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ビストロフの橋
第九章 「ドリーの正体」
ドリーの正体
広間での事件があった後、ドリー捜しは格段に楽になった。ハッフルパフでは一年生のほぼ全員が総掛かりで探してくれていたし、グリフィンドールのフレッドとジョージは城の中のことを誰よりもよく知っていた。
もちろんウィルたちも懸命に捜し続けている。なのに、ドリーの正体はようとして知れなかった。
この数日でウィルたちにとって朗報は二つだけ。
一つは、ジャスティンが仕入れてきた情報。この城にある絵は城が魔法学校になって以来減ってはいないと言うことだった。いろいろな事情で増えはするが減ることはないのだと言う。だとすれば、必ずどこかにあるはずだ。
情報の出所がはっきりしないと言う一点だけが不安ではある。
もう一つはジョージの計らいで森番のハグリッドがウィルのために杖の材料になりそうな枝を集めてくれることになったこと、だ。
これには誰よりもまずキャロルが胸をなで下ろしたし、ウィルとしては少し残念な思いもあったが、森の恐さは好奇心を失わせるに十分なものだったからホッとしたのも事実だった。
そのことで唯一キャロルが眉を顰たのは、ジョージがそのことを告げた後に言った一言だ。
「森は遊ぶところで仕事しに行くとこじゃない」それが、わざわざハグリッドにウィルの杖材捜しのことを伝えた理由だったのだ。
その間にも時間だけは順調に過ぎていき、二週間が経った。
もちろん、ドリーは見つからない。キャロルは自分の洞察が外れていたのではないかと期待し始め、ウィルは絵たちが偽名を使っているのではないかと疑いだした。ルビィはいろんな絵と知り合いになれたと喜んでいる。
「絵じゃないのかも・・・」
その日の最後の授業、魔法史の教室へと向かう新しい通路を探して、廊下を歩きながらも、落胆を隠そうともせずにうなだれるウィルを見かねて、キャロルが声をかけたが、その声には相手を気遣うと言うよりも、自分の願望が多分に含まれていた。
「・・・もしそうだとしたら、また手がかりが無くなってしまうってことだろ?」
ドライロットの失敗から考えて、絵という結論を得たのに、それが違うとなったら次は何だと考えればいいのか?
ウィルには分からなかった。
「なにか、なにかを見落としてるんだよ! それがなんなのか」
苛立って声を荒げかけたウィルが急に言葉を切った。医務室の前にマクゴナガル先生が立っているのを見つけたのだ。
こんなところで騒いだりしようものなら、マクゴナガル先生はもちろん校医のマダム・ポンフリーにも何を言われるか知れたものではない。
「ポッピー、ネビルの具合はどう?」
「骨折ならもう治ってるわ。元気がないのは精神性の外傷ってとこね。こればかりは魔法でもどうにもならないし、本人次第よ」
誰か生徒が怪我をしたのだろう少し心配そうなマクゴナガル先生に、マダム・ポンフリーは刺のある声を出した。
「まったく。大昔じゃあるまいし、移動の手段は箒に限らないんだから飛行訓練なんてしなきゃいいのに、と思うわ。手首だったからいいものの首だったら取り返しが付かないところよ」
そう言えば、今週から飛行箒の訓練が始まると掲示がしてあった。確かグリフィンドールとスリザリンは今日からその授業が始まったはずだ。
「まして一年生にクィディッチを。それもシーカーをさせようだなんて狂気の沙汰だわね」
またクィディッチだ。
ウィルは入学初日に聞いてからずっ引っかかっていたことを思い出した。自分には関わりないと思って忘れかけていたのだけど、ここは一度キャロルかルビィに聞いたほうが良さそうだ。
マダム・ポンフリーのさらりとした、でも冷めた声にマクゴナガル先生は明らかにうろたえていた。
「ポッターのことなら大丈夫です。何しろジェームズの息子ですもの。最高の選手になることは疑いありません」
きっぱりと言い切ったマクゴナガル先生だったが、マダム・ポンフリーが次の言葉を言う前にと、せわしげに立ち去ってしまった。態度は毅然としていたけど、その場を逃げ出したのは確実だった。
「プロでさえ、怪我はする。誰だって同じこと。ミネルバともあろう人が、それが分からないわけないでしょうに」
その後ろ姿を見つめ、マダム・ポンフリーは悲し気に呟くと。医務室の中へ、患者の元へと戻っていった。
「・・・・」
「・・・・」
