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energizer_akira

2007.12.07

暗証番号（Ｅgoism）

(14)

カテゴリ：暗証番号

暗証番号（Ｅgoism）

その白髪でボサボサ頭の教授は
ここ２年間ずっと研究室で寝泊りして
ある研究に没頭していた。

そして、
とうとう実験に成功した。

黒くて丸い球が声を発したのだ。

「憎め！すべてを他人のせいにしろ！
世の中は弱肉強食だ！自分の事だけ考えろ！」

感じた。実際それは、真っ黒の球だから
表情は分らないのだが。

教授は、これからが本番だなと呟き、
黒球にむかって応えた。

「お前の言うとおりにしようじゃないか」

それから、毎日毎日、教授は黒球の言う通りの
感情を抱き、そしてその感情どおりに行動した。

かつての教授を知る人たちは、教授の変貌に
戸惑い、そして、嫌悪し、当然付き合いを避けた。

黒球に従った教授の感情や行動に比例して
黒球の数は増えていった。

いつしか自宅と化した研究室は
その黒球でいっぱいになった。
教授の衰退は今や誰が見ても明らかで
やがて、歩けなくなったある日、
薄れゆく意識の中で黒球たちに向かって

「お前たちは自分の事を最優先する主義だが、
その最終結果がここにある！しかと見るがいい。
つまり、その果ては自分たちの居場所を失うことを
意味しているのだ！・・・・」

教授の心臓は活動を止めた・・・。

すると、今まで威勢のよかった黒球たちも
すべて死滅していった。

この黒球こそ

そして、この教授が人生を賭けた実験の様子は
ビデオにおさめられていた。

それ以来、
このビデオを観た人たちは、必ず小我を大我に
していく道を歩むそうだ。

あなたは、もう観ただろうか？

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