AZU WORLD
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先月のことになりますが1月27日にテレビ朝日の「大胆MAP」という番組に父がちょっとだけ出ました。「人気アニメの声をやっている人の顔を全部見せちゃうよ!ベスト20」という企画の3位だったようです。父は声優で、アニメだと「あしたのジョー」の力石徹や「宇宙戦艦ヤマト」の島大介の声で第一次声優ブームのころのスターでした。ものごころついたときからテレビで父の声を聞かない日はありませんでした。アニメはもちろん、コマーシャルのナレーションはものすごく多くて全盛期には数えているとひとつの番組にいくつものCMをやっていて数十秒おきに父の声が流れていたのを覚えています。洋画の吹き替えも多く○○洋画劇場、なんかの新聞のテレビ欄を毎朝チェックするのが日課でした。ファンクラブも大勢の女の子が入っていて回報の雑誌も出ていて家にもよくファンの人が来たりバレンタインデーにはダンボール5個分のチョコレートが来たりして私たち3人兄弟はよく食べすぎました。ファンレターの整理を手伝ったりもしていましたね。といってもうちは仲良し家族とは程遠い家庭。壇一雄さんの「火宅の人」という小説がありますがまさに火宅の本家はうちでしょう、という感じ。例えるなら、ゴッホのような人が家にいるようなんです。大変そうでしょう?ちょっと目を離すと耳をちょんぎっちゃったり自殺しちゃったりするんだから!・・それはゴッホのことですけど。でもゴッホよりひどいかもしれない。父の場合。もう、これだけは言葉で言っても絶対にわかってもらえないくらいものすごい人なんです。紙一重、と言いますよね。それです。当時の声優の世界では父のことは知れ渡っていて私もその世界で端くれとして仕事をさせていただいていますが本当に、なんとも、しんどかったです。父のことはいずれ本にでも書きたいと思います。今はまだこれからどうなるのかもわからないので。これまでなんてどうってことなかったってくらいものすごい展開になっちゃうかもしれないし(笑&汗)。で、ともあれ以前なら父がテレビに居る状態が普通の状態だったのでわざわざ見ようとかいうこともなかったけど最近は自称引退ということだしバラエティーに出るのは珍しいということでちょっと楽しみでした。ところが母も妹も私もなぜか勘違いして前の週に見てしまい出てこなかったので、これはお倉入りかなと思って見逃してしまったのです。全く残念でした。話しによると顔出しはNGで携帯電話でちょっと力石徹の声を出したってことなんですが。よいこの濱口くんが交渉担当だったそうです。濱口くんは0円生活でうつぼを食べたりしてるのが好きなのでちょっと嬉しいです。きっと父は濱口くんのことなんか知らないんだろうな。番組のADさんかなんかだと思ってるね。・・・まあとにかく、本当にものすごい人を父に持って私の半生は、自分のDNAとの戦いに終始してしまいました。今でも、例えば演技のレッスンで教えていたりするとものすごくメラメラと細胞に火がついていく感じがして終わっても頭の中で2日くらいいろんなことがグルグル回ってたりして興奮がやまないのとかが父の激しい躁鬱病の感じの片鱗を自分に感じてふと恐くなることがあります。(昨日とか)本当に、演技、のこととかになると寝食だのなんだのをうっちゃってしまいそうで。そう言うと必ず、「いいじゃない、好きなことがあって・・」みたいなことを言われるけどそれは、限度を持たない人の恐ろしさを知らないから言えるんですょ。限度を持たない人の遺伝子を持たされてる恐さは同じ遺伝子の人にしか絶対にわからないと思います。才能、とか、情熱、みたいなものに人はあこがれて生きるのかもしれないけどあらかじめ持たされて(あえて言いますが)それに翻弄されてめちゃめちゃになってる家族で育ったものはそれをいかにセーブして生きるかがテーマでそれは、なかなか、本当に大変です。子供のころに母から「あんたたちはお父さんの血を引いてるから○チガイだ!」みたいなことを言われるのが何より辛かった。弟は今でも精神病で苦しんでいるし私と妹は、正常でいること誰が見ても「普通」でいなければならない、と極度に緊張して生きてきたと思います。自然に、個性的にのびのびと生きて来られたらどんなにかもっと輝いて生きてこられただろうと思うこともある。でも、これが、私の人生なんだと思います。今私はかなり、しあわせですが妹にも安堵して伸びやかに自分を生きいてほしい。弟にも、生きていてよかったと思えるときが来てほしい。私の切なる願い。
2008.02.03
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