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紳士になりえない男の群れ(小説)




    紳士になりえない男の群れ( 小 説 )

    電車が着いた。なんという男女の群れだ。

    その男がホーム立って見ている電車内の
    人間の姿は尋常ではない。

    9月の残暑のなかで電車にはむせかえるような
    男のそして女の吐息が充満していた。

    梅田・梅田という到着アナウンスが、ホームに響き
    終わるころドアが開き、むせかえった車内からドッと
    水があふれるごとく人の波が一斉に動き出口に殺到した。

    男も女も笑みはない。
    表情にゆとりのない顔をして突進してくる男と女を
    見ながらホームに立っていた男はあっけにとられていた。

    このホームに立っている男は、30代後半で髪は短髪である。
    顔色は浅黒い。背丈は180超はあるであろうか。
    体格もいいし見るからにりりしい顔をしている。

    薄緑色のチェック柄の半袖シャツに、クリーム色のズボン・
    白い運動靴・手には黒いボストンバックを提げていた。

    この男がホーム立つと周囲の男達がみすぼらしく見えた。
    そのホームがまるでこの男のためにあるのではないか、
    そう思えるくらいこの男には存在感があった。

    ホームの人間はこの男を除いて、まるで動物のように
    羊の群れのように、あるいは蟻のように会社だけに
    命を捧げているような人達であふれかえっていた。

    その人の波がはけるのに入れ替わって男は電車に飛び乗った。
    夜の8時頃である。車両は家路に着く男と女で混雑していた。
    どちらかといえば、男の方が幾分多い感じだ。

    背広にネクタイという姿の男が圧倒的に多い中でこの男の
    存在感は電車の中でもひときは目立つものがあった。

    男は、混んだ車内で遠目に男女の姿を注視していた。
    この男だけが生気に包まれているそんな雰囲気のする
    車内であった。

    男は、車内の氏素性も知らない男達の姿を見つめた。
    みんな人に言えない仕事上の悩みや人間関係に疲れた
    ような男の群れがそこにはあった。

    そういう一日の男女の終厭を乗せて走る電車の中は、
    この男以外仕事に疲れきったような醜い男達の
    顔ばかりであった。

    はいストップ

    このあとは、あなたの想像でこの男を動かして下さいね。



































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