突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました

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2012.02.14
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鬼の棲む街2





 トゥレディオの酒場 <8> 




 ――― 息を飲んだ。

 その広い部屋の中は、見渡す限り、ドレスがずらりと並んでいた。
 真っ赤なシルクのドレス。
 黒いチュールレースのドレス。
 夜のように黒い羽根飾りのドレス。
 きらきら輝くスパンコールのドレス。
 星のようにビーズを散りばめたドレス。
 青い海のようなヴェルヴェットのドレス。
 白い毛皮飾りのついた、銀色に光るドレス。

 薔薇の花を胸元いっぱいに縫いつけたピンクのドレス・・・

 壁を覆いつくすばかり、数知れない、夢のようなドレスの山が、ルドゥアを圧倒した。
 信じ難いその眺めに、ルドゥアはしばし言葉を忘れて立ちすくみ、それから、ようやく、そのドレスの間に埋もれるようにして座っている、パピトの女に気がついた。

 ふかふかの椅子に体を預け、形のいい長い足を優雅に組んで、怪訝そうにルドゥアを見上げているその女は、見たところルドゥアよりはるかに年上のようだったが、つやのある黒い髪を高く結い上げ、その傍らに品のいい羽根の髪飾りをつけているのが、ぞっとするほどよく似合って、その年齢にふさわしい威厳と美しさを兼ね備えた、まさにこの 『古城』 の女王というふうに見えた。

 その妖艶な美しさに呆然と見とれるルドゥアを、女は、じっくりと観察するように眺め回し、それから、大胆な飾り爪のついた指で、古風な長いキセルを取り上げ、深々と煙を吸い込んでから、立ち上がってゆっくりとルドゥアに歩み寄った。

 女が、息苦しくなるほど甘い、強い香りの煙を、ぷーっとルドゥアの顔に吐きかける。
 ついで、真っ赤な口紅を塗った唇が、物憂げに動いた。
 「あたしのドレスを借りて着なさい、って、トゥレディオが?」

 たずねるともなくそう言うと、なまめかしい唇が、『女王』 らしからぬ底意地の悪い笑みの形に広がった。
 にやにや笑って、女は、長い銀色のキセルの先で、汚いものでも指すように、ルドゥアの服を示した。
 「そうね。 こんな野暮ったい服で店に出たら、客はみんな逃げちまうわね」


 「化粧も下手だわ。 山奥の猿みたい」

 ルドゥアは、真っ赤になってうなだれた。
 言われた言葉の内容もずいぶん残酷なものだったが、それよりもむしろ、ここまでずけずけ言われてもなお、目の前のこの女の洗練された美しさに圧倒されて、怒る気にもなれない自分が、情けなかった。

 この人の言うとおり、あたしは、化粧もできない山猿なんだわ、と思った。






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最終更新日  2012.02.14 18:45:28
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