アオイネイロ

September 28, 2009
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カテゴリ: 小説
「檻糸、牢獄」
千歳が小さな声でそう呟いた瞬間、トロルの周りに地面から突き出た銀糸が覆った。
そして地面の下に潜り込んだ銀糸は、全て千歳の指へと繋がっている。
「ガアアアァァァ」
低く、地の底から響くような唸り声を上げてトロルが棍棒を振り回した。

「ち、千歳……」
「だい、じょーぶ」

うろたえる綺砂を振り返って、千歳がこっくりと頷いてみせる。
「かのん、は……?」

千歳の問いかけに、俯きがちの嘩音がそう言う。
「グガアァァァッ!!」
トロルが叫んで、銀糸を叩き切ろうと棍棒を振り上げた瞬間、
千歳がくいと指を動かした。
地面から銀糸が姿を現し、そしてそのまま今度は棍棒に巻き付く。
「武器破壊、狂騒曲(ボレロ)」
千歳のその言葉と共に、トロルの持っていた棍棒が細切れになってバラバラと地面へ落ちた。
トロルが、先の無くなった棍棒を千歳に振り下ろしたが、勿論それが千歳に当たる事は無い。

「グ、ガ……?」
「いく、よ。――聖譚曲(オラトリオ)」

何が起こったのか分かっていないのか、先の無くなった武器を見つめるトロルに、千歳が再び指先を向けるとそう言った。





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Last updated  September 28, 2009 09:40:39 PM
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