ぼくの細道・つれづれ草

ぼくの細道・つれづれ草

2006.03.28
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Yeats in America

   (序章)

   ロスアンジェルスのダウンタウン
   「ヒット・ピット」は小さなボクシングジム
   トレーナーのフランキーは
   頑固一徹な変わり者だが
   教会のお祈りは欠かさない
   修復不能な
   家族との深い確執を引きずって
   いまだに癒え切らぬフランキー
   すでに百通をこえる
   娘への手紙は
   いつも送り返されてくる

   そんなフランキーの許に
   弟子入り志望のマギーがやってくる
   マギーは三十一歳
   女性プロボクサーとしての
   最後のチャンスに賭けている
   ミズーリの田舎出の彼女に
   幼い頃死に別れた父は
   思い出のなかで
   いまも語りかけてくれるが
   母と弟と妹は怠け者
   トレーラーハウス住まいの
   ホワイト・トラッシュだ

   夢を託せるものはボクシングしかない
   己の存在証明であるかのように
   ジムの片隅で練習に打ち込むマギーに
   フランキーはついに心を揺り動かされる

   フランキーとマギーの
   リング上の熱いコラボレーションが始まった
     初試合はKO勝
     それからというもの
     連続十二試合KO勝

   ついに英国チャンピオンとなり
   二人はロンドンに乗り込む
   もともとフランキーはアイルランド移民
   ジムのなかででも
   アイルランドの詩人イェーツの
   詩集を手放すことなく愛読する
   生粋の愛蘭土魂を持った男だ
   こんなフランキーだから
   ゲール語の「MO CUISHLE」と
   ケルト文字で刺繍したリングガウンを
   この日のために新調し
   マギーにプレゼントしたのだった
   モ・クシュラは(私の血)という意味だった(つづく)


   (註)
      イェーツ(William Butler Yeats)
      アイルランドの詩人、劇作家。ダブリン
      に生まれ美術学校に進むが、詩人になる
      決心をし退学。1887年、家族ととも
      にロンドンに移り、世紀末文化のただな
      かに身を投ずる。アイルランド伝説に題
      材を得た劇作とあいまって、詩人として
      も「緑の兜」(1910)から「クール
      の白鳥」(1917)にいたる詩集は、
      愛、老年、死、詩の個人的主題を、社会
      的・神話的主題と自在にからませて個性
      的な声調でうたう。英語圏における20
      世紀最大の詩人の一人。23年ノーベル
      文学賞受賞。(1865~1939)      











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Last updated  2006.03.28 15:34:38
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