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Cat Tail
SS-バカップルの日常 バレンタイン編
バカップルの日常 バレンタイン編
コンコンと診察室のドアがノックされる音にフォス大尉はカルテに落としていた視線をドアに向けた。
「ブッカーだが」
ドア越しにかけられた訪問者の声に診察中の患者がわずかに反応したのを視線の片隅にとらえたフォス大尉はその声の主を迎え入れるべくドアへと足を向けた。
「どうぞお入り下さい」
ドアを開けて入室をそくすと、書類ファイルを手にしたブッカー少佐が室内にいた零に目を留めた。零はフォス大尉のカウンセリングを受けている最中だった。
「書類を届けに来たんだが、診察中のようだな。邪魔したか?」
「良いんです。中尉の集中力も切れてきたようなので、ちょうど休憩にしようと思っていたところだったんです」
零はといえばやる気がなさそうに診察用の椅子に座っている。キャップを目深にかぶり手はスカジャンのポケットに突っ込んだままだ。
ブッカー少佐はいつもと変わらぬその姿を見て苦笑する。
「どうぞ少佐、お茶でもいかがですか」
フォス大尉が来客用に用意されている椅子を少佐に勧めた。
「すまないな、大尉」
「いいえ、中尉はコーヒーでいいのよね」
零はフォス大尉の問いかけにコクリと頷いた。
「まったく…返事くらいしろよ」
それでも無視しないだけマシになったか。そう思いながらも、少佐は何も言わずに簡易キッチンに向かったフォス大尉の背中を見送りながらため息をつく。
「…いつまでカウンセリングを受けなくてはならないんだ」
「大尉が良いと言うまでだな」
零がカウンセリングを嫌がっているのはわかるのだが、こればかりは少佐だけの判断で中止はできない。
「受けなくても飛ぶのになんの支障もない」
「それを決めるのはお前じゃない」
「きちんと任務をこなしているだろう」
「そうだな、だが今後もそうだとは限らん。そう懸念してしまう程の状態だったんだ、お前は」
そう言われてしまうと零はむっつりと黙ってしまうしかない。
まもなくフォス大尉はマグカップをトレイに載せて診察室に戻ってくると少佐にカップを差し出した。
「どうぞ少佐、中尉のはこちらよ」
零の愛想のない態度にすっかり慣れっこになったらしいフォス大尉は零にカップを手渡した。
「わざわざ申し訳ありませんでした、少佐。こちらから取りに伺いましたのに」
「クーリィ准将に書類を届ける用があったんでな、ついでに持ってきた」
「ありがとうございます」
預かった書類を確認しながら大尉が礼を言うと、少佐は大したことじゃないさと苦笑する。
「そういえば少佐、朝からオフィスに女性隊員達が大挙して押しかけていたようですけど」
「そうだな」
フォス大尉の問い掛けにブッカー少佐は思わず苦笑いがもれてしまう。
「中尉は貰わなかったの?」
「何を?」
フォス大尉の問い掛けの意味がわからなくてわずかに首をかしげる。
「中尉には興味のないことだと思うが」
零の反応を理解できずにいたフォス大尉は、ブッカー少佐の苦笑まじりのその言葉になるほどと納得してしまう。
「そうですね、中尉に限らずブーメラン戦士達には興味のないことなのでしょうね」
彼らブーメラン戦士には世の中では当たり前のイベントでさえ、どうでもいいことなのだ。頭でそう理解はしていてもあれだけ基地内で騒ぎになっていることでさえ興味がないのかと思うと不思議でならない。
「中尉、今日は何の日だか知っている?」
「?」
「聖バレンタインデーよ」
「ああ」
今日がその日とは気付いていなくてもバレンタインデー自体は知っているようだ、とフォス大尉は思った。
「少佐は毎年たくさん貰っているからな。オフィスが甘ったるいにおいですごいんだ」
零は思い出すだけでもうんざりだとでも言うように顔をしかめた。フォス大尉は知っているとはいっても少佐がらみでしかないのかと思ってと少々あきれた。
