一人の編集者が年間に刊行する書籍の数は、編集者としての経験年数や進行している企画の数などによっても異なりますが、 出版社によっては “最低でも一人で年間◯点は刊行すること” ということが言われているところもあると思います。もちろん、会社からノルマのように言われても、こればかりは相手があることですから、なかなか思うように運ばないわけで、だからこそ、著者に対する日々の原稿催促がとても大切になってきます。 ( 「来年は、この本とこの本を刊行しよう」 と、こちらが好き勝手に計画していても、著者を放っておいては、それは叶いません。)
私自身は、 編集者として独り立ちしてから、 平均すると常に5点くらいの編集作業が同時進行しています。 ただ、ここで言う編集作業は本の刊行予定日が既に決まっていて動いているものなので、 その他に、 著者が書き上げ途中の粗稿を読んでコメントして返すといったものまで含めると、それなりの点数が常に動いています。
そんなわけで、 (これは編集者としては当たり前のことですが) 編集作業をしながらも原稿催促を並行して行っているので、 “1冊刊行になると次の原稿が入稿する” という流れがずっと続いているような感じです。 (これから編集者になる皆さんも、こんな感じになるんだなぁということを頭に入れておいて頂ければと思います。)
正直言うと、日々このように数冊の本を並行して進めていて、あれもこれも読まなければならないという状況に陥ると、 「これは (この原稿や校正刷りは) ざっとだけ目を通せばいいかなぁ」 という “楽したい” という気持ちが起こってきてしまいます。 でもこれまで、私がその気持ちを何とか抑えてこれているのは、 「一度でも手を抜いたら、その時点で、編集者として終りである」 と心に強く思っているからです。 この気持ちが、楽な方に行きかけている自分を何とか引き戻して、支えているように思います。
こうした気持ちは、別に編集者に限らず、人が生きていく中で誰もが経験することだと思いますが、大変ながらも頑張って進めて、それが達成できたときには、その経験が次への糧になるものです。 ただ、ちょっと残念に思うのは、諺のように 「苦あれば楽あり」 とはならず、「苦過ぎれば、またその先に苦あり」 というのが、実際の編集者の仕事だったりすることです。
でも、だからこそ、編集者の仕事はやりがいがあって、面白いのかもしれません。
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