていく。彼ら一人一人の前に剣と装甲が並べられていた。「これは、いったい」アマノは言葉を発するのに時間がかかった。『あなたがたへの我々のささやかなプレゼントです。この剣は先から発射できます。その液体は我々の主成分から摘出されたものです。まだ、連邦軍の残党がいるでしょう。火力の機器は残っていないと思いますが、あなた方にも武器が必要でしょう。それぞれの名前が刻みこんであります。引き抜きなさい』「でも、なぜ、我々の名前がわかったのですか」一人の男が聞いた。『それは我々が聖なる水だからです』(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007.04.03
■聖なる水の僕■第2回作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 聖水紀(2)「おいおい、まじかよ。何かの冗談じゃないだろうな」 地球の関門である第1ゲートで、オペレーターの一人バルボアがモニターを見て叫んでいた。第1ゲートの監視機械は、地球に接近するロケットの積み荷のチェックができる。「どうしたバルボア」もう一人のオペレーターがいった。この第1ゲートでは、2人当直体勢をとっている。「ジル、みてくれよ。こいつは水で一杯のロケットだぜ」「本当だな。宇宙連邦軍もどうかしているぜ」「誰だい。操縦者は」「待て待て、コードをチェックしてみる」「げっ」バルボアがCRTをのぞきこみ叫んでいた。「俺達は、悪いクジをひいたぜ。操縦者はタンツだ」「私だ。タンツだ」当のタンツから連絡がはいった。タンツはよくも悪くも伝説の男だった。「ウェーゲナー・タンツ大佐、このコードでは、あなたは恒星に向かっているはずですが」バルボアは自分の声に不快の念があらわれていないか気になった。「特殊任務だ。常人にはわからん」怒りを含んだ声がかえってくる。「でも、大佐、これだけ大量の水を地球にもち変えるおつもりなら、許可書が必要です」「いっただろう、特殊任務なのだ」 その時、バルボアが透視機械のCRTをみて叫ぶ。「ジル、おかしいぞ。タンツの体が水中にある。おまけに宇宙服をきていない」「何だって、緊急対応B102指令だ」<危険、タンツは汚染されている>この内容で、緊急コードが、地球連邦本部に連絡されようとした。 ロケットの側壁から、何かがにじみでてくる。水の固まりだ。そやつが宇宙空間を飛んで行く。まるで意志をもつ存在の様に。ゲートの司令室に侵入する。オペレーターの操作卓の壁面から、しみこむように、液体が二人の方に襲ってきた。二人には理解を絶する光景だった。「これは何だ」「うわぁー、」二人はこの液体中で消滅していた。二人を飲み込んだ液体と船の水の意識が、精神波で連絡していた。『どうだね、まにあったかね』『まだ、情報は発信されていなかったようです」 が地球の防御システムはそう甘くはない。 第1関門の事故は、至急に地球連邦軍の本部に連絡されていた。本部にあるメインミーテングルームで、将軍とスタッフが緊急連絡会議を開いていた。「連絡をうけたのだが、それほどの緊急事態なのかね」ハノ将軍は早朝から呼び出され、週末のスケジュールが変わったのでいささか、お冠だった。現況では平和が続き、宇宙軍が出動する事態などなかった。「タンツが協力している模様です」スタッフの一人が将軍に言う。「何だと、タンツが、信じられん。彼はタンホイザー・ゲイトに向かっていたのではないか」白髪豊かなハノ将軍は衝撃を受けていた。「この映像をご覧ください」映像をみたあと、最高軍司令官ハノ将軍はいった。「で、この液体は現在」「現在、不明です」 ハノ将軍は少し、考えたあと、ある回線をつないだ。危機の可能性は少しでも潰しておくべきだ。それも早急に。ミーテイングルームの操作卓上のCRTに相手がでるとハノは言った。「あなたの息子が、我々を裏切ったのです」ハノは断言していた。『信じられません。何かの間違いでは』機械的な声で、相手は将軍に答える。「我々も信じたくない。が、我々としては、防御処置をしなくてはなりません」『といいますと』「あなたを抹殺します」『後悔することになりますよ』その声は感情なく言った。「タンツの手引きで、あなたが彼らの手にはいった時を恐れる。なぜなら、あなたは我々の総てだから」 ハノはマザーの抹殺ボタンを押した。タンツはそのとき、マザーの声を聞いたような気がした。水人が発言する。『軍は我々の存在に気がついたようだね』『どんな方法をとるべきかだ』「雨になって侵入しなさい」タンツが言った。タンツは聖水にあやつられるまま、地球の情報をしゃべっていた。『雨だって』「そう、雨です。雨なら怪しまれず、侵入できる」(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007.04.02
