イノベーターの条件/ドラッカー

イノベーター

イノベーターの条件―社会の絆をいかに創造するか
はじめて読むドラッカー (社会編)

P・F・ドラッカー著



感想:
「はじめて読むドラッカー」3部作の社会編。「社会編」と名づけられているとおり、すべての組織、人間の行動の基盤となる社会について論じた本。特にここで論じられているのは、社会の変化についてである。そのため、この本では歴史についての論考に多くが割かれている。社会の変化としての歴史、政治の編かとしての歴史である。ドラッカーが歴史を語るのはまさに現在が変化の時代であるからであり、それまでの時代と断絶した歴史の時代であるからである。

「未来は予測できない」とドラッカーは繰り返し言っている。ポスト資本主義社会などといわれ、資本主義からも、共産主義からも断絶し、それらの主義主張が役立たずになってしまっている現在において、「社会の絆」を確立するための決定的論説、主張は存在しない。だが、来るべき未来を予測できないわれわれにはそれに変わる主張をいますぐこの場で望むのは不可能である。かといって、われわれは過ぎ去った過去の回復を望むべきではなく、むしろ、現在の問題をひとつひとつ解決していく以外に手立てはない。「現在の問題こそ、最優先して取り組むべきである。なぜならば、それらの問題に取り組むこちによって初めて、迫りくる新しい問題に取り組むうえで必要とされる社会的な一体性、機能する経済、能力のある政府を手にすることができるからである」とドラッカーは言っている。現在を理解し、そこにイノベーションをもたらす具体的な変革(問題解決)を行わない限り、未来を機能させることはできない。むろん、それを行うための唯一の解決策、答えなどは存在しない。すべての問題に個別的な解決を行なって、問題を取り除く以外に、未来の統一の手立てすら見つけることは不可能だということこそ、ドラッカーがこの本を通じて言っていることのように思う。


点数:
おすすめ度   ★★★☆☆
わかりやすさ  ★★★★☆
役立ち度    ★★★☆☆



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