category "I"

February 24, 2007
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カテゴリ: to kill time








「頼むから戻ってきてくれよ」










「郁さん、実家に帰ってきてるんでしょう?
お疲れのところ大変申し訳ないんですけど、
ちょっと出てきて、僕達の話聞いてくれませんか」










実家に帰る度に、
前の店のコから電話が掛かってくる。
毎回様々な愚痴を延々と聞かされるが、
今回は、いつものそれとは内容が異なるらしかった。









普段ならば、とっくに寝ている時間。
眠い目を擦りながら、指定の場所まで行った。










「来月、新店舗が出来るって話は知ってますか?」

新店舗が出来るという話は、
私が辞める前から出ていたから知っていた。
新事業を、見切り発進でことを進めていく会社。
あそこでは、当然の如くそうやって話が進められた。
一体それがどうしたというのだ?
あの会社のことだ。少しも珍しいことではない。










「宮口さんが…」

「ミヤグチがどうかしたん?」

「もうずっとカリカリしてるんです」

「あれが新店舗オープン前に、
カリカリしてるのは、いつものことやろ」










新店舗オープン前、新メニュー作成時…
ヤツは決まって、その前後はカリカリしていた。
店長に対する文句、上や会社の体質に対する不満。
荒れ狂うヤツを大人しくさせるがの役目、
そんな風に周りの連中からは思われていた。










“あんたがそんな顔しよってどうするん!?
その感情は皆に伝染するんよ。笑顔!笑顔!!”

“なんしよんね!?
言いたいヤツには言わせとけば良いやろ。
そうやってモノにあたるの止めてくれん?”

“いい加減にしっちゃ!
こんなに手を血だらけにしてどうすると?”

“大丈夫。
ちゃんとしていれば、必ず報われるから。頑張ろ?”










いくつもの言葉をヤツにぶつけた。
私としては、なだめているつもりは欠片もなかった。
ギスギスした、いつ何が起こっても可笑しくない環境。
少しでも仕事がしやすいよう、
常にヤツの動向を気に留め、皆に声を掛けていた。
皆のため、ではなく、自分のために…

“疲れてるのは、皆同じ!
ほらっ、声出していこう!!”

心掛けは巡り巡って、自分に返ってくる。
ただ、それを信じて。










「郁さんが居なくなってから、
誰も宮口さんを止められないんです」

「最初のうちは、
宮口さんも頑張ってたみたいなんですけど…」

「今は駄目です。
営業中、表情が全くないし、上の空っていうか―」

「宮口さんと郁さんって、
お互いの足りないところを出し合ってた感じでしょ。
郁さんが出来ないことを宮口さんがして、
宮口さんに出来ないことを郁さんがする、みたいな」










「比翼の鳥?」

「そう!そんな感じ!!」

「ヤツと一心同体は嫌ですよ」

「そんなこと言わずに、ちょっと会ってあげてください」










会ったところで何も変わるまい。
そんなこと、分かりきったことなのに―










「おう、私が居なくなってから、
ツンケンして皆に辛く当たってるらしいじゃないの」

「綺麗になったな」

「そういう話をしてんじゃなくて」

「………。
俺、本当にきちぃよ。マジ、ぶっ倒れそう。
助けてよ。俺一人じゃ、何も出来ねぇよ。頼むから…」










その先は言われなくても分かる。










“頼むから戻ってきてくれよ”










「宮口さんの表情が戻った…」










ごめん、私にはもうどうしてやることも出来ないよ。










前みたいに、店舗の中で一番近くに居てやることも、
常に気に掛けて声を掛けてやることも…










あんたをこんなにしてしまったのは、私のせい?












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Last updated  February 24, 2007 03:58:37 PM
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