アオイネイロ

March 18, 2010
XML
カテゴリ: 小説
「紅亜様。お帰りなさいませっ!」
たたたっと走りよって来たのは、城の中ではとても珍しく紅亜を好いていてくれているメイド。
早くに両親を亡くし、路頭に迷っていた所を紅亜が拾ったのだ。
それからずっと、紅亜の傍で働いていた。
「ああ、ただいまハルカ」
「明日は早いですから、すぐに食事の用意を致しますねっ」
笑顔でそう言ったハルカはぱたぱたと走って行ってしまう。
「じゃあ、アタシは部屋に戻る」
振り返って白露にそう言って、紅亜はすたすたと部屋へと戻った。

「さて、明日から仕事全部終わらせれば……ギリギリアーネにも行けるかな」
ため息をつきつつ、机へと向かう。
「明日は議会に出席して………ああ、夜のうちに書類に目を通さないと。明後日は町に出て……」
仕事の確認をしながら一冊のノートへとペンを走らせる。
と、コンコンとドアがノックされた。
「入りなさい」
短くそう言えば、ハルカと白露が共に入ってきた。
「お食事です。来る途中、運ぶのを白露さんに手伝って頂きました」
にこにこと笑顔でやってくるハルカと、後ろでいつものように表情の少ない顔で立っている白露。

「ありがとう、ハルカ。あと、仕事場の書類をこの部屋に運んでもらっても良い?」
「はい! 喜んで!!」


食事もそのままなのは、いつもの事なので気にしない。
ひとつの事に集中すると、今までやっていた事を忘れるのだ。
少し大きめのテーブルの方に食事を並べていると、白露がそれをすぐに手伝う。
と、頭の上に一枚の布が掛けられた。
「………?」

きょとんとしている紅亜に向かって、白露がそう言う。
紅亜はというと、タオルを手にしながらもそもそと礼のような言葉を小さく述べた。
「白露、年は?」
「は? えと、今年で23になります」
突然の紅亜の問いかけに少し面食らってから、白露はそう答えた。
23といえば、今の紅亜からは5歳離れている。
「ふうん。若く見える」
ぽつりとそんな感想を漏らせば、「よく言われます」と苦笑された。

「明日は私は付いていない方が宜しいですか?」
「………いや、別に居ても良い」

食事をしている最中にふとかけられた問いに、紅亜は少し考えた後そう答える。
「議会と言っても名だけ。取り決める事等何も無いだろうからね」
そう呟いて、最後の一口を口に放り込むと皿を片付け出す。
白露も無言でそれを手伝った。
そしてそれらが終わった頃に、部屋の扉が騒々しく開いた。
「紅亜様! 書類、全部持ってきました!!」
「そう。ご苦労様」
笑顔のハルカに、紅亜も軽く微笑む。
するとハルカは嬉しそうに顔を輝かせた。
「あっ、お皿。片付けますね」
思い出したようにそう言ったハルカは、台車を押して部屋を出て行く。
それを見送ってから、紅亜は小さい方の机へと戻り書類を取り出して重ねた。
大量にある書類一枚一枚に目を通し、そしてそれにサインをしていく。
白露はというと後ろでその様子を黙ったまま見つめていた。




国の王様の仕事とか
何するんだろ……?





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  March 18, 2010 07:43:40 PM
コメント(0) | コメントを書く
[小説] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: