ペトラプト・パルテプト

まきまき / その3

まきますか? まきませんか? / その3






開封してしまった !!



もうこれ以上は何もかも勘弁してほしいのに…。





「 …って、なにやってんだ! 俺は!」



右手が何かの誘惑に負けたかのように動いてしまった。

ますます寝ぼけてきているのかもしれない。




意外と夢の中だったりして。


で、気づいたらキーボードの上に頭乗っけてて、スズメかなんかがチュンチュンって鳴いてて

朝の光がやんわりと差し込んでて…。



(いやいや、ここは現実に直視しないと…)


文字通り夢の中に引き寄せられるところだった。




「あっ! でも…、なんともない…。」



ただ開いただけって感じ。



なんかウィルスが出てきて画面がゴチャゴチャと、ってことはなかった。


静かなままのモニターに裏切られたような気がした。


それが一番なのに。






それに、てっきり予想していた意味不明の外国語とかではなく、すごく明らかな日本語。









たった一行、「  まきますか    まきませんか  」の文字。




確かにファイルサイズが小さいはずだ。これだけしか書いてない。

(ほかに説明はねぇのかよ。これじゃただのいたずらメールにもなんねぇじゃん。)


巻く・撒く・蒔く・播く・幕・膜…。

何気に「まく」という文字の意味を考えている。


(まいたらどうなるんだ? まかなければどうなるんだ?)




(やはり撒くのか? ウィルスをバラバラと?)




(「ま・きますか」ならどうだ。「魔」が来るのか?)




(「薪・増すか」というのも考えられる。日本語ほど奥が深いものはない。)




だいたい、ひらがなであるだけに色んな風にとれる。やはり「巻く」か「撒く」であろう。




残りのビールをぐいっと飲み干す。だんだん考えるのが馬鹿らしくなってきた。


「んん!?」


マウスで文字の上をなぞろうとしたとき、あることに気がついた。





てっきりリンクでも貼ってるのかと思ったそれは何もなかった。



つまりただのメッセージだ。


「し、心配させるなよ。ほんとにウィルスでもなんでもないじゃん。」


急激に押し寄せる安堵と空虚感。



(ふんっ。あほらしー。)



お馬鹿なことに時間が費やされたことに少々むかついた。


「そんなにまいてほしけりゃ、いくらだってまいてやるよ!」



怒りの矛先は当然その言葉。



「ほ~ら、まけ!まけ!まけ!」



マウスをぐるぐると回し、


憂さ晴らしのように何回も何回も円を描き、


「まきますか」の文字の上を矢印が回る。



その文字のまわりにマウスポインタの軌跡が残像になって残る。




うっすらと軌跡が意思を伝えるかのように…。








to be continue




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