音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

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2017年05月02日
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テーマ: Jazz(2003)
カテゴリ: ジャズ
マルサリスの真価を考え直す


 1961年生まれのウィントン・マルサリスは18歳でプロとしての活動を開始し、今では米国を代表するジャズ・ミュージシャンであるとともに、クラシックでも名声を確立したトランペット奏者である。現在、ジャズ・アット・リンカーン・センターの音楽監督を務めていて、演奏活動以外にも注目されることが多い。そんなウィントン・マルサリスの評価は、巷では二分されるようだ。一方で、上記のようなキャリアを称え、現代の巨匠として見なす一方で、彼がやるジャズには熱さがない、啓発活動的な部分がくどい、などの否定的評価を下す向きもある。

 これまで30を超えるアルバム(ジャズに分類されるアルバム)を出してきている彼の盤を、筆者はすべて聴いているわけでもないし、実際問題、彼の作品は気合を入れなければ聴けないものも多いような気はするのだけれども、今回は1980年代末の『ザ・マジェスティ・オブ・ザ・ブルース(The Majesty of the Blues)』を手がかりに、ウィントン・マルサリスの真価とは何なのかをちょっと考えてみたい。

 まず、3曲でトータルおよそ60分間。とりわけ、組曲形式になっている3曲目は35分間という大作なので、聴くのに疲れる。さらに、ライナーを見ると、マルサリス自身の言葉も引用しながらの何とも教条的な解説がある。おまけに日本盤では“ウィントン「THE MAJESTY OF THE BLUES」を語る!”と題されたインタヴューまで収録されている。このインタヴューの内容もなかなかくどい。ブルースとは何か、世代間のギャップとは、今後の音楽がどうなっていくべきか、といった話題が理屈っぽく述べられている。たぶん一定数の聴き手はこの辺のくどさに辟易してしまうのかもしれない。

 しかし、作品を先入観なしに聴いて見るとどうだろう。ハード・バップに代表される“古いジャズ”、あるいはビッグ・バンド的な要素、これらを巧みにというよりは、当然必要なものとして含みながら、ニューオーリンズ的でブルースの要素を多く含む演奏が繰り広げられていく。

 それもそのはず。メンバーはわざわざニューオーリンズで集めた面々をニューヨークに呼んで録音を行っている。けれども、何より面白いのは、どれも模倣ではないという風に感じさせる点である。マルサリスは何かを生き永らえさせようとするのではなく、きっと“モダン・ジャズ”や“ブルース”などの伝統に対し“死を宣告”しているのだろう。いったん既存のものを破壊し、考え直すことで、新しいものを生み出そうとする。だからこそ“模倣”ではなく(しかも“模倣”をする技術的レベルの領域ははるかに通り越えていることが前提なのは言うまでもない)、“創造”の方に偏った演奏ということになるのだろう。

 そんなことを考えるにつけ、「ジャズの死(Death of Jazz)」やら「説教(Sermon)」やらという表題や副題に惑わされてはいけない(後者は本当にセリフの“説教”なのだけど…)。小難しい解説も話半分にしておいていいのだろう。案外、ジャズという概念(マルサリスの定義とありがちな聴き手の定義がそもそも違うのだろうけれど)をいったん外し、あるいはニューオーリンズあるいはブルースという発想から聴いてみるというのもいいかもしれない。 “伝統”を踏まえつつ既成のものとはまったく違う境地を目指した、そんな盤として聴けば、従来の小難しさの印象とは違った角度から聴くことができるのかもしれない。


[収録曲]

1. The Majesty of the Blues (The Puheeman Strut)

3. The New Orleans Function
a. The Death of Jazz
b. Premature Autopsies (Sermon)
c. On the Third Day (Happy Feet Blues)


[パーソネル、録音]

The Wynton Marsalis Sextet:
Wynton Marsalis (tp)
Marcus Roberts (p)
Todd Williams (ts, ss)
Wessell Anderson (as)
Reginald Veal (b)


The New Orleans Function:
Teddy Riley (tp)
Wynton Marsalis (tp, plunger mute)
Freddie Lonzo (tb)
Michael White (cl)


1988年10月27日・28日録音。




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Last updated  2017年05月02日 20時52分08秒
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