「無下に断るのもな。どうせ義理チョコばかりだし」
「少佐は日本通で有名ですからね。ホワイトデーにはきちんとお返しをされているんでしょう?」
「所属と氏名がわかるものだけだが」
「少佐って義理堅いですよね」
微笑みながら感心したように大尉は呟いた。
そうか?と大尉の言葉に少し照れたように微笑みかけマグカップをかたむけた。
「少佐、それ美味しいですか?」
「なんだ急に。うまいがココアじゃないな」
「ええ」
フォス大尉はしてやったりという感じでにこやかに微笑む。
「ホットチョコレートですわ」
「ホットチョコレート?」
ニュアンスはかなり違うが少佐と零の声が見事に重なった。
「中尉?」
零には珍しく感情をあらわにした声に驚いてフォス大尉は思わず彼の顔を凝視してしまった。機嫌がいい顔には見えないのは付き合いの短い大尉でもわかるほどだ。
少佐は渋い顔で天を仰いでなにごとか呟いている。
「あの…」
意外な彼等の反応に戸惑いを隠せないでいると零はいきなり椅子から立ち上がるとマグカップを大尉に押しつけるとさっさと診察室から出ていってしまった。
「おい。零!すまんな大尉」
少佐も飲みかけのホットチョコレートの入ったマグカップをやはり大尉に押しつけると、零を追い掛けて診察室を飛び出していってしまった。
少々奇をてらってみただけだったのに・・・・・・一人取り残されたフォス大尉は二つのマグカップをかかえたまま訳もわからず彼らを呆然と見送ることしか出来なかった。
ちょうど自分のオフィスの近くで零をつかまえることに成功した少佐は、無理矢理彼をオフィスに押し込んだ。
「零、さっきのは不可抗力だろう?」
少佐は自分の顔を見ようともせず背を向けている零を背中からそっと抱きしめた。
「零?」
耳元で優しくその名を呼び、スカジャンのポケットに突っ込まれたままの右手にそっと触れた。零の肩がピクリと反応を見せた。
「だが、すまなかったな。今年は一番に食ってやれなかった」
スカジャンのポケットから右手を抜き出すとその手に握られていた綺麗にラッピングされた小さな包みがカサリとわずかに音をたてた。診療室にいたときから気付いていた、いつもよりわずかに大きなふくらみ。
「まさかフォス大尉が日本式のバレンタインを知っているとは思わなかった」
「うん…」
ジャックは知らずに飲んでしまっただけだ。わかっているのだがちょっと悔しくて。拗ねているのをジャックはすっかりわかっているのだろう。包装紙をとくと中身を取り出して零の手にのひらに乗せると耳元で優しく囁いた。
「お前が食わせてくれよ」
「ジャック…」
手のひらに乗せられた包装紙の中身…一口サイズのチョコをじっと見つめ迷ったすえに自分の口の中に放り込むと、振り返り少しだけ高い位置にある少佐の肩に手をかけて口唇をあわせた。
零の口内で少し溶けたチョコを口移しで受け取った少佐は、その際に零の口唇に残ったチョコをペロリとなめるとそれよりももっと甘く囁いた。
「どんなに高級なチョコよりうまいよ」
「バカ…」
零は少佐の甘い言葉に悪態をつくがわずかに赤くした目元がその言葉を裏切っていた。
コメント
あいかわらず稚拙な文章で申し訳ありません。とりあえずUpです。
やっちまいました。某鎧アニメの同人誌が元ネタです。パロのパロ(^-^;)
どうやら毎年零からのバレンタインチョコを一番に口にしていたご様子の少佐です。一口チョコですがさすがにチ○ルチョコではないと思います。もうちょっとお高いやつかな?まぁ、少佐は零がくれればなんだっていいのでしょうけどね(^-^)
またまたバカップルな二人ですみません。それ以上に大変時期はずれですみません。せめてホワイトディにと思っていたのに~(;_;)
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