再び、見渡す限り三人だけ、となったときウィルとルビィは沈黙に沈んでいた。
二人とも何かを考えていたが、その内容がまったく違うものなのは考えるのを止めて出た最初の一言を聞いただけではっきりとわかった。
「ルビィも、クィディッチやりたいなぁ。シーカーってかっこいいよね?」
「ポッピーってさぁ、ポンフリーのことだよね?」
二人にはさまれたキャロルに対し、二人とも疑問形の言葉を同時に投げかけた。
さすがのキャロルも一瞬返事に窮したのか沈黙し、ため息混じりに答えることになる。
「誰でもできるって訳じゃないからかっこいいの。やればできるんならかっこいいなんて思わないでしょう? ウィル、あなた本当の名前はウィリアムでしょ? それがどうかしたの?」
二人を半々に見つめるキャロル。少しあきれているようだ。
「やっぱり? 見てるほうが楽しいからいいや」いつものように陽気に笑うルビィ。その反対側ではウィルが恐いくらい真剣な顔でキャロルを見ていた。
「どうかしたの?」
「それは君のことだよ」
どうかしたの? 言葉を繰り返したキャロルにウィルは怒ったように言った。
態度にこそ出さないが、かなり興奮しているらしい。
「わからないか? ポッピーがポンフリー。ウィルがウィリアム。だったら・・・だったらドリーは? 僕らはこだわりすぎたんだドリーの名前と存在に。ドリーが誰かの、それもごく親しい人とだけで使われる愛称だったら?」
ドリーという名前だけで探したところで見つかるはずがない。
生徒や教師ではなく。20年前からいたと思われ、ドリーという愛称を付けられそうな者の心当たり。
ウィルは突然歩く方角を変えた。踵を返して、反対方向に歩き出す。
ルビィとキャロルが慌てて後に続きながら声をかけても、ウィルは返事をしなかった。
その頭の中では、いくつかの光景が鮮明に思い出されている。ドライロットの出会い、そして組み分けが終わった後の宴会の情景。
あの時、ドライロットが言っていたではないか『娘と同じ色の瞳をした・・・・』、そして「あのコ」はウィルの目をじっと見つめていた。今にして思えば、それはまるで懐かしいものを見るような目だったような気がする。
「どこ行くの?」
「このままだと寮に戻ってしまうわ」
だんだんと急ぎ足になるウィルから離れまいと、ほとんど小走りになりながらルビィとキャロルが訊いた。
「そうだよ。寮に戻るんだ。ドリーは、ドリーは女子寮にいる」確信を込めた声だった。そう考えれば全ての辻つまが合うのだ。なぜもっと早くに気がつかなかったのか、ウィルは自分の鈍すぎる頭を呪い始めていた。
「見つけるまで探せば骨折りは無駄にならない(seek till you find you'll not lose your ladour.)」
立ち止まりもせず合い言葉を言い、開き始めた穴に飛び込むようにしてウィルは談話室に入った。そのまま女子寮へと向かう。
「なにをしているの!?」
手当り次第に布の仕切りを掻き分け、「あのコ」を探すウィル。ちょうど着替えをしていた上級生が上げた悲鳴を聞きつけて、飛んできたペネロピーが金切り声を上げたが、かまわず進む。
その後方ではペネロピーに怒られ慣れたルビィが、代わりに謝る声が聞こえていた。
そしてついに、求めていたものを目にしてウィルは歩を緩めた。
乳白色のものが、目の前に浮いている。そして、突然現れたウィルの、その瞳にじっと視線を注ぐ。
「夢見るドロシー」だ。
「ドロシー、いや、ドリー。僕と同じ目をした女の子。サマンサ・サンディスについて、知ってることを全部話してくれ」
そうは言ったものの、考えてみたらこの子が口を訊いているのを見たことがない。ただ、ドリーと呼ばれたときとサマンサの名前を出したときの反応はウィルの推測を肯定していた。
ドリーが彼女なのは間違いない、問題は彼女がサマンサに何を教えたか、だ。
「あの人とやらに会う方法を教えたはずだ。何を教えたんだい?」全身を冷気が包むのもかまわず、ウィルはドロシーに詰め寄った。
ドライロットが見つけられなかったものを見つけた、解決の糸口が目の前にある、その事実がウィルを熱くさせているのだ。
「・・・・地下牢教室、廊下奥の絵」聞き取れないほど小さな声が、歌を口ずさむようにそれだけを告げ、ドロシーは霞むようにして消えた。
同時に、ウィルも動いていた。核心に迫っている。長く停滞していたものが動き出している。その実感が体を衝き動かしていた。
