ぼくの細道・つれづれ草

ぼくの細道・つれづれ草

2012.09.26
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
    承前

   棹秤(さおばかり)の把っ手を支点とし
   棹の一端の鉤に
   大きな鱈をぶら下げると
   子を孕む鱈の腹は
   ぷっくりと膨れて弾けるくらいである
   秤の分銅を移動し
   水平にバランスのとれたとき その目盛りが
   すなわち鱈の重さ(目方)だ



   雌の鱈は卵(眞子=たらこ)
   雄の鱈は白子を内臓している

   大型の鱈ともなれば
   ずっしりと重い
   だから鰓から口へと
   わら縄を通してぶら下げて持ち帰ったものだ

   「惻隠の情」という言葉がある
   いたわしく思う
   あわれみのこころである
   もともと武士道において使われた言葉だろうから
   魚に対して言うのは

   しかし
   幼年期の
   あの雪の日の情景を思うとき
   売られゆく
   一尾の母鱈に

   もののあわれを感じていたことは間違いない

               (つづく)






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2012.09.27 16:06:35
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: