アオイネイロ

June 14, 2013
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カテゴリ: 空狐-karagitune-
「ねえねえ。この町で一番安い宿ってどこ?」
ソラがにこにことした表情で、本日二回目のそのセリフを言う。
相手は、今しがた通りすがりにソラとぶつかった男性。
中性的な顔立ちをした、楓とそう変わらないであろう年の青年だった。
ぶつかったソラがおかまいなしにそう尋ねるのを聞いて、思わず慌てたのは楓の方だ。
いくら世間に疎い楓でも、質問よりも先に軽く謝ることの方が先決であろうと分かる。
しかもソラの口調は、普段と変わり映えしない非常に砕けたものだ。
怒られても不思議はないだろう。

けれど青年は気を悪くした風もなく、ソラと楓を見つめて

と教えてくれた。

「そっかー、じゃあそこにしようか。ねぇ、僕達をそこに案内してくれないかい?」
こてりと首を傾げて、ソラは青年に向かってそう言った。
「ふはっ、変なヤツだな。別に構わねぇぜ」
噴き出したように笑って、けれど青年はそう言ってくるりと踵を返すと「着いてきな」と言って歩き出す。
ソラも楓も、静かにそれに従った。
着いたのは小さいながらにしっかりとした造りの宿だった。
猫が毛糸玉にじゃれついている看板が印象的な、可愛らしい宿だ。
「ここだな。宿は二階で、一階にはメシ屋もあるぞ」
「ご飯!? やったぁ、僕もうお腹ペコペコだよ。かえで、はやく中に入ろう」
青年の説明に、ソラは上機嫌で中に入っていく。

既に食べ物で頭がいっぱいであろうソラに変わって、楓が青年に小さくお辞儀をした。

「ああ。気にすんなって。まあ、また会う事があったら、そん時ゃヨロシクな」

にやり、と口端を釣り上げて笑った青年は、そのまま人ごみの中へと姿を消していった。

その姿をぼうっと見送った後、楓も慌ててソラを追って宿の中に入った。
既に宿の手続きを済ませていたらしいソラが「二階の端っこの部屋があいてるって」と言って朗らかに笑った。


楓はその時、ふと、何とはなしにそう思いながら、

ソラの後ろをついて部屋に向かった。





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Last updated  June 14, 2013 10:19:33 PM
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(´・ω・’っ)ぱたぱたοοο  
め-ぷりんο さん
ゅかりぃん⊂(´・ω・`)⊃

め-ぷりんοきたょぉ⊂(´・ω・`)⊃


そらくん

ぃつもにこにこ

ぁかるぃこだねぇ⊂(´・ω・`)⊃

かぇでちゃんしっかりしてるこだから

ぁぃしょぉぴたぁりだねぇ⊂(*´・ω・`*)⊃


め-ぷりんο

|・ω・`)⊃ちょぴぃりずつ

ぁたらちぃきゃらくたぁでてきてて

ゎくゎくしてきたょぉ⊂(*´・ω・`*)⊃

もちかちてなかまなるのかなぁ?|・ω・`*)⊃◎


ぁとねぇ

にゃんこけぃとだまでぁそんでるかんばんぁるけど

にゃんこけぃとだまでぁそんでるみるくのぉょぉふく

め-ぷりんοもってるょぉ|・ω・`*)⊃こしょぉり



ぢゃぁまたねぇω
(´・ω・’っ)ぱたぱたοοο


(August 16, 2013 12:02:56 PM)

>めーぷりん  
めーぷりんやっほぉ*

うん。ソラ君と楓ちゃん、セットでしっくりきてる感じだよ(笑)

これから段々展開とか進めていく感じだから、楽しみにしててね♪

毛糸玉のお洋服持ってるの?
どこのお店のお洋服かな(*・v・*)?
可愛い感じの看板にしようと思って書いたから、めーぷりんのお洋服も可愛いんだろうなぁ><v
(August 26, 2013 05:30:47 PM)

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