脇を擦り抜けようとしたとき、ペネロピーの腕がウィルの襟元に伸びかけたが、その手はなぜかルビィのローブをつかみ、呼び止めようとした声はルビィの目一杯大きな声で遮られた。
「ごめんなさい! ごめんなさい!!」必死に謝るルビィ、だが、その手は彼女の後ろでウィルとキャロルに今のうちに行け、といっていた。
なるべく近づかないようにしていた場所だと言うのに、今回ばかりは一発でたどり着けた。
昼なを暗い地下牢の廊下、一番手前が魔法薬学の教室、奥の部屋がスネイプ教授の研究室兼魔法薬の材料の保管場所になっている。
だから、教室より奥にはだれ一人として行ったことがない。おそらくはウィーズリーの双子でさえ、あまり近づいたりはしていないだろう。そこへ今、ウィルとキャロルは足を踏み入れた。
「ルーモス、光よ」ウィルとキャロル、二人同時に杖を出し覚えたての呪文を唱えた。二人のたどたどしい呪文に比例してか、杖先に頼りないくらい小さな明かりが点る。
逸る気持ちを押さえ、その杖先をゆっくりと壁に向けた。
夜の闇よりも深そうな暗がり、誰の目にも付くことのない廊下の行き止まり、確かに絵はあった。そう、あった。「ある」ではなく「あった」。ウィルとキャロルが小さな明かりの中に見たもの、それは長い年月放置されたために風化し紙屑と化した絵の亡骸だけだったのだ。
「これって・・・」疑いようもない事実を前に、キャロルがなんとか言葉を探そうとするが無駄だった。彼女の目の前でウィルは完全に呆然自失の態で立ち竦んでいる。
せっかく開けたはずの真実への道が、再び閉じられてしまった。しかも今回は何の手がかりもない。
「我輩の研究室に何の御用ですかな?」
ただでさえくらい場所、暗い気分の時に、暗い声が背後からかけられた。石化してるんじゃないかと思うほど硬直していたウィルの体が激しく反応しながら、努めて振り返らないようにとしているのがわかる。
別段やましいことなどないと言うのに、この声の主を前にすると何か後ろめたい気分になってしまう。
「あ、あの、先生の部屋に来たわけではなくて、この壁にかかっていた絵に用があったんです」キャロルも、その例外ではいられないようで、妙に上擦った声で釈明を始めた。
が、その声は言葉の後半で突然普通に戻り、最後には何かうれしそうな声音に変わった。
スネイプ教授のすぐ後ろに、別の人影があった。教授の肩ぐらいの背に白い髭と丸い眼鏡。
「ダンブルドア先生」
喜色に輝く声がキャロル越しに当人に向けられた。ウィルもダンブルドアがいることに気がついたのだ。
キラキラッとした目が二人を見つめている。
「奇遇じゃな、わしらもここの絵に用があったのじゃよ」
ダンブルドアの持つ杖の明かりが、壁を照らし出した。風化してぼろぼろにひび割れたキャンバス、カビと埃で変色した額、絵がかかってた跡が残るだけの壁。全てが、ここにあった絵がもはや紙屑と木片以外の何ものでもないことを告げている。
「ふむ。確かに、もはや何ものでもない【もの】となっとる。セブルス、知らせてくれてありがとう。あとはわしがやっておくよ」校長の言葉を受け、スネイプ教授は無言のまま踵を返した。
「この絵は元はれっきとした魔法使いじゃった。魔法の絵を描くものとしてはかなり有名な画家だったのじゃよ。ところが、自分の書いた絵に恋をしてな。自分自身すら絵にしてしまったのじゃ。じゃがその相手は火事で消失、彼だけが助かった。以来、死にたがってのう。再三再四修復しようとしたが頑として受けつけんかった。そしてついに、希望通り死ねたというわけじゃな」
絵の残骸を小さな丸眼鏡越しにしげしげと見つめながら、ダンブルドアが話してくれたこと。それが、恐らくはウィル達が訊きたかったことにも通じているに違いない。
サマンサの日記、狂気に侵された母親のうわ言、ドリーがサマンサに教えたこと。それらが今、一本の線としてつながりかけている。
「あの・・・人間が絵に、なんてなれるものなんですか? いったい、どうすればそんなことが?」キャロルにも、その線が見えたらしい。微かに震える声がダンブルドアに尋ねる。
「魔法は万能ではない。じゃが、人が強く何かを望むとき、奇跡が起こる。彼は奇跡を起こしたのじゃ、どうやってかは本人にもわからんかもしれんて」いつもの、陽光が踊るような瞳にウィルたちを写し、ダンブルドアは微笑んだ。
どんな望みも、本気で望むなら叶えられる可能性がある。たぶん、そう言うことを言いたかったのだろう。だが、ウィル達にしてみると、これ以上の詮索はするな、といわれたような気がしてしまうのは否めなかった。
