QUIET LIFE


1.Secrets of the Beehive/David Sylvian(1992)

「空高く陽は輝き、こだまする笑い声。鳥たちが古びた教会の十字架に襲いかかる。」という具合に、冒頭から独特の映像詩的な世界が一貫して展開される。シルヴィアンの抑えた低音ボーカルと、坂本龍一のバックアップによるアコースティック中心の美しすぎる楽曲の連続。間違いなく、シルヴィアンの最高傑作である。
若き日の悶々と眠れない真夏の夜など、いったい何度このアルバムを聴いたかわからない。棺桶に1枚だけCDを入れてもらうとしたら、迷わずこれをお願いしたいと思っている。









2.Drowning By Numbers[SOUND TRUCK]/Michael Nyman(1992)

現代音楽の巨匠マイケル・ナイマンによる、ピーター・グリーナウェイ監督の映画「数に溺れて」のサントラ盤。映画自体も劇場で観たがさほど面白いとは思わず、音楽もその時はあまり印象に残っていなかったのだが、ずっと後になって、ナイマンによるグリーナウェイ作品のサントラBOXセットを買ったところ、その中で最も好んでよく聴いたのがこの1枚である。
特に、10分以上に渡るラストの曲「END GAME」は、あまりのメロディーの美しさに、聴いていると思考が停止してしまい、他のことが何も手につかなくなるほどの名曲である。









3.Red House Painters/Red House Painters(1999)

ある冬の休日に、ひとりでフラリと立ち寄った雑貨屋で、偶然かかっていたアルバム。他に誰も客がいない店内に静かに流れる曲に思わず足が止まり、店員にアルバム名を教えてもらって、その足でCDショップに向かったのを覚えている。
Vo.マーク・コズレックの悲しみと諦念漂う声質と、ダウンテンポで透明感のあるアコースティックな楽曲がなんとも言えず心地良い。
アメリカのグループらしい音は残しつつも、4ADレーベルから出ている理由もよくわかる。
その後のアルバムも何枚か聴いてみたが、この1枚が圧倒的に優れている。









4.Vini Reilly/Durutti Column(1996)

英国の音楽市場の隆盛にも左右されず、独自のスタンスで淡々と活動を続けるグループ、ドゥルッティ・コラム。本作は、そのリーダーであるヴィニ・ライリー本人の名前をタイトルに冠したアルバム。
そのことからも伺えるとおり、“孤高の吟遊詩人”などと言われるヴィニのギターを中心にした極めてピュアでシンプルな音作りになっている。
日本では、彼らの楽譜なんてどこにも売っていないので、かつて秋の夜長によく耳コピーで練習をしてギターを弾いたものである。







5.CARAVAGGIO1961[SOUNDTRUCK]/Simon Fisher Turner(1987)

イギリスのデレク・ジャーマン監督の作品「カラヴァッジオ」のサントラ盤で、当時「キング・オブ・ルクセンブルグ」という架空のポップスターを演じてアルバムを出して少しだけ話題になっていた、サイモン・フィッシャー・ターナーが作曲を担当。
結局この映画は観ていないのだが、アルバムの方は、サントラというよりも映画の「音」そのままじゃないかという感じで、虫の声とか鐘の音とか人の声なんかが随所に散りばめられている。その音の上に、かろうじてハープシコードやクラシックギターのような楽器が静かに演奏されているのだが、しかしこれがなんとも美しいのだ。圧巻は最後のストリングスの一曲で、荘厳でドラマチックなこの曲を聴いていると、この世が美しく終わっていく感じで、思わず涙が出そうになる。







6.Subtle Body/Arto Lindsay(1996)

アート・リンゼイの、まるでやる気の感じられない歌声と、洗練されたゆる~いボサノバのリズムが心地よい眠気を誘う。何もする予定のない日に、部屋の中で紅茶でも飲みながら読書をするときに最適な1枚。
繰り返し聴いていた当時、良かれと思ってヒトの誕生日のプレゼントに贈ったりしたこともあるが、相手からはまったく何の反応もなかった。ま、それが正しい反応なのかも。
アルバムリリース直後のクアトロでの来日公演では、ライブ仕様にアレンジされていて全体的に結構ノリノリだったのだけど、それはそれでシビレた。







7.Super/Mathieu Boogaerts(1996)

ボサボサ頭に眠そうな風貌のフランス男、マチュー・ボガートのデビュー作。やる気のなさ加減ならこの男も負けていないが、実はあなどれない。
アコースティックギターにチープなエレクトリック・サウンドが絶妙に絡み、不思議にエレガントな音作りと、弱々しく囁くような独特のボーカルが、どうしようもなく心をとらえて離れない。
元は宅録野郎だったらしいので、微妙なハズし具合も、すべて計算しつくしてるんだろうなぁ。
持っているだけで、何故かとても幸せな気分になれる1枚。






まだまだ続く・・・



© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: