アオイネイロ

July 25, 2011
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カテゴリ: 小説



押し殺した低い声で、彼はそれだけ言うと壁から奥へと目を光らせた。
「あ、あの……わたし」
「愚図愚図するな。とろい奴は好かん」
掠れた声で話しかけようとした瞬間、被さるように鋭い声。
「いいか……、今だっ!」
鋭い声と共に、彼は男共の前へと躍り出た。
瞬間、私は弾かれたように彼に背を向けて走り出す。
刀の擦れ合う音と共に、卑下た男共の叫び声が混じる。





「疾風、似合ってるよ」
「………この服は以外に動き易いんだな」
和装に身を包んだ疾風が、感心したような声でそう言う。
「そうだねー。袴だし動き易いかもね、戦いでは袖がちょっと邪魔かな?」
「武器によるケド、疾風が今腰に差してる刀ならまだ平気なんじゃないの?」
藾琉の言葉に、紅亜がにやにやと笑いながらそう返す。
「そう、だな。疾風、刀で大丈夫だったか? 大剣みたいな大きい剣は、流石に専門店に行かないと売ってなくて」
「いや、問題無い。少し軽すぎるが、その分動きが速くなる」
心配そうに聞いてくる葵に、疾風は刀の鞘に手をかけながらそう答えた。
「その言い方だと、もう試したのかい?」

沙ゞの問いかけに、疾風が苦虫を噛み潰したような顔でそう返す。
「ほほう、珍しいですな。疾風はそういうの以外にさっさと逃げてくるのに、強い相手だったんですかぃ?」
「いや、雑魚だ」
るかの問いに疾風が一言そう言った時、丁度部屋のドアが叩かれた。
「お客さんに、用事があるって人が来たわよ」

「あ、はーい!」
「誰かな、かなぁ?」
時歌がベットからぴょんと飛び下りてドアへと向かう。
「この町には、知り合いなんて居ないと思ったけど……」
そう言いながら皆は下へと降りて行った。

そこに居たのは、一人の女性。
「………お前は」
「疾風、知り合いなのぉ~?」
疾風が軽く目を見張ったのを見て、苺夢がそう尋ねる。
「あ、昨晩は……ありがとうございました」
女性は疾風を目にとめると、いそいそと近づいてきて深々と礼をした。





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Last updated  July 25, 2011 11:59:52 PM
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