■聖なる水の僕■(1990年作品)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/ 聖水紀1990/6/9作成第1回 彼らは遠くに存在する宇宙溝から飛来してきた。ここへ到着するまで、かなりの距離だった。時間の概念は彼らにはあまり重要ではない。その間、星の生物への接触方法については、彼らの間で、議論されていた。宇宙の闇は深く、彼らの心の中にもまた深い悩みがあった。今回の任務は特殊だった。使命感だけが彼らをつき動かしているのかもしれない。 彼らの体はまた飛行体そのものであった。金属、非金属でもない特殊な物体。それゆえ、いかなる星の探知装置にも発見されなかった。 この生物の取り扱いについては注意を要する。彼らのとりあえずの結論だった。太陽系で停止して、まわりを観察する。 飛行物体中に含まれる、意識体同士が会話をしていた。彼らは多くの意識体の結合体である。『このあたりかね』『指令書によると、そのようです』 目の前を、極めて幼稚な飛行体が動いていた。『何か、飛行体が通過します』『かなり、原始的なものだねえ』『ひょっとして、あの飛行体は、目的星の所属物かもしれませんね』『一度、調査してみよう。生物体が存在するかもしれん』 彼らはその飛行体に乗り移った。 タンツが緩やかな眠りから目覚める。もう、到着したのか、いつもながら、冬眠からの目覚めはけだるかった。あたりがはっきりと見えない。変にゆがんで見える。長い宇宙航行で、私の視覚がおかしくなったのか。 タンツは、おかしなことにきずく。私は、ここはカプセルの中ではない。おまけに、ここはどうなっているんだ。 たしかにウェーゲナー・タンツ、宇宙連邦軍大佐は、ウァルハラ号の中にいた。この船は恒星間飛行中のはずだ。 が、タンツの体のまわりは水だった。おまけに、水の上にいるのではない。水の中にいるのだ。なぜ、私は呼吸ができるのだ。タンツは不思議に思った。とりあえず、その事実を受け入れざるを得ない。ともかく、息をしている。 それに、このウァルハラ号はどうなっているのだ。タンツは航行装置のチェックをしょうと思い、コックピットに向かう。 ウァルハラ号の中は、どこもかしこも水で万杯のようだった。空気がまったくない。タンツはようやくのことであ、コックピットへたどり着く。行く先の方位座標は地球となっている。「地球だと」タンツはうめく。さらに地球暦の日付をチェックする。2010年8月15日。 タンツがニュー・シャンハイの宇宙空港から飛び立った日が2010年3月10日。冬眠状態のまま、恒星タンホイザー・ゲイトにむかうはずだった。タンホイザー・ゲイトにつく時期まで、タンツは目覚めることはないはずだった。が、今タンツは目覚めていて、ウァルハラ号は再び、地球へ向かっている。ロケット一杯の水をつめこんで。「くそっ、一体どうなっているんだ」 タンツは毒づいて、地球司令室へ連絡しょうとした。タンツの肩をその時、誰かがつかむ。ギョッとしてタンツは後ろを振り向く。誰もいない。当たり前だ。この船の生命体はタンツだけなのだから。 しかし、何かがいる。タンツは心の中でだれだ、と叫んでいた。『タンツ、我々の存在にようやく気がついたようだね』タンツの耳に、声が響いてきた。「誰だ。何者だ」『姿をあらわしてほしいかね、タンツ』 タンツはトラブルを望んでいなかった。彼はこの恒星間飛行を人類初めての飛行を、ともかく、成功させたかった。名誉を得たかったのだ。が、タンツの前の水中に、不透明な何者かが、複数、姿を取り始めた。「おまえ達は、いったい」『聖なる水』彼らはそう言った。その瞬間コックピットにある通信機器がつぶれるのがタンツの目にはいった。地球本部との連絡は不可能になった。自分で解決せざるを得ない。『マザー、どうすれば』タンツは心の奥でさけんでいた。「聖なる水、聞いたことがない」タンツはひとりごちる。『タンツ、今、君に説明してもわかりはしまい。時間がかかるだろう。ただ、言えることは、君たち地球人類をカイホウしに来たのだ』「我々をカイホウする。何からカイホウするというのだ」『タンツ、怒るな。我々に協力してもらえないかね』「協力しろだと。笑わせるな。俺は宇宙連邦軍大佐ウェーゲナー・タンツだ。君達、侵略生物になぜ、協力しなければならんのだ」『我々は、いわば宇宙意識なのだ。その宇宙意識で、ひとつになろうという提案だ』「それゆえ、私のロケットを占領したのか」『ちょうどいいところに、君の船がとうりかかったのだ。中を透視すると、地球人の君がカプセル内で冬眠していたのだ。我々は、君さらにこの船のコンピューターから、地球の知識を読み取った』「私は宇宙連邦軍のウェーゲナー・タンツだ。侵略者である君たちのいうことを聞くわけにはいかん」『我々は侵略者ではない』「使節というつもりか。それなら、正式の手続きを踏め」『どうやら、聞き分けのない個体をえらんだようですね』水人のひとりが言った。 タンツは壁のボックスに装着してある銃をとりあげ、水人をめがけ撃った。が、熱線はむなしく水中に消える。『我々にはそんなものは通じない』『しかたがない』『我々の命令を、しばらく黙って聞いてもらおうか』 「何だと、お前たちのいうとうりにはならん」タンツは自殺しょうとした。このままでは、自分の知識が悪用されると思ったからだ。が、この生命体の反応の方が早かった。タンツは気を失った。(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
2007.02.01
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