私の人生論 (思考が運命になる)

私の人生論 (思考が運命になる)

2019年01月28日
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カテゴリ: 千の朝


 戦後の朝鮮半島への政策についてのメモを作成し、
 閣議にかけた。

 そのメモは四つの選択肢を上げ、かつその欠点を指摘したもので、
 彼がいかに優れた現実感覚を持っていたかを示している。

 すなわち、
 (甲)戦勝後も、朝鮮に一切干渉せず、朝鮮の問題は朝鮮に委ねる。

 (乙)朝鮮を名目上はともかく、実質は日本の保護国とする。

 (丙)日清両国が共同で朝鮮の独立を保証する。



  この四案のうち、
 陸奥は丙案は始めから現実性に欠けると思っていたようである。

 というのは、清国は朝鮮を属邦とみなしており、
 そのため日清戦争前の日清交渉はまるで進展しなかった。

 つまり、日清の主張が余りにも次元を異にするものであるので、
 日清共同の保護は始めから無理な話なのであった。

 丁案には陸奥は多少の魅力を感じていたらしい。

 しかし、彼の鋭い眼は
 それもまた現実性を欠くものであることを見逃さなかった。

 というのは、朝鮮にもっとも利害を有するのは日本と清国であって、
 ヨーロッパ列強はそれと真剣にかかわるつもりがない。


 また日本国民が憤激するであろう。

 それに陸奥は
 そうした国々による保証が有名無実と思っていたと考えられる。

 こうして、いわば国際的なしくみを作って
 朝鮮半島を安定させることはできない。



 そのうち、陸奥は甲案、
 すなわち不干渉の方がまだましだと思っていた節がある。

 しかし、甲案に対しては、
 それなら何故戦争をしたのかという批判が出るし、
 また、日清両国が
 やがて朝鮮問題をめぐって戦うことはまず避けられないから、
 全体として今回の戦争はほとんど徒労に帰するし、
 児戯に終わってしまう。

 こうして、戦争をした以上日本は乙案の方向に進むことになったが、
 それが大陸への日本の介入の第一歩となってしまったことは、
 だれでも知っている。

 その悲劇の原因となった状況は、
 朝鮮半島において国際的な取り決めが不可能だったことにある。

「世界史の中から考える」 高坂正堯 新潮選書





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最終更新日  2019年02月15日 05時52分29秒
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