Cat Tail

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SS-バカップルの日常 冬・手袋編

バカップルの日常 冬・手袋編

 今年のフェアリィの冬は例年以上の寒さだ。地上の雪も半端ではないほど降り積もっている。
 地下都市とはいえ全てに空調がきいているわけではないので戦隊区からモノレールの駅、駅から官舎までの間などは地上が寒ければそれなりの寒さになる。
 冬も深まってくるとコートを着込む姿やマフラーをする姿も見受けられるようになる。

 少佐と零も支給されたコートを着込んで飲み屋に向かう。零としては面倒くさいので普段の通勤時はいつものスカジャンなのだが少佐が一緒の時は言われるがままにマフラーまで巻いて出かけることになる。
「だいぶ寒くなってきたな」
「地上はかなりの積雪だ。また雪かきに勤しまなければな」
 そんな少佐の言葉に零はわずかに顔をしかめた。
「飛びたければやるしかないんだ」
「わかってる」
 ムスッとした顔でうなづく零の横顔を見ながら、納得した訳では無いんだろうと少佐は思う。
 コートのポケットに手を突っ込んで歩いていた零が何かに足を取られたらしく急に上体を揺らした。少佐はとっさに腕を延ばしてその体を支える。その腕に男性にしては白い手がしがみついた。
「零、手袋は?」
「持ってない」
「去年のクリスマスにプレゼントした気がするんだが」
「そうだったか?」
 こいつはこういうヤツなんだ、と頭で理解はしていても実際に目の前にすると小言の一つも言いたくなる。
「しもやけになっても知らないぞ」
「あんたには…」
「関係なくないぞ。体調管理をきちんと出来ないならば飛ばせるわけにはいかないからな」
 零は少佐に返す言葉もなく抱き留められた腕から逃げ出そうとした。しかし少佐にがっちりと手首を掴まれていて逃げ出すことはかなわなかった。
「離せよ」
「わかったからちょっと待て。逃げるなよ」
 そう言うと自分がしていた手袋をはずすと零の手にはめた。
「ちょっと大きいけどな。無いよりはましだろう」
 零の手にはめられた手袋は確かに零にはちょっと大きくて指の先が余る。そして少佐の体温を残していてまだ暖かかった。
「あんたが寒いだろう」
 そう言って手袋を外そうとする零の手に自分の手を重ねて止めさせる。
「気にするな。おれはしもやけになろうがあかぎれが出来ようが仕事に影響はないからな」
「でも…」
 なお納得がいかないのかいいよどむ零に少佐はにこりと微笑みかけた。
「お前がどうしても気になるのならこうしよう」
 少佐は零の右手の手袋を取り自分の右手にはめると、手袋をしていない零の右手と自分の左手を繋ぎ合わせて自分のコートの左ポケットに入れた。
「離せ、ジャック!」
「大丈夫、誰も見ていないさ」
 まるでカップルがするような行為に夜目にもわかるほど顔を赤くした零が右手をポケットから引き抜こうとするのだが少佐は一向に動じなかった。
「こうすればお前もおれも暖かいだろう?」
 ニヤリと笑った少佐の様子に確信犯の笑みを見た零は諦めともとれるようなため息を一つついた。


コメント
ASKAのアルバム「NEVER END」の「you & me」という曲から思いついた話です。
♪~たとえば手袋を分けあってみる 温もりそびれたもう片方の手は 繋いで 繋いで 繋いで~♪
こっぱずかしい話だなぁ。でもバカップルシリーズ(シリーズと言うほど書いてないだろう…)だからいっか(^-^)
もちろん誰も見ていないわけはなく翌日にはしっかり話が広がっていることでしょう(^-^)


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