「さて、この亡骸を葬ってやらねば。破片を集めるのを手伝ってくれんか?」
しゃがみ込み、持っていた小さな袋にダンブルドアは破片を入れ始めた。ウィルとキャロルがうなだれながらも手伝う。
「なにかね?」粗方集め終えたところで、キャロルが小さな破片を手に取り、熱心に見入っているのに気づいてダンブルドアが声をかけた。
「あ。いえ、なんでもありません」キャロルはその破片をそっとダンブルドアの手にある袋に入れた。
「手伝ってくれてありがとう。二人とも授業に遅れんようにな」袋をマントの中にしまうと、ダンブルドアはにこやかに言って、立ち去ってしまった。
魔法史の教室へ行くと、ルビーがすでに来ていて期待いっぱいの目を二人に向けてきた。ウィルもキャロルも無言で席に着いたので、ルビーも状況を理解したらしく声をかけては来なかった。
二人が席に着くと、ほとんど同時にビンズ先生が黒板を通り抜けて教室へと入ってきた。授業時間ぎりぎりだったのだ。
いつものように退屈な授業が始まり、ウィルが本格的に眠りかけたところで終わった。
「待ってください、ビンズ先生。一つ質問があります」半分以上眠りかけていた頭を、首を振って起こしながら生徒が帰り支度を始める中、意を決したキャロルの声が黒板の中に消えかけたビンズ先生を呼び戻した。
「なんですかな?」長い教師生活の中にあっても、質問されるというのは希有なことだったのだろう、亀のような顔に戸惑いを浮かべてビンズ先生が戻ってきた。
「エルンスト・レーナー、という人をご存じでしょうか?」キャロルには珍しい、前後の脈略のない、唐突な質問だった。
「あの、授業には関わりないんですけど」
申し訳なさそうに付け加えたキャロルだが、意外にもビンズ先生はキャロルの席まで移動し、教科書を指し示した。
「258ページを開いて見てください」
言われるままにキャロルがページを繰る、ウィルもまだ出したままだった教科書を開いてみた。
16世紀に活躍した主な魔女・魔法使い。というページにその名前はあった。
「エルンスト・レーナー。ホグワーツ魔法魔術学校魔法薬学教授を経て魔法画家となる。1746年、第二百四十二回魔法魔術功労者大賞・選考会特別賞を受賞。その対象となった魔術により、たくさんの魔女、魔法使いが危険な思想に取り付かれたためその翌年魔法省によって使用を禁止され、あらゆる書物からその魔術そのものについての記述が削除されました。その後、魔法省内部に現在も存在する実験的魔法動物管理局の母体となった新魔法開発・使用調査室が設立されるきっかけとなった事件でもありました。どんな魔術だったのかは、わたしにもわかりませんが・・・よろしいですかな?」
あまりに簡単に答えが出たので驚いているキャロルがかろうじてうなずくと、ビンズ先生は床を抜けて教室を出ていった。
「あのね・・・」不審そうな顔をしていたのだろう、ウィルとルビィの顔を見たキャロルが何か言いかけた。が、それをウィルが手で制して目配せする。
ウィルの視線の先には、わざとゆっくり帰り支度をするスリザリン生の姿があった。例のミリセント・ブロストロードの姿もある。
聞かれたからといって困るというわけではないとも思うが、広間での事件を考えるとどんな嫌がらせがあるか知れたものではない。
よけいな情報はできるだけ与えないほうが賢明と言うものだろう。
「で、エルンスト・レーナーって何者?」寮の談話室の一角に陣取り、ルビィにドロシーがサマンサに何を教えたのか聞いてからのことを説明すると、早速ウィルは疑問を口にした。何となく予想は付いていたけど・・・。
「あの絵になった魔法使いよ。わたしが拾った額の破片にその名前が掘られていたの。たぶん間違いないと思うけど、さっきビンズ先生が言っていた書物から削除された魔術ってのが、人間を絵に変える魔法なんだわ。だからダンブルドア先生も詳しく話してくれなかったのよ」
確かに、そう考えれば納得がいく。おそらく、いや疑いなくそうなのだろう。しかし・・・。
「だとすると、またしても線が切れてしまうね。今度は禁じられた魔法を調べなきゃなんない」
「どんな魔法だったのかな? 妖精の魔法とか?」杖を取り出しながらルビィが言ってみるがキャロルは首を横に振った。
「レーナーはホグワーツの魔法薬学の教授を経て画家になってるのよ、きっと魔法薬だと思うわ。自分の得意分野でもなきゃ、新しい魔法なんて作れっこないもの」
