Serendipity

2020.03.02
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カテゴリ: つぶやき
今から2年前、緑内障という、視野が徐々に欠けていく病気を患っていることがわかりました。

その時私は39歳。

平均寿命まで生きられるとしたらまだ半分ぐらいしか生きていない私の左目は、もうすでに4分の1近くの視野が欠けていたのでした。(幸い右目はまだ初期段階であるとのことでしたが……。)

緑内障は、失った視野を取り戻すことができません――つまり治すことができない病気で、これから先の進行を遅らせるための治療しかできない病気なのです。

――いつか失明するのかな?

そう思ったとき、怖くて悲しくて悔しかった。

なんで私が?

私は20代半ばから別の病気の治療も続けていて、その病気だけでも、私にとっては十分に厄介な足かせだったのです。

そのうえ今度は、視力まで奪われるの?





それから1年半ぐらいの間、私はずっと落ち込んでいました。

ネットや本で緑内障について調べては、なんら良い情報を得ることができずにがっかりする……といったことを繰り返していました。

家族に繰り返し愚痴を言って煩わせたり。

ある時は泣き、またある時は寝込んでしまったり。

あの頃の自分は、魂が枯渇していたような気がします。

なんとか、どうにか毎日を生き延びていたような状態でした。


・・・・・・


その頃、夜眠りにつく前によく思ったんです。

このまま目を覚ますことなく、今夜ですべてが終わってくれればいいのにな、と。

……でも、夜は明け、朝は来て、私はいつも通りに目を覚まし、憂鬱な一日がまた始まるのでした。


・・・・・・




どうすれば死ねるかな、と。


・・・・・・


そして、ドラマやニュースで見聞きした自殺の方法を思い出しました。

よくあるパターンは、お風呂場で手首を切ったり、どこかにロープをぶらさげて首を吊ったり……とかだろうなあ。

……しかしねぇ。



そうしたら、その家族はその光景をそれこそ一生忘れられず、一生苦しみ続けることになるよね。

そんなの残酷すぎる。

却下。


・・・・・・


それでは、家の外ではどうだろうか。

よく聞くのは、高いビルから飛び降りる、電車に飛び込む……とかだよなあ。

……しかしねぇ。

これは社会に迷惑をかけすぎるだろう。

高いビルから飛び降りても、電車に飛び込んでも、その後始末をすることになる人たちのご苦労を考えたら……

いかんいかん、そんなことはできない。

それに、電車のダイヤを乱したりすると、遺族に莫大な請求が行くと聞いたこともある。

だめだ、これも却下。


・・・・・・


それでは、行方不明になってから決行、というのはどうだろうか。

東尋坊や富士の樹海に迷い込めば、消えるようにこの世からおさらばできるかもしれない。

……しかしねぇ。

これも周りに相当な迷惑をかけるよなぁ。

まず、家族は絶対に、私のことを行方不明者として捜索願を出すに違いない。

そうなったら、今度は警察の方々に余計な仕事を増やしてしまう。

家族だって、私が見つかるまで一生探し続ける日々が続くだろう……。

だめだ、却下。


・・・・・・


だめだだめだだめだ、どれもだめ!

人に迷惑をかけずに死ぬのなんて無理!

だって、私は自分一人で生きているわけじゃないから。

私が消えたら、そのことで心に傷を負う人や、私のために嫌な仕事をしなければならない人も出てくる。

自分が人生から「いち抜けた!」する方法はいろいろあるかもしれないけど、でも、やっぱり絶対にダメ。

……そう思いました。


・・・・・・


私は、人というのは、負けそうなときにこそ、いちばん試されているんだと思います。

負けそうなとき、どういうことを思い、行動するか。

それが、私やあなたという人間の本質だと思うんです。


・・・・・・


負けそうなときは、つらいですよね。

もう、どう考えたって逆転できそうにないとき。

周りを見渡せば、自分よりずーっと幸せそうでのんきそうな人たちもいて……そうすると、自分がよりいっそうみじめに思えてきたりもする。


どうしますか。

ねたみますか。

それとも、もう、こんな人生、やめちゃいますか。


・・・・・・


……私は、生きることだけは絶対にやめないでほしいと思います。

負けが見込まれる試合でも、最後までやってみようって思ってほしい。

最後までやってみて、それで、たとえやっぱり負けたとしてもいいじゃないか。

私は、あきらめないで挑み続けるその姿こそが、ものすごく強くて、人として美しいものなのだと思う。


・・・・・・


「人生あきらめなければ必ずいいことあるから!」なんて気休めは言えないけど。

私は人として生まれてきた以上、どんなに不利な状況にあっても、最後まで生き続けるのが人としての務めだと思うのです。


・・・・・・


このブログのプロフィールに、ムーミンシリーズのキャラクター、リトルミイの台詞を引用しています。


迷わないことが強さじゃなくて

怖がらないことが強さじゃなくて

泣かないことが強さじゃなくて

本当の強さって

どんなことがあっても

前をむけることでしょ。

前をね



私はこの台詞が大好きなんです。

何があっても――迷っても、怖くても、涙が出てきても……きっと前を向いて歩み続けることができるはずです。私は、人間にはそういう強さが備わっているのだと信じています……あなたにも、そして私にも。




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最終更新日  2020.03.03 23:40:03
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こんにちは!bonaと申します。

これまで翻訳業界を中心に、英語を用いていろいろな職業を経験してきました。

このブログには、それらの職業から学んだこと、好きな音楽や読んだ本などの紹介、そして日々の暮らしの中で気づいたこと・考えたことなどをつづっています。闘病中の緑内障のことも……。

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