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『 厠(かわや)考
』
公衆便所でも
ホテルのトイレでもよい
流し残しの他人様のババは
きれいに流してから使いたい
それは
厳然と峻別されなければならない
他人様のそれと
わたしのそれは
一緒にごちゃまぜになっては困るのです
わたしのペルソナの尊厳のために
このことは非常に大事です
もし 他人様のババが
便器の端にこびりついていたら
手に触れぬよう
そっとトイレットペーパーで拭き取ります
さあ これですっきりした
厠の神様にも感謝します
これで ゆっくり排泄できます
厠の神様は
井戸神様や
竈(かまど)神様の兄弟で
一番偉い神様なのです
昔の武士は
馬上や
厠で
軍略やら
所領のことについて
想を練ったというではありませんか
それほどに 厳粛な場所なのです
ひそみに倣って
わたしは
わたしの
ささやかな
トイレ使用の
セレモニーを守ります
* トイレの詩で有名なのは、浜口国雄の「便所掃除」である。
浜口は、国鉄職員(1920~76)で、荷物輸送の専務車掌
を長く務めていた。「便所掃除」が書かれたのは、敗戦後の
混乱期にあたり、衣食足らず、礼節知らずで駅でも公衆便所
でもひどい汚しかただった。
・・・・ 便所を美しくする娘は
美しい子供をうむ といった母を思い出します
僕は男です
美しい妻に会えるかも知れません
この詩の終連は、「おおきなひろがりをもった男らしい 詠唱(アリア)です。」と詩人の茨木のり子が絶賛しています。