音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

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2009年11月19日
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テーマ: Jazz(2003)
カテゴリ: ジャズ
晩秋の「枯葉」 ~トランペッター編(その2)~


 前項のチェット・ベイカーに続き、今回は、現代の巨匠、ウィントン・マルサリスの「枯葉」である。念のため説明しておくと、ウィントン・マルサリスは、1961年、ニュー・オーリンズ出身のトランペット奏者で、ジャズのみならずクラシックも含め数多くのアルバムを世に送り出している。ピューリッツァー賞受賞のほか、グラミー賞ではジャズとクラシック同時受賞もしており、伝統的ジャズの現在における重要人物とされる。演奏活動以外にも、黒人の地位向上を働きかけるなど社会的にも大きな役割も担っている。

 さて、今回のウィントン・マルサリスの「枯葉」は、1987年にコロンビアから出たアルバム『スタンダード・タイム Vol. 1』に収められている。アルバム名が示すとおり、同盤はジャズのスタンダード曲の演奏をアルバムにしたもので、収録された12曲のうちの1曲が「枯葉」というわけである。

 ウィントンに対する評価は多様で、ジャズをつまらなくしたなどという批判も一方にはあるけれども、その演奏能力の高さは誰もが認めるところと言ってもいいのではないだろうか。この「枯葉」においても、そうしたウィントンの演奏の技術が忠実に反映されている。一言で述べてしまえば、"端正な"「枯葉」。テンポはあまり遅くとらず、流れるように奏でられる「枯葉」なのである。

 だからといって、"味わいのない"もしくは"あっさり味の"「枯葉」かというと、まったくそうなってはいないところが不思議である。その理由はと言うと、やはりウィントンの演奏そのものにあると感じる。上に書いたように、基本的には流れるようなトランペットの旋律なのだが、そこかしこに"溜め"がある。その"溜め"がただテンポよく突っ走るだけの演奏に終わってしまわなかった最大の理由だろう。

 加えて、途中にはウィントンのトランペットだけを目当てにしている人なら退屈してしまいそうなパートがある。それは、ピアノ・ソロから始まるソロ回しの部分である。ピアノのソロが割合に長く、演奏が進むとともに、ドラムがどんどん盛り上げていき、ピアノ演奏も激しさを増す。続いてベース・ソロではやや静かになり、この頃には曲が「枯葉」であったことなど思わず忘れそうになってしまう。ベースのソロにピアノが絡みながら、再びドラムが全体を盛り上げてゆき、トランペットも短いがソロ部分がある。そうなったところで、なかば唐突に「枯葉」のテーマに戻るのである。ある意味「枯葉」らしくない雰囲気で盛り上げていって、最後におなじみの「枯葉」を思い出させる瞬間。この部分こそが今回の「枯葉」の聴きどころだと個人的には感じる。

 以上のように、トータルで見ると、演奏能力の高さ、"溜め"を作る感性、全体の構成力、この3点セットの勝利といったところだろうか。お見事。



[収録アルバム]
Wynton Marsalis / Marsalis Standard Time Vol. 1(スタンダード・タイム Vol. 1)


録音: 1986年



(参考リンク) 晩秋の「枯葉」~トランペッター編~
その1(チェット・ベイカー) へ    その3(マイルス・デイヴィス)



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Last updated  2009年11月20日 06時32分26秒
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