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「イタリア旅行」あたりで終焉をつげる。
56年、フランスのジャン・ルノワール監督「恋多き女」に
出演、共演陣にはメル・ファーラー、ジャン・マレーらの名
前も見える。これは、ファンタジー・ミュージカルと銘うたれ
たルノワールの後期の作品。
<20世紀初めのパリ。ポーランドの美しい公爵夫人エレナ
(バーグマン)に惹かれる伯爵(ファーラー)と将軍(マレー)
の恋の行方。>
ジュリエット・グレコが特別出演、主題歌を歌っている。
ネオ・リアリズム・・・・さながら大地に生えた自然の樹木の
ように、自己の環境に執着し、現実の色に染めぬかれた、 それは、なまなましく、たくましいが明晰さや普遍性に欠け
ていたか。でもそれがイタリアが持つ性格でもあったろうか。
「恋多き女」は、いまや、イタリアから解放され、自由に羽 ばたくパピオンのようだった。
50年から57年まで続いたロッセリーニとの結婚生活では
一男二女があったが、58年、婚姻無効判決をうけ、同年
演劇興行主ラルス・シュミットと三度目の結婚をし、後離婚。
これに先立つ56年には「追想」でハリウッドにカムバック。
再びオスカー主演女優賞に輝いた。
『追想』 1956;アメリカ
<ロシア革命の混乱時に奇跡的に生き延びたとされる
ロマノフ王朝の皇女アナスタシアをめぐる陰謀と恋を
描いた名作。自称ロシア人のボーニン(ブリナー)は
記憶喪失のアンナ(バーグマン)をアナスタシアに仕
立て、ロシア皇帝が英国に預けておいた大金を詐取
しようとするが、いつしか二人の間に恋が芽生える。>
監督;アナトール・リトバク
出演;イングリッド・バーグマン
ユル・ブリナー
復帰後は、年齢に応じた演技の幅を見せ、74年オール・
スター共演による、アガサ・クリスティの同名推理小説の
映画化「オリエント急行殺人事件」ではアカデミー助演女
優賞を受賞した。
『オリエント急行殺人事件』 1974;アメリカ
監督;シドニー・ルメット
出演;イングリッド・バーグマン
アルバート・フィニー
ローレン・バコール
ショーン・コネリー
アンソニー・パーキンス
リチャード・ウイドマーク
この映画は、第一級の優雅なエンタテイメント作品として,
世界的に大ヒットした。
クリスティ作品を長らく愛読しているエリザベス女王らが
出席した有料試写会と、その後のパーティーで、主賓の
クリスティは子供のように興奮してよろこんでいたという。
そして、これが、クリスティが公の催しに出席した最後に
なったのだった。
60年代に入ってからは、バーグマンは舞台出演にも積
極的で、65年の <A Month in the Country>は
アメリカ、ヨーロッパで大ヒットを記録。
82年のTVM<A Woman Called Golda>でイスラ
エルのゴルダ首相を演じてエミー賞を受賞。
この作品を最後に82年8月、67歳の誕生日にガンの
ため死去した。
スターの座にありながら、常に自らの可能性をつづける演技
への情熱は、美しいだけの女優とは違う生命感として観客の
心を打ち続けた。
二十世紀なかごろの とある日の日曜日の午前
愛されるということは 人生最大の驚愕である
かれは走る
かれは走る
そして皮膚の裏側のような海面のうえに かれは
かれの死後に流れるであろう音楽をきく
(清岡卓行 <子守唄のための太鼓>)
バーグマンの墓碑銘には、生前の希望により
『生の最後まで演技した』と記されている。