「図書館で探してみるしかないな。削除された、とは言え全部完全に消せたとは限らない。消し忘れた本がないか探してみよう。キーワードはエルンスト・レーナーと絵。雲をつかむような話だけど、それしか手がない」
もちろん、ダンブルドアやドライロットに事情を話して調べてもらう、というのも選択肢にはあった。
そのことを初めに口にしたのはルビィだった。彼女にしては鋭い指摘というとこだけど、ウィルとしてはここまできた以上最後まで自分の手でやりたいという思いがあった、それでも人の命がかかっているのだからと妥協しかけたとき、キャロルの一言が全てを決めた。
「ただの事故ならそれでいいけど。犯罪だったら・・・」核心に迫る前に犯人に手を打たれて証拠を隠されるかも知れない。ドライロットが呪いに捕まり、全てが闇に葬られると安心している今だからこそ、突破口も開けるだろう。というのだ。
「ただの事故にしては、母親の錯乱ぶりが激しすぎると思うの。20年たっても正気に戻っていないってのも引っかかるし」
そんなわけで、可能な限り三人だけでことを進めよう、というのがキャロルの提案だ。
翌日から、三人の行動範囲は驚くほど狭まった。
学校全域から図書室一カ所へ。ただし、調べるべき対象は数千倍に増大した。今まではせいぜい数千枚の絵だったのが、今度は数十、数百万の書物になるのだ。
1746年前後、魔法薬に関する書物。
「年代がわかってるのだけが唯一の救いね」
『太古の魔法に関する一考察』、『古の偉大なる魔法使い達』、『12世紀の錬金術史』といった本を脇に避けながら、本棚をくまなく調べ始めるキャロル。ルビィは図書室の端で司書のマダム・ビンズを相手になにかを話している。
「あなたは、もう一度サマンサの日記を確認してみて。『誰』に会いたかったのかを知る必要があるわ」手伝おうと本棚に近づこうとしたウィルを見て、キャロルは声を潜めた。
キャロルの目はウィルと本棚の中間辺りを見ている、ウィルはそれだけで全てを悟った。
気づいたと知られないよう、振り向いたりしないよう気をつけながらウィルは図書室を出た。
寮に戻り、ドライロットの書斎へと下りる。
再び、あの戸棚の中へと腕を差し入れ日記を取り出した。
他人の日記を読む。あまり気乗りしない作業だが、人の命がかかっているのだ、と自分に言い聞かせながらページを繰り始める。
七月三十一日
今日は散々だった。
なにがっていったら一番はやっぱり、もう少しでホグワーツ入学が取り消しになるところだったこと。
今朝になるまで、入学希望の手紙を出し忘れてたの。
喜んで浮かれてるうちに一月経ってた。なんて、庭小人なみに間が抜けてる、自分で自分がいやんなるわ。
でもでも、なんとか間に合ったから万事オッケーよね。
八月一日
今日はミランダに借りてた本を全部返して来たわ。学校に行ってしまったら、そうそう返しには来れないもの。
ミランダったら、絶対に催促に来ないからついつい借りすぎちゃうんだけど。今回はひどかったなぁ。
本棚調べたら、三分の一は彼女の本だったの。二十冊くらいあったかしら。
旅行用の鞄一つ分、さすがに重かったわ。読み終えたら一冊ごとに必ず返すこと、教訓ね。
「・・・・」ウィルは軽く溜め息を吐きながら続きをパラパラと捲った。
他人の日記というのは、真剣に読むのがとても難しい。とくに、人のプライバシーを覗き見ることに喜びを感じない人間には拷問に近かった。
と、手が止まった。『絵』という文字が目に飛び込んできたのだ。
八月二十六日
彼を見た!
ほんの一瞬だったけど・・・相変わらずきれいな金髪に吸い込まれそうな青い瞳。
素敵だったわ。
大叔母さんが私に気がつかないでいてくれたら、騒がなかったらもっと見ていられたのに。
本人はとっくに死んじゃってる肖像画のくせにさ、まったく大叔母様ったら絵になってまで意地悪なんだから。
あーあ、もう少し見ていたかったなぁ。
あの目障りな吸血鬼がマント広げて隠すものだから、すぐに見えなくなっちゃうのよね。残念。
日記を閉じ、棚に戻す。
これでまた、捜し物が増えたことになる。
サンディス家にある吸血鬼の描かれた絵、それが鍵だ。しかし問題なのは「ある」ではなく「あった」ということ。過去系の話なのだ、今はどこにあるのか。
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