ぼくの細道・つれづれ草

ぼくの細道・つれづれ草

2006.06.08
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  ロボク・リンボク・フウインボク 大地の褶曲に
       原始の植物生い茂り 海にアンモナイト 湖沼
       に恐竜が跋扈する そんな季節の何万世紀を
       潜り抜け いま僕の眼前に一個のアンモナイト
       化石がある 硬い無機質の光沢は冷たく 太古
       の海の神秘を湛え そいつが突然に僕に向か
       って怨嗟の一言を吐きかけた

< おまえ 人間よ 俺さまの海をもとどおりに
         して返してくれ > 
       何と応えたらいいのだろう 僕はきっと仮想の
       世界に迷いこんだのだ これには深い寓意が
       ある とつおいつ僕は考えていた

そのころ 列島を紅に染めた あの桜前線は 
       とっくに北上していた 愛でるべき花はすでに
       なく 慈しみ深い花守はもういなかった 酷暑
       の夏を前にして 人は「美学」はいうに及ばず
       「哲学」や「理念」をもすっかり喪失していたと
       もいうが あるいはこの国には 「美学」を語
       ろうにも また「哲学」や「理念」を語ろうにも
       すでに範とする一冊のテキストすら 見つから
       なかったのやも知れぬ 人は己の内なる狂気
       を 外なる狂気に仮託して 能事足れりと信じ
       ていたのだが 一切合財をただ紅の色に呑み
       込んで 桜前線はひたすらに北上をつづけて
       列島は間違いもなく 断罪のような炎天の夏
       を迎えようとしていた

季節が過ぎ 例外もなく空白もない時空の極限
       から しらじらとした蛍光を放ち 触手を戦かし
       アンモナイトの大群が この世に甦ったとしたら
       そんな季節には 人はもはや生存していないの
       だろう 輪廻転生は 演算不能の周期でやって
       くる 仮想のレアリテの中を 人の季節の閉塞
       を突き破って






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Last updated  2006.06.08 15:13:07
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