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2013年05月21日
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薄暗い室内のなかではそれをはかり知ることはできなかった
壁につけられたろうそくの灯りだけが、ゆらりゆらりとあたりの様子をうつしだし、薬品棚とそこに置かれたビンを妖しく照らししている。よくは見えないが奥の方に置いてあるビンの中身は、どうみても動物の体の一部ではないだろうか……。
どこからともなく匂うツーンとした刺激臭は、この部屋にある何十という種類の薬草のためか、それともカビが侵食しているためかは、薄暗い室内のなかではそれをはかり知ることはできなかった。
部屋の奥から、影がぬっと姿を現した。
肩でそろえられた少女の黒髪がびくりとゆれる。
少女の座っていた三脚のイスが大きく音をたてた。
奥から出てきた影は、この部屋の住人。
黒いローブをすっぽりとかぶったこの部屋の主は、少女のむかいのイスに腰を下ろした。
ふうと大きくため息をつく。

「も、申し訳ありません。ですが、その、本人がここにいらっしゃるととても目立ちますので……」
目の前にいるこの老婆の機嫌をそこねないよう、少女は言葉を選びながら答えた。
老婆の手の内にある小瓶は、その部屋にはにつかわしくないほどに繊細なつくりで、わずかな灯りを受けてキラキラと光を反射している。これがあるのがこの部屋でなかったのなら、香水の瓶か化粧水かと見まごうほどだ。
「それと、この薬は飲んでから効果がでるまでに時間がかかるからね。薬っていうのはね、飲んでから効果がでるまでに時間がかかるものなのさ。十分体にまわって、ここに到達するまでにね」
ヒヒヒと笑いながら、ぬっと伸びた長い爪が少女の心臓部に押し当てられる。
鋭い指先を服越しに感じ、少女の額から汗が一筋つたい落ちた。
「どのくらい、かかるのでしょうか」
カラカラに干上がった喉から、かすれた声で少女がたずねる。
「効果が出る時間は個人差があるから、一概には言えないね。ほんの一瞬かもしれないし、かなりの時間を要する人間もいるだろう。その時間ずっと一緒にいれれば成功するんじゃないかい」
数時間の間、ずっと……。 ビグレックス
それはかなり厳しい条件なのではないだろうか。

「失敗を恐れて使わないのも一つの選択だよ」
そのほうが、相手のためだしねと言葉を続ける。
「だが、もし成功すれば……」
少女から指を離し、小瓶を机の上におく。
静まり返った部屋の中に、コトリという音がやけに大きく響いた

五便宝





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最終更新日  2013年05月21日 10時19分35秒
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