サルサを踊って、ワインを飲んで、Human Resource Managementを考える

サルサを踊って、ワインを飲んで、Human Resource Managementを考える

2006.04.01
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 両足を思い切り伸ばす。


 足の血管に溜まりに溜まって絡まった糸の様になった血液が、
筋肉の収縮でほぐされて、ほどかれて、再び体の中心に
ギューンと戻ってくる。そんな感覚になる。

 うー…と息を止めて、伸びをした後に、はーとため息を出しながら、
リラックスする。それを2度3度繰り返しただろうか。

 銭湯はいい。
 湯船が大きくて、手足をいくらでも伸ばせる。


また耳に心地良い。シャワーが「キュッ」と開く音、「ザー」と流れる音。
子供がキャッキャとはしゃぐ声。桶がカランと置かれる音。

 銭湯はいい。
 日常の忙しさや嫌なことを、文字通り水に流してしまえそうな、
そんな空間である。子供達が無邪気にお湯や水を楽しんでいる様を
見ると、ふと、子供の頃を思い出す。



 俺が、初めて銭湯に行ったのは、多分2歳くらいのときだ。
何にも覚えていないのだが、一つだけ確かに覚えていることがある。
頭から湯船に落ちて、目と鼻にお湯が入って、めちゃくちゃ痛かった。
近くにいた人が慌てて、俺をすくい上げた。
そのシーンだけ覚えている。


 多分、幼稚園の間に何回か出掛けたことはあるのだろうが、
覚えていない。俺の記憶に銭湯が本格的に登場し始めるのは、
小学校に入ってからだ。

 小学校2年のとき、石河という友達に誘われて、
自宅から歩いてすぐの、「ゆたか湯」という銭湯に行った。

友達と2人で外に出られるのが、やたらうれしかった。
 俺の家には、当時風呂があったが、石河の家には、
風呂がなかった。石河の家は、決して裕福な家ではなかった。
石河の家には、2匹のネコがいたが、父親はいなかった。
母一人、子一人の家庭だった。
 札幌から東京に転校してきて、右も左も分からぬ俺と、
すぐに友達になってくれた。明るい奴ではないが、暗い奴でも
なかった。背は俺より少しだけ高かった。クラスでは、
背の低い順に整列すると、後ろから2番目と3番目。


 子供だった為、湯船にどちらが長い間潜っていられるかを
競ったり、どちらが長い間、熱さに耐えられるかを競ったりした。
湯船を出れば、背中を流し合うこともあったし、
体を洗うときに、胸から洗うべきか、腕から洗うべきか、
どうでもいい争点で、子供なりの議論をした。


 学年が変われれば、クラスも変わる。
クラスが変われば、友達も変わる。
小学校3年に進学したとき、石河とは違うクラスになって、
以降、俺の銭湯友達は別のメンバーになった。
俺は、自宅にお風呂があっても、銭湯が大好きな少年になっていた。
たまにそのことで、母に怒られた。
家にお風呂があるんだから、家のお風呂に入りなさいと。

 小学校3年生といえば、悪ガキ盛りである。
銭湯に行っては、人が少ないのをいいことに、
体に石鹸を塗りたくって、タイルの床の上を、
滑って遊んでいた。スライディングをすると、本当によく滑った。
友達3,4人でそんなことをしていると、いよいよタイルは石鹸だらけに
なり、ツルツルすってんころりん、危険遅滞と化した。
 その洗礼を受けたのが、他でもない、俺である。
散々スライディングをして、立ち上がって普通に歩き出した、
そのときである。踵から「ツルッ☆」と滑って、
空中で「キャプテン翼」のオーバーヘッドキックみたいな格好をした
直後に、タイルの床に後頭部を力いっぱいぶつけた。
両目から火花が出た。あまりの痛さに、
頭を抑えてそのあたり一体を転げまわった。
 これは流石に危ないと、友達と手分けしてタイル床に付いた石鹸を
桶を持ってお湯で洗い流して回った。
 家に帰って、その事件について語ると、母に怒られた。
後頭部のたんこぶを指差して、俺は可愛そうな少年であることを
PRすると、なおさら怒られた。

 小学校4年だったか、5年だったか、思い出せないが、
再び石河と銭湯に行く機会があった。
その頃俺は、第二次成長の体の変化に戸惑っていた。
が、体に変化があったのは、石河も同じだった。
ただ、彼は俺と違って、増え始めた体毛を何も恥じることなく、
堂々としていた。堂々とする石河を見て、大人だと思った。
 石河と銭湯に行った記憶はこれで最後である。


 一生懸命思い出そうとしても、中学高校の銭湯の記憶が無い。
いや、あった。
 高校で極真空手を習っていたころ、よく足の裏の皮がめくれた。
皮がめくれて、直って、まめになって、血がにじんで…。
その繰り返しで、丈夫な足の裏を作ったのだが。
ある時、その足で銭湯に出掛けていって、お湯が足に沁みて、
痛くてしようが無かったのを覚えている。
空手家なるもの、これしきの痛みに負けていてはいかんと、
口をへの字に結んで、痛みに耐えて湯に入っていた。



 大学に入ると、島田と松井という地元の親友達と、川崎にある
スーパー銭湯に車で出掛けた。松井の黒のレガシーに乗って出掛けた。
にごり湯やジェットバス、電気湯、露天風呂、サウナなど、
様々な湯を楽しめる。
 帰りには、近くの巨大なゲームセンター「WONDER CITY」に
寄ってゲームをして、第一京浜沿いの牛丼屋で牛丼を食べた。
島田がバイトしていた牛丼屋だ。野菜嫌いの松井はたまねぎを避けて
食べていた。たまに俺がトイレに立って戻ってくると、俺の牛丼の
たまねぎの量が倍になっていることがあった。








 今日、出掛けてきたのは、その川崎にある銭湯だ。
一人で黒のフォルツァにまたがって出掛けてきた。





















 …両足を思い切り伸ばす。
 腿とふくらはぎの筋肉が硬直させて、つま先までをもピーンと伸ばす。

 足の血管に溜まりに溜まって、絡まった糸の様になった血液が、
筋肉の収縮でほぐされて、ほどかれて、再び体の中心に
ギューンと戻ってくる。

 銭湯はいい。
 湯船が大きくて、手足をいくらでも伸ばせる。

 少年の頃の思い出にふけっていると、
心の中で絡まった色んな余計なものも、少しずつほどけていくような、
そんな感覚になる。




銭湯





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Last updated  2006.04.02 02:02:44


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